料理やお茶、アロマオイルなど、私たちの毎日の生活を豊かに彩るハーブ。手軽に始めることができ、収穫も早いため、ご家庭で栽培するにはぴったりの植物です。今回は初心者におすすめの品種とその栽培方法、活用の仕方まで簡単にご紹介します。
ハーブとは、さまざまな用途に使用することのできる香草や薬草のことを指します。今回は特に馴染みの深い品種のなかから、さらに初心者にも栽培しやすいおすすめの4種を選びました。ひとつずつ見ていきましょう。
・ミント
清涼感あふれる香りで、キャンディーから入浴剤まで幅広く使用されているお馴染みの種類。鮮やかな緑色をしているため、カフェやレストランでスイーツの彩りとして使われているのをよく目にしますね。独特の芳香には、鎮静作用があるといわれています。
ミントは生命力が強く育成しやすいため、初心者にもおすすめできる品種です。半日陰や日当たりのよい場所でよく育ちますが、直射日光に当てると葉焼けしやすく、湿度が高すぎる場所では腐ってしまうこともあります。繁殖力がたいへん強いため、庭植えではなく鉢植えでの栽培がおすすめです。
・バジル
パスタやピザといったイタリアンをはじめ、料理用としてもっとも使用されている品種のひとつがバジルです。食欲増進や消化促進などの効果があり、その汎用性の高さから「ハーブの王様」とも呼ばれています。たくさん収穫できたときは、自家製のバジルソースにして保存するのが一般的です。
日当たりがよく、比較的湿潤な場所を好みます。日照量が多いと香りが強くなりますが、日差しが強くて土が乾きやすい環境だと、葉が硬くなるので注意が必要です。花がつくと栄養分をとられ生育に影響が出ます。種をとる場合以外は早めに摘み取るようにしましょう。
・タイム
シチューやポトフなどの煮込み料理に欠かせないタイムは、ブーケガルニの主材料としてもよく知られています。ヨーロッパを中心に広く栽培されており、どんな料理にも使用できるキッチンハーブの代表格です。強い殺菌・抗菌力があるため、古くは防腐剤などとしても使われていました。
種は春に植えても秋に植えてもよく、乾燥に強く、耐寒性も抜群。高温多湿を避け、日当たりと風通しのよい場所が生育に最適です。夏場は鉢の中の蒸れに注意し、必要ならば小まめに葉を収穫して通気性を保つように注意しましょう。香りが強いため、ドライハーブにも向いています。
・ラベンダー
バジルがハーブの王様と呼ばれるなら、「ハーブの女王」と称されるのがラベンダーです。爽やかで優しい芳香はアロマテラピーなどにも使われ、古くから薬用や化粧品などに利用されてきました。鎮静効果が強く、リラックスしたい時にもおすすめの種類です。
病害虫の心配も少ないラベンダーは、タイムと同様に日当たりと風通しのよい場所を好むため、高温多湿を避けるようにして栽培しましょう。水のやり過ぎは、蒸れや根腐れの原因になります。花が咲いたらきちんと収穫と剪定をおこない、株への負担を軽減させることが長持ちさせるためには重要です。
ハーブは生育が旺盛で、初心者でも栽培しやすい品種がほとんど。ここでは鉢植えで育てる際に、ぜひ覚えておきたいコツを簡単にご紹介します。他のどんな植物にもいえることですが、原産地を知り、その品種にあった環境を整えることが栽培するうえでもっとも大切です。
・日当たり
日当たりのいい場所を好む品種が多く、1日5時間以上の日照が理想的だといわれています。ただし夏場など日差しが強いときは、長時間の直射日光で葉が硬くなったり、葉焼けして枯れてしまうこともあります。半日陰に移動させるなど、季節に応じて置く場所を工夫しましょう。
種からでも育てることはできますが、園芸店やホームセンターなどで苗を入手すると、より手軽に始められますよ。
・温度、湿度
ハーブは地中海沿岸周辺が原産のものが多いため、どちらかといえば乾燥した気候を好みます。蒸れや病害虫の発生を避けるためにも、風通しのよい場所で栽培することがポイントです。夏場や梅雨時などの高温多湿の季節は、特に気を付けましょう。
枯れた花や葉はすぐに摘み取り、茂り過ぎたときは剪定をして、つねに通気性を保つようにすることがポイントです。品種や育てる環境によって適切な温度や湿度は異なります。土や葉の様子をよく観察し、臨機応変に対応しましょう。
・水やり
鉢植えで栽培する場合、土の表面が乾燥して白っぽくなってきたころが水やりのタイミング。他の植物を栽培する時よりも水やりはやや控えめで大丈夫ですが、なかにはバジルなどの多湿を好む品種もあるため注意が必要です。
春や秋は1日に1回、夏場は日差しで乾燥しやすいため、日中を避けた朝と夕方の2回おこなうのがおおよその目安とされています。冬場は土の様子を観察し、乾燥してきたなと感じたらそのつど水をやるようにしましょう。
・土、肥料
生命力が強く丈夫な植物のため、頻繁に肥料を与える必要はありません。ただし葉や茎の色が薄くなったり、病害虫に弱くなった時は栄養不足の可能性があります。生育の状態に合わせて、やりすぎに注意しながら肥料をあげましましょう。
ほとんどのハーブは弱アルカリ性から中性の土壌を好みます。日本の土はもともと酸性寄りであるため、場合によっては石灰などを混ぜpHを調整する必要があります。土や肥料については、ハーブ栽培専用のものも市販されているので、園芸初心者の方はそちらを購入するのがおすすめです。
一説によると、ハーブは紀元前5000年頃にはすでに美容や健康、魔除けなどの目的で使われていたといわれています。そんな先人たちの生活の知恵を、毎日の生活に取り入れてみましょう。
・主な効能
