今さら聞けない!マイナス金利をわかりやすく解説。メリット・デメリットも

更新:2021.11.10

マイナス金利とは、どういう政策なのでしょうか。自分の口座にあるお金が減ってしまうの?と心配した方もいると思います。今回は、マイナス金利の概要、メリット・デメリットを、理解が深まる書籍とあわせて解説します。

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マイナス金利とは

マイナス金利とは、2016年1月に、日本に導入された景気を刺激するための政策のひとつです。

物価上昇率を2%に近づけたい意図があり、日本銀行が以前から実施していた政策である「量的金融緩和・質的金融緩和」を補強するために導入されました。

マイナス金利は、日本銀行と民間の金融機関(市中銀行、地方銀行、ネットバンク)の間で発生するものであって、個人が保有している口座の金利がマイナスになるわけではありません。なお市中銀行とは、一般の預金者からお金を預かって、個人や事業者にお金を貸し出す銀行のことです。

市中銀行は、日本銀行に当座預金口座を持っていて、預金しています。いま預けている分にはこれまでどおり金利がつきますが、新規で預ける分についてはマイナス0.1%の金利が適用されるのです。

これによって、各金融機関は日本銀行の口座にお金を預金するのではなく、企業や個人に融資する選択をとることになります。その結果、市場にお金が流通し、景気が回復するきっかけとなります。

なぜマイナス金利を導入した?量的緩和、質的緩和とは

では、日本が2016年1月というタイミングでマイナス金利を導入した理由は何でしょうか?

日本は2008年に起きたリーマンショックからゼロ金利政策を導入し、もう金利に関する政策は無いと思われていました。経済を活性化させるためには、金利ではなく他の方法で、と考えられていたため、量的緩和と質的緩和で対策を講じてきたのです。

量的緩和とは、日本銀行が金融機関から国債を買い取り、金融機関が自由に利用できるお金を増やして、市場に出回らせようとする施策。

一方の質的緩和とは、日本銀行が金融機関から買い取る資産の対象を拡大し、超長期国債や上場投資信託(ETF)など、リスクが相対的に高い金融商品も買い入れようとする動きのことです。

量的緩和・質的緩和ともに市場にお金を出回らせることが目的の政策です。しかしこれらにも限界がきていて、他にどういう政策があるのかと思われていたところに実施されたのがマイナス金利でした。

日本の歴史上、初めてマイナス金利が導入されたので目的が達成されるかはまだわからないですが、一般的にいわれているメリット、デメリットは下記のとおりです。
 

マイナス金利のメリット、デメリット

マイナス金利のメリットは主に4つあります。

1:高額ローンである住宅ローン、自動車ローンなどの金利が下がる

今まで借りることができなかった人の審査の難易度も緩和され、自動車業界や不動産業界に恩恵があるといえます。

2:円安になる

円安になると、日本に来る外国人の消費が増える、つまり、訪日外国人が増えて、観光業、旅行業、航空業界に追い風になります。円よりも他の通貨の方が金利をもらえるので、外貨に両替した方がいいとする投資家が増えることで、円安を導くのです。

3:株価が上昇する

円安により物価が上昇し、それによって株価が上昇します。

4:量的緩和が進む

日本銀行は額面以上の金額で国債の買い入れをすることで、量的緩和が進みます。

一方で、マイナス金利のデメリットも主に2つあります。

1:個人が持っている口座の金利が下がる

民間の銀行は日銀に預金をしても利息がつかないので、個人にたくさんお金を預けてもらう必要がなくなります。そうすると民間の銀行の利息も下がるので、個人で銀行に預金をする人が少なくなり、預金額が少なくなる可能性が高いです。

2:金融機関の利益が少なくなる

上記の結果として、ATM利用料や振込手数料の引き上げを実施する可能性があります。利息は少なくなり、払うお金は多くなるため、個人にとってはいいことなくなるでしょう。ここで日本銀行は、金融機関の収益が大きく悪化しないように、当座預金の全体ではなく一部に対してマイナス金利を適用しています。

今までわかってなかったマイナス金利や経済のことがわかるようになる!

著者
海老原 嗣生
出版日
2017-05-19

新聞を読んだりニュースを見たりはしているけれど、実はよくわかっていなくていまさら聞けない……という方に最適な本です。最初から順番に読んでいくと、読み終わる頃には金融経済政策がわかるようになります。

各用語の説明を図と文章で解説する構成になっていて、理解しやすい内容になっています。

問題の本質を知ることで、未来を予測できるかも?

著者
松村 嘉浩
出版日
2016-04-22

マイナス金利とは?イスラム国のテロは東京オリンピックでも起こる?景気はよくなる?などを考えて解決しようとすると、「これからの世の中はどうなっていくのか?」「何が本質的な問題なのか?」「我々はどうするべきなのか?」という3つの質問への回答が必要になるはず。本書ではそれを理解することができます。

小説を読む感覚で必要な知識がついていくので面白く、「新劇の巨人はなぜ売れたのか?」「セックス・アンド・ザ・シティのキャリーが気づいたこと」などキャッチーなタイトルもページをめくる手を早めます。

バンカーの葛藤をとおしてマイナス金利など金融の未来を見る

著者
江上 広行
出版日
2017-07-03

さまざまなタイプのバンカーが、マイナス金利、フィンテック、パラダイムの転換、リーダーシップ、ダイバーシティなどについて触れながら、現場のありのままの思いと葛藤を語っています。

参加しているバンカーの発言が時系列になっていて、臨場感も伝わってくるでしょう。

マイナス金利という政策は、日本に住む我々にとって重要で、なおかつ基本的な政策であるため、理解することが大切です。紹介した3冊はどれも堅苦しく考えず楽しく学べるのでおすすめです。

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