わすれられない おくりもの
命というものについて改めて考えさせられる絵本だ。みんなに愛されたお年寄りのあなぐまが、ある日静かに息を引きとる。そのあとに残された、もぐらやうさぎ、みんなそれぞれにあなぐまとの思い出があり、涙を流し悲しんだ。しかしたとえいなくなっても、あなぐまが教えてくれた知恵や思い出は確かにあり、それとともに暮らしていることに気づく。命そのものは遠くへ行ってしまっても、いつまでも誰かの心や生活のなかで亡くなった人が生きていることを優しい絵とともに感じることができる絵本だ。
今そばにいる大切な人のことを思い、今はもういなくなってしまった人のことを思う機会になる、大事なことに気づかせてくれる一冊だ。
さんまいのおふだ
個人的に思い出深い本なので紹介しようと思う。幼い頃、家に何冊も絵本があり、そのなかでも自分にとってこの本は衝撃的であった。時々読み聞かせをしてもらったり、自分で絵本を読んでいた河邉少年であったが、この絵本は、そう、ちょっとしたホラーなのである。もしかしたら同じく幼い頃に読んだ方もいるかもしれない。
ある村で和尚と小僧が住んでいた。小僧は山へ栗を拾いに行くのだが、山には人を食う山姥がいるらしく、和尚が小僧に身を守る為に3枚のお札を渡す。案の定小僧は山姥と遭遇してしまい、3枚のお札を使いながら走って逃げることになる。後ろから山姥に追いかけられる絵は、小さな子供のトラウマになること請け合いだ。
日本の昔話の一つであるそうだが、昔話の類にはこわい話もたくさんある。子供「悪いことをすると山姥に追いかけられるよ」というずるい教育ができるようになる絵本であるかもしれない。
りんごかもしれない
表紙にかわいいりんごが描かれており、さらにタイトルも『りんごかもしれない』という何やらわくわくする哲学的な要素を持った絵本である。テーブルに置いてある一見ただのりんごに対して、様々な角度からその可能性を探るのだ。
例えば、後ろから見ればみかんかもしれない、中身はメカが詰まっているのかもしれない、育てると大きな家になるかもしれないなど、かわいい絵とともに想像力が膨らみ、次のページをめくるのが楽しくなるのだ。大人が読んでも面白く、子供と一緒に絵を見ながら読むのも楽しめそうである。
作者のヨシタケシンスケさんの絵本は個人的に大好きで、ほかにも楽しいものがたくさんある。大人にもおすすめの絵本だ。