「コミックビーム」にて連載されている『目玉焼きの黄身いつつぶす?』。グルメとギャグが合わさった気楽に読める作品で、2017年11月にドラマの放送が決定しました。今回はゆるい雰囲気の本作の魅力を全巻のエピソードからご紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
本作はさまざまな料理の食べ方をとおし、個々の考え方の違いを知ることができる漫画です。作品名にもなっている「目玉焼き」はもちろん、「焼肉」や「牛丼」、「ハンバーガー」など、数々の料理についておもしろおかしく議論されます。
「自分と同じ食べ方だ」と思うこともあれば、「こんな食べ方や考え方があったのか」と気づかされることもあり、興味深く読むことができるでしょう。
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2013-05-30
そして、題材とされる料理が家庭で作れるものであったり、身近な飲食店で食べられるものであったりと、親しみやすい料理ばかり取り上げられるのが本作の特徴です。そのため、気になった食べ方についてはすぐに実践できることも魅力の一つでしょう。
さらに、ともすれば説教っぽくなりがちな食事マナーの説明にもギャグが絡められており、作品に親しみやすさを与えています。
この記事では、おすすめのエピソードをいくつかを紹介してきます。本作のくだらない、ゆるい雰囲気を楽しんでください。
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2014-01-25
自宅にて、田宮丸二郎(たみやまるじろう)は恋人の長嶋みふゆ(なかしまみふゆ)とともに、初めての朝を迎えていました。みふゆの作った朝食を笑顔で食べていた二郎は、彼女の「目玉焼き」の食べ方が自分とまったく違うことに愕然とします。
当初はみふゆの目玉焼きの食べ方を否定した二郎でしたが、さまざまな料理で自分と他者が違う食べ方や考えを持っていることに気づき、それらを受け入れられるように少しずつ成長していきます。
恋人のみふゆと初めて迎えた朝、みふゆが作った朝食はご飯とみそ汁、目玉焼きにほうれん草とウインナーを添えたものという、オーソドックスな朝食でした。二郎が文句なしの朝食と内心で称賛していたところに、みふゆはたくさんの調味料を食卓に置きます。
二郎はギョッとした顔でその調味料は何かと問いかけます。ソースやケチャップ、塩などで目玉焼きを食べる人がいるという彼女の主張は、醤油でしか目玉焼きを食べたことがなかった彼にとっては信じられない事実でした。
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2013-05-30
二郎が恐る恐るみふゆに何をかけるのか聞くと、彼と同じく醤油をかけると聞いて安堵します。しかしその安堵もつかの間、黄身を他のおかずに絡めて食べる二郎に対して、みふゆは白身だけを先に食べ、最後に黄身を一口で食べてみせたのです。
「黄身を一口で食べてしまうなんてもったいない」と感じた二郎はみふゆに問いかけますが、彼女は「お皿が汚れるのが嫌だから」と答えました。そんな理由で黄身をつぶさないで食べるのかと感じた彼は思わず、こんなことを口にしてしまいます。
「おまえ……バカか?」(『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』1巻より引用)
気がついた時には、みふゆは家からいなくなっていました。
さらに、後日に同僚の近藤と「目玉焼き」定食を食べた際に、残した黄身をご飯に乗せて食べるという食べ方を見て、誰も自分の食べ方に疑問を持っておらず、どの食べ方が正しいということがない気づきます。
そして、実際に自分でも「目玉焼き」の黄身だけ残して食べる食べ方をしてみたところ、これが意外と難しかったのです。その事実を知った二郎は、難しいことを平然とやってのけ、綺麗な皿を保ち続けていたみふゆへの愛しさが溢れ、会いたい衝動に駆られるのでした。
一つ目の料理は主題ともなっている「目玉焼き」です。非常に身近で家庭的なこの料理に、たくさんの調味料での、さまざまな食べ方があることを知ることができます。「美味しく食べる」ということは考えても、「後片付けが楽になる」ということまで考えて食事をする人というのは、台所に頻繁に立つ人でないと回らない考え方なのではないでしょうか?
