神秘の四冊
最近では世の中ほんとに息苦しいといいますか、細かいとこのあげつらいゲームみたいなのばっかなんで、もうちょっと器の大きいマインドでいようぜって感じること多いです。電車の中で肩がぶつかったとかそういうのでいい大人がケンカするのやめようよ! ほんとは世界はもっと大きいはずじゃないか……。でもだからといってぶっとんでるだけもなんかキツいし、ヤーマン的なハッピーバイブス話では全然ないです。

ホンシェルジュもだいぶ回を重ねまして、ネタがつきてきた……。

ゲーテ形態学論集・植物篇

著者
ヨハン・ヴォルフガング・フォン ゲーテ
出版日
2009-03-10
『ファウスト』の作者である文豪ゲーテの、植物研究をまとめた本。自然科学者としてのゲーテや、ここでまとめられている論については、今でも通用する部分がありつつも、ある面では非科学的という批判もあって、自然科学としての細かい評価は色々ビミョーなものもあるんだと思いますが、植物にひたすら向き合って観察と記録をとり、自然や生命を、数理の公式みたいに固定してしまうのではなく、動きそのものとして捉えようとしたその観察眼と考えの独創性はすごいなと思います。

根本的なところに向かおうとするエネルギーを感じるんですが、それが文学からだけではなくて自然科学からも行こうとしたっていうのがシブいしイケてますね。故水木しげる氏が「ゲーテは人間が大きい」と言っていたのはまことにそうだなと。

ゲーテ形態学論集・動物篇

著者
ヨハン・ヴォルフガング・フォン ゲーテ
出版日
2009-04-08
ゲーテの形態学、原型とメタモルフォーゼの理論というか思想が記された自然科学論集動物篇。冒頭の観相学で言ってることがウケる。最近行った飲み屋のマスターも言っていたが、「何千人と人の顔と向き合ってると顔の作りや人相でその人のなんとなくの内面の感じがつかめてくるようになる」そうだ。やっぱりゲーテは広くて深い。

重力と恩寵――シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄

著者
シモーヌ ヴェイユ
出版日
なんて極端なこと言うんだと思ってびっくりしたが、アツい。ほんとの生を得るには自分が無になって丸ごと投げ出さないといけないなんて(しかも求めたりせずに)、そんなハードコアな考えで生きていくのなんて普通の勇気じゃ無理じゃんと思うけど、ヴェイユはその信じたものに生きて夭逝してしまった。

その気持ちを理解できるかというとちょっと追いつかないのだけど、勇気はもらえる。切実な生き方の記録として読みました。

普遍音楽

著者
アタナシウス・キルヒャー
出版日
2013-07-14
キルヒャーは17世紀ドイツ出身のイエズス会司祭で、博物学者。中世ヨーロッパのハイパーメディアクリエイター。

この本では音の発声、喉や耳の機能などから始まり、種々の楽器の構造、音楽の魔術的効果、音楽にまつわる突拍子もない神々しい話、最終的に愛とか宇宙の話にまで至る。科学と妄想が生み出した、空想メチャクチャ音楽百科事典という感じ。

この人の頭の中にどういう世界が見えていたのかはなんかもう内容があまりに時空を超えすぎていてよくわかりませんが、普遍へ辿り着こうとした壮大な夢のしるしとしてこのハチャメチャに身を委ねるのもオツではないかと思います。

この記事が含まれる特集

  • 本と音楽

    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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