大人から子供まで、不思議な魅力で人気のある漫画『ぼのぼの』。ここでは、作品の魅力を、登場キャラクターの名言とともにお伝えしていきます。
1988年に講談社漫画賞を受賞し、その後、アニメ化もされた本作。年代的には古い漫画ですが、今でも大人から子供まで根強い人気を誇る作品です。
物語は、ラッコの主人公ぼのぼのや、森の友達シマリスくん、アライグマくんなど、様々なキャラクターが登場する四コマ漫画。発表当初より、哲学的であるとして評価されるその中身は、のんびりとした動物たちが、どうでもいいと思えることに悩んでいるなどする、一風変わった漫画です。
しかし、読み進めていくうちに、登場キャラクター達の言葉や生き方、疑問、そして森ならではのゆっくりとした生活に、魅了されていきます。
現代人にとって、本作は癒しと、はっとする気づきを与えてくれる良書でもあると言えるでしょう。
長く人気を誇るだけあって、大人にも響く深い内容ですが、もちろん、そもそも子供向けの四コマなので、お子さんにもオススメ。簡単な会話の応酬で展開する物語や、クスっと笑える動物たちのやりとりは、子どもこそ楽しめるポイントが多いです。
簡単で読みやすい四コマ漫画なのに、哲学的で癒しも与えてくれる。そんな、子供から大人まで楽しめるストーリーが本作の魅力だと言えるでしょう。
- 著者
- いがらし みきお
- 出版日
出典:『ぼのぼの』10巻
森の中のお話なのに、主人公のぼのぼのは海で暮らしているはずのラッコ。陸で二足歩行できる姿は、もはやラッコには見えませんが、お父さんと二人暮らしのラッコです。性格は名前の通り、かなりぼーっとした性格で、初期の頃は、怒ったり、顔をしかめたりすることもできないほどの子でした。物語の哲学的な部分を多く担っている登場人物でもあり、彼の想像力や浮かび上がる疑問の数々には、読者もはっとさせられることが多々あるでしょう。
ぼーっとしているけれども、記憶力などは抜群。また、妄想で生み出した空想上の動物に怯えるような臆病な性格もありますが、決して暗い方向へと進んでいくような思考の持ち主ではありません。一生懸命考えて、彼なりの答えや面白いことを見つけていく姿は、いじらしくもあり、たくましさも感じさせる魅力的で可愛らしい主人公です。
そんな彼は、物語の随所で名言をつぶやいていますが、ここでは、「謎の物体」について調べていたシマリスくんに請われて、アライグマくんと3人で一緒に調査することになったときの台詞をご紹介します。
彼らが「謎の物体」についてヒントを探しながら歩いているとき、ぼのぼのは探し物をするときは道を間違えちゃいけない、と思うのです。その理由は、道をひとつでも間違えてしまうと、その探し物を見つけることができなくなってしまうから。結構シビアなことを考えているものですが、その次に、こう言うのです。
「でもまちがっても大丈夫。別なものが見つかるから」(『ぼのぼの』7巻から引用)
何気ないシーンでの台詞ですが、探し物に限らず、人生の多くの場面に当てはまるような言葉ではないでしょうか。道を一生懸命歩いて探し物をしているにもかかわらず、いつの間にか間違った場所に来ていた……そんなことは誰しも経験があるはず。それでも嘆くことなく、「別なものが見つかるから」大丈夫だとポジティブに捉えることを彼は諭しているのです。
道を間違えたとき、こうして思えることができたら、こうして声をかけてくれる人がいたら、気が楽になることもきっとあるはず。彼のどこか前向きな性格があらわれた名言ではないでしょうか。
出典:『ぼのぼの』3巻
アライグマくんによくいじめられていたのがこのシマリスくん。ぼのぼのと出会った頃は、よく「いぢめる?」と聞いていたほど、弱々しい印象のあるキャラクターでした。「〜でぃす」という変わった喋り方をするシマリスくんは、森の動物の中でもとっても小柄。
いじめられっ子の典型的イメージでしたが、ぼのぼのやアライグマくんと行動を共にするようになってから、徐々に性格が強くなっていき、親や友人にもはっきりと物を言える子になっていきます。少しずつアライグマくんの言動に似てきたのもなんだか微笑ましいキャラクターです。
