真実はいつもひとつ!……でも面白い推理漫画がひとつだけとは限りません。今回は『名探偵コナン』好きにおすすめできる、優れた漫画5作品をご紹介していきます。
通称「キュウ」こと、主人公の連城究(れんじょうきゅう)は中学3年生。学校の勉強はからっきしでしたが、彼には並外れた推理力があります。かつて自分を救ってくれた探偵に憧れていて、高校へは行かず、探偵養成学校「団探偵学園(D.D.S.、Dan Detective Scool)」を志望しました。
そして、入学試験をとおして知り合ったクラスメイトの美南恵(みなみめぐみ)、天草流(あまくさりゅう)、遠山金太郎(とおやまきんたろう)、鳴沢数馬(なるさわかずま)と協力して、難事件に挑んでいきます。
- 著者
- さとう ふみや
- 出版日
- 2001-09-17
本作は2001年から「週刊少年マガジン」で連載されていた天樹征丸原作、さとうふみや作画の作品。少年向けミステリー漫画としては『名探偵コナン』と双璧を成している、あの『金田一少年の事件簿』でおなじみのコンビです。
すでに実力が知られている作者だけに、内容も折り紙付き。作中に登場するトリックもさすがのでき映えですが、なかでも優れたアイデアは、探偵学園という架空の学校を舞台にしている点かもしれません。
通常こういった作品では、主人公が謎を解く手前、その周囲でばかり事件が起こることが多くなりがちです。探偵養成学校というバックボーンを設定することで、そこに来た依頼を解決しに探偵見習いが派遣されるというパターンを形成し、毎回事件が起こるという不自然さを払拭することに成功しています。
学生探偵が5人で活動するという点では、『名探偵コナン』に登場する少年探偵団と似た要素を持っています。ただしあちらの少年探偵団とは違って、本作は全員が探偵の卵。しかもそれぞれが得意とする能力を持っています。キュウは柔軟な思考と知力、ヒロインの恵美は瞬間記憶の持ち主なのです。
解決編の前には経緯が整理され、わかりやすい形で読者にヒントが与えられます。より推理に特化した作品だといえるでしょう。登場人物の年代や展開から、「コナン」より対象年齢は少し上で、本格的に推理モノを楽しみたい方向けになっています。
私立咲坂高校に通う燈馬想(とうまそう)は、風変わりな天才少年としてクラスでも浮いた存在です。ある日、クラスメイトの水原可奈(みずはらかな)は、あるゲーム会社で起きた密室殺人事件に想と共に遭遇し、そこで彼が見せた思わぬ才能を目の当たりにしました。
優れた洞察力と確かな知識があり、想は事実を付き合わせて、見事に答えを導き出したのです。
それから2人は、頭脳担当の想、捜査担当の可奈という二人三脚で、数々の事件の真相を暴いていくことになります。
- 著者
- 加藤 元浩
- 出版日
- 1998-12-14
本作は1997年から「マガジンGREAT」「マガジンイーノ」「月刊少年マガジン+」などで連載されていた加藤元浩の作品。本編は50巻にのぼり、現在も続編『Q.E.D. iff-証明終了-』が連載中の人気作です。
タイトルの「Q.E.D.」とは推理小説「エラリー・クイーン」シリーズに登場する同探偵の口癖が由来。元はラテン語の「かく示された」という意味の言葉で、古い数学用語でもあります。同時にこれは本作の主人公である想の口癖にもなっています。
想は15歳にして、名門マサチューセッツ工科大学の数学科を首席卒業した天才少年です。その経歴でわざわざ日本の私立高校に編入してきた変わり種ですが、数学の天才だけに非常に論理的。機械関係にも強く、ただ自身で動くことを嫌うので、調査はもっぱら人任せという典型的な安楽椅子探偵です。
そんな彼の目となり耳となり、手足となって調査する相棒役が、ヒロインの水原可奈です。明朗快活にして剣道の達人。ある意味で主人公より頼りになるあたりは、「コナン」の毛利蘭のようでもあります。
本作は推理漫画ですが、他のタイトルに比べて殺人事件を扱う頻度が低いという特徴があります。日常的に見られる些細な謎を追うことも多く、そういった点が魅力で物語のファンになるという人も少なくありません。想の精緻でロジカルな思考には定評があり、本格ミステリーの面からも親しまれています。
人間国宝を祖父に持つ、文楽人形の名門・橘家の若き人形遣い橘左近(たちばなさこん)。彼は童人形「右近」を操り、見世物をしながら全国津々浦々を旅しています。
2人(?)は不可思議な事件に次々と遭遇するのですが、左近がずば抜けた推理力を発揮し、事件を解決へと導いていきます。そこには彼が得意とする人形劇よりも怪奇な人間模様が渦巻いているのです。
- 著者
- 小畑 健
- 出版日
本作は1995年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた写楽麿原作、小畑健作画の作品。
人形のように無表情な人形遣い左近と、人間のように感情豊かな人形の右近という異色のコンビです。ジャンプにサスペンス主体の推理漫画が連載されるこも異色ですが、人形遣いと人形という、探偵役の主人公が実質相棒役も兼任するという、異色ずくめの異色作です。
