主人と血の契約を交わした7人のサーヴァンプ(吸血鬼)と、その7人の主人たちによる、吸血鬼との戦いを描いたバトル漫画『SERVAMP/サーヴァンプ』。現代風にアレンジされた個性的なストーリーや、キャラクターをネタバレを含んで全巻紹介します。
田中ストライクが描く漫画『サーヴァンプ』は、2011年から「月刊コミックジーン」にて連載中の、コミカルでちょっとハートフルな、吸血鬼vs吸血鬼のバトルを描いた作品。
2016年にアニメ化され、2017年4月7日には劇場版アニメ作品が公開される人気作品です。
- 著者
- 田中 ストライク
- 出版日
- 2011-12-22
タイトルにもあるのが、飼われる専門の吸血鬼が契約した主人からのみ血をもらって、命令に従うという「下僕の(SERVANT)吸血鬼(VAMPIRE)」の呼び名、サーヴァンプ(真祖)。
サーヴァンプには7人の兄弟がいて、主人につけられた名前とは別に、司るものと通り名があります。まず初めに、彼らの詳細を紹介します。
第1真祖(怠惰):クロ・通り名「沈黙する終焉(スリーピーアッシュ)」司るものは黒猫。劇場版アニメ作品では梶裕貴が声優をつとめます。
第2真祖(傲慢):ヒュー・通り名「古きよき時代の忘れ者(オールドチャイルド)」司るものはコウモリ。劇場版アニメ作品では村瀬歩が声優をつとめます。
第3真祖(嫉妬):ジェジェ・通り名「疑わしきは罰せよ(ダウトダウト)」司るものはヘビ。劇場版アニメ作品では津田健次郎が声優をつとめます。
第4真祖(憤怒):名前不明・通り名「母なるもの(ザ・マザー)」司るものは不明。
第5真祖(強欲):ロウレス(ハイド)・通り名「唯一無二(ロウレス)」司るものはハリネズミ。劇場版アニメ作品では木村良平が声優をつとめます。
第6真祖(暴食):名前不明・通り名「世界を食い尽くせ(ワールドエンド)」司るものは不明。
第7真祖(色欲):スノウリリイ・通り名「全ては愛に収束する(オールオブラブ)」司るものは蝶。劇場版アニメ作品では堀江一眞が声優をつとめます。
名前が不明の真祖は、主人がいない、もしくは明かされていない者です。
本来、7人の真祖しかいませんでしたが、後に8人目の存在も……。そして、その8番目こそ、7人の真祖に戦争を仕掛けてくる張本人なのです。
第8真祖(憂鬱):椿・通り名「招かざる8番目(フーイズカミング)」司るもの狐。
彼らは日光にあたると、それぞれ司るものに姿が変わってしまいますが、故意に変わることも出来ます。ただ、椿は日光が出ていても、人の姿でいられる異質な存在です。
物語には彼らと主人の他に、サーヴァンプに血を与えられて、吸血鬼にされた下位吸血鬼(サブクラス)や、吸血鬼と人間との中立機関C3に属している人物など、様々なキャラクターが登場します。それぞれが強い個性を持っているので、物語をより魅力的にしてくれているのです。
また、ストーリーにはそれぞれ、サーヴァンプと主人の出会いや、各々の奥底に隠された闇などが、巻数ごとに色々な視点で描かれています。今回は、そのストーリーや魅力を全巻紹介していきます。ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。
「サーヴァンプ」のキャラクターごとの魅力を紹介した<漫画『SERVAMP-サーヴァンプ-』のキャラクターの魅力ネタバレ紹介!>もおすすめです。
1巻では、主人公の城田真昼(しろたまひる)が、1匹の黒猫と出会ったことによって、人生が一変する物語が描かれています。彼は劇場版アニメ作品では寺島拓篤が声優をつとめます。
- 著者
- 田中 ストライク
- 出版日
- 2011-12-22
城田真昼は、シンプルイズベストをモットーにしている高校1年生。道端で黒猫を拾い、家に連れて帰ってクロという「名前をつけて」、「首に鈴」をつけました。
サーヴァンプとの契約には、名前をつけることと贈り物をすることが必須です。そして、彼らが人の姿のときに、その名を呼ぶと仮契約となります。そして24時間以内に、主人の血を飲ませると、正式契約となるのです。
契約したサーヴァンプは、主人からのみ血をもらい、「飼われる」ような形となり、命令に従わなければなりません。主人公の真昼は、クロが吸血鬼とは知らずに拾ってきましたが、名前も贈り物もしているので、一応仮契約から始まります。
その後、突然街に吸血鬼が現れ、真昼は友人と人々を救うため、クロと本契約を結んだのです。しかし、クロは「怠惰」なので、戦うことは「死ぬほどめんどくせぇ」とのこと。それでも、契約した以上は主人なので、とりあえず命令には従います。
ただ、本人曰く「平和主義」で、「暴力では何も解決しないし、もしも警察に捕まったら、こいつがやれと言った」と、主人を売ってしまうとのこと。こうしてふたりは、無事(?)本契約を結んだのですが、まだまだ先が思いやられそうですね。
また、街を襲った吸血鬼は、実は第8真祖「椿」のサブクラスだと判明しました。サーヴァンプは本来7人しかいないので、「椿」の存在は誰も知りませんでした。ただ「誰も知らない」ことが「椿」の脅威なのです。1巻で椿の存在が仄めかされているので、今後起きるであろう「戦争」への伏線を残しているというわけです。
2巻では、真昼とまひるの同級生で親友の綿貫桜哉(さくや)の、ふたりの物語が中心に展開されています。桜哉の秘密、そして真昼との友情の行方は……?