そんなシマリスくんですが、実は病気の両親を介抱したり、親戚のトラブルによく巻き込まれていたりと、子どもの割に、なかなか苦労の耐えない生活を送っています。そのため、主人公に愚痴をこぼすこともしばしば。両親の介護をするときの気持ちなどは、その心情に共感できてしまう大人も少なくないはず。
シマリスくんの一番の魅力は、友達思いのところではないでしょうか。弱々しいキャラクターから一変して、しっかりと物を言えるようになってからは、友達をかばうなどすることも出てきました。
例えば、主人公とアライグマくんと3人で野宿をしたとき、全く野宿の仕方がわからないというぼのぼのに、アライグマくんがなんでわからないのか、と怒るシーンがあります。そのときシマリスくんは、
「わからないんじゃないのよ。わかるまで時間がかかるのっ」(『ぼのぼの』10巻から引用)
とかばうのです。昔はいじめられっ子だったシマリスくんが、友達をかばうためにはっきりと物を言う姿も素敵ですが、わからないことを前向きにとらえて、悪いことじゃないのだというようなこの台詞はまさに名言だと思います。わからなくて落ち込んでいる友達がいたら、かけてあげたい名言ですね。
出典:『ぼのぼの』2巻
主人公の友達で、森一番のいじめっ子で乱暴な性格。そして、初期の頃はシマリスくんをいじめていました。森のいじめっ子たちのリーダー的存在で、誰かをどついていたり、怒っていたりする場面がとっても多いキャラクターです。
アニメや漫画の初期では、不快なところも多いキャラクターでしたが、実は結構思いやりのある一面も見せています。まるでドラえもんに登場するジャイアンのような性格で、作者も「実は一番思いやりがあるかも」と言うほど。
そんなアライグマくんは、物事を簡単にとらえてはっきりと物を言う性格。だからこそ、彼の台詞は、物事を深く考えすぎることのあるぼのぼのとはまた違って、はっとさせられるものであることが多いのです。最初は友達になれるのかとハラハラしましたが、彼の性格は、ちょうどバランスが取れているように見えるからまた面白いものです。
ぼのぼのとは正反対の性格のアライグマくん。そんな彼の台詞のなかで、はっとさせられる名言がこちら。
「後でこまるんだったら、後でこまればいいじゃねえか」(『ぼのぼの』1巻から引用)
いつも食べる貝をそなえて持っているぼのぼのが、今日の分の貝を全て食べてしまって、後で困るかも、と不安になっている時に、アライグマくんが言った台詞です。一見、乱暴で思いやりのないような台詞にも感じられますが、考えすぎてグルグルと同じところで悩んでしまうぼのぼのには、とってもぴったりな台詞でもあります。
先のことを考えすぎて、悩んで立ち止まってしまったとき、このアライグマくんの台詞を思い出したいものです。そうすれば、きっと勇気を出して一歩進めるような気がしませんか?まあ、この後、アライグマくんはぼのぼのをどついてしまうのですが……。
出典:『ぼのぼの』5巻
主人公の知り合いで、よくお父さんと一緒に登場することが多いクズリくん。いつも笑っているような顔をしていて、にこっと閉じられた目が印象的。まだ幼いからか、お父さんは二足歩行ですが、クズリくんは四足歩行です。
まず、彼が最も読者に衝撃を与えるのは、ところかまわず何処でもいつでもウンチをするところでしょう。スナドリネコさんの家の前でよくウンチをするのはどういう心境か、全くわかりません。
初期の頃は、頻繁にアライグマくんから「楽しいから」という理由だけでいじめられていました。しかし、実のところ弱々しいだけのキャラクターではなく、怒ってアライグマくんに鼻を突き出すなど、結構強い一面も持っているのです。そんな彼が、お父さんとアライグマくんのお父さんがケンカをする様子を見て言ったこの台詞は、秀逸です。
「オトナってもしかしたら、思ったとおりになったことと、思ったとおりにならなかったことしかないのかな」(『ぼのぼの』14巻から引用)
大人になった今だからこそ、はっとさせられる台詞です。この台詞を読んで初めて、いつの間にか自分が物事をそんな風にしか捉えられていなかったことにも気づかされるでしょう。そして、それ以外のことってなんだろう、クズリくんにとっては他にはどんなことがあるんだろう、と考えさせられるかもしれません。彼に見えているものがわかれば、きっとつまらないことで焦るようなこともなくなるのかもしれません。
