ノイタミナアニメ原作漫画おすすめ10選!漫画もアニメも面白い!

更新:2021.11.26

「ノイタミナ」とは、フジテレビ系列の深夜アニメ枠のことで、非常に上質な作品を輩出することで知られています。その枠で作られるアニメは、大人の琴線に触れる良作ばかり。今回はそんなアニメ枠で放送された作品の原作漫画10選をご紹介していきます。

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そもそもノイタミナって何?どういう意味?

 

「ノイタミナ」とは、フジテレビ系列の深夜アニメ枠のことで、2005年より放送枠としてスタートしました。

「ノイタミナ」とはanimationを逆さまからローマ字読みした造語であり、アニメの常識を覆そうという意気込みが込められています。そのため、映像化される作品にも、従来のアニメとは異なる挑戦的な演出や、映像表現が多数見受けられます。

深夜枠という特徴から、大人も楽しめる作品が多いのも特徴です。今では大人がアニメを見ることは当たり前のことですが、ノイタミナは、その感覚がまだ薄い頃に始まり、アニメ文化作りに大きな貢献を果たしました。

 

青春×芸術=無軌道ラブコメディ!『ハチミツとクローバー』

ボロアパートに住む竹本祐太は、同じアパートに住む先輩の真山巧や、森田忍らとそれなりに楽しく暮らしていました。彼らは皆、同じ美大の先輩後輩関係です。

ある日、彼ら3人が美大助教授の花本修司を訪れると、1人の少女と出会います。彼女は花本の親戚にして、新入生の花本はぐみ。彼女の小動物的可愛さ、そして不思議な魅力に、彼らは知らぬ間に魅了されていくのです。

それぞれの胸に秘めた想いと、芸術への情熱。美大生達の切ない片想いが交錯します。

著者
羽海野 チカ
出版日
2002-08-19

本作は2000年から「ヤングユー」などで連載されていた羽海野チカの作品。元々は宝島社「CUTiEcomic」連載だったものが、同誌休刊に伴って集英社「ヤングユー」、後に「コーラス」へ移籍したという経緯があります。完結後には「このマンガがすごい!」オンナ編で2年連続1位に輝いています。

ノイタミナ枠では2005年と2006年の2期にわたって放送されました。2008年には実写ドラマ化もされています。

主な登場人物は美大生のはぐみ、竹本、真山、森田、そしてもう1人のヒロインである山田あゆみの5名です。そこに彼ら学生を見守る大人の花本助教授、真山のバイト先の雇い主である原田理花が加わった5人+2人の関係性と、周囲の人々の行動が混ざり合い、物語はめまぐるしく変化していきます。作者が銘打つ通りの青春群像劇として展開していくのです。

ギャグ漫画顔負けのハイテンションがあったかと思えば、しんみりする話もあり、個々のエピソードに温度差があります。ハイテンションの原因としては、はぐみと森田という2人の天才の存在が挙げられるでしょう。本人は普通にしているつもりでも、周りに大なり小なり、良きにつけ悪しきにつけ影響が出ているという、まさに台風の目のような2人なのです。

芸術家らしい特異な感性で感情表現したかと思えば、本心は秘めて押し留める彼ら。不器用ですが、それでいて純粋な片想いが描かれます。

どたばたをただ追いかけるだけでも面白いのですが、本作ではいわゆる恋愛漫画の王道やお約束が意図的に外される傾向があります。予想外の展開、人間関係の発展にご注目ください。

 

デキる等身大キャリアウーマン!ノイタミナアニメ原作『働きマン』

28歳の松方弘子は、「週刊JIDAI」の敏腕編集者。同僚や上司、仕事相手などと時にぶつかり、協力し、より良い仕事を心がけています。スイッチの入った彼女は寝食も忘れて仕事に没頭。その姿は、仕事に特化した「働きマン」と呼ばれています。

