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『クロエの流儀』が面白い!正論でボコる系ガールの是非を考えてみた

更新:2020.11.27 作成:2017.10.5

2015年9月に発売され、正論で相手をボコボコにするクロエの性格が話題になった『クロエの流儀』。彼女への感想はスッキリするというものと気持ち悪い、というものに分かれます。今回は本作の賛否両論の感想について徹底考察!ネタバレありなのでご注意を。

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『クロエの流儀』の魅力に迫る!賛否両論の理由についてネタバレ考察!

著者
今井 大輔
出版日
2015-09-09

フランス人の美少女・クロエが現代社会のちょっとしたルール違反を、バッタバッタと容赦無く斬っていく『クロエの流儀』。雑誌「週刊漫画ゴラク」からwebサイト「ゴラクエッグ」に移籍して連載された作品です。

本作の感想は賛否両論。スッキリするという意見と気持ち悪いという意見に分かれます。確かにその正義感は賛否両論を巻き起こしそうな過激なもの。

しかしそれはキャラ立ちの良さとも言えます。事実、『あいまいみー』の作者ちょぼらうにょぽみは、クロエを混じえたオリジナル漫画で彼女の性格を「やめよう!通り魔説教!!」と揶揄します。

果たしてクロエがそんな賛否両論を巻き起こしてしまう原因はどこにあるのでしょうか?この記事では1、2巻の名言、読者の賛否両論の感想をまじえながら物語を紹介していきます。ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。

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『クロエの流儀』は爽快?気持ち悪い?【あらすじ】

フランス人のクロエは日本の高校にやってきた転校生。その美しさで周囲の人々をひきつけますが、実は彼女はかなりのギャップの持ち主でした。性格は正義感溢れる超熱血漢で、口調も武士のようなのです。

クロエは老若男女、初対面関係なく、悪いと思うことがあれば口に出して注意。しかもその内容がかなり手厳しい。

今日も現代の武士女子高生クロエは悪を斬りまくります。


著者
今井 大輔
出版日
2016-12-28

『クロエの流儀』1巻の名言:「明日から玄関出る時にまず脳ミソのマナーモードをオンにしておけ」

1巻からの名言は初登場時、電車でのクロエの様子からご紹介します。ある少年は通学中に電車で碧眼の美少女を見つけました。それがクロエ。

その子に見とれ、どこの制服だろう、そういえば英語教師のアンドリューが英語上達には恋人をつくるのが早いと言っていたことなど頭をめぐらし、何か決意の表情をするのですが……。

そこに流れる携帯の着信音。持ち主の男は何事もなかったかのように通話し、「全く…」とつぶやきます。

それを見て少年はマナーモードも通話のルールも守れない男に憤りを感じ、外国人がいるところで日本の恥をさらさないでくれ、と思いますが、勇気が出せずその声を心の中でだけに留めます。

乗客みんなも思っているであろう気持ちにまったく気づいていないようで、その男はまたしても通話を始めてしまいました。そんな彼にクロエが近づきます。

出典:『クロエの流儀』1巻

こう一言威圧し、ズバズバと彼のマナー違反を指摘します。

「通話がうるさい訳ではないが 許されてるつもりのキサマがムカツク
あと混んだ車内で足組むな ジャマだ
明日から玄関出る時にまず脳ミソのマナーモードをオンにしておけ

フトドキモノ」

そんなクロエに少年はあっけにとられながらも、「サムライだ…」と尊敬している様子。その男も恥ずかしそうにしながら下車します。

なかなか辛辣な言葉です。自分では言えないぼんやりとした嫌な気持ちを代弁してくれたという思いもありますが、そこまで言わなくても、とも感じてしまいます。

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著者
今井 大輔
出版日
2015-09-09

『クロエの流儀』2巻の名言:「ご馳走様でした」

ズバズバと言葉で相手を威圧するイメージのクロエですが、外国人らしく日本に慣れていないところや、普通の行動が周囲に影響を与えるという面もあります。そんな彼女の良さが分かるのが丼ものを提供するファストフード店でのこと。

そこで会社の上司と部下のようなふたり組がごはんを食べながら食べ方のマナーについて話しています。子供の頃からきつく言われていたという話で同調するふたり。

ハシの持ち方やどんぶりに口をつけることなどをあげた後、横でそれすべてができていなく、あげくポロポロとご飯をこぼし、ねぶりばしまでするクロエを見つけます。彼女を見て笑うふたり。

