引きこもり吸血鬼と、高校生の主人公を中心に描いた吸血鬼バトル漫画『SERVAMP-サーヴァンプ-』。2011年から連載を開始して以降人気を博し、2018年には劇場版が公開予定です。そんな本作の魅力を、キャラクターをとおしてネタバレ紹介していきましょう。
2011年から「月刊コミックジーン」で連載をしている、田中ストライクの漫画『SERVAMP-サーヴァンプ-』。 2016年にはアニメが放送され、2018年には劇場版が公開予定です。
真祖(サーヴァンプ)と呼ばれる7人の吸血鬼兄弟と、彼らと血の契約を交わした主人5人が中心となって、物語が進んでいきます。
サーヴァンプらはそれぞれ、通り名と主人(イブ)に付けられた2つの名前を持っています。主人から贈り物と名前を貰うことで契約が成立した後は、ある一定以上離れると互いに命が危ぶまれるので、常に行動をともにしなければなりません。
2017年11月現在既刊の10巻まででは、7人のサーヴァンプのうち、主人が判明しているのは5人。残りの2人のうち、1人は主人の所在が不明、もう1人は主人に先立たれたばかりで単独であることが判明しました。
ここでは、7人のサーヴァンプと主人、そして物語を進めていくうえで重要なキャラクターを、ネタバレを交えながら紹介していきます。
- 著者
- 田中 ストライク
- 出版日
- 2011-12-22
ある日、高校生の城田真昼(しろた まひる)は、道端で黒いネコを拾いました。自宅に連れ帰って首輪をつけ、クロと名づけます。
しかしその正体は、血の契約を交わして主人に従う「サーヴァンプ」。知らないうちにクロと契約してしまった真昼は、7人のサーヴァンプとその主人たちと関わりながら、存在しないはずの8番目のサーヴァンプ「椿」と、その一味(サブクラス)との戦いに巻き込まれていくのです。
「サーヴァンプ」の魅力を詳しく紹介した<漫画『サーヴァンプ』の魅力を全巻ネタバレ紹介!>もあわせてご覧ください。
本作でもっとも重要なキャラクターと言っていいのが、怠惰の第一真祖「沈黙する終焉(スリーピー・アッシュ)」です。真昼に拾われ、「クロ」という名前と鈴のついた首輪を贈られたことから、仮契約が成立しました。
真昼いわく「引きこもりニート吸血鬼」で、何をするにも「面倒くせー」や「向き合えねー」が口癖の、やる気が無いサーヴァンプです。
日光を浴びると黒猫の姿になりますが、本当の姿は巨大な獅子。ポテトチップとカップめんが大好物で、サーヴァンプ7人兄弟のなかでは1番強いと言われています。他のサーヴァンプの姿がヘビやコウモリ、ハリネズミや蝶というのに比べ、彼だけが巨大な獅子なので、大きさも強さも雲泥の差ですね。
クロの魅力は、何といってもキュートな黒猫の姿と、その怠惰さにあります。特に黒猫の姿で物を食べている姿は胸キュンものですね。さらに、ストーリーが進むごとに成長していく様子も見どころです。
彼はかつて、自分が犯したことについて、その選択が正しかったのか間違っていたのか、闇にとらわれていたことがあります。これが「サーヴァンプ」の物語の中心となる、吸血鬼vs吸血鬼のバトルに発展していくのです。
また彼ら7人は血の繋がりある兄弟ではなく、ある人物によってつくられた元人間であることが明らかになりました。
6巻では、7人のもとに、ある人物を殺害しろという命令がC3(中立機関)から届きます。彼らは会議をして話し合うのですが、最後に決断をし、手を下したのがクロでした。
彼は迷いながら殺害をしたため、その事実が彼のなかに闇として残ります。そこから救い出してくれたのが、真昼だったのです。
ここで注目したいのは、クロたちサーヴァンプとC3との関係性。本来C3は、吸血鬼と人間との中立機関なのですが、悪さをする吸血鬼たちを処分することも目的にしているので、サーヴァンプにとってはどちらかというと敵の類に入ります。それなのに、かつては彼らがC3からの命令に従っていたというのが気になるところです。
また、命令によってクロが殺害した謎の人物とクロの間には、深い関係があることがロウレスという真祖の口から語られています。
「だってあのひとは兄さんの……っ」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』6巻から引用)
2人の関係はまだ明かされていませんが、ロウレスのセリフによると、元人間だった時のクロの親、もしくは兄弟だったのではないかと考えられますね。
城田真昼は本作の主人公。クロと契約した主人です。手先が器用で、口癖は「シンプルに」。とにかくシンプルが大好きで面倒なことは嫌いです。ただ、クロのように怠惰な面倒くさがりではありません。小さい頃に母親が事故で亡くなり、叔父に引き取られて育てられました。
