人間社会に潜む異質な存在を描いたアクション漫画『亜人』。社会にとって物質的、精神的に異質なものをテーマとした作品は他にもたくさんあります。今回は『亜人』が好きな方におすすめする漫画5作品をご紹介しましょう。
ある晩、正体不明の謎の生物が世界の至るところに降り注ぎました。それは人間の脳を乗っ取る寄生生物でした。
主人公の泉新一はそんな寄生生物の1匹の襲われるも、辛くも脳への侵入を防ぐことに成功。その生物は彼の脳ではなく右腕に寄生し、急速に自我に目覚めていきます。こうして、寄生生物「ミギー」と新一の奇妙な共同生活が始まりました。
一方で、他の人間に擬態した寄生生物による事件が続発し、その影響は新一の周囲にもおよんできます。新一とミギー、2人は種族を越えて協力関係を結び、平穏な日常生活を守るため戦いに身を投じていきます。
- 著者
- 岩明 均
- 出版日
- 2014-08-08
本作は1988年に「モーニングオープン増刊」に読み切り中編が掲載された後、1990年から「月刊アフタヌーン」で連載されていた岩明均の作品です。
平凡な少年・新一と、異質な隣人・ミギーが主人公。新一は頭脳はほどほど、強くもなく弱くもなく、人並みの正義感を持ったごく普通の少年でした。対するミギーは知能が高く、会話は成立するものの人外の論理で思考するので、理解し合うことは難しい存在。右腕に寄生する関係上、宿主である新一とは協力関係にありますが、人間社会への意識は薄いのでした。
人知れず人類社会を脅かす、ヒトの捕食者たる寄生生物。「人間を根絶やしにする」という本能で動く、知能的な獣とでも言うべき者たちです。ミギーも充分異質な存在ですが、同種であるはずの寄生生物とミギーにもかなり違いがあります。寄生生物も闇雲に本能に従って行動する一匹狼から、後々現れる比較的理性的な者まで多種多様です。
理性的と言っても、それはあくまで「寄生生物側から見て」ですが……。
人間と寄生生物、そのどちらでもない新一とミギー。三者の主義や主張、立場が対立軸となる複雑な作品ですが、劇中ではそれらが新一個人の出来事に落とし込まれており、一読する分には決して難しくありません。環境破壊に文明批判など、普遍性のある命題が物語の根幹に組み込まれており、読み込むほどに新たな気付きを得られる作品となっています。
寄生生物はなぜ現れたのか?人類はどう対抗していけば良いのか?ミギーに近付く新一。新一に近付くミギー。徐々に変化していく彼らの関係性は、それぞれの種族の未来を暗示しているのでしょうか。
主人公の滝沢実絽(たきざわみろ)は苦手の多い内気な女子高生です。人口3500人程度の離島、沙々来(ささらい)島で生まれ育ち、先輩の串田(くしだ)に憧れて弓道部に所属していました。
彼女はある日の放課後、一つの携帯電話を拾います。届けに来て欲しい、と持ち主に指示されて山手の神社に行った彼女は、偶然出会った憧れの先輩とともに奇妙な光景を目にしました。神社裏で倒れた男と、それを見下ろす男にそっくりな「何か」。
携帯の持ち主はその何かを「鉄民」と呼びました。沙々来島の住民は密かに、機械仕掛けの鉄民に置き換わっていたのです。さらに、鉄民から逃れる過程で恐ろしいことがわかりました。実絽自身が、すでに人間に成り代わった鉄民だということが……。
- 著者
- 菅原 敬太
- 出版日
- 2015-04-28
本作は2014年からWEBコミックサイト「WEBコミックアクション」で連載されていた菅原敬太の作品です。見知った人々がいつの間にか化け物に変わっている……のみならず、自分自身が人間ではない別の何者かだったという恐怖。そんなセンセーショナルな展開で物語は幕を開けます。
鉄民と人間の違いは、一目ではまったくわかりません。鉄民の外見は成り代わった人間そっくりで、記憶まで完全に引き継いでいます。ただし、その中身は名称通りのロボット。鉄民はなんらかの弾みで仮面状の顔パーツが外れてしまうことがあり、ガイコツのようにも見える中身が露出することで区別が出来ます。
実絽も顔が外れたことで鉄民だとわかるのですが、可愛い女子高生の顔の下がグロテスクなロボット、という凄まじくショッキングなシーンです。通常、鉄民は本人の記憶を引き継ぎつつ、鉄民と自覚して独自の行動を取るようですが、実絽は不具合があったのか、自分を人間だと思っていたため、件のシーンがあるまで無自覚でした。
そのため、実絽は鉄民でありながら、人間側の存在なのです。自分も鉄民でありながら、鉄民を嫌悪して恐怖する、精神的には一般的な女子高生のままなのです。
携帯の主は、島民の10分の1が鉄民に置き換わっていると言います。異形の怪物に征服されつつある離島。誰が人間で、誰がそうでないのか。助けを求めることは出来ません。果たして鉄民たちの目的は? 事情を知る携帯の持ち主の正体は?
そして本物の実絽……、鉄民に成り代わられた人間たちはどこへ行ったのでしょうか?