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2012-06-22
また、桜哉が実は椿のサブクラスだったことも判明し、さらには真昼がついた些細な嘘が原因で、桜哉は真昼に不信感を抱いてしまうのです。
桜哉の両親は、保険金目当てで、桜哉の姉に自殺を強要しました。桜哉は、両親から姉は事故で死んだと言うように強要され、初めて嘘をついたのです。そして6年後、桜哉にも姉と同じ運命が、用意されていたのです。死の寸前、椿に血を与えられてサブクラスとなった桜哉は、救ってくれたという恩を感じました。
桜哉の姉は、自殺させられると知っていながら、桜哉に「お姉ちゃんは大丈夫」と嘘をついており、また住んでいたマンションの住人も、おかしいと分かっていながら、関わりたくなくて嘘をついていました。桜哉自身も、強要されたとはいえ、嘘をついたことが彼の人生を大きく変えてしまったのです。
すべてが嘘で塗り固められた人生に深い傷を負った桜哉にとって、嘘は絶対に許せないものだったのです。ここでは「嘘」がキーワードになった、真昼と桜哉の関係が描かれていきますが、ふたりの間にはそれ以上の友情があった、という展開になっています。
3巻では、吸血鬼と人間の中立機関、「C3」という存在が明かされます。真昼が突然、何者かに襲われ、気がついた先はC3の拠点でした。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2012-12-21
C3は、人間と吸血鬼が共存するためには、椿の存在が大変危険だといいます。ただ、椿の力はあまりにも強いため、真昼とクロに協力して欲しいとのこと。
もともと椿は、C3が所持していたのだといいます。しかし、椿は一体どういう存在なのか、椿が何を目論んでいるのかなど、詳細は不明です。
C3は、椿とそのサブクラスのすべてを「壊す」つもりのようですが、その中に親友がいるという真昼は、「壊す」ことに反発します。真昼はそこで、C3が「人以外を捕まえたり裁いたりする組織」と認識したようですが、ほかにも裏があるようです。
真昼は、椿のすべての「理由」を知るために奮闘するのですが、事態はそう簡単に収拾できるはずがありません。そして、それをあざ笑うかのように、椿のカウントダウンが開始されるのです。
まず彼が先陣を切ったのは、花火大会の夜。実行委員だった真昼の元に、アタッシュケースが落し物として届けられました。ちょうどその時、温泉宿の跡取りの千駄ヶ谷鉄が、失くした棺桶を探しにやってきます。
すると遠くでアタッシュケースが爆発したと聞き、同じアタッシュケースを持って焦る真昼を見て鉄は、棺桶の中にケースを入れて爆発させるのです。棺桶を木に立てかけていたのを忘れていたとのことで、失くしたわけではありませんでした。
真昼はここで、鉄もサーヴァンプと契約する主人だったことを知ります。また、棺桶の中からは、傲慢の真祖ヒューも出てきました。真昼にとって仲間が増えたことは、とても心強いものでもありますね。
ここで明かされるC3の内情は、ほんの入り口にしか過ぎません。吸血鬼と人の中立機関とありますが、椿を所持していたということもあるので、もしかしたら吸血鬼を作り出した組織かもしれません。
いずれにしろ、椿が危険と考えられているのは、他のサーヴァンプとは違う「何らかの存在」であったからでしょう。
4巻では、スノウリリイと主人の有栖院御園(ありすいんみその)、ジェジェと主人の有栖院御国(ありすいんみくに)を含む、有栖院家の闇が明かされています。(以下、御国と御園と表記)
それぞれ劇場版アニメ作品では御国を柿原徹也、御園を下野紘が声優をつとめます。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2013-04-24
有栖院御園と御国は兄弟で、それぞれがサーヴァンプと契約している主人です。有栖院家は有名財閥で、サブクラスと人間がうまく共存する「治外法権」と呼ばれる特異な名家。御国は弟思いの優しい兄、弟の御園は幼い頃から病弱で、体力もありません。本来ならば、兄の御国が有栖院家の跡取りですが、現時点では、御園が有栖院家の長男とされています。