人がやりたくないことを自ら引き受け、やるといったことは必ずやる、助けるといったら必ず助けるというような頑固な一面があり、クロを含めその頑固さによって救われた者も多いです。
親友の桜哉(さくや)の正体が吸血鬼だと分かった後も、また自分の中にある桜哉の記憶が彼によって植え込まれたものだと分かった後も、決して彼との友情を切ろうとしませんでした。それどころか、命を狙われたことがあるのにも関わらず桜哉の苦しみに自ら寄り添い、友達になった期間は関係ないと見放しませんでした。
「今のお前には…椿だけじゃない 俺も…みんなもいるだろ!!一人じゃねぇよ!!」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』2巻から引用)
桜哉のためにも、自分とクロが強くなろうと決めたシーンのセリフです。真昼の芯の強さや思いやり、優しいながらにも、しっかりした思いが感じられますね。
また、クロの闇と向き合い、クロのすべてを受け入れることで、本来あるべき「サーヴァンプと主人」との関係を築いていきます。
彼の魅力は、クロとは違う面倒くさがり屋というところ。たとえば学校で、係決めがなかなか進まず、時間だけが過ぎてしまう時がありますよね。その時間がもったいないので、面倒なことになるならば自分がやる、というポジティブな面倒くさがり屋なんです。
そのため、動くのすら面倒だという怠惰なクロのことも、解決をしないと余計面倒なことになると無理矢理引っ張り出していくのです。
周りに助けられながらもみんなを引っ張っていく役割を担い、真昼自身も成長していきます。
本来、サーヴァンプは7人兄弟だったのですが、8番目が現れたことで戦いに発展していきました。
その兄弟7人と世界を揺るがす存在となったのが、「招かざる8番目(フーイズカミング)」が通り名の椿。基本的に吸血鬼は日光に当たると姿が変わってしまいますが、彼は姿を変えずにいられる異質な人物です。
大笑いした後の「面白くない」が口癖で、物腰は柔らかですが残酷非情な言葉を平気で語ります。本人いわくサーヴァンプの末っ子で、クロを兄さんと呼びますが、兄弟全員が椿の存在を知りませんでした。
自分が吸血鬼に変えた「下位吸血鬼(サブクラス)」たちを家族と呼び、大切にしていることから、「家族」には優しい一面があります。
黒髪に赤い目、和装姿が多く、いなり寿司が大好きです。クロに憎みを抱いていますが、それはかつてクロが殺害した人物と椿が親子のような関係にあったためと推測されます。
彼がサブクラスをどうやって増やしていったのかは明かされていませんが、病んでる者を救うといった方法で自分のサブクラスにしている可能性があるのです。
2巻では桜哉との出会い、7巻ではサブクラスのヒガンの心の中が描かれていますが、2人とも生前は病んでいたと思われる節があるました。椿は自分の目的を果たすために、このような人物を狙っていたのかもしれません。
椿の目的というのは、彼が「先生」と呼ぶ人間をクロが殺してしまったことに深く関わっていて、「先生」亡き後、復讐としてその人物がしようとしていた「後片付け」をしようとしているのです。
具体的なことはまだまだ不明ですが、
「僕は手段 僕は方法 サーヴァンプを”殺害”する唯一の方法」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』8巻から引用)
「人は理解できないものを拒否する 拒否することでしか自分を守れない 価値観の揺らぎは世界の崩壊だ さあ 世界崩壊へのカウントダウンだ」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』8巻から引用)
という言葉から、まずはサーヴァンプの抹殺、そしてすべての人間をも消滅させようとしていることが推測されます。
物語の種は、すべてクロの殺人にあるのかもしれません。
物語のはじめ、綿貫桜哉(わたぬき さくや)は真昼の親友という設定でした。しかし実際は椿のサブクラスで、真昼とはほんの数週間だけの付き合いだったのです。桜哉が真昼に「ずっと一緒にいる幼馴染」という偽の記憶を植えつけていたのでした。
嘘つきの町で生まれ育った桜哉は、幼い頃、両親から自殺を強要された過去を持ちます。彼の姉が「保険金目的の自殺」の被害者となり、桜哉自身もピンチに陥ったとき、彼を助けてくれたのが椿でした。彼の力によって吸血鬼として復活し、サブクラスとなったのです。
姉の「自殺」の際、事実を知っているはずのマンションの住民たちが関わりたくないからと嘘をついたことや、彼自身も嘘をつかされたことなどから、桜哉は嘘にものすごく敏感な人間になってしまいました。
