数学でよく聞く「フェルマーの最終定理」。この証明を発見したといわれるフェルマーは有名な数学者のひとりですが、実は彼自身が正式に証明したわけではないのです。今回は、彼の謎や秘密が明らかになる本を紹介していきます。
フェルマーはフランス生まれ、空腹と貧困ゆえに農民が絶えず争いを起こしていた時代に誕生しました。父エドゥアールは、彼が生まれてからすぐに他界したため、母マリーに育てられます。
マリーは法律家の家系で育っていたため、フェルマーにも弁護士資格を取るように教育。彼は地方の学校を卒業しトゥールーズで学んだ後、弁護士となります。後に母のいとこのルイズ・ド・ロンと結婚し、1631年にはトゥールーズの請願委員に選出されました。
頭が良かった彼は、趣味として数学を楽しんでいました。1630年に古代ギリシャの数学者、ディオファントスが著した『算術』の注釈本を愛読しはじめ、その本にある48の余白に解説を書き込みをしたものが、のちに「フェルマーの最終定理」の誕生のきっかけとなるのです。
そして順調にキャリアを積み重ねていき、1648年にトゥールーズ議会の勅撰委員にまで地位を上げ、高等院参与に就任します。その後はその地位から降りることなくトゥールーズで生涯を過ごし、1665年に逝去しました。
1:数学は趣味だったため、研究はメモ書き程度しか残さなかった
彼自身数学者になりたかったわけではなく、数学を趣味として楽しんでいました。そのため何か功績を出さなければいけないという意識は少なく、発見した研究成果を自分で論文などに残すことを嫌っていたそうです。
彼は発見をするたびに交流のあった学者たちに自分が証明できた問題を送りつけては、解けるかどうかを試すということをくり返し、数学を楽しんでいました。そんな様子だったので発見したことや研究課程はメモ書きでしか残さなかったようです。しかし彼から手紙を受け取った数学者たちが彼の研究を証明し、明るみに出ることとなりました。
2:パスカルやデカルトと交流があった
パスカルとは共同で確率論の基礎を作りあげ、デカルトとは解析幾何学を創案することに成功しました。デカルトが二次元までの理論にとどまったのに対し、フェルマーは三次元空間まで考えていて、デカルトよりも研究にのめり込んでいたといわれています。
3:詩も高く評価されていた
母国語であるフランス語のほかにも、スペイン語やラテン語も話すことができ、詩も多く書いていました。
4:彼が有名な数学者になったのは息子のおかげ
さまざまな発見が世に知られたのは、彼の死後に長男のサミュエルが『算術』をフェルマーの書き込み付きで再出版したからです。それをみた数学者たちが48の命題中もっとも難しいといわれていた、後の「フェルマーの最終定理」を除く47の命題を証明することができました。
1:「フェルマーの最終定理」を正式に証明したのは彼ではなかった
もっとも難しい命題といわれていた2番目の定理は、証明されてからは中学生でも理解できる簡単な内容ですが、当時の数学界の知識では難しすぎる証明であったため、彼の死後300年以上どの数学者も成功することができませんでした。
そして1995年にイギリスの数学者アンドリュー・ワイルズが最新理論を利用した結果、正式に「フェルマーの最終定理」を証明できたのです。
2:正式に証明していれば、すべてフェルマーが解くことができた
彼の書き込みのなかで証明できたと記載されていたものは、すべて後世の数学者が証明に成功しています。しかし、はっきり断言せず曖昧な答えを残している命題に関しては、数学者たちの研究の結果、否定的に証明されているものばかりでした。
実際は彼の死後に数学者たちによってさまざまなことが明らかとなりましたが、フェルマーは自分で証明することができたでしょう。
3:証明に懸賞金を付けた
300年以上数学者の悩みの種であった「フェルマーの最終定理」ですが、あまりに誰も解けないため、数学界がこの証明に懸賞金を付けたことがありました。
「数論の父」と数学者のなかで称され、多くの発見をしてきたフェルマー。その天才数学者が愛読していた『算術』に書いた命題2番、後の「フェルマーの最終定理」は、彼が生存していた時代の知識では誰にも解くことができないといわれていました。
そんな難題に時代を超えて、彼の意思を受け継いだ数学者たちがいたのです。
- 著者
- サイモン シン
- 出版日
- 2006-05-30
本作では、もっとも証明することが難しいといわれていた「フェルマーの最終定理」が証明されるまでの過程が描かれています。
この命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできないとだけ残し、数多くの謎に包まれたまま、彼はこの世を去りました。
約300年の間、その難題に数多くの数学者が諦めていくなか、そんな困難な壁に立ち向かったのが数学者ワイルズを含む数人の学者たち。彼らは数学界を変えることができたのです。
フェルマーが残した多くの壁に当たりながらも研究を続けた彼らの汗と涙の日々が描かれています。彼らはどのようにしてこの謎の証明をしたのでしょうか。その秘密を確かめてみてください。
数学は公式を覚えて計算をすることが苦手な人にとっては、なかなか苦痛な教科でしょう。本書は、そんな方が読めば数学に対する苦手意識がなくなり、本当は面白いんだ!と感じさせてくれるような内容です。
「数学ガール」は学生から大人の方まで幅広く人気があるシリーズです。新しい視点から数学に向き合うことができ、数学の世界に自然と吸い込まれていくでしょう。数学だけではなく物語の展開と一緒に楽しんで読んでみてください。
- 著者
- 結城 浩
- 出版日
- 2008-07-30
主人公の男の子をはじめとする、数学が趣味の高校2年生の登場人物たちがさまざまな問題を解きながら、数学の世界の面白さを見せてくれるお話です。
実際に問題を解く箇所もあり、物語としてだけではなくて問題集としても使うこともできるでしょう。シリーズ2作目の「フェルマーの最終定理」では、ピタゴラスの定理や素数、背理法など多くの数学知識が内容に含まれています。
数学に苦手意識のある高校生から、もう1度数式のおさらいをしたいと考えている大人までおすすめしたいシリーズ作です。
数学者たちはどのように考えて答えを導いたのか、またどうしてそのような結果が生まれたのかを実際の資料から調査しています。
今までにないくらい本格的に、「フェルマーの定理」が証明されるまでの歴史を辿ることができる一冊です。
- 著者
- 足立 恒雄
- 出版日
- 2006-09-01
「フェルマーの最終定理」を証明するまでの道のりが、詳細にまとめられた一冊です。実際に資料を博捜し、証明が難しいことを史実に基づきながら書いています。
専門でない方が読んでも、学者たちが証明困難な問題に奮闘する様子から、数学の奥深さを感じられる内容となっていますので、ぜひ手にとってみてください。
数学は得意ではないけれど、簡単にフェルマーが何をした人なのか知りたい、という方にぴったりな一冊です。
難しい数式はなく、彼の人生を小説に合わせて知っていけるのでかなり読みやすい作品です。数学をまだ勉強していない小学生でも読むことができ、天才数学者の人生や偉業に興味がわいてくるような物語が描かれています。
- 著者
- 日沖 桜皮
- 出版日
- 2010-03-20
東京に暮らす若者の主人公が日常からタイムスリップし、中世ロシアのオイラー、日本の志村・谷山などさまざまな時代の数学者たちに出会いながら、物語がくり広げられていきます。
数学の歴史、そして同時に描かれる主人公の恋の行方が見どころとなっています。数式や問題を解くこともないため、純粋に史実に基づいた小説として楽しめるでしょう。
趣味で続けていたフェルマーの書き込みが彼の死後、多くの数学者に影響を与え、世界を変えることができました。そんな彼から私たちが学ぶことも多いのではないでしょうか。