もともとふたりは仲の良い兄弟でしたが、御国が突然家を出てしまってから、御園は自分を捨てて出て行った兄を恨んでいました。その理由を知りたくとも、有栖院家では、御国の話どころか名前さえも一切禁句なのです。
その行為はすべて、御園を守るための最善策だとして、スノウリリイが御園の記憶を操作していたことによるものですが、実際は御国と御園の「双方の母親」の事件が根底にあったのです。事実を知った御園が、スノウリリイにぶつけた怒りによって、スノウリリイの「大切な物」が壊れると、スノウリリイが一変。
サーヴァンプは、「大切な物」を壊されると暴走して闇となり、主人を飲み込んでしまうのです。スノウリリイはただ、嫌われたくなかった、拒絶されるのが怖かったという思いと、御園を守りたいという一心で、記憶を消していたとのこと。
その事実を知ったからこそ、御園はそれを受け止め、これまで守ってくれたことにも感謝しながら、成長を遂げていくのです。そして、ここで見せたスノウリリイの闇……。クロにはもっと深い闇がありそうな予感を示唆しています。
5巻では、第5真祖のロウレスと主人のリヒト、真昼たちとの出会いから、ロウレスとリヒトとの関係、ロウレスとクロの関係などが描かれています。リヒトは劇場版アニメ作品では島﨑信長が声優をつとめます。
- 著者
- 田中 ストライク
- 出版日
- 2013-12-27
リヒトとロウレスは、サーヴァンプと主人という関係に疑問を持つほど、仲違いしているように見えます。ロウレスは、自分で主人を選び契約にこぎつけるのですが、そのやり方は至って卑劣なもの。
主人に飽きるとその主人を殺害して、次のターゲットを見つけて契約、といったことを繰り返しています。リヒトもたまたま、人懐こい「ハリネズミ」と、出会ったことから始まりました。
ロウレスは主人を転々と変えていましたが、主人として慕うのではなく、その状態を面白おかしくしているだけ。誰のことも「主人」と思っていなかったのです。しかし、それもすべてロウレスの悲しい過去が原因でした。
また、ロウレスは、クロの過去の何かを知っているようで、突然ふざけたように昔話を話し始めました。その話を聞いたクロの表情が一変。どうやらクロには、真昼にも言えないような、深い深い闇があるようです。
さらにこの巻で、ロウレスとリヒトが、本格的に動き出した椿に捕らえられてしまいます。クロと一緒にリヒトたちを救おうとした真昼ですが、クロが突然、闇に飲まれて球体になってしまったのです。なぜ球体に閉じ込められたのか分からず、クロ自身どうすることもできません。
この現象は、自分が間違っていたと知りつつも、嘘をついて正当化しようとするクロ自身の心の闇が原因でした。その間違いを認めるのが怖い、それを真昼に知られるのも怖いという思いから、本人も知らず知らずのうちに、闇にこもってしまったのです。
これは、ロウレスの言う昔話が原因で、その原因を取り除かなければ、クロはいつまでたっても球体に閉じ込められたままです。しかし、クロの心の闇を開けるには、真昼がどんな過去でも受け止める覚悟が必要で、その覚悟がないままクロの内部に触れると、真昼も闇に飲み込まれてしまうといいます。
サーヴァンプは長く生きている分、心に何らかの闇を抱えていることが多いようですね。6巻では、リヒトとロウレスの救出作戦を進めながら、真昼もクロの内部に触れていきます。
6巻では、真昼がクロを受け止めるため、その「内部」へと入り、リヒトとロウレスの、救出作戦も進む様子が描かれています。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2014-07-26
クロの闇の部分は、とても深いところにありました。真昼は覚悟を決めて、クロの心の奥底まで入り込んでいきます。そこには7人のサーヴァンプが、「C3」に依頼を受けた内容によって、議論が繰り返されている風景が、映し出されていました。
C3からの依頼は、「ある人物を殺害せよ」というもの。その内容に関して、ヒューとジェジェ、スノウリリイは賛成派、ロウレスとザ・マザー、そしてワールドエンドは反対派で分かれています。そして、長男であるクロの返事によって、答えが決まるのです。