これは大人の働く姿勢を浮き彫りにする、ビジネスの物語です。

著者
安野 モヨコ
出版日
2004-11-22

本作は2004年から「モーニング」で掲載されていた安野モヨコの作品。作者体調不良により連載中断、残念ながら2017年現在まで新作の発表はされていません。それは体調もさることながら、現実社会の変遷、出版業界の負の実態が深刻化したため「出版業界のリアル」を描いていた本作の続きを肯定的に描くことが困難になったと安野は述懐しています。

ノイタミナでは2006年に放送。2007年には実写ドラマ化もされました。

本作では働く人々の姿や、働くことそのものをテーマとしており、出版業界が舞台です。漫画家にとって切っては切れない、縁のある近しい場所だけに、微に入り細に入り描写されるそれは非常にリアルです。

主人公の松方弘子はバリバリのキャリアウーマン。女性ながらに、男社会の出版業界を持ち前の腕っ節で乗り切るスーパーウーマンです。物語は彼女の目を通して、彼女自身や彼女の仕事に関わる人々の仕事観を描き出します。

そこで描かれるのは仕事のことだけではありません。仕事の悩みと同じくらい大事な性の悩み、年齢に絡んだ悩み。松方は仕事中は「男そのもの」ともいわれる敏腕編集者ですが、彼女には等身大のアラサー女性としての一面もあるのです。

スーパーウーマンとしての活躍だけでなく、現実的な悩みが描かれることによって、同性からは共感を得て、異性からは新鮮な発見として作品が支持されているのでしょう。

男が働くということ、女が働くということ、自分のために働くということ。出版業界の実態を通して、舌鋒鋭く「仕事」とは何かを問いかける意欲作です。

歌うように響く!クラシックの旋律『のだめカンタービレ』

指揮者を志望していながら、希望通りにいかない苛立ちを抱える音大生の千秋真一。彼は桃ヶ丘音楽大学ピアノ科に通う音楽のエリートの血筋でした。自暴自棄になっていた千秋はある日、ゴミ屋敷ならぬゴミ部屋に住む野田恵(通称のだめ)と出会います。

がさつな生活とは裏腹に、繊細なピアノの才能を感じさせる彼女。この奇妙な出会いが、2人の運命を大きく変えていきます。

著者
二ノ宮 知子
出版日
2002-01-08

本作は2001年から「Kiss」で連載されていた二ノ宮知子の作品。クラシック音楽をテーマに、音大の学生たちをコメディタッチで描いた漫画です。ノイタミナで3度もアニメ化されたほか、OVAや実写ドラマ、実写映画も作られた人気作となっています。

天才とはこうまで一般常識がないのか、と思わせる主人公のだめ。明るく前向きなのは主人公向きの性格といえますが、並外れた生活能力のなさ、くり返し発する奇声にはとても主人公の風格が感じられません。その一方、音楽の才能は抜群で、1度聞いた曲は楽譜がなくても弾きこなすほどの才能を秘めています。

もう1人の主人公ともいえる千秋。性格が尖ったエリートだった彼ものだめに影響されて変化し、いつしかのだめをはじめとしたひと癖もふた癖もある演奏者たちのまとめ役に。劇中で活躍するSオケの悲喜交々はまさしく青春ドラマです。

クラシック音楽を主題として扱っていますが、堅苦しさはまったくありません。それは内容が音楽を志す若者の青春ドラマであると同時に、主に型破りな言動をくり返すのだめの存在感のためでしょう。もちろん、クラシック音楽に触れるきっかけ、入門作品としても優秀なのはいうまでもありません。

テーマがクラシック音楽なだけに、本作の映像作品と相互に鑑賞して登場する音楽と照らし合わせるなど、さまざまな角度から作品を楽しむことができるでしょう。

ゆるキャラに「かもされたい」読者続出!?『もやしもん』

東京にあるという某農業大学に入学した沢木惣右衛門直保(さわきそうえもんただやす)と、幼馴染みの結城蛍(ゆうきけい)。主人公の直保は、なぜか菌やウィルスを視認出来るという特殊能力を持っています。