しかしあまりにも美味しそうに食べるクロエについ見とれてしまう部下の男。そんな彼には気づかずに食べ続けるクロエ。

出典:『クロエの流儀』2巻

そして食べ終わった後も礼儀正しく、しっかりとこう言うのです。

「ご馳走様でした」

そんな彼女に、思わず店員も満面の笑みでお礼を言います。しかもクロエは自分がこぼしたご飯を床から拾って帰るのです。どこまでも礼儀正しい。さらに帰り際に袖にごはん粒がついていると言われ、恥ずかしそうに「なかなかムズカシイ」と頬を赤らめ、帰っていく姿は可愛らしくも映ります。

そんな彼女を見て美味しく食べられる方法が一番だと思ったのか、その部下はどんぶりに口をつけてごはんをかき込み、「うまいっスね」と上司に言います。マナーだけがすべてではないということを外からきたクロエに気付かされた瞬間です。

1巻の名言のように辛辣な言葉で街の悪を退治することもある彼女ですが、こんな抜けてるところもあるんですね。そしてそれでもいつも礼儀正しい彼女には背筋が正されます。

著者
今井 大輔
出版日
2016-12-28

賛。言いたいことも言えないこんな世の中に飽き飽き!勧善懲悪にスッキリ!

賛。言いたいことも言えないこんな世の中に飽き飽き!勧善懲悪にスッキリ!
出典:『クロエの流儀』1巻

本作の魅力は何と言っても勧善懲悪的な爽快感。クロエはフランス人という設定から、日本を外から見られる存在としてある意味フラットで治外法権的な立場として登場します。

そして日本好き外国人らしく、時代劇で日本語を勉強した、とほおを赤らめたり、「暴れんぼう上様」見なきゃ、と走って帰ったりして、ところどころで微笑ましい様子を見せることも。そんな彼女の姿は普段の厳しい言動とのギャップで読者の好感度をあげるとともに、治外法権的な存在だということを際立たせます。

本作に高い評価をつけている人たちはそんな彼女の正当性を認め、スッキリするという意見が多いようです。クロエの美しく気高い様子に惚れる、というキャラへの好感度もあります。

ある日、クロエは酒を飲みながら大勢で道を占拠しながら歩き、大声で話して周囲の迷惑を考えない、成人式を終えたばかりの若者たちにナンパされます。

酔いのテンションと彼女の可愛さに浮かれる若者たち。クロエは表情も変えずにこう言います。

「脳ミソの成人式はまだか?ミジュクモノ
歩道で横に広がるな ゴミをその辺に置くな
自分達のことしか見えておらん振る舞いが 五歳児のそれと何ら変わらぬ」
(『クロエの流儀』1巻より引用)

クロエの過激な名言のひとつです。なかなかうまいこと言います。

そしてそのあとも長文でお説教。青年たちはきょとんとしてハイ、とお返事。言われるがままです。先ほどまでいきがっていただけに、それにイライラしてた読者としてはスッキリです。

普段言えないことを彼女が代弁してくれるのが本作の最大の魅力でもあります。クロエ節が炸裂すればするほど、もっとやれと言いたくなるようなエンターテイメントを魅せてくれるのです。

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否。持論を振りかざす一方的な攻撃が気持ち悪い

否。持論を振りかざす一方的な攻撃が気持ち悪い
出典:『クロエの流儀』1巻

普段言えないことを言ってくれるクロエが見せる展開や性格が魅力でもあるのですが、確かにそれは一方的でもあります。

本作を批判する人々は、クロエを通して言わせていることが作者の持論の押し付けのように感じ、言われる相手もまったく反論しないことに違和感を感じるようです。

現代日本の問題点を突くというストーリーにも関わらず、確かにリアリティがない部分もあります。一方的にお説教を聞かされて大人しく従うばかりの人々、正論ではあるもののそこまで言うかという面もあるクロエの意見が、いつも正しいと確定されている予定調和の展開。

予定調和が悪いという訳でも、漫画だからできる表現が悪いという訳でもありませんが、確かにそういう面もあるでしょう。

ある日、クロエは校内でも有名なイケメンの先輩に告白されます。しかし彼はかなり鼻持ちならない人物。地区大会でベスト4のキャプテンでエース、成績も上位、親が医者で裕福、学校での人気投票も1位ということを自らアピールします。

