「マーケティングを学ぶ」というと、難しそうと感じる方も多いかもしれません。イメージ的にそのように感じる方もいらっしゃるでしょうし、少し本を読んで「こんなにやることがあるのか…」「CPC、CTR、CVR…なんだか難しそう…」と挫折される方もいらっしゃるかもしれないですね。たしかに難しい側面があることは事実ですが、マーケティングの醍醐味を実感する前に挫折してしまうのはもったいないこと。そこで、今回は入門的な内容をザクッと学ぶことができるマンガをご紹介します。
- 著者
- 安田 貴志
- 出版日
- 2014-03-19
まずご紹介するのはマーケティングの全体像をザクッと掴む上で参考になるマンガです。舞台は「たまや」という明治から120年続く老舗の饅頭屋。主人公はまりもという女性で、仕事がうまくいかず、彼氏にもふられて傷心で実家である「たまや」に戻ってくるところから物語は始まります。
「たまや」の人気商品は「まりも饅頭」。創業以来の商品で、この饅頭を買いに来る常連さんも多いとの事。ところが、帰京したまりもが店番をしていてもお客様が誰一人来ない状況…。いったい、「たまや」に何があったのでしょうか?その窮地を救うべく、まりも達の目の前に現れたのは、ロジーとエモーという、天上界のひとつである「マーケティング界」から使わされたマーケティングの伝道師。彼らからマーケティングを学びながら、主人公まりもの「たまや」再建に向けたチャレンジが新たに始まるのでした。
ネタバレにならないようこれ以上は書きませんが、マーケティングにおけるロジックとエモーションの大切さ、必要な「売り手」「買い手」「観察者」といった3つの視点、ニーズとウォンツの違い、そしてAIDMAの法則や3C、SWOT、4Pなどの基本的なフレームワークなどを物語にそってザクッと学ぶことができます。
マンガという物語の中で学ぶメリットのひとつは、実際に主人公が置かれている状況を疑似体験しながら、自分なら同じ立場に置かれたときにどうするか?を具体的に考えながら読み進めることができること。専門書のみですと実際に活用する際のイメージが湧きにくいという方もいらっしゃるかもしれませんが、マンガではこのプロセスを踏みながら使いこなすイメージを持てるということも大きな利点です。学び始めたばかりの方はもちろん、経験者の方でも気付きが多いかもしれません。特に、現在働いている業界や扱っているサービスが異なる場合は、普段考えない切り口からマーケティングを考えることになり、視野を広げる良いチャンスになると思います。
ちなみに、物語の前半でまりもから「たまや」を再建させたいと相談を受けた伝道師エモーが次のことを言っています。皆さんはこのアドバイスについて、どう思われますか? また、まわりで似たようなことを聞いたことは実際にありませんか?
「カンタンさ! 口コミであおればいいんだよ! ブログやランキングサイト、フリーペーパーなんかを使って口コミを増やせば短期間で売り上げは伸びるぜ!」
- 著者
- 佐藤 義典
- 出版日
- 2016-05-25
売多真子という女性新入社員が主人公の本作。売上不振に陥るイタリアンレストランの立て直しを会社から任され、マーケティングコンサルタントである親戚にマーケティングの手ほどきを受けながら仲間たちとぶつかり合いつつ現状突破していく物語です。
本作で伝えているメッセージをマンガ内のセリフを借りて言うと、「マーケティングはお客様のココロの中で起きている」ということ。徹底してお客様目線に立ち、肌感覚も大切にしながら「お客様にとっての価値とは何か?」を考え抜くことの大切さを訴えています。
企画を立てたりするときに、多くの人はオフィスでパソコンを使って統計データなどを調べたり、会議室の中で社内の人間同士で議論することに多くの時間を費やしているかもしれません。もちろん、それも大切です。ただ、そこで出された結論は、本当にお客様の目線に合ったものなのでしょうか? 自分たちが思い込んだ、お仕着せの企画ではないでしょうか? ついつい、そのような状況に陥ってしまうことはよくあることなのではないかと思います。自分もこのことで多くの失敗を積み重ねてきました。
お客様にとっての価値(嬉しいこと、ベネフィット)を知るには、実際に製品やサービスを利用しているシーンを見ることも大切です。実際に現場に出て、お客様に接することで、見えてくること、気が付くことは多くあります。現場での観察やインタビューなどと併せ、マンガ内でも実施していましたが、アンケートを実施するのも有効な手立てでしょう。どれだけお客様と真剣に、誠心誠意向き合うことができるか。これが最も大切なことなのだと思います。あまりのめりこみすぎると冷静に物事を見ることができなくなるので、バランス感覚は大切ですが。
最後に、本作で転機につながったアンケートの質問があるのでご紹介します。それは、「他店ではなく、なぜ当店にいらしていただけるのですか?」という質問です。この質問は、「他社製品(サービス)はなく、なぜ弊社の製品(サービス)をご利用いただけるのですか?」と言い換えてもいいかもしれません。皆様はこの質問を自分が扱う製品やサービスに当てはめたとき、どのような答えが出てくるか把握されていますか?