そんな彼らが在籍することになる樹慶蔵(いつきけいぞう)教授のもとには、一筋縄ではいかない曲者の院生、ゼミ生、そして種々の菌類達がいました。人と、人には見えない菌類の織りなす荒唐無稽な騒動が、直保たちを巻き込んでいきます。

著者
石川 雅之
出版日
2005-05-23

本作は2004年から「イブニング」、「月刊モーニングtwo」で連載されていた石川雅之の作品。ノイタミナ枠で2007年と2012年の2度にわたってアニメ化され、2010年には実写ドラマ化もされました。

本作を特徴付ける最大の要素、それはなんと言っても、菌類のビジュアル化にあるといっても過言ではないでしょう。デフォルメされた菌類はマスコット的に表現されており、それはゆるキャラともいえる風貌で、親近感と愛らしさを感じさせます。「かもすぞ」(漢字では「醸す」と書き、発酵させるという意味)という決め台詞と合わせて、本作の象徴となっています。

ですが、ゆるい菌のイメージで本作を読むと、おそらく面食らうことでしょう。ゆるキャラから受けるキャッチーな印象と異なり、本筋で取り上げる某農業大学の話はきちんと「農業」しているのです。

野菜の主な原産地や、国内の地域別食糧自給率など、しっかりとした数値が専門知識として描写されています。読み進めれば、本作がれっきとした農業漫画であることを意識させられることでしょう。

無論、それ以外にも登場人物が巻き起こす事件もたくさん取りあげられます。農大生の型破りな学生生活のほかにも、菌類をメインとしたエピソードなども見ることができるのです。なぜか話が進むごとに主人公の存在感が薄くなっていくのですが、本来の菌類が我々の日常では意識されていないことと対比しているのかもしれません。

家族が家族になる物語。ノイタミナでアニメ化もした感動漫画『うさぎドロップ』

主人公のダイキチこと河地大吉は、祖父の訃報で久しぶりに田舎へ戻ってきます。そこには見たこともない幼い女の子がいて、話を聞くと大往生した祖父の隠し子だと言うのです。降って湧いた親族の隠し子騒動。誰もがその子、鹿賀りんを邪険に扱い、腹を立てたダイキチは彼女を引き取ることを決意しました。

ところがダイキチは30歳にして独身。当然、育児の経験はありません。見様見真似で、ダイキチとりんの共同生活が始まります。

著者
宇仁田 ゆみ
出版日
2006-05-19

本作は2005年から「FEEL YOUNG」で連載されていた宇仁田ゆみの作品。2011年にノイタミナ枠のアニメ化、そして実写映画化が行われました。

物語のヒロインであるりん。彼女の境遇は、ダイキチでなくとも心を痛めるものでした。唯一の肉親であるダイキチの祖父、宋一を亡くしたりん。母親は蒸発しており、そもそも誰なのかも不明で、遺された親族にとってりんは宗一の汚点でしかなく、大変不名誉かつ頭痛の種となっていました。

周囲の大人は、たった6歳の孤児となったりんを重荷と思うだけで、彼女の身の上を心配する者がいなかったのです。

ダイキチは父親役としては新米で不器用ですが、十分な父性を感じさせるキャラ。若き日の宗一に似ているというだけで懐いてきたりんを放っておけず、未経験の育児に挑戦するほど優しい男です。

初めこそ互いに遠慮があり、不器用な関係でしたが、徐々に打ち解けてりん本来の明るい性格が顔を出していきます。時が経つにつれ、りんは保育園から小学校に上がり、中学校、そして高校へ。微笑ましい幼子が可愛らしい少女に成長していく様子は、思わず親目線から見てしまうこと請け合いです。

