あえて非日常に身を置いて何かを探す人、逆に望んでいないのに迷い込んでしまった人、非日常にいることにまったく気付いていない人、命を削るような生き方しかできない不器用な人、他人にはわからなくても幸せになった人。そんな非現実が心を打つ5冊です。
アルコール依存症だった著者の自伝的私小説。個性豊かな患者の集まる病棟でのおもしろ入院生活がどこかのんびり書かれています。きっと大爆笑します。ようやくその「酔い」が覚めて再出発するラストで、僕は大号泣してしまった思い出があります。僕も普段からお酒を飲むのでアルコール依存症についての知識は豊富です。好きだからこそ調べます。余談ですが著者を調べたら僕と同じ高校でした。先輩だった!という嘘みたいなホントの話。
- 著者
- 鴨志田 穣
- 出版日
- 2010-07-15
こちらもまたアルコール依存症が題材の著者の実体験を元にした小説です。他患者の奇行などポップに描かれていますが、ある種一番人間らしくひん曲がっているのが実は主人公を担当するお医者さんだったりする。幻覚の世界と日常を覚めた目で見る世界の対比がリアルです。
- 著者
- 中島 らも
- 出版日
- 1994-03-04
自殺に失敗した主人公がどうせいらない命なら誰かに買ってもらおうと危険な便利屋を始める。すぐ事尽きると思いきや意外にも非現実な生活が続いていく。麻痺した度胸と楽観的な考え方の先の先のまた先、そこで主人公が見た感じたものはさてナンジャラホイというお話。ハードボイルドに進む展開ではありますがいつの間にか内面・心理を浮き彫りにしてしまうような傑作です。
- 著者
- 三島 由紀夫
- 出版日
生まれよし育ちよし夫よしの優雅なヒロインが、それ故にまったく自分とはかけ離れた世界と決め込んでいたはずの姦通に不思議と染まっていってしまう物語。と変な言い回しをしましたがお嬢様の浮気話です。純粋であるということは(ミクロにするほど!)現実において美徳か悪徳かまたは背徳か、これはいつの時代も不変的なテーマだと思います。そこにある荒縄状にねじれるような徳の「よろめき」にゾクゾクして読んでしまいます。学のない僕にとってはフランス心理小説的(調べたらそうらしいです)。なかなか曲者な文体だったので大変な集中力と時間を要する至りましたが、ゆっくり読む楽しさも発見できました。
- 著者
- 三島 由紀夫
- 出版日
- 1960-11-08
少し番外編ですがご紹介。人が自殺に至る原因を探るために国が無作為に選んだ少年少女に自らの命を絶つスイッチも持たせて監禁実験を行うというぶっ飛んだ設定のお話。ありえなーい!! 外界と遮断された小さな世界で極限状態に耐えられず次々と皆スイッチを押してしまう中、7年間も生きている子供たちがいた。ありえない中のありえなーい!!
- 著者
- 山田 悠介
- 出版日
- 2008-10-25
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。