無料漫画『給食の時間です。』の地味だけど骨太な魅力をネタバレ紹介!

更新:2021.11.26

無料で読める漫画アプリ「マンガワン」から発信されている、ほっこり系漫画の『給食の時間です。』は、給食と小学生たちの人間模様を中心にしたストーリーが展開されています。懐かしい過去の記憶を蘇らせながら、小学生時代を一緒に楽しんでみませんか?

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漫画『給食の時間です。』が無料!魅力をネタバレ紹介!

2016年から「裏サンデー」で連載中の、ほっこり系癒し漫画『給食の時間です。』。

小学校の給食を通じて育む友人関係や淡い恋、また家庭環境での悩みなどが、小学生の目線で描かれています。作者は飯田で、無料漫画アプリ「マンガワン」でも掲載されています。

著者
飯田
出版日
2016-11-11

 

とある小学校の5年2組の教室が中心となって展開され、クラス替えから1ヶ月経っても友人ができなかった主人公が、給食を通じて成長していくというストーリーです。

優しい雰囲気と癒し系の漫画ということで、特に女性の読者から好評となっており、隠れた名作だと話題になっています。

 

『給食の時間です。』登場人物

 

物語の紹介をスムーズに進めるため、まず主人公および登場人物の紹介をします。

5年2組の生徒

佐野くん:本作の主人公で、彼目線で物語が語られています。クラス替えから友人ができず、ずっとひとりで給食を食べていた結果、給食の味さえしなくなってしまうほど精神的なダメージを受けています。

岩谷さん:佐野くんの隣の席にいる、給食が大好きな少女。おかわりは必須で、よく食べます。母親が亡くなっているため、父親に大事に育てられています。

阿久津くん:クラスの人気者の少年。佐野くんや岩谷さんを気にかけてくれます。

石丸くん:佐野くんが岩谷さんと給食を食べるようになり、初めは羨ましさから腹が立って絡んできました。

登場人物の紹介だけでも、給食が友情を繋げていく様子が感じられるでしょう。人が生きるために「食」というものは大事ですが、小学校では特に、給食の時間というのは子供たちにとって重要な時間でもあるのです。

この作品では小学生がメインとなっていますが、食が育む人間関係は、大人の世界でも変わりありません。「食」を通じた優しい人間模様が描かれることで、多くの方に支持されているのです。

 

漫画『給食の時間です。』あらすじ

漫画『給食の時間です。』あらすじ
出典:『給食の時間です。』1巻

クラス替えをしてから早1ヶ月、周りが楽しそうに給食を食べているなか、佐野くんはずっとひとりで給食を食べていました。そのせいか、何を食べてもまったく味がしません。しかし、ふと隣の席の岩谷さんを見ると、彼女もひとりでしたが、とにかく美味しそうに給食を食べていたのでした。
 

ある日、佐野くんは思い切って「給食を一緒に食べよう」と岩谷さんを誘います。5年生になって初めて誰かと食べた給食の揚げパンは、ふわふわして甘かったのです。

「明日もさ… 一緒に食べてくれる?」(『給食の時間です。』1巻から引用)

そして翌日から、佐野くんはひとりで給食を食べることはなくなりました。

魅力1:繊細で優しい、小学校の人間ドラマ

魅力1:繊細で優しい、小学校の人間ドラマ
出典:『給食の時間です。』1巻

この作品の魅力は、繊細でとにかく優しい人間模様です。「食」を中心にした人間関係の築き方が描かれていて、好きな人に好きと言えないとか、仲良くなりたいけど恥ずかしくて言えないなど、子供だけでなく大人にも十分ありうるさまざまな悩みが展開されています。
 

たとえば、佐野くんが岩谷さんと一緒に給食を食べることになった後、実はずっとひとりで給食を食べていた子が、ほかにもいたことを知ります。その人物が石丸くんです。彼は、急にひとりじゃなくなった佐野くんのことが、羨ましくて仕方ありませんでした。

先を越されたようで悔しかったのもありましたが、本当はただ寂しかっただけ。ひとりで食べる給食ほど、まずく感じたものはなかったのでしょう。そして、誰かと一緒に食べる給食がどれほど美味しいのかを知っている佐野くんと岩谷さんは、石丸くんも一緒に食べようと誘い、友人関係を築くのです。

『給食の時間です。』は、ただ給食のシーンを描いているのではなく、相手の気持ちを知ることや、人と関わっていくことの大切さを気づかせてくれる作品なのです。

魅力2:幼い男女の恋愛未満の関係に胸キュン!

 

この物語ではもちろん、小学生の淡い恋バナも純粋に描かれています。佐野くんと岩谷さん、石丸くんの間にあるのはいまのところ友情だけですが、互いにとって大切な友達です。

クラスメイトに八重沢さんという少女がいて、彼女はやたらと佐野くんに絡んでいました。しかし、佐野君と友達になると、少しずつ彼を好きになっていくのです。

 

著者
飯田
出版日
2017-08-18

クラス替えをして、接するのが初めての場合は、どうやって声をかけようかと悩むことがありますよね。

しかし友達にならないと、その人がどういう人なのかは分かりません。知っていくうえで「好き」に発展していくことは当たり前のことでしょう。

本作では、恋愛とまではいかないけれど、ちょっと気になるという恋が描かれています。「もしかしたら好きかもしれない」「バレンタインデーにチョコを渡したいけど、恥ずかしいからやめておく」程度のものですが、それが逆にキュンとくるのです。

あくまでも小学生の恋なので、本当は好きなのに、からかわれて「好きじゃない」と言ってしまったり、冷やかされて顔が真っ赤になったり、という展開が純粋に描かれています。

『給食の時間です。』の魅力3:シズル感はほぼゼロ!なのに美味しそう!