- 著者
- いがらし みきお
- 出版日
- 2009-07-27
ぼのぼのが最も信頼する大人であり、子供たちからの信頼も厚いのがこのスナドリネコさん。森の外からやってきた謎多き人物で、怠惰を好む風変わりなキャラクターです。
物知りで、よくぼのぼのからいろんな質問をされるため、なかなか惰眠をむさぼることもできないのですが、どこか悪気はないのに人を馬鹿にしたような態度をとることがあるため、アライグマくんのお父さんやクズリくんのお父さんとは犬猿の仲でもあります。
スナドリネコさんは、いつも冷静でどこか孤高を感じさせる大人。ぼのぼのに、ひとりでいることって寂しいことじゃない、と彼は言います。ひとりでいることは、すっきりする時もあると諭すのです。
「頭にくることって他人といっしょにいるから起きることなんだよ」(『ぼのぼの』28巻から引用)
花鳥風月を好むスナドリネコさんらしい名言です。「おひとりさま」や「ぼっち」という言葉が流行って、ひとりが「寂しいもの」と捉えられることが多い現代。ひとりは嫌だと色んな人と遊んだり、「リア充」と言われるような満喫した忙しい生活を送ったりして、心がくたびれたとき、スナドリネコさんの言葉を思い出したいものです。
一人でいるからこそ、すっきりできる。一人でいることは決して寂しいだけじゃない。そんなことを教えてくれる名言ではないでしょうか。
- 著者
- いがらし みきお
- 出版日
- 1993-05-01
森を守るヒグマの大将。絵では月の輪が描かれていますが、れっきとしたヒグマの彼は、森に突然やってきたスナドリネコさんと対決するなど、大将らしく森を守るためには暴力も辞さない大人です。作中では、スナドリネコさんに負けた後、森で一番強い動物が住む家を彼に明け渡し、奥さんとも離婚して、山にひとりで引っ越すなど、どこか哀愁漂う略歴の持ち主。
ですが、スナドリネコさんとは決して仲が悪いわけではなく、「ひとりでいる意味がなくなった」からと山から森に戻ってきてからは、一緒に釣りをするなど、良好な関係が描かれています。そんなヒグマの大将の名言はこちら。
「かっこいい悪いをヌキにして生きられるか?」(『ぼのぼの』8巻から引用)
スナドリネコさんとの対決の帰り、クズリくんのお父さんに、スナドリネコさんには勝てない、と言われてしまったヒグマの大将の言葉です。かっこよくなければならないというルールに縛られている大将は、そんなルールなんて一切ないスナドリネコさんには勝てないと言われてしまいます。
しかし、大将はこう返した後、
「オイラたちはみんなバカヤローだからな」(『ぼのぼの』8巻から引用)
とひとりごちるのです。この台詞が名言なのは、勝ち負けではなく、己の美徳に従うことしかできない純朴さがあらわれているからではないでしょうか。大将の憎めない性格が滲み出た台詞です。
出典:『ぼのぼの』24巻
主人公の友達で、他の動物たちとは違い、森ではなく砂漠に住むフェネックギツネくん。作中でも、ずばぬけて明るい性格で、いつも楽しいことを求めて暮らしています。そんな底なしの陽気な性格が災いしてか、アライグマくんに怒られて殴られることもしばしば。
しかし、殴られっぱなしではなく、蹴り返したり応戦したりするところを見ると、気も強そうなキャラクターです。フェネックギツネくんの底なしの陽気さは、登場するたびにクスリと笑ってしまうほど。その陽気な彼の台詞は、意外にも奥が深いことも。
「期待を裏切られてもあ〜あってなっておもしろいわけじゃない。とするとさぁ、世の中つまらないことなんてなくなるんじゃないかな」(『ぼのぼの』11巻から引用)
笑いながらこのような台詞を言えるフェネックギツネくんはもはや、悟りの境地にいるのではないかと思えるくらいです。裏切られても「面白い」なんて思える人なかなかいないでしょう。だからこそ、彼の台詞は名言たらしめられるのだと思います。
ちなみに彼はいつでも何をみても笑えるそう。笑うことで、楽しみを呼ぶことができると考えているのです。そんな考え方も納得させられますよね。ちなみに、面白くないと評判のぼのぼのの冗談には本気で笑っているそうです。
- 著者
- いがらし みきお
- 出版日
