「異能力バトル漫画って、どうせ主人公が最強なんでしょ?」……なんて、思ってはいませんか? いえ、異能力バトル漫画の主人公の能力って、実はだいたい弱いもの。それでも、「能力では絶対に敵わない相手」に対し頭脳を使って勝利する展開……それが私たちの心をアツくするのです! 今回は、異能力漫画「頭脳派主人公」特集! これまで何千冊もの漫画を読んできた私が、自信を持ってオススメする天才主人公を5人紹介します。
どうも、ホンシェルジュ屈指の漫画好き・吉野シンゴです。これまで何千冊という膨大な数の漫画を読み耽ってきた私ですが、今回は絶対に面白い漫画の方程式について、1つお話ししたいと思います。
それはズバリ
最強主人公が圧倒的な実力で敵をなぎ倒す漫画も嫌いではないのですが、頭脳派主人公が天才的な戦略で強敵に立ち向かうような漫画に、私はどうしようもなく惹かれてしまうのです。
というわけで今回は、オススメ頭脳派異能力バトル漫画特集として、2020年春に読むべき漫画を5作品紹介。頭脳を使い、機転を利かし、ときにはハッタリなんかも駆使して強敵に立ち向かう天才主人公たちを中心に漫画の面白さを解説します!
想像の斜め上をゆく展開が続く5作品ですので、時間のある時にじっくり読むのがおすすめですよ。
頭脳派バトル漫画といえば!真っ先に『HUNTER×HUNTER』(ハンターハンター)をオススメしないわけにはいきません。断言しますが、宇宙イチ面白い漫画です。
「ハンターハンター」は、偉大なハンターである父・ジンを目指す少年・ゴンが、自身もハンターになるために故郷を飛び出して冒険を始めるところから始まります。
大自然の中で育ったゴンは、身体能力や野生の勘こそズバ抜けていましたが、ライバルであるハンターたちはそれを超える猛者揃い。プロハンターの世界では、ゴンはまだまだひよっこです。
一流のプロハンターを目指す過程では、実力や能力では到底敵わない敵を相手にしなければならない場面も多くあるのですが……ゴンはただただ考えなしに戦うということはせず、柔軟な思考でもって何度もその窮地を切り抜けていくのです。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
そんな主人公・ゴンの見逃せない戦いといえば、爆弾魔・ゲンスルーとの戦いでしょう。ひときわ大きな実力差を覆した名勝負です!
この戦いの舞台は、なんとゲームの中。父・ジンが制作に携わっていたとされる能力者専用ゲーム「グリードアイランド」。ゲームを開始すると、プレイヤーはゲームの中に引きずり込まれます。
このゲームを完全攻略することが、父に近づく1歩。しかしゲームを進めるゴンたちの前に、凶悪プレイヤー・ゲンスルーが立ちはだかります。
ベテランハンターであるゲンスルーは、実力も経験値もゴンの数段上。現実世界で普通に戦ったところで、ゴンには絶対に倒せないであろう相手でした。
しかしここはゲームの中。「グリードアイランド」には、アイテムカードや呪文カードが数多く存在しています。「近距離呪文カードの有効範囲は半径20メートルまで」「アイテムカードは60秒で実体化する」など、ゲームらしい細々としたルールが多く存在していました。
ゴンはこの世界におけるルールや設定を利用することで、格上の敵となんとか渡り合うのです。
さらっと読んだだけでは見逃してしまいそうなほどさりげなく書かれているルールや平凡に見える設定ががこの戦いのキモ。実力では絶対に敵わない相手を、頭脳を駆使することで見事に攻略した一幕が見所です。
ゴンの超絶頭脳プレーに痺れたい方は、『HUNTER×HUNTER』第13巻から描かれるグリードアイランド編を読んでみてくださいね!