2人が似た境遇の二谷(にたに)家とも知り合い、周囲からも温かく支えられ、ダイキチとりんは赤の他人から少しずつかけがえのない家族になっていきます。展開の端々からその様子が見て取れて、その度に強く胸を打たれるでしょう。

時を越える壮大(?)な歴史ファンタジー。これぞバス(風呂)浪漫!『テルマエ・ロマエ』

ハドリアヌス帝時代の古代ローマに、ルシウス・モデストゥスという落ち目の建築技師がいました。職を失い、妻とも不仲のルシウスを励まそうと、友人のマルクスが彼を公衆浴場に誘います。

それがまさに一大転機!そこで一体いかなる力が働いたのか、気付けばルシウスは、2世紀のローマから現代日本の銭湯へやって来ていたのです。タイムトラベラーとなった彼は、度々ローマと日本を往復して、日本の脅威の風呂文化をローマに持ち帰るようになるのでした。

著者
ヤマザキマリ
出版日
2009-11-26

本作は2008年から「コミックビーム」に連載されていたヤマザキマリの作品。ノイタミナでは2012年に放送されて、同年実写映画も公開。さらに2年後の2014年には映画の第2弾が封切られました。

現代では、日本ほど風呂と生活が密着した文化がある国はないでしょう。しかし、今でこそ欧米諸国はシャワー文化ですが、それら元を正せば古代ローマに行き着きます。そして驚くべきことに、古代ローマでは下水道が完備されており、日本と同じかそれ以上の風呂好き文化だったことが窺えるのです。

作者のヤマザキマリはそこに着目し、風呂という共通文化だけで、時代を超えたファンタジーを創作するに至りました。共通とはいっても、もちろん相違点の方が遥かに多いです。本作ではその相違点こそを取りあげ、面白おかしく、そして時にためになる話として練りあげています。

主人公のルシウスはローマのあり方に心酔する生粋のローマ人。話す言葉はラテン語で、当然のように現代日本人(ルシウスは「平たい顔族」と呼ぶ)の言葉はわかりません。そしてその、基本的に意思疎通ができていない部分が面白いのです。

我々読者はどちらの言い分もわかるのですが、ルシウスの自分勝手な解釈がどれも斜め上の想像で、彼が真面目に考えていればいるほどそれに比例して大きな笑いとなります。

ルシウスの出会う、未知なる平たい顔族(日本人)の文化。それは日本の良さの再発見に他なりません。ルシウスが新しい出会いをするたび、読者もまた新しい発見ができるでしょう。

筋書きのない青春セッション!ノイタミナアニメ化作品『坂道のアポロン』

1966年の夏、長崎県佐世保東高校へ、その時期にしては珍しい転校生がやってきます。父親の都合で引っ越してきた高校1年生の少年、西見薫(にしみかおる)。ストレスを感じると吐く癖があり、物珍しい転校生を見る目から遠ざかるように、薫は学校屋上へと逃れました。そこで彼は同じクラスであり、不良とおそれられている男子、川渕千太郎と出会います。

その千太郎との出会い、彼を通して知ったジャズの世界が、薫を強く大きく成長させることになるのです。

著者
小玉 ユキ
出版日
2008-04-25

本作は2007年から「月刊フラワーズ」で連載されていた小玉ユキの作品。ノイタミナでは2012年に放送されました。また、実写映画が2018年に公開予定となっています。

舞台は日本ですが、時代は60年代。ちょうど高度成長期に当たる時代です。そのため、劇中の人々やでき事は少しレトロで、どこか懐かしさを感じさせます。そういった意味では、千太郎はまさしく昔の不良然とした少年でしっくりくるのですが、逆に薫は現代っ子風に思えます。

主人公の薫は繊細で内気な少年です。幼い頃から転校をくり返し、誰とも深い付き合いができなかったがゆえのパーソナリティといえるでしょう。その繊細さはやや度を超えていて、ストレスで吐く癖があります。

