日本の隣国、韓国と北朝鮮の間でおきた朝鮮戦争は「いまもなお続いている」ということを、皆さんはご存知でしょうか?遠いようで近い朝鮮半島で起きているこの戦争についてわかりやすく解説します。
朝鮮戦争は朝鮮半島において、1950年から始まった大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の戦争です。
死者は南北合わせて500万人にものぼるといわれています。街は荒廃し、多くの戦争孤児が出るなど、朝鮮半島は大混乱となってしまったのです。
約3年にわたって泥沼化したこの戦争において、 アメリカではマッカーサーが原爆の使用をも検討していました。結局当時の大統領トルーマンにより解雇され、また世論もあって現実になることはありませんでしたが、第二次世界大戦以降初めての核戦争の危機があったことは事実です。
1953年の7月27日に、南北の代表とソ連およびアメリカの代表が会合をおこない、休戦協定が成立しましたが、実質的な終戦にはいまだ至っていません。
政治体制や経済状態も大きく異なる朝鮮半島の2国、韓国と北朝鮮は、もともとひとつの国でした。
1897年から1910年までは大韓帝国という国が半島を統一していたものの、1910年からは「韓国併合」により日本の統治下となります。
1945年の第二次世界大戦の終結とともに日本が撤退。その後朝鮮半島の統治に乗り出したのが、連合国側であったソ連とアメリカです。北緯38度線を境に、北側をソ連が、南側をアメリカが占領することになりました。それまでひとつの国だった朝鮮民族が、この時、分断されたのです。
その後もアメリカとソ連の対立が続き、両国が統一されることなく時間が過ぎていきました。
1948年8月15日、李承晩(イ・スンマン)が宣言を行い、38度線より南側に大韓民国が成立します。
それに対抗するように同年9月9日、ソ連の後ろ盾を得た金日成(キム・イルソン)が北朝鮮の成立を宣言。同じ朝鮮民族が暮らし、統一の可能性が模索されていた2国でしたが、これを機に本格的な分断へと至ったのです。
1950年6月25日、北朝鮮が突如北緯38度線を越えて南下を開始。朝鮮戦争が始まりました。国連の安全保障理事会は停戦を呼びかけると同時に北朝鮮を非難する声明を発表しましたが、停戦に至る様子はありません。3日後には、北朝鮮軍は韓国の首都ソウルを制圧しました。
韓国には日本に駐在していたアメリカの援軍が向かい、反対に北朝鮮には中国から大量の戦闘員が流れ込み、戦闘が続きます。
韓国と北朝鮮の対立の背景には東西冷戦から続く、アメリカとロシア・中国の対立が存在します。朝鮮戦争前、アメリカは朝鮮半島全域にロシア(ソ連)の支配が及ぶことを恐れて、南朝鮮に大韓民国を成立するよう働きかけました。一方の北朝鮮は、ソ連のバックアップを得て成立します。
戦時中も、韓国にはアメリカが、北朝鮮には直接介入を避けるソ連の代わりに中国が本格支援をおこないます。もともと資本主義と社会主義で相いれなかった両国ですが、この戦争でさらにその対立を激化させていきました。
1953年に交わされた協定は「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」という内容のものでした。これはあくまで戦闘などの停止を意味し、最終的な戦争終了には「平和条約」の締結が必要となります。
北朝鮮は数回にわたり平和交渉に代わる提案をおこなってきましたが、南側、特にアメリカが取りあわず、朝鮮半島の溝は深まる一方でした。
現在の北朝鮮の存在は、中国と、韓国の同盟国であるアメリカとの間における緩衝地帯としての役割を担っているという考え方があります。
朝鮮戦争が再開し、いずれかの形で決着がついたとしても、中国やアメリカ、そしてロシアといった国々のバランスが変化することは必至です。
朝鮮戦争全体を見わたし、改めてその実態を知ることができる一冊です。
著者の神谷不二は国際政治学に精通し、朝鮮半島や戦後史に関する本を多数上梓しています。本書は神谷の得意分野である国際政治学という観点から、朝鮮戦争の始まり、終わり、そしてその後を切り取っています。