『HUNTER×HUNTER』については<漫画「ハンターハンター」最新35巻までを徹底考察!【ネタバレ注意】>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
- 著者
- 冨樫 義博
- 出版日
- 2001-01-01
「ハンターハンター」はアニメ化もされた有名作品なので、知っているという人も多いでしょう。もっと違う作品に出会いたい!という人は、ここからが本番です。
次に紹介する異能力バトル漫画の天才主人公は、『出会って5秒でバトル』の白柳啓(あきら)!予測不能でスピード感溢れるバトル展開、謎の多いゲームの結末が気になって、気づいたら既刊13巻(2020年3月現在)をすぐ読み終えてしまいます!
頭脳戦オンラインゲームで世界屈指の上位ランカーであった啓が、突如として謎のサバイバルゲームに強制参加させられるところから物語は幕を開けます。
謎のゲームに参加させられたのは啓だけでなく、すでに多くの参加者がいました。参加者にはそれぞれ特殊能力が与えられいるようです。彼らはその能力を駆使して、生還するために様々なプログラムを攻略していくこととなります。
「手を大砲にする能力」や「木の枝を何でも切れる剣にする能力」など、戦闘向きで強力な能力が数多く登場する中、啓が与えられた能力は……「相手があなたの能力だと思った能力」。
ゲームの運営から教えられたのはこの情報のみ。自分の能力の利点や欠点はすべて自ら調べるしかありません。不明なことだらけの世界で、能力を使いながらのサバイバルゲームがスタートします。
- 著者
- 出版日
- 2016-02-26
啓の能力は、使い方によってはどんな能力にもなり得るという、かなりトリッキーな能力。たとえば、相手が啓に対して「コイツは風を操る能力者だ」と思えば、啓は実際に風を操ることができるというわけです。
しかしこの能力は、発動するためには「相手」の思考を意のままに操らなければいけません。さらに発動条件である「相手」というのも、誰を指す単語なのかが明言されていないため、物語序盤はいくら頭のよい啓といえども、この能力の扱いには手を焼いていました。
この能力、使いこなせば強そうに見えるのですが、使いこなすのがなんとも難しいのです。なんせ使える能力は「相手」に依存するので、「相手」が今まで見てきた技や思考能力を理解しないとそもそも自分がなんの能力になっているのかも分かりません。
「お、お前は手に持っている物を刃に変えられる能力か!?」
なんて言ってくれるわけないので。戦いを続ける中で「実験」を繰り返し、啓は自身の能力の本質を理解していきます。そして彼は、ルールの穴を突くような方法でこの能力を使いこなしはじめるのです……!
嘘やハッタリをも使いこなし、扱いづらい能力を駆使して戦い続ける啓の姿に、読者も幾度となく驚かされるでしょう。頭を使う漫画が好きな方にとくにオススメです!
『出会って5秒でバトル』が気になった方は<無料で読める『出会って5秒でバトル』の魅力を全巻ネタバレ紹介!>をご覧ください。
続いて紹介する異能力バトル漫画は、就活サバイバル漫画『サツリクルート』!就活と異能力をかけあわせた異色の異能力バトル展開が見所です。
「就活サバイバルバトルってなんだよ!」という声が各方面から聞こえてきましたので少し解説します。
『サツリクルート』は、悪魔から特殊能力を与えられた就活生が、その能力を駆使して就活サバイバルを勝ち抜いていく、という物語です。
就活サバイバルとは、「内定が取れなければ、即死亡」というもの。「社会的に死ぬ」とかそんな話ではなく、心臓が止まるタイプの即死亡。
能力を与えられた就活生は、その能力と引き換えに「内定が取れなければ、即死亡」という契約を悪魔と結ばされるのです。
命を懸けた、内定の枠を取り合う就活バトルロイヤル。それが『サツリクルート』。
そんな悪魔のゲームに巻き込まれた主人公・蓼丸カズヤ(たでまるかずや)に与えられた能力は「消去(デリート)」。なんと、「直前の発言をなかったことにする」というだけの能力です。