薫の心の支えは、父親がプレゼントしてくれたピアノでした。そのピアノで弾くクラシック音楽が慰めだったのですが、引っ越しのためにそれを失います。しかし、「坂の街」長崎で彼に転機が訪れます。

クラスメイトの千太郎、そして学級委員の迎律子。彼らの手引きで再びピアノを演奏する機会を得るのです。律子の実家であるレコード店の地下にはピアノがありました。しかし、いつもその地下で演奏の練習をしている千太郎が薫に弾くことを許可してくれたのは、クラシックではなくジャズだったのです。

薫がこれまで聞いたことも見たこともなかった、ジャズという衝撃。それはカルチャーショックに等しく、彼の生き方そのものを変えるほどの影響を及ぼします。

ジャズの関わりを通して、千太郎とは友情を、律子に対しては恋心を育む薫。ですが、物事はそう上手く回りません。3人が3人とも、まったく別の相手に片想いをしていたのです。

交錯する想い、そしてジャズにはまっていく薫。甘くてしょっぱくてほろ苦い、まるで筋書きのないジャズ・セッションのように続く青春の物語です。

それは自然からの授かり物『銀の匙』

私立中学に通っていた八軒勇吾は、進学校の学力競争に挫折します。彼はその厳しい現実、居心地の悪い実家から逃れたい一心で、寮生活の出来る農業高校へと進学。そこは北海道にある日本有数の農業学校、大蝦夷農業高等学校、通称エゾノーでした。

勉強ずくめだった勇吾には全てが新鮮で、全てが重労働。彼を待っていたのは普通の勉強だけでなく、未知の専門教科や新しい人間関係、そして動物関係の知識でした。

著者
荒川 弘
出版日
2011-07-15

本作は2011年から「週刊少年サンデー」で連載中の荒川弘の作品。作者本人が農業高校出身とあって、内部事情に詳しくなければわからない実情がたっぷり詰まっています。そのうえで、あくまでフィクションとしてエンターテインメントに昇華しているのは、見事という他ありません。

主人公の勇吾は無目的にエゾノーの門戸を開きました。しかし、本来そこは一族経営等で農家を継ぐ前提の子弟が訪れる場所。農家特有の常識が高い壁となって勇吾に立ち塞がります。そして同時にそれが、我々読者へと農業高校を紹介する第1歩にもなっているのです。

勇吾は農業高校の常識も知らない素人です。ところが、専門教科は門外漢でも、一般教養は得意分野。そこを活かして偏った知識の同級生と渡り合うのもまた、本作がエンターテインメント性に富んだ箇所です。

エゾノーでは畜産動物が多く飼われています。それらは実習で育てる動物であり、そしてその過程で食肉加工されていきます。手塩にかけて愛情込めて接する動物が、そうやって変化するという現実を勇吾は目の当たりにするのです。

我々が普段口にしている食事も、全てこのようにして食卓に並んでいます。それを思えば、きっと手を合わせて食べるということの意味にも思い当たるでしょう。本作はフィクションですが、食育漫画としても非常に優れています。

そのヴァイオリンは、悲しくも切ない偽りのメロディ。ノイタミナアニメ原作『四月は君の嘘』

主人公の有馬公生(ありまこうせい)は、かつて「天才」ともてはされたピアノの神童でした。しかし、彼が11歳の時、指導者である母親の早希の死をきっかけに、ピアノをぱったり辞めてしまいました。その心境は彼のみが知るところ。

そして3年後の4月。幼馴染みの付き添いで訪れた公園で、公生はヴァイオリニストの宮園かをりと出会います。彼女のひたむきな演奏の影響を受けて、公生は失っていたピアノへの情熱を少しずつ取り戻していくのです。