- 著者
- 神谷 不二
- 出版日
- 1990-03-10
朝鮮戦争勃発当時、日本での報道は大変限定されたものだったそうです。日本人がはっきりと自覚しない間に今日まで続いてきた隣国の戦争について、我々はもっと積極的に知るべきではないでしょうか。
近現代において、戦争は一国対一国のものとなりえず、多くの国々の思惑が絡みあうものです。特にアメリカと中国の関係を考えるにあたり、朝鮮戦争は両国関係に大きな影響を及ぼしています。
本書から得ることのできる知識は、今現在の国際政治を理解するにあたっても大きな手掛かりとなるでしょう。
本書は朝鮮戦争をテーマとしたノンフィクションの戦記物小説です。
上下巻からなり、ボリューム、内容ともに読み応え十分の作品となっています。
- 著者
- 芝 豪
- 出版日
- 2014-12-12
朝鮮戦争についてあまり知らない方が読めば「これは作り話なのではないだろうか?」と思ってしまいそうなほど、この戦争の背景や被害の大きさに驚かされてしまいます。
小説というストーリー仕立てですので、専門的な歴史本にとっつきにくさを感じる方にこそ読んでいただきたい一冊です。
小説とはいえ史実にはしっかり即しています。読後は朝鮮半島関連のニュースを見る目が変わることでしょう。
本作は、朝鮮半島情勢に大きく関与したアメリカのジャーナリストが書いた、朝鮮戦争の記録です。
朝鮮戦争が始まってすぐ、アメリカは「反共産主義」のもと参戦を決めました。他国の領土問題に積極的に関与する姿勢は、ベトナム戦争を思い出させます。
- 著者
- デイヴィッド ハルバースタム
- 出版日
- 2012-08-03
アメリカや各国の主要人物たちは、何を思い朝鮮半島の争いに加担し続けたのか……多くの取材や数多の資料をもとに10年にわたって執筆された、きわめて貴重な一冊です。
上下巻からなり、時系列で朝鮮戦争の様子が記述されていきます。解説なども豊富ですので、朝鮮戦争についての知識を深めたい人におすすめです。
タイトルにある「若き将軍」とは、著者自身のことを指しています。本書は、朝鮮戦争を実際に経験した元韓国軍将軍の自叙伝です。
白善二(ペク・ソンヨップ)は33歳の時に韓国軍初代陸軍大将に任命された、優秀な軍人でした。金日成や吉田茂、マッカーサーとも面会し、数々の国際的な場面で交渉をおこなった経験があります。
- 著者
- 白 善〓
- 出版日
- 2013-04-01
彼の生い立ちから陸軍時代、そして戦後に政治家として大臣を務めたことや、政界引退後などのエピソードが書かれていますが、なかでも朝鮮戦争に関する記述に力が入っています。当時の韓国陸軍や韓国政府の様子がよくわかる、当事者の証言です。
軍事について詳しい方のあいだでは白善二の名前は大変有名で、名将としても名高い人物ではありますが、文章には堅苦しさや高慢さがなく、人柄が表れています。
朝鮮半島において動員された各国の戦力や、それぞれの戦闘の結果など、軍事という視点からこの戦争を読み解いた一冊です。
もともとひとつの民族であり、ひとつの国であった北朝鮮と韓国が、いかにして争う事態となってしまったのか。またその戦闘において各国がどのように参戦したのかなど、具体的に書かれています。
- 著者
- 三野 正洋
- 出版日
タイトルに偽りはなく、とても理解しやすい内容となっていますので、朝鮮戦争についての入門書とするのもよいのではないでしょうか。
著者は他にも日中戦争やベトナム戦争をテーマとした「わかりやすい」シリーズを書いています。他の近代戦争と比較すると、朝鮮戦争についての理解がさらに深まるでしょう。
北朝鮮は1994年から複数回にわたり「もはや休戦協定は無効である」という意思表明をしています。緊迫した情勢は変わらず、テレビで朝鮮半島に関するニュースを観ることも多いですが、その大元である朝鮮戦争について知っておくことは、現代人の教養のひとつとして必要なことでしょう。