ライバルたちは「相手を自分に惚れさせる能力」や「自分と相手の位置と立場を入れ替える」などといった強力な能力を使用してくる中、カズヤは一見心許ない能力で就活サバイバルで生き残ることを余儀なくされたのでした。
しかしカズヤは、とても万能とは思えない「消去」の能力を、持ち前の話術とカリスマ性、洗練された頭脳で、就活サバイバルを勝ち抜いていくのでした。
ここでは、そんな彼の戦いのなかでも初めて能力を持つ就活生との戦いとなった「ニコイチ面接」でのエピソードをご紹介しましょう。
- 著者
- 出版日
- 2016-04-12
ニコイチ面接とは、2人1組で同時に面接を行い就活生を直接比較するという面接試験の方式。面接官から投げかけられた質問に対して、早く手を挙げた者から回答することができます。
この試験でカズヤとペアになったのが、「過剰反応(オーバーリアクション)」の能力を与えられた木村厳龍斎(きむら げんりゅうさい)。「過剰反応」は、「相手の感情や評価を30分間だけ何10倍にも膨れ上がらせる」という能力です。この能力を掛けられた面接官は、彼に対して少しでも好印象を持った時点で、涙を流して大絶賛してしまうのです。
カズヤに対しては通常の評価しか与えられないため、当たり障りの無い回答を繰り返しているだけでは差が開く一方……早くも窮地に追い込まれたカズヤでしたが、彼に与えられた「消去」能力と「ニコイチ面接」の特性を活かして反撃を開始します。
これが能力者同士の最初の戦いです。ニコイチ面接を開催する企業の理念は「他者より有力であれ」というもので、両者ともに合格する可能性はきわめて低いことで有名。
まずカズヤは、「消去」の能力を利用し面接官の「質問」を無かったことにしました。こうすることで、「厳龍斎が何も聞かれていないのに勝手に挙手をして喋り始めた」という状況をつくり上げます。
この能力使用により厳龍斎は、カズヤが挙手をした後にしか回答をすることができなくなり、後手に回らざるを得なくなったのでした。
過剰反応で内申点を積み上げてきた厳龍斎でしたが、ここからカズヤの怒濤の逆襲が始まります。「過剰反応」の能力すら利用する作戦を瞬時に組み立て、能力を与えた側の悪魔すらも欺く展開でこの窮地を脱することに……!
果たしてカズヤの逆転の策とは?気になるニコイチ面接の行方は、『サツリクルート』2巻にてご確認いただけます。
- 著者
- 出版日
- 2016-05-12
続いてご紹介したい漫画は、『封神演義』。主人公は、太公望(たいこうぼう)。仲間がドン引きするほど「セコい作戦」すらも、勝つためならば躊躇なく使います。
この主人公・太公望が、私はもう大好きで大好きで。もうとんでもなくセコくて、怠け者で、だらしなくって、マイペースで、飄々としてて、貧弱で……しかし、今まで何千冊と漫画を読んできましたが、彼以上に好きなキャラクターは存在しないほど魅力的なのです。まずは作品のあらすじから紹介します。
本作の舞台は、紀元前11世紀の古代中国・殷王朝時代。悪の仙女に乱された人間界を救うべく始動した「封神計画」の実行者に、仙人になるための修行中である太公望が任命されます。
師匠に任命されたのは、「封神の書」と呼ばれる書物に書いてある365人を倒し、悪い仙人を封じ込めること。こうして、彼の旅が始まりました。
太公望の戦闘能力は、はっきり言って強いものではなく、戦うことも好みません。しかし対立する悪の仙人たちはバリバリの武闘派であり、強力な敵も数多く立ちはだかってきます。
そんな彼がどのようにして悪の仙人たちを倒していくのかと言えばあの手この手で相手を巧みに操り、ペテンに掛け、全力で相手をおちょくり、仲間からも見放されかねない卑劣な作戦を堂々と披露するのです。
ここでは、そんな太公望のとった悪名高い作戦をひとつご紹介しましょう。
- 著者
- 藤崎 竜
- 出版日
悪の仙女のひとりである胡喜媚(こきび)との戦いの際、味方もドン引きのとある作戦を使用します。そう、人質作戦です。
「わーーーっははははは!!!
