熱帯魚のなかでも、随一の人気を誇るグッピー。その美しさと飼いやすさから、初心者から上級者まであらゆる熱帯魚ファンを魅了しています。今回はその飼い方や、おすすめの本をご紹介します。
グッピーの最大の特徴といえば、美しく大きな尾ひれです。非常に色鮮やかな尾ひれは、種類によって色彩や大きさが異なります。
ですが、この美しい尾ひれはオスだけの特徴です。メスの尾ひれにはオスのような派手な色彩はなく、全体的に地味な魚です。
メスの特徴は、オスよりも体の大きい点などが挙げられますが、一番の特徴は「卵胎生」と呼ばれる特殊な繁殖方法を取ることといえます。通常の魚類は卵を体外に産み落として繁殖を行いますが、グッピーのような卵胎生の魚類は体内で卵を孵化するまで育てます。
哺乳類の主な繁殖方法である胎生と少し似ていますが、卵胎生は胎生とは違い、母親から子供へ栄養が供給されることはありません。あくまで、卵が孵化するまでお腹の中に留めておくだけです。また、雄雌共通の特徴として、非常に丈夫で多少の水質の汚染程度なら平気で生きられる生命力の強さが挙げられます。
このため、グッピーは熱帯魚をはじめて飼う人でも飼育が比較的容易に行えます。しかし、寒さには非常に弱い魚なため、飼育の際は水温の調整に気をつけましょう。
飼育のための最低限の設備は以下になります。
●水温計
先述したようにグッピーは寒さに弱いため、特に冬場は水温をしっかりと管理しなければいけません。 水温計を使用し、水温が23度から26度くらいを維持できているかどうかチェックしてください。
●ろ過装置(フィルター)
ろ過装置は、水槽の水を綺麗に保つための装置で、フィルターとも呼ばれます。
魚を飼っていると、どうしても水槽内の水がエサの食べ残しやフンで汚れていきます。いくら丈夫で多少の水質汚染は平気な種類の魚だとしても、汚れた水で飼うのはおすすめできません。病気の原因にもなりますし、汚れた水ではせっかくのグッピーの美しさを充分に楽しむこともできません。
ろ過装置は必ず設置しておきましょう。
●照明
照明は、グッピー自体には無くても健康上の問題はありません。しかし、水草(後述)を水槽内に設置するなら、水草に光合成をさせるために設置しておいた方がよいでしょう。
水草がしっかりと光合成ができる環境を作れば、水草が水槽中の有害物質を取り除いてくれる他、苔の発生防止にもなるため、結果的にはグッピーによい効果をもたらします。
●ヒーター
グッピーは寒さに非常に弱いため、水温の低下だけは避けなければいけません。
しかし、常時つけっぱなしになくても大丈夫です。冬場だけ、水温が23度を下回らないように、ヒーターを使って調節してあげましょう。
●エアーポンプ
グッピーに限らず、魚を飼うならエアーポンプを持っていた方がいいでしょう。エアーから水槽に酸素を送り込むことで、水槽内の酸素不足を起こすことを防ぎます。
水草があればそこから酸素が供給されますが、枯れてしまうこともあります。もしもの時のためにも、エアーポンプを設置しておくことがおすすめです。
水槽の環境をつくるものには、グッピーが住みやすい環境を作るための設備や、水槽の雰囲気を作るインテリアアイテムなど、たくさんの種類があります。今回は、住みやすい環境を作る設備のみご紹介いたしましょう。
●ハイポ
グッピーは淡水魚なので、水道の水で飼うことができます。しかし、水道水には殺菌・消毒に使われる「カルキ」が含まれているので、カルキ抜きをしなければいけません。
そこで使用するのが「ハイポ」と呼ばれる薬品です。水道水を入れた水槽にハイポを入れて良く溶かすだけで、簡単にカルキ抜きが出来ます。
●底砂
続いて水槽の底に敷く砂を選びます。
底砂はなくても構いませんが、ちゃんと敷いておくと水槽の水質をグッピーの過ごしやすい「弱アルカリ性」にしてくれます。ただし底砂の種類によっては弱アルカリ性にならないものもあるので、気をつけて選びましょう。
底砂は、以下の二つがおすすめです。
1:ソイル
ソイルとはアクアリウム用の土のようなものです。ソイルを敷いておくと水草の育成を助けてくれます。水質も弱アルカリ性にしてくれるので、グッピーを飼うには非常に適した底砂です。しかし、1年に一度はソイルを新しいものに交換する必要があります。
2:大磯砂
こちらもグッピーに適した底砂です。ソイルと同じように弱アルカリ性の水質にしてくれますが、大磯砂は土ではなく砂利なので水草は育ちにくいです。しかし、大磯砂のソイルと違い、非常に長持ちします。
一度敷いておけば交換する必要はほぼありません。水槽の管理が非常に楽になるため、ソイルよりも大磯砂を好んで使用する人が多いです。