- 著者
- 村上 佳代
- 出版日
- 2011-04-22
最後にご紹介するのは、Webマーケティングに絞って解説した本作。本作はインターネットマーケティング会社「ネットデイズ」でアソシエイトコンサルタントを務めるWebマーケッター三立瞳が、大手住宅メーカー「一洋ホーム」でコンサルティングに奮闘する姿を描いています。マンガと解説のバランスも良く(これまで紹介してきたマンガもそうでしたが)、ストーリーに沿ってWebマーケティングの基本的な考え方やまずは最低限理解しておく必要のある専門用語を一通りザクッと学ぶことができる点が魅力的です。
読んでいて特徴的だなと思えたのが、Webマーケティングでよく起きるトラブルや対処法、実際の活用を見据えたデータベースの持ち方(設計)、ネットからリアルへの一気通貫したコミュニケーションに触れていること。より理解を深めるためには詳しい専門書で学び、自分でも実践して試行錯誤しつつ経験を積んでいくことが求められますが、そのためのポイントをザクッとつかむことができると思います。
言われると当たり前ですが、顧客が製品やサービスの購入・利用について意思決定をするには、Web以外にも様々な情報に接することが考えられます。購入・利用しようとしている製品・サービスによって程度の違いはもちろんありますが、それはほぼ間違いないでしょう。コミュニケーションには一貫性が大切。それをどうネットとリアルで実現するか、そして、それをどう必要な相手に必要なタイミングで、必要な内容を伝えていくことができるかが鍵になってくるのではないでしょうか。選定中の相手にとっての価値を提供することと言い換えることもできるでしょう。そのためにも、これらの視点を欠かすことができないのではないかと思います。
最後に、本パートでもマンガ内の言葉で印象に残ったものをご紹介して終わります。「一洋ホーム」のWebマーケティング担当責任者が、プロジェクト最初のつまずきを挽回すべく「私に任せて下さい。一任して下さい」と言い放つ主人公に対して返した言葉です。
「わかったわ、任せるわ。ただし皆の生活がかかっているの。絶対成功させるのよ」外部から事業会社のマーケティングを支援する立場にいる人、事業会社でマーケティングをしている人。立場は人それぞれですが、普段どれだけこのことを意識して働かれているでしょうか。プロとして結果を出し続けることに対する責任を考えさせられる一言です。決して忘れてはならないことですね。
今回の記事はいかがでしたでしょうか? ご紹介したマンガの内容は入門的なものですが、経験者の方も改めてご自身が培われてきたマーケティングの知見を、書籍を読みながらザッと振り返ってみると「あ、ここ最近は杜撰になってきているな…」「そうだ、ここが重要だった!」などと気付きを得られるかもしれません。マンガの利点は、ザッとではあるもののわかりやすく要点を抑えられること、そして物語にそって読み進んでいくことになるので「自分だったらどうするか?」と考えながら読むことができて理解をさらに深めること、日々の仕事では得にくい新たな視点を得やすくなることにあると思います。「マンガで勉強するなんて…」という声も聞こえてくるかもしれませんが、マーケティングを学ぶ第一歩を踏み出す上では役立つと思います。「マーケティングって難しいかも…」と躊躇する前に、まずはその一歩を踏み出されてみてください。知ることで、新たな視界が開けてくると思います。