そしてクロエに彼女を選んだ理由を問われ、堂々と「カワイイから」と見た目だけだということを宣言し、「正直この学校でオレ断ったら他いないよ?」と言います。

そんな彼に、クロエはこう言うのです。

「世の中は快適そうだな カエル男(中略)
ステータスに別に文句はないが 現状に満足し優越感に浸る
その向上意欲が見えないつまらない男に 一切興味は無い」
(『クロエの流儀』1巻より引用)

スッキリすると言えばスッキリするという決め台詞ですが、あくまでそれはクロエの中の持論であり、顔だけを見て人を選別する彼の持論も、彼が披露しただけでそこまで言うことかとも思えてしまいます。

そもそもクロエの敵のように描かれている彼ですが、高校生という年頃で多少スペックが高ければ勘違いしても仕方なし。社会に出る前の、よくいるリア充な少年のひとりなのではないでしょうか。

また、リアリティがないという面が確かにあり、これは少年がなんだかんだいい子だから成り立つ話であり、逆上されて力でねじ伏せられれば女の子のクロエはひとたまりもないでしょう。

クロエの流儀は少し力任せなところがあり、そこが批判されるのも仕方ないこと。しかし作者の今井大輔もそれは分かっているようで、1巻の作者コメントでは「クロエは正しいというより、強いんだと思います」と述べています。

ただし、その強さが正しいことのように描かれているので問題なのですが、そこは難しいところです……。

漫画『クロエの流儀』の賛否両論ふまえ、正解を考えてみた【最終回ネタバレ注意】

賛否を考えてみて、そこまで目くじらを立てるほどの作品ではなく、単なる女子高生の勧善懲悪ストーリー、エンターテイメントなのではないか、という気持ちと、クロエが正しいという訳ではないにしろ、そういう位置づけで描かれている物語は反対の意見を持つ人にしては気持ちの悪いものだろうという気持ちが拮抗します。

しかしこうすれば『クロエの流儀』はもっと面白くなったのではないかという展開が本作の中にあります。それは4話の「喫煙」というエピソード。

ルールを守っているにも関わらず、周囲から白い目で見られることも多い肩身の狭い昨今の喫煙者。このエピソードでも行き場のない気持ちを抱えている会社員に、クロエが優しい言葉をかけるのです。

それはルールを守って自分の嗜好を楽しんでくれることへの感謝でした。

著者
今井 大輔
出版日
2016-12-28

本作の問題は力に対して力で立ち向かっていることではないかと、個人的に筆者は感じます。正と位置付けられている意見に少し偏りがあり、一方的だということに対し、自己満足の意見を押し付けられているように感じる批評があったのではないでしょうか。

もしクロエが剛ではなく、柔で世直しをしていけば、反発もそこまで強いものにはならなかったのではないかと思うのです。また、悪いところを力ずくで直していくよりも、良いところを見つけてさらに広めていくストーリーの方が見ていて気持ちがいいものになるかもしれません。

この話は今までほとんど他人を褒めなかったクロエが珍しく褒めたエピソードで、しかも喫煙者だったということから、作者が喫煙者擁護派だという論調で感想を言われがちなエピソード。

しかし話の本質はルールを守っている人には優しいクロエ、ということだと思われるのでいつも通り彼女の一本筋の通った姿のひとつだと思われます。それは今までと同じ論理なのかもしれませんが、どこか優しい気持ちになるものです。

そしてこの方向性は最終回でも見られます。空き缶をそこらへんに捨てる若者を見かけたクロエと同級生の少女。少女はその空き缶を広い、クロエは私があいつにガツンと言ってこようか、と彼女に聞きます。

しかし少女はそれをゴミ箱に捨てるだけにしました。そしてこれが今の自分が示せる精一杯の流儀だと語るのです。

同級生の少女から、クロエの正義感はひとつの考え方、やり方であって、全面的に正しいものではない、他のやり方もあるということが結末では語られることとなりました。この会話はとても良い雰囲気のものなので、ぜひ作品で読んでみてください。

クロエのやり方が必ずしもすべてではない、と説明する分量が少なく、一元的に感じられることからここまで批判されることになったのかもしれません。面白くなりそうな作品だっただけに、結果的に2巻で完結してしまって残念です。

今回賛否両論の感想で多く言われている意見から作品を考察しましたが、否定する人も語りたくなる作品というのはなかなかないもの。ぜひ一度この作品をご自身でご覧になってみてください!