『給食の時間です。』の魅力3:シズル感はほぼゼロ!なのに美味しそう!
出典:『給食の時間です。』1巻

お肉が焼ける時の「ジュワーッ……」という音や、瑞々しさが表されていることをシズル感といいます。食べ物をテーマにしたシズル感満載の作品は数多くありますが、本作では、そのシズル感はまったくありません。それは給食がテーマではなく、給食を通じた人間関係がメインに描かれているからです。
 

シズル感のある作品はとても美味しそうで、読んでいるだけでヨダレものですよね。どうしても食べたくなって、買いに走ったり食べに行ったりする方も多いでしょう。

しかし、本作で描かれるのは、いたってシンプルな給食のみです。本来の給食も、配膳から食べるまで色々と準備がありますよね。たとえ湯気が立ちのぼる温かい料理が出たとしても、準備をしているうちに冷めてしまうものです。

この作品で出る給食というものも、そういう面では「当たり前の描写」として捉えていただき、給食を食べている時の子供たちの笑顔や、給食の向こう側に見える人間模様を、楽しんでもらえればと思います。

「新クラスになって友達が出来るまでの第1歩」1巻【ネタバレ注意】

5年生に進級して仲の良かった友人と、クラスが離れ離れになってしまった佐野くんは、新しいクラスで友達が出来ないままの学校生活を送っていました。毎日毎日、ひとりで食べる給食は味気なくて淋しくて、いつしか”味”というものも感じなくなり、ただ食べるだけだったのです。

そんな佐野くんの隣の席には、周りから浮いているけれど、いつもひとりでも美味しそうに給食を食べている岩谷さんがいました。

著者
飯田
出版日
2016-11-11

 

小学生時代の給食は、あまり好きではなかったとか美味しく感じられなかったという方もいるのではないでしょうか。今から考えると、子供たちの成長に欠かせない栄養素がいっぱい詰まった大切な食事のひとつ。

でも、友達と一緒に食べるのとひとりで食べるのでは、当然味も変わってきます。誰かと一緒に食べることで嫌いなものを克服できるということもありますが、この作品ではそういった子供たちの「時間」から給食の大切さを感じていただければと思います。

また、もちろん食に関してはとても大切なことですが、一番大切なのは給食そのものではありません。この作品では、人気者だったり目立ちたがり屋だったり、内気だったりいじわるな子だったりと、絶対にひとりはいるような子供たちが、どのようにして繋がっていくのかが、重要なところでもあるのです。

 

夏休みが明けると変わる”あるある”2巻【ネタバレ注意】

佐野くんが思い切って、クラスで人気者の阿久津くんに話しかけたり、岩谷さんと給食を食べたりするようになり、学校生活も楽しくなってきた頃に夏休みに入ります。

髪の毛を切りすぎたかなと悩みながらの新学期、真っ黒に日焼けした阿久津くん、イメチェンしたクラスメイト、さらには岩谷さんまで真っ黒に日焼けしていました。中には、誰だか分からないほど変わってしまった友人もいて、戸惑うなか2学期がスタートします。

著者
飯田
出版日
2017-08-18

2学期ともなると、佐野くんのことを好きになる子も出てきたり、女子が絡んできたりと佐野くんの周囲の雰囲気も、いい感じに変わってきました。大抵、1学期では新しい友達を作り、2学期ではクラス全体が馴染み、3学期、仲良しグループが定着した頃になるとクラス変えや進学となります。

佐野くんも、初めは恥ずかしくて話せなかった阿久津くんと普通に話せるようになりました。また、人に優しく明るい人気者の阿久津くんが家庭の事情を背負っていることを知った佐野くん。自分にない物に憧れたり、羨ましく思ったりするのは当たり前のこと。ただ、その裏には色々な事情を抱えている人もいると言うこと、人を見かけで判断してはいけないということを、改めて勉強させられます。

大人になっても絶対に忘れたくない「給食の味」3巻【ネタバレ注意】

 

3学期も終りに近づいた2月。佐野くんのクラスは、6年生を送る会で合唱することになります。そんなある日、阿久津くんの弟が怪我をして病院に運ばれたとの連絡が入りました。友達だからこそ、家庭事情が複雑な阿久津くんの力になりたいという佐野くんと岩谷さんの言葉に、今まで耐えてきた思いがあふれ出し、阿久津くんは大粒の涙を流しました。

翌日の給食の時間、阿久津くんは佐野くんたちと一緒に給食を食べたのです。その一方で、引越しを1年後に控えた岩谷さんは、卒業と同時にみんなと離れ離れになるのが辛くて、ひとりで悲しみ苦しんでいました。そんな時、佐野くんは岩谷さんにこう話したのです。

「岩谷さんが…引越ししちゃうって聞いたときは寂しかったけど。でも、それより…これから1年何があるのかなって、楽しみにしたいと思ったんだ。」(『給食の時間です』3巻から引用)

著者
飯田
出版日
2017-12-19

友達が出来なくて寂しい思いをしていた佐野くんが、1年後の先のことではなく、これから1年間の楽しみを考えるという前向きな思いは、とても大きく成長したと感じられます。しかし、成長したのは佐野くんだけではなく、それぞれの子供たちの心の成長にも繋がりました。

こんなことあったな、あんなこともあったなと思い出させてくれる、懐かしかったあの頃。誰もが一度は通り過ぎたあの時間……。読むときっと心に訴えかけてくるはずです。感動という言葉しか見当たらない完結巻までイッキにどうぞ。


いかがでしょうか?給食が懐かしく思えたり、食べたくなったりしませんでしたか?心温まる物語で、忘れかけていた時代を思い出してみるのもまた、素敵なことですね。

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