依頼には、「サーヴァンプを作った人物」は危険だから、始末しろということですが、彼らにとっては「親」です。そうそう簡単に、始末できるといった問題ではありません。
自分たちの生みの親、いわば家族。あの人がいなければ、自分たちは今ここにいない、というロウレスの反対も無視して、クロは「YES」の答えを出したのです。
しかも、クロは自分ひとりで、その人物を殺害してくるというのです。ひとりで……と言ったことが引っかかりますが、ロウレスのセリフが、その存在を匂わせています。
「でも…だってあの人は、兄さんの……っ」(『サーヴァンプ』6巻から引用)
このセリフから、クロが殺害した人物は、彼らの生みの親というだけでなく、クロにとって「大切な人」だったのかもしれません。クロとこの人物との関係は明かされていませんが、ロウレスの「昔話」と繋がっているようですね。しかし、それだけではありません。この事件は、ロウレスの過去の苦痛とも、関わっているのです。
クロはなぜこの一件だけで、ここまで深い闇に閉じこもってしまったのでしょうか。それは「迷いながら殺した」から。後悔と迷い、すべてが心の闇として、深いところに閉じ込めてしまったのです。
「誰かがやれといったから、俺は間違っていない」と言うクロに、真昼は真っ向から「間違っていた」と否定。でも、それが間違っていたかどうかは、人が決めるものではなく自分で決めること。自分自身で、「迷っているかも……」という思いがダメなだけで、それを認めることが大事だといいます。
その言葉にクロは、間違ってたとハッキリ認めたことで、闇から抜け出せたのです。そして、物語はいよいよ、リヒトとロウレス救出場面に変わります。
7巻では、ロウレスの過去の悲しいドラマ、そしてリヒトがロウレスにつけた名前が判明します。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2014-12-27
椿たちに捕らえられ、別々の牢に入れられたロウレスとリヒトですが、貶しあい潰し合いの真っ只中です。リヒトはロウレスの「何も努力しない」態度が気に入らず、それでいて何も望まず、何も目指さないロウレスに苛立っていたのです。
一方でロウレスは、「自分の何がわかるんだ」と、自分の主人とこれまでにないぶつかり合いとなっていました。7巻では、ロウレスの悲しい過去の物語と、リヒトが本来のロウレスを取り戻すストーリーが、展開されていきます。
ロウレスが、主人に飽きては殺害し、また他の主人を見つけるという行動をしていたのは、「この世のすべてが無意味」だと思ってしまったことからでした。
ずっと昔、ロウレスはオフィーリアという、一国の王女と契約していました。しかし、彼女は自分の国を守るため、隣国に嫁ぎ同盟を結んだのです。しかし、再び戦争が取りだたされ、オフィーリアはその見せしめに処刑されてしまいました。
オフィーリアの勇敢な行動が称えられ、銅像まで作られましたが、それもほんの一時のこと。ロウレスが目にしたのは、崩れたオフィーリアの像……。
平和のために犠牲になった愛する人の死は、すべてが無意味なものだったと思ってしまったのです。ロウレスは、自分が彼女を望まなかったから、愛する人に「好き」だといわなかったから、という思いが自分を閉じ込めていたのです。
そしてそれを引き出してくれたのは、主人であるリヒト。ふたりがぶつかり合って、本音を言い合ったことで、やっと「見えない鎖」でつながれたのです。実は、ロウレスにはリヒトがつけた名前がちゃんとありました。「ハイド」、それがロウレスの名前なのです。
ロウレスがハイドを名乗らなかったのは、またリヒトがハイドと呼ばなかったのは、それまでの二人は、本当の「サーヴァンプと主人」ではなかったからなのですね。
椿の本格的な攻撃に、苦戦を強いられるサーヴァンプとその主人たち。ここでは、C3の東京支部が誇る最強の戦闘班が登場し、椿を倒すという利害関係の一致により、共闘する運びが描かれています。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2015-07-27
C3東京支部が誇る、最強の戦闘班の中で、最も注目すべき人物は、狼谷吊戯(かみやつるぎ)です。お金が大好きで、特技は土下座。お金さえ詰まれれば「靴ペロ」でも何でもする、プライド皆無の人物です。
