食虫植物の種類や育て方をご紹介!栽培のコツ、おすすめ本も

更新:2021.12.5

植物なのに、昆虫や小動物を捕えて消化し生育する食虫植物。実際にご覧になったことありますか?実はちょっとしたコツさえ掴めば、ご家庭でも簡単に栽培することができるのです。今回は、そんな不思議な魅力あふれる食虫植物の育て方についてご紹介します。

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種類によって捕食方法が異なる食虫植物

ホームセンターやインターネットなどでも、簡単に購入することができる食虫植物。一口にいっても、実はいろいろな種類があるのをご存知でしょうか。食虫植物は世界各地に500種以上もあり、日本にもそのうち20種ほどが自生しています。捕食の仕方もさまざまで、代表的なものは次の5つ。詳しくみていきましょう。

・粘着式

ハエ取り紙のようにネバネバした粘液を出して虫を捕まえます。葉に触れると表面に生えている腺毛が獲物を包み込むように動き、もがけばもがくほど粘液が分泌されるという仕組み。

代表的な種類:モウセンゴケ、ムシトリスミレ など

・落とし穴式

葉の先端が消化液の貯まった袋のような形をしており、甘い蜜などによって獲物を誘います。袋の中は滑りやすく、一度中に落ちてしまったら二度と出ることができません。

代表的な種類:ウツボカズラ、ヘリアンフォラ など

・挟み込み式

二枚貝のような形状の葉が外部の刺激に反応して瞬時に動き、獲物を挟み込みます。食虫植物と言えば、この挟み込み式のものを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

代表的な種類:ハエトリグサ など

・吸い込み式

湖沼や湿地に多く見られるタイプ。スポイト状の捕虫袋に生えているテコ毛に触れると入口が開き、水と一緒にプランクトンなどを一瞬で吸い込みます。可憐な花を咲かせる種類も多く見られます。

代表的な種類:ミミカキグサ など

・迷路式

地中に伸びた逆Y字型の管状の葉が、螺旋構造の迷路となって獲物を誘い込みます。一方通行の水流と葉の内側に上向きに生えた毛の働きで、獲物は虫だまりまで運ばれ、そこで消化されます。

代表的な種類:ゲンセリア など

夏越し?冬越し?種類別育て方のコツとは

すでにご紹介したように、食虫植物は世界各地に自生しており、種類も多岐にわたります。品種によって生育に適切な温度や湿度が異なるため、栽培するにはちょっとしたコツが必要です。食虫植物を長持ちさせるために、育てたい品種がどのような環境で自生しているのかを把握し、ふさわしい環境で栽培するよう心がけましょう。その際に注意したいのが、夏越しと冬越しです。

そもそも「夏越し」「冬越し」という言葉を聞いたことがありますか?園芸自体にあまり馴染みのない方にとっては、初めて耳にされる言葉かもしれませんね。

日本には四季があるため、一年の間に気温や湿度が大きく変化します。特に夏場と冬場は、植物の種類によっては過酷な環境となるため、生育環境により一層の配慮が必要なのです。代表的な品種の夏越しと冬越しを例にあげ、ご説明しましょう。

・ハエトリグサ(モウセンゴケ科 ハエトリグサ属)

ハエトリグサは北アメリカのノースカロライナ・サウスカロライナ地方に自生している品種。その名の通り、2枚の葉でハエなどの昆虫を挟み込んで捕える姿は迫力満点で、まさに食虫植物界の代表格といえるでしょう。

生育に適した気温は5~25度。暑さには弱いため、夏場は水温の上昇に気を付けて風通しのよい場所で栽培します。冬場は休眠しますが寒さには比較的強いので、水やりを忘れず乾燥を避けるようにしましょう。

・アンプラリア(ネペンテス科 ネペンテス属)

日本ではウツボカズラという名称で知られるネペンテス属。葉の先端に捕虫袋をもつユニークな姿をしており、東南アジアを中心に広範囲の熱帯地域にみられます。なかでもアンプラリアという品種は高温多湿の場所を好むため、生育にふさわしい気温は20~28度。

夏場も乾燥を避けるため小まめに散水し、湿度を保ちましょう。気温が15度前後を下回ると春以降の生育に影響が出るため、冬場は室内に置いた水槽や衣装ケースの中で栽培し、熱帯魚用のヒーターなどで温度と湿度を管理します。

食虫植物のエサは必要?毎日虫をあげる必要はある?

それではさっそく食虫植物の育て方についてご説明しましょう。栽培する際に一番気がかりなのは、何といってもやはり餌についてではないでしょうか。毎日虫を与えるだなんて、考えただけでも大変そうですよね。

実は、わざわざ人間が虫を捕って与えてやる必要はありません。というのも水と日光で十分に生育するうえ、鉢を外に置いておけば、植物自身が自然に捕虫するからです。無理やり餌をあげ続けるとかえって植物を枯らしてしまう原因となることもあるため、注意が必要です。

もしどうしても餌をあげてみたい時には、チーズ片や鰹節、ゆで卵の白身などを小さくして与えるようにしましょう。食虫植物は、もともと土壌の痩せた場所で生育できるように進化した植物です。そのため肥料に関しても、原則として不要だとされています。

食虫植物の水やりと腰水の仕方

食虫植物のほとんどは湿地に生えています。そのため乾燥には弱く、湿度の高い環境を好むという特徴があります。日光のよく当たる場所に置き、水やりを小まめに行って、用土はつねに湿った状態を保ちましょう。適切な環境をキープするために、腰水とよばれる栽培方法もあります。

腰水とは?