そして彼は、記憶が偽者でも親友には変わりないという真昼の言葉と、椿のサブクラスであるという事実の狭間で、悩み苦しむことになります。
ある日真昼が、桜哉に心配かけないようについた善意の嘘で、真昼と桜哉の関係は崩れていってしまうのです。クロと真昼、桜哉が対峙した場面でのこと。真昼を殺すと桜哉が挑発を続けるうちに、クロが暴走して真昼をも闇に飲み込もうとしました。
そのとき桜哉は真昼に手を差し伸べて、こう言ったのです。
「真昼!手!!何だよこれ…早くクロにオレだけを殺せって言え!!オレはお前に殺してほしくて嘘までついたのに…」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』2巻から引用)
桜哉があれほど嫌っていた嘘を自らついたのは、心から真昼を友達だと思っていた証でした。だからこそ自分が真昼を傷つけないうちに、自分を殺してほしいと思ったのでしょう。
桜哉自身、本当は優しくて友達思いのいいやつ。ただ育った環境が悪かっただけなのです。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2012-12-21
スノウリリィは有栖院御園(ありすいん みその)と契約している色欲のサーヴァンプで、通り名は「全ては愛に収束する(オールオブラブ)」。日光に当たると蝶の姿になり、古くから有栖院家に仕えています。
彼女が御園のサーヴァンプでいるのには、かつて御園がまだ幼少の頃、有栖院家で起こった事件を目撃してしまった御園の記憶を消し、一切触れないように守るのが目的です。御園は父と愛人の間にできた子供でした。
その事実を御園が知ったら、「色欲」を拒絶するのではないだろうか、「色欲」を司る自分のことも拒絶してしまうのではないだろうか、それがとても怖かったのです。
いつもは穏やかで「色欲」な雰囲気に包まれたスノウリリィですが、4巻では御園の記憶を消していたことがバレて近付くなと拒絶され、闇に飲みこまれはじめてしまいました。
色欲と愛は絶対に切り離せないもの、そのため色欲を拒絶することは、愛をも失ってしまうことを意味しています。御園が色欲のスノウリリィを拒絶したことで、愛が闇に変わってしまったのです。
また、スノウリリィは、捨てられた子供や、虐待・育児放棄された子供、そして死に掛けた子供を見つけては連れてきてサブクラスにしていました。そしてそれはまるで自分の罪を償うかのようで、どんな命でも愛される権利があるという思いゆえの行動。御園の記憶を消していたこと、御園に嘘をついていたことに対する償いでもあるのかもしれません。
御園は有栖院家の次男で、有栖院御国(ありすいん みくに)とは異母兄弟になります。体が弱く、幼少のときからずっと守られて育ちました。夜は9時になると眠くなるお子ちゃま体質ですが、上から目線のオレ様的な性格をしています。
真昼とクロが、桜哉や椿のサブクラスであるベルキアと対峙してピンチに陥った時は、真昼を助けに現れました。なぜ、危険を冒してまで助けようとしたのか、それは真昼が御園に言った言葉があったからでした。
「城田が僕を 友達だと言ったからだ」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』2巻から引用)
体も弱く、兄の御国も自分を捨てて出て行ってしまったことから、自分は誰にも愛されていないと思い込んでいた御園。友人と呼べるのはスノウリリィだけだったので、真昼からかけられた言葉は、今まで守られっぱなしだった御園自身を強くし、行動力をも与えてくれたのです。
さらに4巻では、あることをきっかけに本当は自分はみんなに愛されていたのだということを知ります。それからの彼は、誰かの言いなりではなく、自分の意志をとおすようになり、人として大きな成長を遂げました。
ワールドエンドは暴食の真祖で、通り名は「世界を食い尽くせ」。契約している主人がいるのかいないのか、日光に当たってどんな姿になるのかはどちらも不明なままです。
がさつな性格をしていますが、女子供と小動物には手出しできない優しい一面も。1巻でのサーヴァンプの定例会で、数百年会ってなかったクロと再会したとき、ガミガミ文句を言うもののクロが黒猫の姿に変身すると、可愛過ぎて手が出せませんでした。
ファミレスに行く場面では、「お金が無いから、誰が払うのか決まらないと注文ができない」と苛立つ姿を見せます。暴食だけにお腹がすくとイライラするようですね。ワールドエンドに関しての詳細は明かされておらず、どのような設定になっているのか今後の情報に期待しましょう。