狼谷吊戯には、高い戦闘力がありますが、冷酷で非情な面があり、本人曰く「善人ではない」とのこと。また、真昼たちはC3と共闘するため、一旦東京支部に住まうことになります。そして、サブクラスが起こした事件を、解決に向かうC3に同行した真昼は、現場で狼谷の脅威を目にすることになります。
しかし、子供っぽく穢れのない純粋な笑顔、同僚の子供に優しく接するといった一面もあり、どれが本当の狼谷吊戯の顔なのか、真昼にもわからなくなってしまいます。
ある日、真昼の元に有栖院御国が訪れ、「狼谷吊戯には近づかないほうがいい」と忠告してきました。ただ、御国自体も、得体の知れない部分があり、信じていい人間なのかといったところがあります。また、C3東京支部を仕切っている、「塔間」という人物にも注意しろといいます。
ただ、有栖院御国は過去C3に所属していて、狼谷とも同僚だったようなので、御国自身も「同じ匂いがする」危険な人物かもしれません。
御国は一体、どちら側の人間なのでしょうか……。
9巻では、C3東京支部を舞台に物語が展開され、御国が危険だという「塔間」も姿を現します。また、狼谷吊戯の過去や苦悩、周りが思うような人物ではないなど、狼谷の本質にも迫っています。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2015-12-26
狼谷が「狂気」や「凶器」となっているのは、生い立ちや幼少時代のこと、また「塔間」との出会いに関わりがあるようです。精神状態が不安定なため、度々自分を見失うこともありますが、それが「塔間」の狙いでもあったようです。
どうやら、「塔間」は、人間兵器として狼谷を育てたようで、自分に固執するように、すべて自分の命令で動くように、狼谷を「躾けた」のかもしれません。
狼谷にとって「塔間」は、自分を救ってくれた恩人と思っているのか、捨てられること、興味を持ってもらえないことに、異常なほど恐怖を感じているようです。
また、中立機関であるはずのC3ですが、この辺りから本来あるべき姿とは反対の、裏の部分が見えてきます。それはすべて「塔間」の手の中にあって、C3の立場を利用した計画かもしれません。
C3では、各サーヴァンプと主人たちが、寝泊りしていますが、おかしなことに「ザ・マザー」は、サブクラスと一緒に捕らえられているのです。
これが何を意味しているかは不明ですが、主人を持っていないサーヴァンプだからか、それとも他の危険性を回避するためなのか……。または「塔間」の差し金かもしれません。
10巻では、「塔間」の野望が少しずつ明かされつつ、狼谷吊戯の過去に何が起こったのかも、ハッキリと描かれています。また、C3の仲間や真昼たちが、塔間との歪んだ関係から救い出そうと、懸命になるのです。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2016-07-27
C3東京支部内は、塔間の目論見によって大荒れの状態となり、一方では捕らえられたザ・マザーを解放しようと、サーヴァンプたちが暴れまくります。
狼谷吊戯は、仲間たちの思いをよそに、植えつけられた「塔間」への執着心によって、体と心がバラバラになり、制御が聞かない状態になってしまいました。
そんな狼谷に手を差し伸べたのが、憤怒の真祖ザ・マザーです。ザ・マザーは、長年連れ添った主人が、老衰で亡くなり、現在フリーの身でした。「生まれる前に戻りたい、もう嫌だ」と、心を壊しかけた狼谷を抱きしめ、
「あなたが私に…名前をつけてくれるなら」(『サーヴァンプ』10巻から引用)
名前をつけてくれというのは、契約を意味しており、ザ・マザーは、狼谷との契約を望んだようです。果たして、狼谷の返事は……。
しかし、このときすでに「塔間」の野望が、完成に近づいていたのです。
塔間「椿への伝言を頼む。濃度はおそらく十分だと」(『サーヴァンプ』10巻から引用)
塔間と椿は、裏で繋がっていて、お互いの野望のために手を組んでいたようです。彼らの狙いは一体何なのでしょうか。
狼谷は何かが変わるかもしれないと思い憤怒の手を取ろうとしましたが、塔間の幻影を見て手を下げてしまいます。
「できない…っ」(『サーヴァンプ』11巻から引用)
