こんにちは、松原汐織です。何歳になっても「自分」について悩むと思います。これはきっと永遠のテーマ。自分を理解し成りたい自分になるのは容易いことではないけれど、そっと背中を押してくれる3冊を紹介します。
- 著者
- 平野 啓一郎
- 出版日
- 2012-09-14
相手によって自分が変わることは無いだろうか。穏やかな気持ちで居られる相手と意地悪な気持ちになる相手。前者は自分を好きになり、後者は自分を嫌いになる。そして、本当の自分とは何なのか悩んだ経験がある人も少なくはないはず。
本は、出会うべき時に出会うものだと思う。タイトルにハッとさせられたり、巻頭を読んで心惹かれたり、そんな時に出会った本は自分に何か気付きを与えてくれる。本作品に出会った時も私は自分を模索していたように思う。自分がどうなりたいのか。それを叶えるためにどんな心持ちで生きていけばよいのか。
私とは何か 「個人」から「分人」へ
「分人」とはdividual。分けられる存在。対して「個人」とはindividual。分けられない存在。ブレない自分なんていうものは有り得ず、本当の自分なんてものは無い。私達は日々様々な相手に応じた「分人」を入れ替わり立ち替わり生きている。そして、ポジティブな「分人」もネガティブな「分人」もコミュニケーションの中で作られるものであるから、半分は他者のおかげ(もしくは、せい)なのである。
消してしまいたい、生きるのを止めたいと思うのも、複数ある「分人」の一つであるから、自分すべてを否定する必要も無い。
私達は「自分」に対して期待しすぎているのかもしれない。頑張りすぎるあなたへオススメの一冊。
- 著者
- 山崎 豊子
- 出版日
- 2016-07-28
中学時代から好きな作家と聞かれると、ずっと山崎豊子氏の名前を答えてきた。もちろん、山崎氏の小説はすべて読んでいる。『沈まぬ太陽』『不毛地帯』『華麗なる一族』……。どれも私の成長過程に欠かせない本ばかり。でも、なかでも特別に山崎氏の脳内を知ることが出来る気がしてファンには堪らないのは未完の本作品である。作成中に亡くなってしまい、御本人が書き上げた第一部+秘書の野上氏と編集室が予測し作り上げた第二部&第三部という構成になっている。未完は残念ではあるが、第二部と第三部に関しては巨匠とともに作品を脳内で作り上げているような感覚もまた楽しい。
主人公は、元海軍少尉で米軍の捕虜第一号となった父を持つ、海上自衛隊の潜水艦「くにしお」乗組員。衝突事故が起き、世間からの反発が強まり徐々に自分を見失って行く。時代や周囲に翻弄され人間の不条理さを感じながらも、藻掻き模索して光を見つけて行く。これぞ山崎作品の醍醐味だ。
第一部の〆はこう綴られていた。
畏れを抱きながらも。揺るがぬ決断がそこから生まれる気がした。
どれほどの人が揺るがぬ決断を抱いているのだろう。自分が何を選びどう進んで行くのか。お尻を叩かれている気持ちにさえなった。
政情不安な今だからこそ争いごとがリアルに、そして人知れず守られていることを強く感じてしまう。数カ月前ならば、また違った感想だったかもしれない。平和があるから「自分」が保てていることにあらためて気付く。どうか穏やかな日々が続きますようにと心から願う。
- 著者
- 佐久間 裕美子
- 出版日
- 2017-06-22
『ピンヒールははかない』タイトルを読んで「私も」と思った女子の皆様。そして、「え、私ピンヒール大好きなんだけど」と思った女子の皆様(私はこっち)。そして、ピンヒールを履いたことが無いであろう男性の皆様にも読んでいただきたい一冊なのである。
著者の佐久間氏は大学院卒業後NYに移り住み、現在はシングルのライター。NYに20年、しかも自分の足でしっかり立って生きている。この情報だけでバリバリと仕事をこなし、格好よい女性なのだろうと読む前から憧れてしまう。そして、もう一つ大事な情報がシングルライフを楽しんでいるということ。
シングル=不幸、は違う。「=」で繋ぐ人があまりに多い。これをシングリズム(シングルの人が受ける差別)と言い、NYのシングルライフは東京に比べたら遥かに生き易いそう。東京は、日本は、あまりに「結婚は未だ?」に拘りすぎる。27歳独身の私も、かけられる何気無い一言にシングリズムを感じることが在る。
本文中に登場する女性達はさすがダイバーシティなNYらしく、様々な生き方をしている人ばかり。読んでいてディープな女子会をしている気さえ起きてくる。
You have to stand up for yourself. (自分のために戦える人間になれ)
自分で自分を幸せにしてあげたい。でも、見た目も心も鎧を着せるのは嫌だ。品やかに美しく戦って生きたい。
ヒールを履かなくてもよい。履いても履かなくてもよいのだ。自分が無理せず楽しく生きられるのであれば。
見上げたら、空が高くて秋を感じました。読書の秋(年中読んでいますが)、いつにも増してドップリ本の世界に浸りたいと思います。
Photographer : JITO YU
Hair&Make-up artist : SAYAKA SHIBUYA
Stylist : MINORU