女性作家ならではの視点が光る本3冊【橋本淳】

更新:2021.11.9

どうも、橋本淳です。最近はドラマの撮影の毎日です。暑さにバテ、冷房に喉をやられ、豪雨にまみれ、と。見事に夏を満喫しております。 さて、今月は注目の女性作家さんの作品をご紹介。三作を一気読みしたのですが、どの作品も映画を観た後のような読後感。良い心地の余韻が残る、または香る作品たちでした。冷房をきり、窓を開け放って、静かな夜の音を聞きながら是非読んでみてください。 あ、熱帯夜の場合は無理なく冷房に戻してください。熱中症になりますからね。そんな無駄な追い込みを自分に課す人は、おらんと思いますが。 では、どうぞー。

1987年1月14日生まれ。2004年にドラマ『WATERBOYS 2』でデビュー。『連続テレビ小説 ちりとてちん』(07~08年)でヒロインの弟・正平を好演。以降、TV、映画、舞台と幅広く活躍中。 最近の出演作 舞台では、『君が人生の時』(17)、KERA・MAP『キネマと恋人』(16)、『クレシダ』(16)、『月・こうこう,風・そうそう』(16)、二兎社『書く女』(16)、KAAT『ペール・ギュント』(15)、新国立劇場『海の夫人』(15)、城山羊の会『トロワグロ』(14)、『HISTORY BOYS』(14)、新国立劇場『ピグマリオン』(13)、『耳なし芳一』(13)、ベッド&メイキングス『未遂の犯罪王』(12年)、『阿呆の鼻毛で蜻蛉をつなぐ』(12)、新国立劇場『温室』(12)など。TVでは『悦ちゃん』(17)、『PTAグランパ』(17)、『連続ドラマW グーグーだって猫である2』(16)、『連続ドラマW 夢を与える』(15)、『大河ドラマ 軍師官兵衛』(14)、『闇金ウシジマくん』(10)、『半分の月がのぼる空』(06)など。映画では『At the terrace テラスにて』(16)、『風が強く吹いている』(09)ほか。 ◆◆◆今後の出演作品◆◆◆
泡の子

ハチミツをお湯で溶かして飲んだ時のような浄化感

恋人の故郷である朝埜市で、蜂蜜園で手伝いを始めることになった碧(みどり)。養蜂や蜜蜂たちの奥深さを知る日々の中、16年前に自分の人生を助けてくれた不思議な出来事を思い出す。不器用な家族の愛が、心にしみる。

もし明日人生が終わるとしたら、きっとわたしは、喜ぶ。

この一文から始まる。幼い頃から決して幸せと言えるような人生を歩んでこなかった碧。守られて育ってきた安西という恋人。彼の実家のある朝埜市の住人たち。それぞれの中に渦巻く単純ではない感情や心のウネリ、闇の部分が繊細に描かれている。読後感は優しく包まれているような印象でした。ハチミツをお湯で溶かして飲んだ時のような、心がホッとするような。救われるような、自分を浄化してくれる作品。

心に刺さった一節

大人になったら全部自分の思い通りになるわけでもないのよ、とやわらかく告げた。

いろんな感情を呼び起こさせる群像劇

人々の大きな夢と希望を集め郊外に開発された巨大な人工の街、若葉ニュータウン。1971年から2021年までの10年ごとをニュータウンの住人たちの視点で紡いでいく。全6編の連作短編集。

各時代、各家庭、各視点から描かれているニュータウン。開発当時は、期待しかない住人たち、どうすればより住みよい街になるか、試行錯誤していた住人たち。しかし、時が経つとともに、必死に街に尽くしてきた人々も、当然高齢者になっていく。若者は街を離れ、ニュータウンと呼ばれていたのことも遠い昔となってしまう。

時代の移り変わり、変化していく情景がまるで目に見えるようでした。読んでいていろんな感情になってしまった。そして、注目すべきは各視点で語られる群像劇。その絡み合う登場人物たちは、どこを読んでも魅力的。すぐにもう一度読みたくなるスルメ的作品。

心に刺さった一節

倒れた老木からひこばえが芽吹くように、鳥の運んだ種が遠い土地で花咲かせるように

子供の頃の原体験、温もりを感じる作品

11歳の慧は、小さな温泉街に住んでいた。とはいっても、ひなびた温泉街といったような所。そんな集落にある宿屋の一つ「あかつき館」が慧の我が家。

ものすごいスピードで大人になっていく女子たちがおそろしく、どんどん変わっていく自分の身体に戸惑い抗おうとしていた。そんな時、コズエという女の子がやってくる。しかもあかつき館の寮に住むという。コズエは、とても魅力的で綺麗で撒くことが大好きで、そして大きな秘密があった。「私、ある星から来たの」。

誰もが経験した子供の時の記憶が蘇ってくる。大人になることへの憧れ、戸惑い、恐怖。気づいたら、いろんな想いを抱えていたなと自分自身に照らし合わせました。信じること、受け入れること、忘れていたもの、忘れがちなものを、思い出させてくれました。温もりを感じる作品。

心に刺さった一節

信じよう。

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