皆さんは2017年に実写ドラマ化および映画化が決定した漫画『お前はまだグンマを知らない』を読んだことがありますか?作中では奇想天外なグンマの秘密がよりどりみどり紹介されています。今回は、作品の魅力とグンマの秘密を10つ激選してご紹介致します。
本作の魅力を一言でいうと、ただの県民文化を野蛮かつ非現代社会的に描いて紹介しているところです。 群馬県のことをグンマとカタカナ表記にして、あたかも現代社会から孤立した国家のように扱っている本作は、その大きすぎるグンマ愛と誇大解釈されたグンマの文化を垣間見ることができます。
作者である井田ヒロト自身、実際に群馬県へ引っ越して暮らしていた過去があります。それゆえに、話の中で登場する文化について、群馬県民なら共感しながら読めるでしょうし、他県民なら面白おかしく群馬県について知っていくことができるのです。
また、2017年に映画化、2018年4月からは群馬テレビ、アニマックス、GYAO!などでアニメ化もされる人気作でもあります。
グンマ県に引っ越すことになった高校生・神月紀(かみつき のり)は、グンマに向かう電車の中で友人・轟から「グンマから生きて帰った者はいない」と謎の忠告を受けます。
- 著者
- 井田 ヒロト
- 出版日
- 2014-03-08
不安を覚えながらも転校初日を迎えた神月は、教室でグンマ特有の風習に従わなかったがために、周りの生徒たちに縛りあげられてしまい……。
おかしすぎる文化にカルチャーショックを受けながらも、神月は少しずつクラスメイトたちになじんだり、トチギ県やイバラキ県との抗争に巻き込まれたりしていくのでした。
引っ越すために乗り込んだグンマ行の電車の中、グンマへ近づくにつれて、死んだ目をした乗客たちが増え、車内のヤンキー率が上昇し、普通の奥様までがヤンキー口調で喋り始めます。
恐れおののいた神月はグンマ手前の高崎駅で降車しようと考えました。しかし、なぜか自動ドアが開かないです。グンマの秘密の1つめ、それはJR高崎線でグンマより数駅手前の籠原駅以降自動ドアが開かなくなることでした。
横にある開閉ボタンを知らなければ、神月でなくてもグンマへ運ばれてしまうことでしょう。こうして神月は引き返すことができなくなったのでした。
普通の豆知識ではありますが、本作では深刻度を高めた描写……いえ、ありのままの実態を描いています。青ざめながら降ろしてくれと叫ぶ神月の必死さに、恐怖と笑いの入り混じった感情を覚えること間違いありません。
引っ越して初めての登校日、クラスメイトたちから威圧的な視線を向けられ、戸惑いながらも自分の席につきます。
その後に朝のHRの挨拶を皆でするとき、クラスメイト達が口にした言葉は「起立・注目・礼」というものでした。当然神月は「起立・礼」だと思っており、周りが「注目」に徹しているなか、1人お辞儀をしてしまいます。
その瞬間、クラスメイトたちの間に衝撃が走ります。目を血走らせ、各々に机の足や箒の柄を向けるような態勢で神月を囲んだのです。
トチギ県の工作員と疑われ、グンマ県桐生市の名物「紐川うどん」で縛りあげられる神月。たったひとつ風習を間違えただけでこの絶体絶命の状況です。彼はどのように抜け出すのでしょうか?今後神月がグンマに順応していく過程が見ものですね。
ちなみに、「注目」する対象は、担任の先生やグンマの神、隣の人など、諸説あるようです。
住人たちの生態にもグンマの秘密が隠されていました。海に面していないグンマで生活する人々は、海を見ると脳内麻薬物質が過剰に分泌され、異常な興奮状態に陥ってしまうのです。
ただ感動するのではなく、叫び声をあげて周りなど気にせず海へと一目散で走っていきます。日ごろから野蛮な面の多いグンマ人の凶暴性がグレードアップしてしまうとは恐ろしいことですね。
作中では、神月の頭のなかに、海を見て「なんなーん!なんなーん!!」と狂ったように叫びだす小学生のいとこ・実くんの姿が頭によぎっていました。
内陸の県などいくらでもありそうですが、海というものはグンマの住民には特に刺激が強いようです。グンマ出身のお友達がいる方は海へ連れて行ってみましょう。
神月は実くんの運動会へ応援のために向かいます。小学校に着いた彼は、実くんに赤組か白組かを問うと、ぞっとした表情を浮かべられてしまいました。
それもそのはず、4つめのグンマの秘密がその理由です。グンマの運動会は「赤城(赤)」・「妙義(緑・黄など)」・「榛名(黄・青・緑など)」などで団分けするからです。「浅間(黄・白)」・「白根(白)」なども存在します。
この妙義や榛名というのはグンマを取り囲む山々の名前なのですが、自然ならば葉の色が変わりしますよね。その点、上にも示しているとおり団の名前と色が一定していません。黄色が妙義を表すのか、榛名を表すのか、グンマの住人以外にどうして分かることができるでしょうか。
笑えてくるほど分かりづらい世界ですが、そんなややこしい団分けをしてでも、地元の自然を愛するのがグンマの良いところなのかもしれません。