また、最初は否定していた黄身を残す食べ方を実践する二郎の行動は、これまでの常識を見直して「異文化に触れている」といっても過言ではありません。このエピソードの場合は「目玉焼きの食べ方」という些細なことですが、こうした歩み寄りは人と付き合ううえで大切な姿勢といえるでしょう。
まずは明日の朝食で、今までと違う食べ方に挑戦してみませんか?
二郎は「納豆」が好きです。しかし、この納豆の扱いに困っていました。納豆をご飯にすべてかけてしまえば「納豆ご飯」としてご飯を楽しめますが、そのかわり、他のおかずが入ってくる隙がなかったのです。
そのことを同僚に相談したところ、「納豆を一口分ずつご飯にかければいい」や「ご飯をお代わりすればいい」といった提案が帰ってきましたが、二郎はどちらの答えにも満足いきません。さらに、他の同僚は食べ合わせを一切気にせず納豆をぐちゃぐちゃに混ぜて食べるため、まったく話にならないのです。
それに、ぐちゃぐちゃに混ぜられた納豆が皿を汚す光景を見て、目玉焼き同様「食器を汚さずに食べるためにはどうしたらよいのか」という話題になりました。そんな時、汚れを避けるための秘策が近藤から提案されたのです。
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2013-05-30
汚れを避けるための秘策、それは「のり」で壁を作って納豆と食器の接触を防ぐというものでした。二郎はその食べ方を否定しながらも、ずっと頭から離れずに一日を過ごします。そしてその晩、ついに我慢できなくなった彼は「のり」を壁にする食べ方を実践したのです。
準備に手間がかかる食べ方ではあるものの、意外と悪くないと思っていた時、同僚から電話がかかってきます。その対応の後に食卓に戻ると、目の前には無残にもしなしなになり、食器に張り付いてしまったのりがあったのです。結局、どんな食べ方でも納豆はいつも二郎を困らせるのでした。
ご飯のお供ともいえる納豆。納豆をかけると他のおかずが楽しめないことに共感できる人は多いと思います。また、食器を汚さないために「のりの壁」を作るというのも斬新な発想です。しかし、後のことを考えすぎて肝心の食事が楽しめないとなると元も子もありません。
食事は食事、片付けは片付けとして考え、まず美味しく食べることが大切だとわかるエピソードです。
それは自宅で卵かけご飯を食べようとした時のこと。二郎の親友の服部は卵をごはんの上に割り、それを二郎にも渡します。
それをみた二郎は「服部よ…なにしてくれてんだコレ?」といぶかしげに聞きました。
服部はそんな彼の様子も何のその。美味しそうにそれを食べます。
しかしそこは我流を通さなければ気が済まない二郎のこと。いいからこの卵を小皿に戻してくれ、と言います。もちろん一度ごはんの上に乗せた卵を戻すなんて難しく酔狂なこと、できません。
戻してくれ、と言い続ける二郎に、服部は苦悩の表情をし、価値観の違いを感じながら、仕方なく彼に新しい卵かけご飯のセットを渡します。
両者がそれぞれの食べ方の良さを主張する平行線の会話に、服部は「卵かけご飯」で検索してみろ、と世論を突きつけます。
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2014-01-25
その結果は二郎が少数派。彼は「こ…ん…な…」とこの世の終わりのような表情で愕然とします。……これ食べ方の話ですよね?
しかも服部は自分の食べ方は単身者ならではのある合理的な理由もあると言います。二郎はそのあとの会話からその訳を知り、クリエイティブであることの重要性を学び……。
今まで服部の視点からの食べ方について考えたことのなかった二郎は、「みんな…実にいろんなことに疑問を持って…生活している…」と眠れぬ夜を過ごします。その悩みは最終的には、恥ずかしくて人前に出られないと思い詰めるまでになります。繊細すぎ。
そんなところにやってきたのはいつもの近藤さん。
彼は二郎の悩みを聞き、「セレブ食い」なる新しい方向性の食べ方を提案します。
まぁセレブかはおいといて、とりあえず二郎はそれに刺激され、クリエイティブに考えるという技をマスター。卵かけご飯は彼にクリエイティブな視点をもたらしたのでした。
詳しい内容はぜひ作品で。いつもどおりのくだらなさが最高です。
1話から目玉焼きでもめていた二郎とみふゆ。今回も旅行先にまできて目玉焼き関連で険悪な雰囲気が流れます。
ことの発端はホテルの朝食。トーストと目玉焼きが出てきて、真剣な表情で思い詰める二郎。しかしそこまで思い悩むな、と自分を鼓舞し、食べ方に決まりなんてない、トーストを白米と見立てて食べればいいのだ、と解決します。おお、二郎少し成長した?