喜媚よ おぬしのスープーは人質にとった!!!
殺されたくなくば如意羽衣をわしによこせーーっ!!!」
(『封神演義』第21巻より引用)
スープーというのは主人公の相棒。喜媚はスープーの婚約者と自称するほど惚れています。それをよいことに、無抵抗な味方を人質にとって、彼女の強力な武器を強奪しようとしています。少年漫画の主人公にあるまじき言動ですが、これが彼の戦い方なのです。
喜媚から武器を剥ぎ取った太公望は「これさえ手に入ればこっちのもんだ」と言わんばかりに、武器を失い無防備になった彼女に攻撃を仕掛けるのです。本当にセコい。
しかし彼のセコい行動の裏には、一貫して「仲間を守る」という強い信念があるのです。戦いをせずに済むならその道を全力で模索し、できる限り犠牲を出さないことを何よりも大事にしています。
そのためにはいくらでもセコい手を使いますし、自らが汚名をかぶるくらいわけないのです。こう聞くと最高にかっこいいですよね。
そんな魅力あふれる太公望の活躍は、ぜひ漫画にてご覧ください!
『封神演義』の登場人物を紹介した<漫画『封神演義』の登場人物を徹底紹介!フジリューだからこんなにも面白い!>もおすすめです。
- 著者
- 藤崎 竜
- 出版日
最後にご紹介する異能力バトル漫画は、『無能なナナ』。この漫画は、どんでん返しがとても魅力的な漫画ですので、正直「絶対に面白いので今すぐに漫画を読んでください!」としか言いたくありません。
しかしホンシェルジュは、オススメな本を紹介するサイト。作品の内容についても少し紹介しないといけませんので、ほんの少しだけこの漫画の見所についてお話しします。
この記事のテーマは、「弱い能力しかない主人公が頭脳を駆使して強いヤツらに勝つ」という作品を紹介すること。しかしこの『無能なナナ』の主人公は、その「弱い能力」すら持っていないのです。タイトルの「無能」とは、「無能力」のことなんです。
そんな女子高生の柊ナナが戦いを挑むのは、能力者の高校生たち。炎を操ったり過去に戻れたりと、相手はとんでもなく強力な超能力を持っています。
能力を持たない人間が真っ向から挑んでも、絶対に勝つことはできません。
そんな無能力の彼女は、能力者たちに立ち向かうのでしょうか。1話目からどんでん返しの連続で、今までにない漫画体験ができること請け合いです!
- 著者
- ["るーすぼーい", "古屋庵"]
- 出版日
- 2017-02-22
ナナが転校した学校は、超能力をもつ高校生たちが集められた特殊な学校です。炎を使って相手を攻撃したり、氷を使って相手の動きを止めたり、普通の人間が戦っても決して敵わない能力の持ち主ばかりが集められています。
そこで生徒たちは自分の能力を学校や同級生たちに申告する必要がありました。能力を持たないナナは、転校初日の挨拶で「人の心が読める」と話します。
生徒たちはみな疑問を持つことなく、彼女は同級生を殺害するために動きます。無能力のナナが、能力者集団相手にどのように渡り合うのか……ぜひ1話だけでも読んでみてください。どんでん返しに痺れること間違いありません!
『無能なナナ』について紹介した<漫画『無能なナナ』の見どころを最新3巻までネタバレ紹介!正義とは一体?>の記事もおすすめです。
というわけで今回は、頭脳を駆使して強敵に立ち向かう主人公たちを5人紹介しました。
能力や実力的に敵わないからこそ生まれてくる、駆け引きの妙。ギリギリの戦いの中でこそ生まれてくる手に汗握る緊迫感や一発逆転の爽快感は、何度味わってもたまりません……!
やはり、敗色の濃い逆境にこそ、人は燃えるのです。
ぜひ頭脳派主人公が描かれる傑作漫画を読んで、その天才的な活躍に痺れてみてください。