もう一度、吉本ばななを読んでみよう

もう一度、吉本ばななを読んでみよう

更新:2021.12.13

今、わたしは吉本ばななを読んでいます。 実は、吉本ばななのことがずっと苦手でした。 というのも、15歳で初めて吉本ばななを読んだ時、なんだか「嫌な感じ」がしてしまったからです。 あれから何年も経って、大人になって、あの思春期に感じた「嫌な感じ」がなんだったのか、その正体を探るために、もう一度、吉本ばななを読んでみようと思いました。

ふくろうずのヴォーカル・キーボード。内田万里(Vo, Key)、石井竜太(Gt)、安西卓丸(Ba, Vo)で2007年にふくろうず結成。2011年6月、メジャーデビュー・アルバム『砂漠の流刑地』をリリース。2015 年1月から放送されたドラマ『ワカコ酒 Season2』のオープニングテーマにミニアルバム『ベイビーインブルー』収録曲「いま何時?」が使用され、メンバーもカメオ出演して話題に。 同月には恵比寿LIQUIDROOMにてツアーファイナルが大成功。2016年4月には東京・クラブeXにて、ワンマンライブ「ふくろうずの360 ゚ライブ ~死角の無いやつら~」を開催。同じく4月に大阪・Music Club JANUSにて自主企画「プリティーツーマン~春はあげぽよ、YO!YO!白くなりゆく!?~」で、ねごとと共演し会場を盛り上げた。 7月13日にリリースされた最新アルバム『だって、あたしたちエバーグリーン』は、2014年6月リリースの『マジックモーメント』以来となる作品。2017年1月からは3カ月連続企画ライブ、6月には東京・大阪で「さらば!プラネタ銀河ツアー」を開催した。9月6日には結成10周年の集大成となるニューアルバム『びゅーてぃふる』をリリース。12月24日、結成10周年を記念したライブ「ごめんね、ありがとライブ」をもって解散を発表した。 オフィシャルホームページ http://www.fukurouzu.com/
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久々に読んでみた吉本ばななは、とても面白かった。面白かったし、今改めて読んでみて、なぜ15歳の自分がいやな感じを受けたのかハッキリと分かりました。

あの時、わたしは吉本ばななの描く世界の中に「嫌いな自分」の姿を見つけていたんだと思います。それは、「こんな自分は大嫌いだ!」と思いながらも、その実、可愛くて仕方ない「あたしのエゴ」みたいなものでした。

わかりやすく言えば、おこがましくも一方的に吉本ばななに対して「同族嫌悪」していたのです。

でも、今は素直に、そんな自分を見つめることができます。
オトナになったのです。
そして、いま、あらためて吉本ばななを読んでみたいと心から思えました。

TUGUMI

著者
吉本 ばなな
出版日
複雑な家庭の事情により海の近くの旅館で暮らすことになった「まりあ」。その旅館には幼い頃から長くは生きられないと医者に言われて育ってきた薄幸のエキセントリック美少女「つぐみ」が住んでいた。

美しい海の街を舞台に、2人の青春がおかしくも切なく描かれている話です。わたしは昔から面白い小説を読むと、その登場人物が心に住みつきます。『TUGUMI』も読み終えた後、つぐみという女の子の存在が、わたしの胸の中にシッカリと残りました。死と隣り合わせの毎日のはずなのに、いつもふてぶてしく笑い、魂を燃やしてギラギラ生きるエネルギッシュでパンクなつぐみの姿はとてもカッコよくて、とても好きになりました。

そして、そんなつぐみと幼いころからずっと共に過ごし、うんざりしながらも彼女のことを1番に理解し、彼女を大切に思う主人公の優しさに、心揺さぶられました。最後には、読む人を優しい気持ちにさせてくれるステキな話だと思います。

high and dry(はつ恋)

著者
よしもと ばなな
出版日
ある日、14歳の女子中学生「夕子」は絵画教室で先生をしている「キュウくん」と一緒に「妖精」を見てしまい、その不思議な出来事をきっかけに、2人が少しへんてこな恋に落ちていく話です。

この話は多感な年頃の少女の心がとてもリアルにとても鮮やかに描かれています。家を空けがちな父親を持つ子供の淋しさ。残された母親と2人で乗り越えなければならない夜の切なさ。歳上の男性に恋をしてしまった少女の焦りや苛立ち、などなど。主人公の想いや葛藤を知って共感していくうちに、いつのまにか自分も14歳の気分になってしまいます。

14歳って、大人じゃないけれど子供でもない。つくづく貴重なお年頃だったんだなあ、とこの本を通じて改めて思い返すことができました。ちなみにこの本は、わたしが久しぶりに吉本ばななを読むキッカケになった一冊です。大好きな女の子が貸してくれたのです。
読まないわけにはいきませんでした。ステキなきっかけをくれて、ありがとう。

白夜夜船

著者
吉本 ばなな
出版日
2002-09-30
植物状態の妻を持つ男性との不倫。不思議な水商売をしている親友の突然の自殺。度重なる苦しみのため、いつしか主人公は「眠り病」にかかってしまう悲しい話です。

わたしは「眠り」について描かれた小説が好きです。たとえば村上春樹だと「めくらやなぎと眠る女」や「眠り」といった話が好きです。なぜ「眠り」にまつわる話が好きなのかハッキリとは言えませんが、「眠り」は死につながっていて、その雰囲気が小説いっぱいに漂う感じが好きなのかもしれません。

主人公は、その重く暗い雰囲気の中を漂いながらも、最後には「希望」のようなものを見つけます。わたしにはそれがシックリきて、良いな、と思いました。

キッチン

著者
吉本 ばなな
出版日
祖母の死をきっかけに天涯孤独になってしまった主人公は、ひょんなきっかけで大学の知り合いである「雄一」の実家に居候することに。主人公と、雄一と、雄一の母親であり父親でもある美しいオカマ「えり子さん」との奇妙な同居生活を描いたひと夏の話です。

15歳の時に「いやな感じ」を受けて以来、久々に読んだ『キッチン』。緊張しながら読んでみたものの、拍子抜けしてしまうほどスンナリ読み終えてしまいました。へんだなー、若かりし頃の思い違いだったのかしら?と不思議に思いながら、次の『キッチン2』を読んでみて、納得。わたしが15歳の頃「ウッ」と思ったシーンに出くわして、「これだ! これだ!」と懐かしさのあまりテンションが上がってしまいました。

詳しく書いてしまうとネタバレになってしまうので、気になる方は良かったら読んでみてくださいね。

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