ビーバーさんの子供で、初登場時はあかちゃんだったボーズくん。成長して、ぼのぼのと同じくらいに大きくなっていきます。小さい頃はよくアライグマくんにいじめられて、シマリスくんに守られていましたが、大きくなるにつれて、体だけではなく心も強くなっていって、いじめられても泣かなくなっていきます。
ボーズくんの魅力はその優しさと、深い思考力。アライグマくんがケンカをしていれば止めに入るなど、ケンカを嫌うような優しい性格の持ち主です。作中の主要登場人物のなかでは、ひときわ小さく幼い子供のボーズくん。そんな彼が、初めて自分より小さな赤ちゃんを見たときに言った次の台詞。
「ボクが一番子供だった頃、ボクは一番長く生きられるんだと思ってたんだ」(『ぼのぼの』6巻から引用)
誰もが一度は経験する感情。子供の頃は自分が死ぬことなんて一切考えていなかったでしょう。そして、自分が一番小さいことに少し安心していたところもあるかもしれません。けれども、生きていくうちにそれは違っていて、人はみんな死んでいくし、自分もまた、いつか死んでいくのです。誰かを残して。
そうしたことを知っていって、大人になる頃にはその悲しみや怖さすらも押し込めて乗り越えて生きていくのです。それこそ、ボーズくんがこのとき感じた感情なんて皆忘れてしまいながら……。そんな忘れてしまった、もしくは閉じ込めてしまった怖さや不安、悲しみを、どこまでも強烈に付いてくる、そんな名言ではないでしょうか。
アライグマくんの友達で、どこかつかみどころのないキャラのアナグマくん。どこか人を食ったような態度をとったり、アライグマくんに怒られてもしれっとしていたりして、村の間でも「ちょっとヘン」な仲間と認識されているキャラクターです。
そんなアナグマくんは、しれっと時々すごいことを言ってアライグマくんをうならせます。森の中でも顔の広いアライグマくんが、なぜか時々やってくる寂しさについて考えて、なぜ寂しいんだろうか、とよくひとりで過ごしているアナグマくんに聞いたとき、しれっと彼は言います。
「だってみんなひとりだろ」(『ぼのぼの』24巻から引用)
一瞬、アライグマくんを凍らせるような発言ですが、本質をついた名言。アライグマくんも、そうかなるほど、と納得します。
人は生まれるときも死ぬときもひとりだ、という言葉がありますが、本当にその通りで、どんなに大勢の人といても、人はひとり。そんな孤独に気づいたとき、ふと強烈な寂しさが押し寄せるのです。それをしれっと受け止めているアナグマくんの一面が垣間見える台詞ですね。
この後、アライグマくんが寂しさの所以を、誰といても自分はひとりなんだって気づくときがあるからだ、と教えてもらったことをぼのぼのとシマリスくんに話しますが、2人はよく理解できなくて笑って聞き、それを見てアライグマくんが「笑うな」と怒るシーンは、本作らしくて和みます。
出典:『ぼのぼの』2巻
いつも誰かを笑わせようと変な顔をしてみせる、そんなキャラクターがヤマビーバーくんです。アライグマくんやアナグマくんの友達で、よく変な顔をしてはアライグマくんに呆れられています。変顔して笑わせようと奮闘するものの、あまり他の人は笑ってくれないところがまた不憫で可愛らしいのです。
実は彼のモデルは作者の奥さんで、いつも「この顔どう?」と変顔を見せてくるのが面白かったから、とのこと。そんなエピソードも踏まえて、なんだか微笑ましく見えるのです。そんなヤマビーバーくんの名言といえば、次のセリフで間違いないでしょう。
「この顔どうかなこの顔」(『ぼのぼの』13巻から引用)
登場回数もそう主要人物ほど多くない彼ですが、その彼の変顔の数々を楽しみに見るのもまたオススメです。そんな彼が、ひとりでいるときには真面目な顔をしているのも、またギャップがあって魅力的。その姿は寂しそうにも見えて、アライグマくんが泣いてしまうほどです。
いかがでしたか?漫画『ぼのぼの』は、ほっとしたりクスリと笑えたりする四コマ漫画ですが、たまに核心をつかれたような、鋭い名言が飛び出てくる漫画でもあります。二度アニメ化もされているので、漫画が長くて読めない、という方は、アニメもオススメです。
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