1話でみふゆに教えてもらった黄身だけ残すという食べ方をし、何だ、簡単なことじゃないかとひとりごちます。
しかしそうは簡単にいかないのがこの漫画。みふゆはそれを見て「あら?ジロちゃん 面白い食べ方してるのね」と言います。やめてみふゆ!フラグ立ちまくりだよ!
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2014-07-25
みふゆはパンの時は目玉焼きはケチャップ派。ご飯の時に最後まで残していた黄身も早々につぶし、パンにつけて食べるというのです。
それだと彼女の嫌がる皿を黄身で汚してしまうことになるだろ、と言う二郎に、パンでぬぐいとって食べるから大丈夫よ、と言うみふゆ。二郎は、ついに堪忍袋の緒が切れます。
「俺は…みふゆが最後まで黄身をつぶさずにひと口で食べるから…
それに習って俺もそうするようにしたんだ
そしてそのやり方にもよやく慣れ(中略)
話が違うじゃないかー!!」(『目玉焼きの黄身いつつぶす?』3巻より引用)
もう面倒くさいので中略しちゃいました。二郎、成長の様子なし。
そしてそのまま雪降る雪原をかけていくのです。「気がついたら 俺はホテルを飛び出していた」らしく……。ほんとどうしようもない男だな。
イライラしつつも心配するみふゆ。二郎はひどくなる吹雪のなか、雪山で遭難してしまいます。
彼が目を覚ますと、そこは暖かいロッジのなか。二郎は山小屋カフェを営む夫婦に見つけられて介抱されていたのでした。
もう危ないしこのまま泊まっていきなさい、と優しい言葉をかけられ、その流れで二郎は夕飯にはトーストと目玉焼きがいい、とリクエストします。
そしてみんなで囲む食卓。カフェの奥さんはみふゆと同じ食べ方をしていました。その様子を神妙な面持ちで見守る二郎。奥さんは夫にあなたの食べ方も見せてあげれば、と言います。
そこで二郎が目の当たりにしたのは「シーソー食い」。
二郎は自分と美冬ふたりの案をミックスしたかのようなその食べ方に、ハッとさせられます。
翌朝、朝食をごちそうになるのは断って、みふゆといっしょに食べようと考える二郎。この食べ方をしたらどんな顔をするだろうかと考えながら帰路につき……。
感動の結末をご覧ください(笑)
3巻で別々の道をあゆむことになってしまった二郎とみふゆ。みふゆは同じ芸人同士で付き合った彼と外食をします。
食べることが好きなみふゆは今まで気にしませんでしたが、新しい彼・宮さんは食事を待ってまで食べるつもりはないようで、お出かけにもかかわらず、チェーン店のカレーでご飯をすますことになってしまいました。
少しギクシャクした空気のなか、最近売れ始めているみふゆのファンが写真を頼みにやってきて、売れていない宮さんはそれを冷たくあしらいます。さらに冷たくなる空気。
そんな頃、二郎は別れたみふゆとの日々を思い出していました。同時に、みふゆも食にまったく興味がないと言う宮さんにショックを受け、二郎とのことを思い出すのです。
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2015-01-24
しかし彼女はとりあえずは宮さんとの関係を修復しようと、彼に美味しい食べ物を振る舞うことで食の楽しさを分かってもらおうとします。
食材にこだわり、時間をかけて丁寧につくったブイヤベース。宮さんは驚きながらも表情をほころばせて「うまいわ」と言います。苦労が報われたと喜ぶみふゆ。
しかし宮さんはそのあとにこう続けるのです。
「て ゆうか俺……
なに食うてもうまいんねん」(『目玉焼きの黄身いつつぶす?』4巻より引用)
まさかの発言ーーーー!!!!
