不思議な思考回路と行動力を持った女性・ちえさんと冷静な旦那さんが紡ぎ出す、ほのぼのストーリーが楽しめる『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』の魅力をご紹介します。
『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』は、「Yahoo!知恵袋」にとどいた「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。どういうことなのでしょうか?」という質問に端を発し、ネット上で話題を集めた投稿記事をベースにしたコミックエッセイです。
ある日家に帰ると、妻が死んだふりをして出迎えてくれた、という不思議すぎる出来事は徐々にエスカレートし、血まみれになっていたり、頭に矢が刺さっていたり、ダイイングメッセージが書かれていたりと、段々と大がかりになっていきます。毎回、仕掛けを考える奥さんの発想力に脱帽です。
そんな日々の「妻の死んだふり」にツッコんだり、時にはスルーしたりという夫婦のやりとりが面白いと話題になり、コミカライズされました。シュールすぎる妻のボケと、それを包み込むように接する夫という夫婦の関係性にほっこりできる作品です。
さらに2018年春には榮倉奈々と安田顕によるダブル主演で映画化されることが決定しています。
そんな『家に帰ると妻が死んだふりをしています。』の魅力を、たっぷりご紹介していきます。
- 著者
- K・Kajunsky
- 出版日
- 2011-06-28
「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。どういうことなのでしょうか?」という珍妙な質問がすべての始まりでした。
当初は、妻の意図が分からないという夫の悩み相談でしたが、派生して、質問者がブログに実態を書き綴るようになると、それを元にしてコミックエッセイがつくられました。
はじめこそ死んでいるのかと思い驚いた夫ですが、毎日続くため少しずつ飽きていき、一方でエスカレートしていく妻という対比がたまらなく面白いです。
妻の死んだふりに対する投稿をもとに、初音ミクによる動画が作成され配信されると、瞬く間に話題となり、知名度も上昇していきました。その後、きっかけとなった質問を投稿した人物がブログを立ちあげ、その後の顛末をブログに綴りだします。
そのブログをベースにして、ichidaのイラストによる漫画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』が誕生するのです。
- 著者
- K.Kajunsky
- 出版日
- 2012-06-16
さらに、実はこの「死んだふり」のエピソード、すべて実話なんです。意図はまったく分かりませんが、毎日旦那さんを死んだふりで出迎える、不思議でやさしい妻・ちえさん。彼女が披露した死んだふりの一部を紹介すると、
……これらの死んだふりに、夫の反応はほぼないのですが、ちえさんは懲りずに毎日死んだふりをするのです。そのエピソードだけでも、夫婦の仲が良いのが伝わってきますよね。
死んだふり以外にも、本作に書かれた内容はほぼ実話なので、破天荒なちえさんの姿を想像しながら楽しむのもよいのではないでしょうか。
本作における妻・ちえさんの可愛いところは、不思議なやり方ではあるけれど、夫のことをちゃんと想っているというところでしょう。
たとえば仕事中に腰を痛め、自宅で安静を言い渡された夫のお見舞いにマイケル・ジャクソンの格好で行く妻、ほかにいるでしょうか?おそらく、彼女だけだと言っても過言ではないはずです。
また、マイケル・ジャクソン妻から「Who's Bad?」と有名なフレーズを投げかけられ、「バッドなのは私の腰です」と答える夫の冷静さとのバランスがたまりません。
「ダンスとか見せてくださいよ」と夫に言われ、「踊りはちょっと」と断るちえさん、可愛すぎます。ちなみにこのマイケル・ジャクソンの件を朝早くからやり、同じ日のお昼にはインド人になってカレーを運んでいます。
また、別の日にはぬいぐるみを括りつけて「ハーメルンの笛吹き」をやるなど、夫を笑わせようと懸命に奮闘。しかし夫は、笑うと腰に響くのでひと言、「やめてくれませんか」と言うしかないのです。
この、不思議すぎる妻の行動や言動に、冷静に対応する夫というコントラストが、いっそう面白さを引き立てています。
ふとした瞬間に夫婦関係を鑑みることがありますが、彼らの場合にはまず前提として「仲が良い」というのがあります。
そのうえで、付き合いの飲み会で遅くなった夫を迎えにいく妻、とか、体を気遣って「深夜に食べるな」と忠告する妻、とか、運転している妻の様子をみて「事故して死なないで」と思う夫とか、そういう何気なく相手を想う瞬間を切り取って漫画にしてあるので、読んでいるだけで幸せな気持ちになります。
- 著者
- K.Kajunsky
- 出版日
- 2013-08-10
特に、「ラーメン妻」の話は如実に夫婦の仲の良さを表しているでしょう。
ラーメン好きな夫の体を心配して「ラーメンなんて毒だ」と言う妻、という構図だけでも2人の雰囲気の良さがわかりますが、何だかんだで一緒にラーメン屋に付きあってくれる妻と、無理に誘ったからとチャーシューをあげちゃう夫の関係性がやさしくって、つまりは「夫婦ってサイコ―」っていうのがすごく伝わってくるんです。
夫にはラーメンを禁止するくせに、妻はマックが好きだという矛盾すらも愛おしく思えるから夫婦って不思議です。
現在夫婦の人も、結婚していない人も、「夫婦っていいな」「こんな関係性素敵だな」と思える一冊なので、ぜひ手に取ってみてください。
不思議な妻と冷静な夫、一見水と油のような2人ですが、彼らだけの繋がりが垣間見える作品となっています。結婚っていいなと思わせてくれるので、読み終えた後にはほんわかと温かい気持ちになっているはずですよ。