グッピーは繁殖力が強く、特定の繁殖期もないので1年を通して繁殖させることができます。そのため、しっかりと計画して繁殖を行わなければ子供が増え過ぎてしまうのです。もし繁殖をさせたくないなら、オスとメスは別々に飼いましょう。
繁殖には「産卵箱」などの便利なアイテムがありますが、今回は非常にシンプルな方法をご紹介します。
必要なものは、普段飼育している水槽とは別の、繁殖用の水槽です。そちらの水槽の環境も、なるべく飼育している水槽と同じものにしてあげましょう。以下が、手順になります。
(1)まず、オスとメスを数匹繁殖用の水槽に入れます。この時オスは少なめに入れておくと、メスの繁殖の際にかかる負担を減らすことが出来ます。
(2)先述したとおり、グッピーは卵胎生なのでメスのお腹のなかで卵を育てます。しばらく様子を見て、メスのお腹が膨れて黒ずんでいたら卵を産んだ証です。
(3)その後稚魚がふ化したら、水槽から親を取り出しましょう。これは親と稚魚を一緒の水槽に入れておくと、稚魚が親に食べられてしまうからです。
(4)稚魚に餌をあげる際は、親が食べているものと同じ餌を、稚魚の口にも入るように小さくすりつぶしてあげましょう。あとは自然に成長します。
ただし、稚魚は泳ぐ力がまだ弱いため、ポンプやろ過装置の水流は少し弱くしてください。稚魚が親と同じくらいの大きさにまで成長したら、同じ水槽で飼っても大丈夫です。
グッピーを知るなら、まずはこの本から。飼い方、種類、繁殖についてなどについてしっかりと知ることができます。
さまざまな種類を写した写真も掲載されているので、カタログとしても有用です。
- 著者
- 岩崎登
- 出版日
- 2014-10-22
長年グッピーを愛し、その深い愛から専門店を開いてしまうほどのマニアである岩崎登の著書です。グッピーのプロフェッショナルともいえる方の著書なだけあり、必要な知識がしっかりと記されています。
200を超える美しい多種多様なグッピーの写真は、初心者の心を魅了すること間違いなし。さらにこの本には、著者が長年培ってきた繁殖のノウハウが惜しみなく詰め込まれています。
グッピーの繁殖には、簡単なようで奥深いという大きな魅力があり、彼らの無限の可能性を感じさせられます。これから飼い始める方も、もうすでに飼っている方にも、ぜひ読んで頂きたい一冊です。
こちらはグッピーの飼い方も掲載されていますが、やはりメインは美しい写真です。
世界有数の熱帯魚専門写真家である小林道信が手掛けたグッピーの写真は、この世のものとは思えぬ美しさ。芸術性と癒し効果の高い本です。
- 著者
- ["斎木 孝夫", "小林 道信"]
- 出版日
- 2003-07-01
本書はグッピーを飼っていない方にもぜひ手に取ってほしい一冊です。小林道信がカメラで切り取るグッピーの姿は、肉眼で見るのとはまた違った、一種のアート作品のような美しさがあります。その高い芸術性は、どんな人でも虜になってしまうこと間違いなし。
すでに飼っている方は、ご自身で飼っているグッピーと写真とを見比べてみるのもいいかもしれません。 アーティスト目線で切り取られたグッピーの新鮮な姿を見たら、あらためて彼らの魅力に気づかされることでしょう。
もう一人の著者である斎木孝夫は、非常に優れたグッピーブリーダーであり、数々の賞を受賞しているスペシャリストです。こだわりの解説は情熱の溢れた内容となっています。ハウツー本としても優れた一冊であり、グッピーファン必読の書いえるでしょう。
こちらは上記の2冊とは違い、グッピーの専門書というわけではありません。ですがグッピーを飼うなら知っておきたい、熱帯魚の知識が詰まっています。
水槽内のレイアウトや水草についても記載がある、非常に汎用性の高い本です。
- 著者
- 出版日
- 2009-07-17
今回の記事でも簡単にご説明させていただいた、水槽の設備や環境の整え方が、非常に丁寧に記されています。
この辺りは、はじめてグッピーを飼う方の多くが戸惑うポイントになっているので、本書を片手に水槽の立ち上げをおこなうことをおすすめします。
また、200種類以上の熱帯魚が掲載されているため、グッピーの飼育に慣れてきたら、一緒に泳がせる熱帯魚探しにも役に立ちます。
さらに、熱帯魚の病気や注意点もしっかりと記されているので、非常に頼りになる一冊でしょう。
これらの本は、グッピーを飼い始める前に読んでおくと、飼い始めてアクシデントが起こっても冷静に対処するための知識が得られます。どの本も美しい写真が多く掲載されているので、気軽に息抜き感覚で読めます。ぜひ、その目で確かめてみてください。