みふゆでなくとも能面になってしまいます。
実は彼にはある特徴があり、そこから食べるのが嫌いになってしまったようなのです。そしてふたりの関係にもある変化が訪れてしまい……。
食べることに興味がないという人は珍しいかもしれませんが、食にどこまでこだわりを持つかは人それぞれ。たしかに恋人となるとそこは同じでないと難しいものがあるかもしれません……。
自分のみふゆとのやりとりを舞台化し、500人規模の劇場で20日間、1万人の動員を目指す芝居の主役にスカウトされた二郎。その話に驚きながらも、気になるのはやっぱり食べ方。その話を持ちかけてきた笠原はカップ麺のフタを最後まで切り取らないのです。
さまざまな方向からフタをとるべきだという反論をする二郎ですが、ことごとく論破されてしまいます。
自分の食べ方と人の食べ方のコスモに迷い込む二郎。そのままソファに倒れこみ、茫然自失としてしまいます。いつまでたっても悩みすぎですねぇ。
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2015-07-25
そんななか、仕事の休憩中に同僚の女の子が笠原と同じくフタをとらずにカップ麺を食べていました。なぜ外さないかと問う二郎に、彼女はまさかの方向性からの答えを発表します。
「食べてるところ見られる見られるのが恥ずかしいからです」
「か…かわいい!」(『目玉焼きの黄身いつつぶす?』5巻より引用)
この答えは最強ですね。理論もなにもない感情論でズキュンときたものは、やはり強い。
しかしひとりの時には外して食べるという確認をとって二郎はひと安心。やはり自分の食べ方が正しいではないか、と思っているところに、近藤が参上。カップ麺をフタをつけたまま食べているのです!
涙を流しながらその理由を聞く二郎。もはや情緒不安定にも見えてきます。そのあとに二郎は近藤の言う通りにして、あることに気づき……。
これはフタを取ってきた人からしたらかなりの発見かもしれません。筆者はそうでした。ただ、個人的にはフタがピロピロなるのが気になるのでやっぱり取っちゃいますが。
同僚と「牛丼」を食べていた二郎は、その食べ方についても議論します。紅ショウガを乗せずに卵をかけて食べる同僚に対し、二郎は適度に紅ショウガを乗せて味を変えながら楽しんでいました。しかしその店内に、肉が埋まるほど紅ショウガを大量に乗せる客が現れたのです。
まるで紅い富士山のごときその光景を、二郎は「牛丼への冒涜だ」と感じます。バランスが大切だと主張する彼は、紅ショウガを山盛りにする行為が許せないのでした。
- 著者
- おおひなたごう
- 出版日
- 2015-12-25
そして、ある日仕事で山盛り紅ショウガの男と再会します。なぜあんなに紅ショウガを乗せるのかを問うと、食べてみればわかると答えられました。二郎はさっそく実践してみますが、「牛丼」がただの紅ショウガに成り下がってしまい、落胆します。
しかし、それ以来なぜか体が紅ショウガを欲するようになり、毎回紅ショウガを山盛りにしてしまいます。みふゆにも止められますが、隠れてまで紅ショウガを大量に乗せた牛丼を食べてしまうのです。そのことを紅ショウガを乗せる男に相談したところ、「悩みやストレスからくる衝動」なのだと教えられるのでした。
実は二郎はこの時、男に指摘されたように仕事に対する悩みを持っていたのです。その悩みを近藤に相談し、解決して以来、彼の紅ショウガに対する欲求はぱたりとやんだのでした。
「牛丼」には卵をかけたり七味をかけたりとさまざまな食べ方があります。紅ショウガもそのうちの一つです。それにしても、悩みやストレスという精神的な理由で薬味の量が増えてしまうだなんて、この漫画を読むまで知らなかった方も多いのではないでしょうか?