普段は左近に喋らせて、自分は影に徹する右近。いざ事件が起きると、2つ分の思考力を総動員して物事を客観視し、優れた洞察力で謎を解いていきます。
舞台設定がそうさせるのか、詳しく語られない時代背景のせいなのか、全編にわたっておどろおどろしい雰囲気が漂っています。そのしっとりした雰囲気は昭和の探偵モノに近いでしょう。
その特異な雰囲気が祟ってか、不運にも半年ほどで打ち切りの憂き目に遭ってしまった本作。それでもなお、小畑の美麗な作画、特徴的な設定、「ジャンプ」で珍しい本格ミステリーといった部分から、いまだにカルト的な人気を誇っています。
主人公は、月臣学園高等部1年生の鳴海歩(なるみあゆむ)。兄の清隆(きよたか)が「ブレード・チルドレンを追う」という謎のメッセージを残して失踪してからちょうど2年が経ったある日、彼はたまたま女子高生飛び降り事件の現場に居合わせてしまいます。そして、他殺捜査の線から、殺人容疑をかけられてしまうのです。
歩は名探偵と呼ばれた兄譲りの推理力で事件を解決し、難を逃れました。しかしその事件を機に、彼は「ブレード・チルドレン」を巡る大きな事件に関わっていくことになるのです……。
- 著者
- 城平 京
- 出版日
本作は1999年から「月刊少年ガンガン」で連載されていた城平京原作、水野英多作画の作品。『スパイラル・アライヴ』という、ミステリー色を強めた外伝もあります。
推理漫画のくくりで本作をご紹介すると、少し語弊が生じるでしょう。本作はミステリーよりもサイコスリラーに重きを置いた漫画です。事件の謎を解くというよりは、犯人との直接対決、知能戦が描かれています。相手の行動を読み、心理を推理し、追い詰めていくのです。
探偵役となる主人公の歩は、なんでもこなせる一種の超人。しかし、彼の兄である清隆はその上を行く人物だったので、いまいち自信の持てない少年に育ちました。しかし兄の失踪以後、事件に巻き込まれてからは急速にその資質を開花させていきます。
歩の相棒でヒロインの結崎(ゆいざき)ひよのは、彼より1年先輩のはずですが、風貌と幼い言動のせいであまりそう見えません。しかし新聞部の部長だけあって、情報通かつ調査能力は抜群。当初打たれ弱さのあった歩を、公私ともにサポートします。
失踪した兄の残した謎の言葉、そしてその言葉を背負った少年少女が歩の前に次々と現れます。「ブレード・チルドレン」とは一体なんなのか、清隆はどこへ消えたのか……一連の事件は、歩自身にも関わる予想外の展開をみせていくのです。
物流倉庫で働く主人公の片桐真実(かたぎりまこと)は、2人暮らしの妹、真彩(まあや)を養うために真面目に働く青年です。家の事情から高校進学を断念して仕事に専念していましたが、真彩の進学を機に一念発起。就業しながら通える、妹と同じ通信制高校に入学しました。
そこには、同い年のワケありの男女から、祖父ほどの年代まで、幅広い同級生たちがいました。そして、中卒労働者とは縁もゆかりもない、お嬢様の逢澤莉央(おうさわりお)までいるのです。身分違いの2人は互いに反発しますが、やがて惹かれあっていくことに……。
- 著者
- 佐々木ミノル
- 出版日
- 2013-05-29
本作は2012年から青年誌「コミックヘヴン」で連載されている佐々木ミノルの作品です。
『名探偵コナン』好きにおすすめる漫画としては、これまでご紹介したものとはかなり毛色が異なります。通信制高校という、さまざまな人々が集まる人種の坩堝を舞台として、そこで巻き起こる人間模様を描いた青春漫画です。
コナンといえばミステリー、確かにそうでしょう。しかし、作品に彩りを与える要素はそれだけではありません。かたやミステリー、かたや社会派青春ドラマで本筋の物語はまったく異なりますが、登場人物をより魅力的に際立たせるラブコメ要素は驚くほど共通しているのです。
「恋はスリル、ショック、サスペンス」といつか歌われたように、「コナン」でもラブは重要なエッセンスですよね。
妹想いの真実は、基本的に真面目で根は優しいのですが、短気でつっけんどん。自身に中卒労働者のレッテルを自ら貼るなど、卑屈な面も持ちあわせています。
一方ヒロインの莉央は、本来なら苦労知らずで何不自由なく暮らすはずのお嬢様なはず。しかし彼女にも、誰にも相談できない心の闇があります。人付き合いを苦手とし、強気な態度を取っていますが、真実の誠実さに触れて徐々に変化していくのです。
この2人の反応がとても初々しく、お互いどうしようもないツンデレで、相手を想うがゆえにすれ違うところは思わずやきもきしてしまいます。まるで事件の最中に一瞬だけ邂逅する、新一と蘭のようです。
若くしてシングルマザーの斉藤若葉や、その娘でクラスのアイドルひなぎく、76歳の年長者松井善治など、他では見られないような心の交流が垣間見られます。『名探偵コナン』のラブコメ要素を楽しみにしている方は、本作もぜひお試しください。
いかがでしたか?面白そうと思った作品は、1つと言わず、2つ3つと、欲張って手を広げてみて下さい。