大きめの受け皿に水を張り、その中に鉢を入れて給水させる方法です。鉢の大きさにもよりますが、水の深さはおよそ1~3センチほど。毎日水を取り換えて、夏場は高温になり過ぎないように注意しましょう。

食虫植物に興味をもったらまずはこの一冊

なかでも「落とし穴式」にあたるネペンテス属とサラセニア属を中心に、261種もの品種がフルカラーの写真とともに紹介されています。色彩豊かな植物の写真が豊富なため、見ているだけでも楽しめるでしょう。

興味があるけどどんな植物なのかな、という方にもおすすめできる一冊です。

著者
土居 寛文
出版日
2014-10-29

日本初となる食虫植物専用の常設温室のある兵庫県立フラワーセンター。そこで働く技師によって書かれた本書は、入門書としても最適です。栽培難易度や水やり頻度、日照の程度などが品種ごとにアイコンで示されているので、初心者の方にも直感的にわかりやすくなっています。

基本的な栽培方法がカバーされているのはもちろんのこと、特筆したいのが掲載されている写真の美しさ。食虫植物の魅力のひとつであるユニークなフォルムや、葉の色の鮮やかさが手に取るように伝わってきます。本自体のデザイン性も高いため親しみやすく、「マニアック」や「ちょっと不気味」といったイメージも変わるかもしれません。

これから栽培してみようかなという方に

日本食虫植物愛好会の代表を務める田辺直樹による育て方ガイド。ユーモアあふれる語り口からは、著者の植物への愛が伝わってきます。生態をよく知り、本格的に栽培を始めるための足がかりとなってくれる一冊です。

著者
田辺 直樹
出版日
2008-07-23

食虫植物栽培歴30年のベテランによって著された本書。全111ページと比較的コンパクトななかにも、経験に裏打ちされた栽培のコツがたくさん散りばめられています。確かな知識に基づいた簡潔な内容で、初めて栽培する方にも打ってつけです。

日当たりや水やりの仕方をはじめ、夏越し・冬越しの方法や植え替え、殖やし方などの栽培に関して、種類ごとに紹介。 王道の品種から珍しいものまで幅広く扱われているため、実際にどのような種類を栽培しようかと検討している方には重宝するでしょう。

辛酸なめ子、チチ松村によるコラムも収録されており、読み物としても充分に楽しめます。

食虫植物の栽培についてもっと知りたいという方に

食虫植物の栽培方法についての包括的な知識が身につく、バランスのとれた一冊です。本書で基本知識から応用まで、必要な情報をカバーすることができるでしょう。より深く植物の世界を知りたいという方におすすめできる良書です。

著者
出版日

1949年に設立された食虫植物研究会のメンバーによって書かれた本書。前半部では、研究会会員が撮影したバラエティ豊かな300点以上の写真によって、生態がくわしく紹介されています。後半部は、栽培の仕方についての記事が中心。実際に栽培した経験をもとにして書かれているため、要点がまとまっており実用的です。

初心者から上級者にまで役立つ情報がたっぷりで、読みごたえも充分。知識を幅広く得ることのできる本書は、栽培をされる方にとって頼れる一冊になりそう。さらに食虫植物の世界に魅了されること請け合いです。

食虫植物の世界をより深く知りたい方に

タイトルの通り、420種もの食虫植物の魅力を余すところなく紹介した貴重な本です。圧倒的な網羅性と情報量で、ファンならぜひ手元に置いておきたい一冊。

食虫植物を栽培する方必携のガイドブックです。

著者
田辺 直樹
出版日
2010-06-24

日本で普及している品種を中心に数多くの食虫植物が紹介されており、その数なんと420種。栽培に関する本のなかでも、これだけの種類を網羅しているものはまれだといえるでしょう。もちろん全種フルカラーの写真付きで、まるで食虫植物専門の植物図鑑のようです。

ボリュームのある充実した内容で、パラパラと写真を眺めているだけでも非常に満足感があります。育て方や生態に関する記述も品種ごとに詳しく掲載されているため、異なる種同士の特性の違いを比較する楽しみ方もできます。巻末には植木鉢や培養土についての情報も掲載されており、食虫植物の世界をよりディープに楽しむために、ぜひ目を通しておきたい一冊です。

今回は、奥深い食虫植物の世界を堪能できる4冊をご紹介しました。その魅力あふれる生態に少しでも興味をもたれた方は、実際にご家庭で栽培されてみてはいかがでしょうか。ミステリアスな彼らが、より身近に感じられるようになるかもしれません。

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