青少年矯正施設、松嵐学園。無実の罪で無期懲役となった主人公・前田義明は、関東屈指の不良が集まるその施設へ収監されてしまいます。
生粋の曲者が集まる雑居部屋「4号室」での共同生活に馴染む間もなく、松嵐学園は謎の暴徒に襲われてしまいました。外界では原因不明のゾンビ感染が起こっており、日本は瞬く間に死の世界へと変わっていたのです。
未曾有の事態を前に、少年たちの生存を賭けたサバイバルが始まります。
- 著者
- イナベ カズ
- 出版日
- 2012-03-02
本作は2011年から「月刊少年ライバル」、WEBコミックサイト「新雑誌研究所」などで連載されていた蔵石ユウ原作、イナベカズ作画の作品。いわゆるゾンビモノに分類されるパニックアクションです。
本作の特徴となっているのが、主な登場人物と舞台が青少年矯正施設だということ。刑務所に入る年齢ではないけれど、少年院よりも上、という受刑者が送られる場所です。その性質上、こういった施設は頑強な高い壁や、立ち入りの難しい立地で社会から隔絶されています。おかげで犯罪を犯した者たちが感染を免れるという、なんとも皮肉な構図です。
もちろん、そんな施設内にも感染者は入り込んでくるわけですが……。
施設の少年たちはしがらみのある大人でもなく、非力な子どもでもありません。冤罪の前田を除けば、倫理観の欠けた者たちばかり。多少の荒事も最初から平気で行っていきます。特に吉岡正文(まさふみ)、岩倉剛(いわくらごう)、山野井満(やまのいみつる)たち4号室の面々は、行動力も思考力もピカイチ。口では悪態をつきつつ、4人で困難を切り抜けていきます。
そうこうする間にも事態は悪化していきます。ゾンビ化した感染者に混じって現れる、眼球に3つの瞳を持つ特殊な怪物。人々の中から現れる謎の集団。少年たちがこの地獄と化した世界で助かる術はあるのでしょうか?
主人公・児上貴衣(こがみきい)は、普通の男子高校生です。友人と無駄話に花を咲かせたり、ちょっと気になる女の子にドキドキしたり、あるいは、幼馴染みの少女・福本つくね(ふくもとつくね)がいじめられていることに心を痛めたりしながら、いつも変わらない日常生活を送っていました。
しかし、そんな日々は突然終わりを告げます。学校に突然現れた「魔法少女」。奇妙なステッキを持ったゴスロリ風ファッションの少女が、「まじかるー」と口ずさみながら教師や生徒を爆破させていったのです。しかもステッキで破裂した人間は、黒いドレスを纏って復活し、魔法少女とともにさらに犠牲者を増やしていきました。
貴衣、つくねら生き残った者たちは合流し、協力して脱出しようとしますが……。
- 著者
- 佐藤 健太郎
- 出版日
本作は2012年から「別冊少年チャンピオン」で連載されていた、佐藤健太郎の作品。魔法少女をテーマにした実質的なゾンビ・パニック・スプラッター・ホラーです。タイトルは故ジョージ・A・ロメロの代表作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』などゾンビ映画のオマージュになっており、設定や展開にもその影響が見られます。
表紙から一見してわかる狂気の雰囲気。ほろ苦い青春の1ページから一転、一面に撒き散らされる血肉と阿鼻叫喚。度肝を抜くグロテスクでショッキングなシーンが連続します。チャンピオン系列連載漫画ならでは描写と言えるでしょう。
魔法少女は学校を襲った1人だけではなく、さまざまな容姿、能力の者たちが無数に登場。いずれも人間を襲って殺し、「まじかるゾンビ」と呼ばれる手下(?)の魔法少女を増やしていきます。共通点はステッキで魔法を使うこと、異口同音に「まじかる」と呟くことです。
しかし、本作がそうした残酷な描写をメインにした大味なスプラッターかと思いきや、そうではありません。
果たして魔法少女たちは何者なのか?いつ、どこから来て、なぜ人を襲うのか?一体何を目的としているのか?謎が謎を呼び、伏線が入り乱れ、怒濤のように回収されていくストーリーにも注目です。
ピザ屋の配達バイトで生活を繋ぐ男・藤沼悟(ふじぬまさとる)は、かつては売れない漫画家でした。また、彼には人に言えない厄介な秘密がありました。「再上映(リバイバル)」と名付けた力で、自らの意志とは無関係に、特定の時間を繰り返してしまうタイムリープ能力の持ち主だったのです。
彼はその特異な能力を持つがゆえに、自身の子ども時代にまで遡る、一連の複雑な事件に運命的に巻き込まれていきます。
- 著者
- 三部 けい
- 出版日
- 2013-01-25
本作は2012年から「ヤングエース」で連載されていた三部けいの作品です。
劇中には「リバイバル」という能力が出てきますが、これは一種の舞台装置。作中で起きた殺人事件を解明するため、悟はこの力を活用します。本作の主眼はリバイバルでしか解けない謎解き、先の読めないサスペンス展開にあるのです。
歴史とは1本の流れではありません。普段人々が何気なく過ごす時間は、全てが行動の積み重ね。無数の人間が無数に関わり、十重二十重に折り重なった多層構造をしています。そこで起こった結果には、どんなに突飛であっても、必ずどこかにある原因に繋がっているのです。
悟は2006年の時間軸上で、母親殺しの罪を着せられます。そのもとを正せば、リバイバル発生中に防いだ誘拐に原因があり、さらにその誘拐犯は1988年に悟の地元で起きた連続誘拐殺人事件に関係していました。
悟は現在の母親、そして過去に殺されてしまったクラスメイトを救うため、リバイバルで現在と過去を往復します。絡まった糸をほぐすように、時間の中に埋もれた真実を探し出します。一連の事件の真犯人とは一体誰なのでしょうか?
いかがでしたか?今回ご紹介した作品で強いて共通項を挙げるなら、未知への根源的な反応でしょうか。わからないから怖い、わからないから挑戦する、わからないからわかり合おうとする。あなたなら、これら未知の作品にどのように対応しますか?