エンタメ

14歳のひと夏をオンボロ車がゆく!青臭さと切なさと交わした約束

更新:2017.9.15 作成:2017.9.15

クラスで浮いている14歳のふたりの少年がオンボロの車で旅に出る。青春ロードムービー好きにはたまらない設定の『50年後のボクたちは』をご紹介しようと思う。

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青臭さが胸に迫る青春ロードムービー!

『50年後のボクたちは』は、名作『スタンド・バイ・ミー』をはじめとする青春ロード―ムービーの系譜に連なる作品だ。季節は夏。10代前半の少年たちが目的地に行って、帰って来る。まとめてしまうとそれだけの作品が、時をおいて繰り返し作られるのは、求める観客がいて、衝動的に作ってしまうクリエイターがいるからだ。

衝動なしに青春物語を作ることはできない、と思う。映画、小説、漫画を問わず、優れた青春物語には共通点がある。それは、コントロールできない青臭さが流露してしまっていることだ。

手を伸ばしても届かない、二度と戻れない時間であることをわかっているのに、衝動的に少しだけ手を伸ばしてしまう。そんな自分に後で気づいて恥ずかしくなるけれど、その瞬間も肯定して、作品に閉じ込めてしまう。そうやって優れた青春物語は作られてきた。本作もそんな風にして作られたのではないかと思う。

ふたりの少年と、少女の物語

ふたりの少年と、少女の物語

14歳マイクとチックは「借りてきた」車でひと夏の旅に出る。とりあえず南を目指す、ノープランな旅だ。

イザという女の子が物語の中盤で登場する。旅の過程で出会う少女で、14歳の主人公たちより少し年上に見える。ひどく汚れた格好で、悪臭がする本作のヒロインだ。

裏設定になるが、イザは性的虐待を受け、精神病院を脱走し、境界性人格障害を抱えている。過剰な汚れや悪臭を提示する演出は、短い時間でこれらの裏設定を暗喩する。

ともに旅をすることになった3人は、一晩車を走らせ、貯水池にたどり着く。マイクとチックはイザを池に突き飛ばし、ふたりも池に飛び込む。3人はそこで身体を洗う。

汚れ、悪臭を池で洗い流し、髪を切り、本来のイザが現れる。少年たちだけでなく、イザも少年たちと出会うことによって変化する。つまり本作は、ふたりの少年の物語であるとともに、イザの物語でもあるのだ。

3人の未来は広がりを見せる

3人の未来は広がりを見せる

青春という時間軸、ロードムービーという空間軸に、イザという人間軸が加わる。それによって物語は大きな広がりを見せてくれる。

青春というのは、過ぎてしまうと輝いて見えるものだが、当事者にとってはひどく息苦しいものに思えることがある。それ単体では広がらない。だから、少年たちは旅に出るのだ。そこで素敵な出会いを果たした少年たちは、無敵だ。

本作は、3人が50年後に再会することを約束するシーンで幕を閉じ、時間軸においても、大きな広がりを見せる。その約束が果たされるかはわからない。でも、本当に大切なのは、50年後に再会することではない。50年後に再会したいと、その瞬間、3人が心から思っていることが大切なのだ。

マイクが語りかけ、イザがうなずき、チックがほほ笑んでいる。その瞬間は永遠のものだ。

『50年後のボクたちは』は2017年9月16日公開。


Photo:(C)2016 Lago Film GmbH. Studiocanal Film GmbH

著者
ヴォルフガング ヘルンドルフ
出版日
2013-10-24