ハーブの効能は幅広く、品種によっても異なるため、気分や症状に合わせて使い分けるのがおすすめです。疲労回復、消炎作用、のどの痛みや鼻づまりの軽減といった不調の改善、美肌や安産などによいとされるものもあります。
リラックス効果をもつ品種もあるため、安眠作用やストレスの緩和、不安の軽減といった心の不調にも効果があるそうです。リフレッシュや集中力のアップも期待できますよ。
・料理、ハーブティー
ご家庭で栽培すると新鮮なものがいつでも手に入るので、料理をする楽しみも広がります。オリジナルのハーブビネガーやハーブソルトといった、お手製の調味料も簡単に作ることができますよ。ハーブを利用したレシピが掲載されている本もたくさんあるので、ぜひ参考にしてみてください。
摘みたての新鮮な葉を使ってハーブティーを淹れるのもおすすめです。市販のティーパックにプラスしたり、異なる品種をブレンドしたり。ワインやビールなどアルコールとの相性もばっちりです。使いきれなかった分は乾燥させてドライハーブにすると、長期の保存も可能です。
・美容、健康
香りの豊かなハーブは、アロマテラピーなどにも使用されます。新鮮なものをホホバオイルやエキストラバージンオイルなどと混ぜて湯煎にかけ、ハーブオイルとして活用することもできます。本格的にフローラルウォーターや精油を抽出できる家庭用小型蒸留器も販売されているので、興味のある方はチャレンジしてみてください。
そのほかにも、市販の粒状石けんやクレイ(粘土)を使って、ハーブ石けんやクレイパックを手作りしてみるのはいかがでしょうか。お気に入りの種類をガーゼに包んで入浴剤にしたり、お鍋で煮出したハーブ液でフットバスをしたりと、楽しみ方は豊富です。
・クラフト
ハーブのなかには葉の色が鮮やかなものや、可憐な小花をつけるものも多くあります。そのままお部屋に飾るだけではなく、数種を使ってリースにしたり、鉢に入れた水に浮かべておしゃれなインテリアにしたりもできます。香りの高い品種はポプリや香り袋にアレンジして、大切な人へのプレゼントにするのもよいでしょう。
レモングラスやローズマリー、ミントなどは、乾燥させてドライハーブにしたものを防虫剤代わりにすることができます。濃いめに煮出した液や、ハーブをホワイトリカーに付け込んだものを水で薄めると、お手製の虫よけスプレーにも。天然成分なのでペットや子ども、キッチン周りなど、化学物質を避けたいところにも安心して使うことができます。
ここまで種類、栽培方法、使用法や効能を紹介しましたが、これらの内容は基本情報になります。
そこで、より深くハーブについて知るための本をご紹介します。興味のあるものがあったら、ぜひ手にとってみてくださいね。
お馴染みのハーブ78種の、育て方から利用法まで基礎知識が満載。栽培入門者ならぜひ手元に置いておきたい基本の一冊です。
園芸が初めての方にもおすすめですよ。
- 著者
- 出版日
- 2001-03-12
バジルやオリーブ、コリアンダーといった、特に人気の高い78種に焦点を当て、その特性や栽培方法、活用法などを幅広く収録しています。とりわけ栽培法についての解説は、ガーデニング初心者にでもわかりやすいように、作業工程ごとの写真付きで簡潔に説明されています。
日当たりや水やりなどの管理方法も品種ごとに表にまとめられているため、一目ですっきりと理解できるでしょう。基本的な知識は網羅されているので、栽培するうえでわからないことがあった時には重宝しそうですね。
情報量が多く、栽培に関する実用的な知識が詰まっています。写真も豊富で、カラフルなページは見ているだけでも楽しくなります。
栽培を始めるモチベーションがアップしそうな本です。
- 著者
- 出版日
- 2011-03-11
本書では身近なものから珍しいものまで、なんと173種もの品種が紹介されています。特にメジャーな50種に関しては、季節ごとの育て方のコツから剪定方法など手入れの仕方まで、詳細かつ丁寧な説明がされているため、初心者から上級者まで、幅広い方にとって頼れる一冊になるでしょう。
全体的に写真が多めで文字も見やすく、親しみやすいのが本書の特徴です。紹介されている品種も多岐にわたるので、次は何を育ててみようかなとお考えの方にもぴったりですね。活用方法のアイデアも豊富に掲載されているので、読みながら楽しいイメージを膨らますことができます。
栽培方法や利用法に限らず、もっと幅広くハーブのことを知りたいという方におすすめの本書。美しい写真入りで、色鮮やかなハーブの世界を堪能できます。
学名や豆知識なども掲載されており、興味がさらに広がるでしょう。
- 著者
- レスリー ブレンネス
- 出版日
ハーブやガーデンデザインなどに関する10冊以上の著書をもち、イギリスを中心に活躍するレスリー・ブレンネスによって著された本です。瑞々しさや芳香までもが伝わってきそうな写真は、眺めているだけでも飽きません。栽培方法や収穫の仕方だけではなく、名前の由来や歴史的背景などのエピソードまで盛り込まれているのも嬉しいですね。
利用法に関しても、葉や根、花などの各部位に応じて美容や薬用、料理といった用途が紹介されていて、実際にトライしてみたくなるような情報が散りばめられています。ハーブについて包括的に知りたい方にとっては、まさに至れり尽くせりの充実した内容の一冊です。
育てるだけではなく、実際にさまざまな用途に活用することができるハーブ。アイデア次第で、楽しみ方が無限に広がります。今回ご紹介した本を参考にして、ぜひご家庭でも栽培に挑戦してみてくださいね。