4番目の憤怒の真祖は「母なるもの(ザ・マザー)」が通り名です。怒っているように見えますが、本人いわくクールなだけ。常に沈着冷静で、契約した主人とは長年連れ添っていましたが、主人の寿命が尽きたため現在はいません。また、日光に当たった時の姿も不明です。
「母なるもの」という名のとおり、心が病んでいる子供を包み込むかのように育てる描写が見られます。10巻では、生きていることが辛くなったC3の吊戯が死なせてほしいと言った時、しっかりと彼を抱きしめるまさに母そのもののシーンが描かれました。
ひとりじゃ歩けないという吊戯に「貴方が名前をつけてくれるなら2人が助かることができる」と言い、吊戯との契約を匂わせています。
「主人はあくまでも自分の子供。そして彼らを側でずっと見守っていくのが母なる務めだと思う」とも言い残した彼女は、憤怒とは思えないほどの優しさを持ち合わせているのです。
3番目の嫉妬の真祖ジェジェは、有栖院御国のサーヴァンプで、通り名は「疑わしきは罰せよ(ダウトダウト)」。紙袋のようなものを複数重ねて被っているので、その下の顔は不明で、主人である御国もジェジェの顔を見せようとはしません。
かつて有栖院御園の母を殺害したのがジェジェであり、「嫉妬」というだけあってちょっと危険な香りがするサーヴァンプです。あまりにも危険すぎるため、御国は有栖院家と御園を守るために、ジェジェと契約をして家を出ました。
日光に当たるとヘビの姿になり、血を飲ませるという条件つきで御国の命令に従いますが、いつも騙されて怒っています。またかつては御国の母がジェジェと契約していましたが、「嫉妬」によって殺されてしまった過去が4巻で描かれていました。
契約した主人が嫉妬に飲み込まれてしまうという危険なところがあるので、現主人である御国でないと、扱うのは難しいサーヴァンプです。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2015-07-27
有栖院御国は有栖院家の長男で、御園とは異母兄弟です。かつて自分の母が、嫉妬のあまり御園の母を殺害したうえに御園まで殺そうとしたので、彼を守るために自らの手で母を手に掛けました。
有栖院家にジェジェがいると危険ということと、御園の記憶から消すために、有栖院家の長男という肩書きを捨ててジェジェを連れて家を出たのです。御国は、異母兄弟とはいえ御園のことを大変可愛がっており、すべては御園のための行動でした。
また御国は、C3の吊戯とは同期であったことが8巻で語られています。元C3職員でありながら現在はサーヴァンプと契約する主人ということにも、深い意味がありそうです。
明るくおちゃめなキャラではありますが、何を考えているか分からない一面もあるので、彼の心の奥底には闇が隠されているのかもしれません。
傲慢の真祖ヒュー・ザ・ダーク・アルジャーノンⅢ世は、「古き良き時代の忘れ者(オールドチャイルド)」が通り名です。千駄ヶ谷鉄(せんだがや てつ)と契約したサーヴァンプで、兄弟の上から2番目にあたります。
日光に当たるとコウモリの姿になり、古き良き時代を司るだけあって、言葉使いも「我輩」や「~じゃ」といったもの。また普段は棺の中に入っていて、まるで子供のように小さいのも特徴です。
「いいにおいがすると思ったら 食事どきであったか!話は後じゃ!冷める前に食すのが礼儀じゃのう 鉄!」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』3巻から引用)
どんな大事な話をしていても食事優先で、喜び方はまさに子供。それがヒューの可愛らしい一面であり、言葉使いと容姿のギャップが魅力です。
また吸血鬼たるものニンニクは嫌い、食事には赤ワイン、イスが低くて食べにくいなど、ワガママな一面を持ちますが、真昼いわく「吸血鬼っぽくて安心する」とのこと。名前はフルネームだと長いため、省略されヒューと呼ばれています。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2014-12-27
千駄ヶ谷鉄は、温泉宿の跡継ぎ息子で、ヒューと契約している主人です。体が大きく、落ち着いた雰囲気なため、真昼は高校生の自分より年が上だと思っていました。しかしよくよく聞いてみると、なんと中学2年生。
年齢の割に考え方もしっかりしていますが、あくまでも温泉宿の跡取りとしての素質だけで、他のことに関しては、ゆるいキャラクターです。
「ヒューはいつもよいこと言う」が口癖で、2人の相性も良好。何事にも直球でぶつかるタイプで、大きなものでも軽々投げ飛ばす怪力が自慢です。
- 著者
- 田中 ストライク
- 出版日