著者
新川 直司
出版日
2011-09-16

本作は2011年から「月刊少年マガジン」で連載されていた新川直司の作品です。2014年にはノイタミナでアニメ化。そして2016年に実写映画が公開されました。

1人の才能に触れて、同じジャンルで高みを目指す、というのはよく見かける展開です。しかし本作は、異なる楽器の才能が、まるで共鳴するように互いを高め合って成長していくという話の筋を見せます。

クラシック音楽という表現の場は同じでも、ピアノとヴァイオリンは違う楽器。異なる方法論によって演奏されます。その2つの演奏がぴったりとはまった時、個別の時よりもより一層素晴らしいものとなるのはいうまでもありません。

使う楽器同様、公生とかをりの関係もまた絶妙。不必要に近付かず、さりとて遠く離れるわけでもなく、程よい距離で良い影響を及ぼし合う関係です。本作は公生のピアノの才能が再生していく物語ですが、話はそれだけには留まりません。互いに影響し合うもう一方、かをりの物語でもあるのです。

ヴァイオリニストとして素晴らしい境地にあるかをり。それは並大抵の努力ではありません。その原動力、そしてヴァイオリニストになった理由が読者に明かされた時、自然と全ての線が繋がって、1つの想いが像を結びます。その結末は感動必至。ぜひともご自身でお確かめください。

全ての元凶はどこに?戦慄のタイム・サスペンス『僕だけがいない街』

主人公の藤沼悟(ふじぬまさとる)は売れない漫画家。本業は捗っておらず、ピザ屋の配達バイトで生計を立てる日々を送っています。そんな彼には、人にはない特殊能力がありました。自ら「再上映(リバイバル)」と名付けた力で、特定の時間をくり返し体感する、1種のタイムリープができる力です。

それは発動の原因を取り除かない限り、ずっとくり返される迷惑な能力でしかありませんでした。しかし、彼はその能力によって、図らずも自身の過去に対峙していくことになります。

著者
三部 けい
出版日
2013-01-25

本作は2012年から「ヤングエース」で連載されていた三部けいの作品。複数のメディアミックスが行われ、2016年にノイタミナ枠で放送されたアニメ以外にも、実写映画、小説版が存在します。また、2017年冬にはNetflix限定ドラマも配信が予定されています。

本作の特徴は、悟が持つリバイバルというタイムリープ能力にあります。一般的にタイムトラベルといえば肉体ごと時代を移動することを指し、その変形版としてあるのが、精神だけが過去の肉体に飛ぶタイムリープです。

タイムトラベルにはいわゆる「親殺しのパラドックス」など、いくつかSF考証の点で不備が指摘されるもの。そのパラドックスを回避するために考案されたギミックがタイムリープで、これならばどうやっても自分の体にしか移動できないので、「親殺しのパラドックス」を回避することが可能なのです。

これは非常に優れたアイデアで、「精神だけが飛ぶ」という特徴を利用して、謎に重点を置く作品で多く用いられます。本作もまた同様。リバイバルというタイムリープをメインに据えて、様々な伏線を回収しながら謎に迫るタイム・ミステリーであり、サスペンスなのです。

悟が厄介に思うこのリバイバル。かなり面倒な制約がかかっていて、能力の発動が本人の意識とは無関係に起こります。状況を問わず、いつ起こるかわからない災害のようなもの。特殊能力としては非常に使いづらいです。しかし、彼が巻き込まれる数々の事件と、そしてそれらを内包するより大きな核心に迫るには、リバイバルを利用する他ありません。

この能力はどうして生まれたのか?悟が行き来することになる1988年という時代との関係は?複雑に絡み合った運命の糸を1本ずつほぐして、全てを解き明かした時、悟の前に現れる真相とは……。

すべてを理解するには一読では足りません。真相を理解するには、本作を何度も何度も読み直すことになるでしょう。そう、それはまさに、悟のリバイバルのごとく……。

いかがでしたか?今回ご紹介した作品は完結済みのものが多く、その点でも安心しておすすめすることができます。名作揃いのノイタミナ原作、ぜひ1度お楽しみください。

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