久々に読んでみた吉本ばななは、とても面白かった。面白かったし、今改めて読んでみて、なぜ15歳の自分がいやな感じを受けたのかハッキリと分かりました。
あの時、わたしは吉本ばななの描く世界の中に「嫌いな自分」の姿を見つけていたんだと思います。それは、「こんな自分は大嫌いだ!」と思いながらも、その実、可愛くて仕方ない「あたしのエゴ」みたいなものでした。
わかりやすく言えば、おこがましくも一方的に吉本ばななに対して「同族嫌悪」していたのです。
でも、今は素直に、そんな自分を見つめることができます。
オトナになったのです。
そして、いま、あらためて吉本ばななを読んでみたいと心から思えました。
TUGUMI
複雑な家庭の事情により海の近くの旅館で暮らすことになった「まりあ」。その旅館には幼い頃から長くは生きられないと医者に言われて育ってきた薄幸のエキセントリック美少女「つぐみ」が住んでいた。
美しい海の街を舞台に、2人の青春がおかしくも切なく描かれている話です。わたしは昔から面白い小説を読むと、その登場人物が心に住みつきます。『TUGUMI』も読み終えた後、つぐみという女の子の存在が、わたしの胸の中にシッカリと残りました。死と隣り合わせの毎日のはずなのに、いつもふてぶてしく笑い、魂を燃やしてギラギラ生きるエネルギッシュでパンクなつぐみの姿はとてもカッコよくて、とても好きになりました。
そして、そんなつぐみと幼いころからずっと共に過ごし、うんざりしながらも彼女のことを1番に理解し、彼女を大切に思う主人公の優しさに、心揺さぶられました。最後には、読む人を優しい気持ちにさせてくれるステキな話だと思います。
high and dry(はつ恋)
ある日、14歳の女子中学生「夕子」は絵画教室で先生をしている「キュウくん」と一緒に「妖精」を見てしまい、その不思議な出来事をきっかけに、2人が少しへんてこな恋に落ちていく話です。
この話は多感な年頃の少女の心がとてもリアルにとても鮮やかに描かれています。家を空けがちな父親を持つ子供の淋しさ。残された母親と2人で乗り越えなければならない夜の切なさ。歳上の男性に恋をしてしまった少女の焦りや苛立ち、などなど。主人公の想いや葛藤を知って共感していくうちに、いつのまにか自分も14歳の気分になってしまいます。
14歳って、大人じゃないけれど子供でもない。つくづく貴重なお年頃だったんだなあ、とこの本を通じて改めて思い返すことができました。ちなみにこの本は、わたしが久しぶりに吉本ばななを読むキッカケになった一冊です。大好きな女の子が貸してくれたのです。
読まないわけにはいきませんでした。ステキなきっかけをくれて、ありがとう。