狼谷はやはり、塔間の呪縛から簡単に抜け出すことはできないようです。そしてそんな彼らを助けようとする真昼の背後に御国が現れ、不気味な笑みが浮かべていました。
御国は何かと掴みどころがなく、かつて彼の母が人格を失ったのと同じように、実は御国自身もジェジェの影響を強く受けているのかもしれません。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2017-12-27
一方で、狼谷たちの前に現れた本物の塔間が、憤怒に向けて何発もの銃弾を浴びせます。サーヴァンプは銃弾では死にませんが、重傷を負うことには変わりありません。さらに、そこにたどり着いた真昼にも銃弾が放たれました。
真昼を引きずりながら、憤怒のサブクラスとリヒト、ロウレス、そして名前不明のC3職員が集まる場所へと向かう塔間。クロとC3の月満弓影も合流し、対峙します。
名前不明のC3職員は、重傷を負った憤怒を救出し、力を貸してほしいと頼みます。すると憤怒は、状況を変えてくれるのは気持ちだと言い……。
憤怒「さあ ”名前”を教えて」
C3職員「…私の名前はイズナ イズナ・ノーベル あなたの名前は愛と豊穣を戦場の女神フレイア…!!」(『サーヴァンプ』11巻から引用)
ついに憤怒が新たな主人と巡り合うことができました。しかし主を持った憤怒は、これまでのような穏やかさや美しさの欠片も失くなっていたのです。憤怒が表したその正体とは……!?
そして塔間は一体何を企んでいるのでしょうか?御国の不気味な笑みを意味するものとは?名前が不明だったC3職員の名前が明かされ、憤怒と契約したことが、今後のストーリーにどんな影響を与えていくのでしょうか。
12巻最大の見所は、真昼が自分自身と向き合うことで、狼谷の心を救うシーンでしょう。彼は幻の狼谷に連れてこられた世界で、自分がどうしてこんなにも彼を助けたいと思うのかを考えます。
そして自分が戦う理由に答えがあるのだと気づくのでした。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2018-03-27
真昼は子供の頃に遡り、昔は帰るべき家、自分を見つけてくれる母親がいたから、どこまでも冒険できたのだと気づきます。そして大人になるとそんな安全圏がなくなり、冒険が怖くなっているのだと。
しかしかつて安心できる場所で「優しい手」を自分が差し伸べられたように、今度は自分が誰かのそんな存在になるべきだと考えるようになりました。
そしてそれは相手を思うようで、実は自分がひとりぼっちになるのが嫌だったからなのだと気づきます。
しかし一見自分本位のような行動ではあるものの、そんな生き方が確かに人を救ったのだという実感になり、自分が誇れる自分になる重要な行動なのだと気づくのです。
狼谷を救う理由は、これこそが自分の生き方だから。
そしてそのことを狼谷にも説明し、戦う理由を人に委ねず、自分で自分を認めるために戦うんだ、と彼を励ますのでした。
そして幻の狼谷の手をとり、安心できる世界を飛び出し、現実に帰るのでした……。
真昼は目を覚まし、幻の狼谷に導かれて現実の狼谷のもとへと向かいます……。
その頃、塔間と狼谷、クロと月満たちが合間見えた場所では、塔間がある恐ろしい考えを持っていることが判明します。それは狼谷をある儀式に利用することなのですが、それは今まで数多くの人々が試み、大規模な不審死を伴ったものの失敗に終わっていたもので……。
12巻ではこの他にもシャムロックと椿の出会い、その場に露木修平の兄・義正もいたこと、月満と狼谷の学生時代からの繋がりなども明かされます。彼らが今の彼らである理由、切ない背景などが明かされ、ますますキャラたちに感情移入してしまいます。それぞれの理由で戦う彼ら。果たしてその結末はどんなものなのでしょうか?13巻が待ちきれません!
いかがでしょうか?コミカルな出だしとはかけ離れ、徐々に激しいバトルへと繋がっていくのです。人間とサーヴァンプ、さらには吸血鬼までもが入り乱れる戦闘シーンはまさに迫力満点です。作者の田中ストライクが病気治療にため、休載が続いていましたが2017年6月から復帰し、すでに物語が進んでいます。読んだことがない方は、1度手にとってみてはいかがでしょうか?