今回ご紹介するのはミジンコです。小学校の理科の授業で観察した方も多いのではないでしょうか。どこにでもいる生き物ですが、その小さな体には神秘がたくさん詰まっています。今回は、その神秘に触れられる本をご紹介します。
ミジンコとは、世界中の池などに生息するプランクトンの一種です。プランクトンと聞くと、アメーバなどの単細胞生物をイメージする人が多いでしょうが、ミジンコは単細胞生物ではなく、多細胞生物です。また、エビやカニと同じ甲殻類の生き物でもあります。
繁殖方法は、基本的には「単為生殖」と呼ばれるメスのみでおこなう方法です。単為生殖で産んだ卵からはメスしか生まれません。しかし、環境の変化などにより個体数が減ってしまった時だけは、単為生殖で産まれた卵からオスが生まれ、その後オスとメスによる有性生殖が行われます。
このとき産まれる卵は「耐久卵」と呼ばれる、環境の変化にも耐えられる丈夫な卵です。 この耐久卵は環境が良くなると孵化し、そして生まれた後はまた単為生殖を繰り返します。
このように非常に不思議な生態を持つミジンコですが、小さすぎるためにペットとして飼われることは多くありません。しかし、捕獲のしやすさと、繁殖が容易なことから、熱帯魚などのエサとして飼われていることが多いです。
今回の記事では、その繁殖方法も含めてご紹介します。
ミジンコはため池などに生息しており、夜に採取に行くと簡単に捕まえることができます。その際に必要なものは懐中電灯と採取用のバケツくらいです。夜になると水面に浮かんでくる習性と、光に集まる習性があるので、懐中電灯で水面を照らしておけば自然に集まってきます。
このように非常に簡単に採取できるうえに、飼育も非常に楽です。エサも基本的には特別なものを与える必要がなく、水槽を日の当たるところに放置しておくだけで問題ありません。
飼育するために必要なものは以下のとおりです。
●スポイト
ミジンコは小さすぎるため、スポイトを一つ持っていれば数匹だけ取りたいときなどに便利です。 熱帯魚に餌として与える際には、基本的にスポイトを使用します。
●水槽(ペットボトルでも可)
水生生物のため水槽で飼います。しかし、しっかりとした水槽ではなく、ペットボトルでも飼うことが可能です。その場合は、採取する際バケツの代わりにペットボトルを使えば、入れ替える必要なく飼うことができます。
●採取してきた池の水
ミジンコのエサは水中のバクテリアや植物性プランクトンです。これらのエサは採取した際に一緒にすくえるので、採ってきた水でそのまま飼育するといいでしょう。その際、十分に日光が当たる場所に水槽を置いてください。日光が当たることで水中の植物性プランクトンを増やすことができます。水槽に藻が生えてきたら充分にエサがある証拠です。
注意すべき点は、ミジンコを食べてしまうボウフラの増殖です。ボウフラを見つけたらスポイトで少しずつ取り出し、駆除しておきましょう。
●イースト菌
イースト菌は、ミジンコのエサが足りないときに使用します。イースト菌を少量水槽に溶かすことでエサになり、また環境さえ整っていればイースト菌も勝手に増えてくれるので経済的です。うまく飼育できない時には、ぜひお試しください。
繁殖条件として、水温が挙げられます。25~28℃程度が最も繁殖に適した温度とされており、20℃以下になってしまうと繁殖しなくなります。
また、同じ水槽に個体が増えすぎても繁殖が止み、場合によっては数が現象してしまうことも。もし多く繁殖させる必要がある場合は、水槽を2つに分けるなど、特定の環境にミジンコが増えすぎないようにしましょう。
他に必要なものはありません。上記の条件が満たされていれば、自然に繁殖してどんどん増えてくれます。その際、やはりボウフラなどの害虫がいないかどうかだけ、気をつけてあげてください。
代表的な種類は以下になります。池などから採取すると、高確率で下記の種類が混在しています。
●ダフニアミジンコ
一般的にミジンコと呼ばれるのはこの種類です。日本のありとあらゆるところに生息し、教科書などに使われる写真もこの種であることが多いです。魚のエサとして問題なく与えることができ、採取も容易。また、ダフニアの耐久卵はネットで販売されていることも多く、最も手に入りやすい種類ともいえます。
●ケンミジンコ
見た目はダフニアとは大きく違い、エビのような姿をしています。動きが非常に素早いのが特徴です。こちらも問題なく魚のエサにすることができますが、その見た目から害虫と見分けにくいため、間違って駆除してしまわないように注意しましょう。
●タマミジンコ
タマミジンコは体が柔らかく活発に泳ぎ回るので、魚のエサとして非常に適しています。そのため、ダフニアと同じくネットで販売されていることが多く、入手も容易です。見た目はダフニアと少し似ていますが、よく見るとやや丸い姿をしています。
飼い方や採取方法などが、詳しく記された一冊です。
しかし、この本のメインとなる内容は、ミジンコの生態系のなかでの役割についてです。ミジンコを知ることで生態系を分かりやすく知ることができます。
- 著者
- 花里 孝幸
- 出版日
- 2013-07-17
生態系や食物連鎖についての教材に適した本となっています。
また、ミジンコを用いた実験も紹介されており、小学生や中学生のお子さまへのプレゼントとしても適している良書です。理科が嫌いな子でも、楽しく生態系を学ぶことができます。
ペットのエサのために飼おうとしている方でも、この本を読めばミジンコを飼うことにも面白さを感じるようになるかもしれません。
なかには非常に本格的な実験もあるので、童心に帰ったつもりで実験してみてもいいでしょう。 大人から子供まで、幅広い世代におすすめできます。
ミジンコの神秘的な生態に魅せられ、数十年の歳月をかけた坂田明の研究の成果をまとめられています。
本職はジャズミュージシャンというユニークな方ですが、この本の完成度の高さを知ると、どちらが本職なのか分からなくなってしまうでしょう。
- 著者
- 坂田 明
- 出版日
- 2013-01-17
飼い方、スケッチ、繁殖についてなど、坂田明が手探りで行ってきた体験談は非常に面白く、これから飼育しはじめる方には特に手に取っていただきたい本です。
また、本書からはユニークな人柄もうかがえます。ジャズミュージシャンとしての坂田明のファンの方にとっても、彼を知ることができる良書といえるかもしれません。
さらにこの本は著者の体験記だけではなく、ミジンコのDNAや生態研究の専門家との対談の様子も収録されています。
ミジンコ目当ての方にとっても、著者のファンの方にとっても満足のいく内容といえるでしょう。
こちらも、一冊目に紹介した作品と同じ著者・花里孝幸によって執筆されたものです。
一冊目と同じく、ミジンコから見える生態系や、住処の環境を主眼に置いた、非常に読みごたえのある本です。
- 著者
- 花里 孝幸
- 出版日
- 2006-04-20
消費者と生産者のちょうど中間にあるミジンコが生態系にもたらす役割や、生息する池の環境について詳しく記されています。飼育するだけなら不必要な知識も多くあるかもしれませんが、この本を読むことで水槽内のミジンコの見え方が変わるかもしれません。
たとえば、ミジンコを飼っている水槽は藻があまり過剰に発生しにくくなります。これはミジンコの水質浄化作用が働いているため起こります。このような現象は自然の池や湖でも起こっており、このことについて本書では詳しく解説されています。
ただのエサだと思っていたミジンコの凄さが本書を通じて分かれば、ミジンコのこともペットのように可愛がってしまうかもしれません。
今回はミジンコについて、詳しく書かれた本をご紹介させていただきました。紹介した本で、その魅力を感じて頂けたら幸いです。