もしこういった食べ方に心当たりがある方は、一度胸に手を当てて、悩みやストレスがないか確認してみるといいかもしれません。
少しずつシリアスパートも増えてきましたが、やはりギャグパートの面白さは健在。本当によくここまで食べ方ネタで引っ張れます……。
今回はソフトクリーム。今度こそ成長した二郎の姿が見られます。みふゆとシリアスな話をしながらもやはり二郎がこだわるのは食べ方。一緒に食べていたソフトクリームをなめて整形した「聖火」をつくり、満足げにそれを彼女に見せます。
それを美しいだろうと言う二郎に対し、ちょっと同意しかねるかも、と言うみふゆ。絶対に怒らない?と念押しして、核心を突きます。
- 著者
- おおひなた ごう
- 出版日
- 2016-07-25
「だってそれ『なめた跡』なんだもん」(『目玉焼きの黄身いつつぶす?』7巻より引用)
よくよく考えたら唾液まみれだろうと言うみふゆは、ソフトクリームは噛んで食べる派。
みふゆの言葉を反芻した二郎は頭を抱え、持っていたソフトクリームのコーンを破壊!
超絶うさんくさい笑顔でみふゆの食べ方を肯定します。成長してるかもしれないけど、怖い……。
もちろん意固地な二郎のことです。そんな簡単に納得しているはずもなく、仕事上で出会った女性にソフトクリームをおごり、その食べ方を静かに見守ります。
何と彼女が見せた食べ方はそのどちらでもなく……!
感想をひとこと言わせてもらうと、エロい。
二郎は「コーヒー」そのものの味を楽しむためにはブラックでのむべきと考えていますが、以前までは砂糖をいれた「甘いコーヒー」が好きでした。彼がなぜコーヒーをストレートで飲むようになったのかと言うと、過去に「甘いものを食べる時はコーヒーに砂糖を入れない」という友人を見たことがあったからです。
そのことを考えながら近藤とコーヒーとケーキを食べていると、近藤がおもむろに砂糖を入れます。その様子を見た二郎は馬鹿にしたように笑い、「普通はブラックでしょ」と主張するのです。
- 著者
- おおひなた ごう
- 出版日
- 2017-02-25
近藤は二郎の考えを正すために、自分が入れた砂糖を渡します。それは「コーヒーシュガー」と呼ばれるもので、溶けるのが遅く、コーヒーの味を損なわない砂糖だったのです。
さらに近藤は、ブラックコーヒーの定義は「乳製品が入っているかどうか」であり、砂糖のあるなしは関係ないと、二郎が持っていたコーヒーに対する認識を、根本から正したのでした。
砂糖が入っていてもブラックコーヒー、というのは勘違いしていた人が多いかもしれません。そして、このエピソードが読者に伝えたかったのはきっと、「自分の好きな飲み方をしたらよい」ということなのでしょう。
同僚たちと「オムライス」を食べに来た二郎。彼らの間では「オムライス」を食べる時、どこから食べるのかという議論が始まります。
二郎は端からケチャップを少しずつ分けながら食べるのに対して、一人の同僚はど真ん中のケチャップがたくさんかかっているところから食べるようです。そしてもう一人の同僚は、ケチャップのあるなしを気にせず、端から順に食べるといいます。
三者三様のオムライスの食べ方。あなたは誰と同じ食べ方をしますか?
- 著者
- おおひなた ごう
- 出版日
- 2017-08-25
それぞれ食べ方が違うことを二郎は認めますが、「求めるものがご飯、卵、ケチャップである以上、わざわざ店に来て食べる必要はないのではないか」という、身もフタもないようなことを言い始めてしまいます。
たしかに多少手間はかかっても、オムライスは家で作ろうと思えば作れる料理です。しかし、それでも店に来てオムライスを注文するのは「家で食べられないオムライスを食べたいから」という単純な理由だということにたどり着き、同僚にいたっては二つ目のオムライスを注文するのでした。
「家で食べられないものを食べる」というのは、お店にいくたくさんの人が持つ目的だといえます。また、「お店のオムライス」と「家でつくるオムライス」は、同じオムライスと言えどそれぞれ違った美味しさがあるのも確かです。
どんな食べ方をするか、どんな味付けで食べるか、などといった議論の多い本作ですが、このオムライスのエピソードでは「食べたいものを食べたい時に食べる」という、美味しい食べ方を教えてくれるエピソードとなっています。
感心と笑いと食欲を誘う本作は何も考えずに読むのにぴったりです。ドラマ化を記念してぜひ読んでみましょう。