ある下校途中、神月が偶然訪れたお店に、自販機がたくさん置いてありました。5つめのグンマ県の秘密は、自販機店舗が異常に密集していることなのです。
本作では「自販機店舗の聖地とされ、他所からの巡礼者が後を絶たない」とすら書かれています。
ただグンマの情報を紹介するだけでなく、コメディとしてこのように過大表現されている場面が多々あり、ツッコミどころ満載なのです。
自販機店舗が多い理由を、東西冷戦時代に総合戦略基地として作りあげたからと説明する店主は、グンマを失えば日本は死ぬとまで言い切ってしまう始末です。
しかし、疑わしい情報のなかにも、政界進出した人材が群馬には4人いるという事実を混ぜ込んでいるので、ついつい読者はグンマの魅力と偉大さにとらわれてしまうことでしょう。
グンマの名物に、だるま弁当というものがあります。赤いだるまの形の容器をしているのですが、「人間の頭部を入れるには小さい」という説明を加えているあたり、血で血を洗う抗争の絶えない野蛮なグンマらしさが窺えますね。
そのような弁当事情など知らない神月は、ある時トチギ県工作員から逃げ込んだ交番でのり弁を奢ってもらうことになりました。
しかし、そのことを轟に話すと驚愕の事実を知らされます。それが6つめの秘密、グンマの弁当は2択であり、だるま弁当か鳥めし弁当だけなのです。そして、グンマの交番なら必ず置いてあるだるまが、神月のいる交番には置いておらず……。
緊張の瞬間、神月の後ろにはトチギ工作員が……!コメディから一変、神月はシリアスな表情を浮かべるのです。たかが隣県されど隣県のトチギ県との抗争の幕が切って降ろされました。物語の展開にメリハリがある点も、本作の魅力でしょう。
トチギとの抗争で白衣観音像の最上階にとらわれた神月を助けようと、轟たちクラスメイトが駆けつけます。
白衣観音像がどういうものかは、きちんと作中で説明されています。そこらの観光パンフレットより興味を抱かせるのが上手なのは、作者のグンマ愛の強さゆえでしょう。
それはさておき、白衣観音像のなかへと入っていった轟たちの前に立ちはだかるのは、異様なオーラを放つ老人でした。この門番を倒すには?先へ進むにはどうしたらよいか?
それは7つめのグンマの秘密に答えがあります。白衣観音像の拝観料である300円を払えばいいのです!
……あまりに単純明快な答えですよね。しかし、この緊迫感とグンマの秘密を掛け合わせたくだらなさが、本作に笑いを生んでいるのです。常識を覆す数々の展開に読者はやみつきになることでしょう。
トチギとの戦いの最中、助けに入ってくれた上級生である女子高生2人によって戦いの決着がつきます。彼女たちの強さとはいったい何なのか?それは、自転車通学にありました。
8つめのグンマの秘密は、自転車通学者はほぼ全員に肉体変化が起こることです。山が連なっている地形のため、冬場は特に風の強く、未整備な通学路において、学生たちは命がけで毎朝登校します。学年があがるにつれて登校所要時間は短くなり、疲労は慣れたものになっていくのです。
その結果、自転車通学者の肉体の一部が異常な進化をとげることとなります。先述した女子高生2人はふとももが筋肉で異常に太くなってしまっていました。ミニスカートで謳歌する青春時代を犠牲にした賜物です。
また、その気になればグンマの女子高生は東京の男子高生を本気度70%の蹴りで殺せるとのこと。女性ですら傭兵のごとく鍛えられるグンマという環境の、壮絶さがうかがえますね。
神月のいる高校に突然中学3年生の男女の双子が駆けつけてきました。その後ろには鬼の形相をした双子の親族一同が……。
壁を破壊し公立の進学校へ行けと迫る母親たちに対し、双子たちが口走ったのは、9つめのグンマの秘密、グンマ県内における偏差値上位の公立高校は全部男子校・女子校であることでした。
このあとに続くのは、双子による男子校・女子校の偏見のオンパレードです。結局、グンマ民ならではの不可解な説得に応じ、双子たちはグンマエリートの道を進むことに決めます。
納得いかないながらも、その説得内容に魅力を感じてしまっている神月のうろたえぶりにも注目です。どのような説得なのかは、本作の76話を読んでみて下さいね。
- 著者
- 井田 ヒロト
- 出版日
- 2017-07-07
訳があってアイチ県からグンマへやってきた少女が風邪を引いた際、轟が真っ先に取り出したのは下仁田ネギでした。
この下仁田ネギ、やはりグンマの秘密とだけあって他のネギよりも栄養が豊富であり、別名「殿様ネギ」とも呼ばれているそうです。
そんなものを懐から取り出す轟も異常ですが、彼を見て「お前だったらグンマの未知の力で治る的な変なものを絶対持ってると思ってた!」と笑顔を浮かべる神月もどこか可笑しいですよね。
本作を読んでいくにつれて、神月と同時進行でグンマに思想が侵食されていく点には気をつけましょう。
以上、『お前はまだグンマを知らない』に登場するグンマの秘密を10選紹介しました。異色でありながら皆郷土愛が強いだけの温かみのある(?)県ですね。実写化やグンマ旅行に備えて、実際に本作を読むことでグンマをより深く知ってみてください。