- 2013-12-27
強欲の真祖ハイドは、「唯一無二(ロウレス)」が通り名、兄弟の上から5番目です。日光に当たると可愛いハリネズミの姿になり、ピアニストのリヒトと契約しているサーヴァンプ。当初は主人を主人とも思わないような素振りで、ハイドという名を貰ったのにも関わらず、通り名のロウレスを名乗るチャラ男のような性格が魅力です。
かつて、クロが謎の人物を殺害した件を許すことができず、追い詰めたことがありました。しかしそれは、自身の過去が原因となっていたのです。ずっと昔、ハイドがある国の姫と契約していた頃は、主人のことを心配し、従順に仕えるサーヴァンプだったことが、7巻で描かれています。
その姫は民のことや国のことを1番に考えて政略結婚に応じましたが、婚姻先の国で裏切られ処刑されてしまったのです。この一件でハイドは「何をやっても無意味」だと感じてしまいました。
「こんなに虚しいのは君だけじゃない この世のすべて総じて無意味
すべてが無価値のくだらない舞台」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』7巻から引用)
そこに謎の人物を殺害しろという、C3からの命令が下ったのです。自分たちは暗殺者じゃないと反論しましたが、結局クロが手を下したのが引き金となって、性格が変貌してしまいました。それからのハイドは、主人を持つたび、飽きると主人を殺して乗り換えることをくり返すやけくそ状態だったのです。
何も本気で取り組まない、そしてちゃらんぽらんで適当に生きてきたハイドは、リヒトと出会ってからも飽きたら殺せばいいという考えていましたが、7巻でその呪縛を解いてもらっています。深い愛情を持っている本来のハイドに戻りました。
- 著者
- 田中ストライク
- 出版日
- 2014-07-26
リヒト・ジキルランド・轟は、ハイドの主人にして天才ピアニスト。髪の一部分が白くなっているのは、ある過去の出来事が原因です。
自分で自分のことを「天使」とよび、決めポーズとともに「だって俺は天使だから」が定番のセリフ。当初ハイドとは仲が悪く「クソネズミ」と呼んで事あるごとに全力で蹴り上げていました。
性格はいつも仏頂面を決め込んでいて短気で暴力的な一方、小動物など弱いものには優しい性格も持ち合わせています。
芯の強さは人一倍で、過去を引きずって地に落ちている者を遠慮なく叩き潰すほどの強い精神力を持っています。過去の呪縛に囚われているハイドを救ったのも、リヒトの芯の強さからでした。
「何も望まず 何も目指さず 何も努力しないまま ただそこで突っ立ってる てめえに『自分』なんて語る権利はねぇんだよ!!」(『SERVAMP-サーヴァンプ-』7巻から引用)
ただ、何もしないで天才ピアニストになれたわけではない。リヒトの芯の強さの裏側に、凄まじいほどの努力があったという現れですね。
中立機関C3の開発班に所属する22歳の青年。当初は真昼の学校に、高校生として潜入していました。御国のことは先輩と呼んではいるものの、嫌いだとハッキリ言ってしまう性格です。モットーは「備えあれば、多少憂いあれど問題なし」。
かつては父親もC3に所属していましたが、吸血鬼に殺害されたため、吸血鬼に強い恨みを持っています。椿を倒すために、真昼をC3に取り込もうとした際、彼の恨みが強く現れていました。
「皆で椿とその下位吸血鬼をすべて壊す これ以外に選択肢はありませんよ」
(『SERVAMP-サーヴァンプ-』3巻から引用)
C3の理念は共存ですが、露木は共存すら望んでいるとは思えない言葉です。はたして、本当に父親を殺害された恨みだけなのか、その真相が気になります。
有栖院家は、吸血鬼と人間の共存が認められている「完全独立国家」で、この王として君臨しているのが御国と御園の父親である御門(みかど)です。
「”何者も我々に干渉しない”その上で我々は共存を可能にしてきた」
(『SERVAMP-サーヴァンプ-』4巻から引用)
もはやC3どころか政府の関与すらない、まったく別世界の有栖院家。御門は、御園を子供のままだと思っており、執着している素振りもあります。これはかつて御国が御園の母を殺害したことにも関係しており、スノウリリィ同様ただただ御園を守りたいという一心からのようです。
御国を心底可愛がっていることは、4巻での「御国の話をし始めたら止まらなくなる」という発言で明らかになっています。
まだまだ裏がありそうな有栖院家ですが、かつて御国がC3に所属していたことから、C3と有栖院家は深く関係しているようですね。
いかがでしたか?それぞれが考察しがいのあるキャラばかりなので、そういった一面も楽しみながら読んでくださいね。