5分でわかる刀狩り!目的やおすすめの関連本をご紹介!

更新:2021.11.10

豊臣秀吉がおこなった政策のひとつとして有名な刀狩り。聞いたことはあるけれど、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか?今回は、実は歴史が長い刀狩りについてご紹介します。

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刀狩りとは

刀狩りとは、武士以外の身分、すなわち僧侶や農民などが武器を所持している場合、それらを放棄させる政策のことをいいます。
 

一般的には1588年に豊臣秀吉が発令した刀狩令が知られており、この政策により全国的な兵農分離が進められたとされています。

しかし実は、秀吉の時代以前から全国各地の大名などにより、たびたび行われていたのです。例としては鎌倉時代に行われた僧侶を対象とする刀狩りや柴田勝家の「刀さらえ」があげられます。

そして秀吉のあとも、名称や手段を変えながら受け継がれていったのです。

なぜ刀狩りをおこなったのか

刀狩りがおこなわれた理由は、その時代の背景によって異なります。

まずは柴田勝家のおこなった「刀さらえ」について。これは一向一揆が盛んだったこの時代、織田家に仕えていた勝家は、寺社と農民の武装を前提としながらも、反本願寺の派閥や織田家に縁ある寺社の武力が高まるようコントロールするため実施されたものだと考えられています。

戦乱の世の中では百姓農民であっても、ひとたび戦が始まれば招集され、おのおの武器を持って出陣しなければなりませんでした。そのため、この刀さらえでは、完全な武装排除はされなかったのです。

一方で、「刀狩り」のなかでも特に有名な豊臣秀吉の政策が行われた時代でも、農民の武装は当然のものとしてあり、特に刀は信仰の対象として神格化されたものでした。もともと刀は、実戦では主戦力になることはほとんどないものでしたが、当時の成人男性の自立性と名誉を象徴するものとして、武士以外であっても、成人祝いとして脇差しを帯びるようになることが一般的でした。 

同時にこの時代では近隣同士での些細ないざこざであれば暴力で解決する風潮があり、秀吉は刀狩りに先だって暴力による村の紛争解決を全国的に禁止する喧嘩停止令を発令し、武力を行使する権利を制限しています。

刀狩りにおいては、この農民らの精神的支柱ともいえる刀を没収することで農民の自立や名誉を剥奪することを意味すると同時に、地域によっては帯刀の免許制も進められたことから、身分や秩序を明確にすることで、兵農分離を進める意図があったのではないかと考えられています。 

刀狩りの影響

武力のバランスをコントロールしたり、身分制を明確にしたり、刀狩りがおこわれた理由はさまざまですが、一般市民から武装を剥奪するという政策は、明治の廃刀令、ひいては太平洋戦争に敗戦し無条件降伏の名のもとに武装解除がおこなわれるまで根強く残ります。 

それまで、当初の江戸幕府が銃刀規制に乗り気でなかったこともあり、地方では規制にバラつきが見られ、長州藩で帯刀免許制が崩れてしまうというようなことも起きていました。

しかし江戸幕府が文治政治へ方向転換するなかで、再び帯刀規制がはじまります。

例外が認められることもあったものの、徐々に帯刀規制は厳しくなっていき、さらにその他の武器となるものの使用も自重されるようになりました。

明治に入ると、今度は廃刀令が発令されます。これは、大礼服と呼ばれた宮廷服を着用している場合、そして軍人や警察官が制服を着用している場合を除いて刀を身につけることを禁止するものです。これは当時の政府が進めていた四民平等政策の一環でした。

時間をかけて大衆の武装を制限し、明治時代にはそれがより一層厳しくなりますが、当然反発もありました。

この廃刀令は刀の所持は禁止してはいないものの、礼服や制服を着用できる身分、またそのシチュエーションに限りの着用を許可するというのは、市民だけではなく、それまで武士の身分であった者たちのアイデンティティーを奪うことにほかならなかったからです。

この廃刀令に反発した士族たちは、隠れて刀を持ち歩いたり、士族反乱を起こしたりすることもありました。

しかし国内の政策においてのみでは完全な武装解除は実現できず、第二次世界対戦における太平洋戦争での敗戦後、ようやく武装解除が完了したともいわれています。

刀狩りは、時代とともに少しずつ形を変えながらも、国をまとめる方法のひとつとして根づいているのです。

刀狩りについて調べるなら必読の一冊!

一般的に考えられていた武装解除のための刀狩りという概念を覆し、秀吉の時代から、戦後はGHQマッカーサーの統治下に至るまでの刀狩りの概念と、市民の意識の変化を解説します。

著者
藤木 久志
出版日
2005-08-19

従来の「常識」とも考えられていた教科書的な通説を秀吉の刀狩令、明治の廃刀令、さらにはマッカーサーによる武装解除に至る3つの視点から解説し、根本から覆していくような主張が書かれています。本書を読むと、次々出てくる斬新な解説にどんどん知的好奇心が刺激されていくのです。

さまざまな史料をもとに書かれた歴史の実態に迫る内容で、読み進めるたびに目から鱗の発見に出会えるでしょう。

刀狩りの傍ら、市民と密接になっていった銃の存在

刀狩りがおこなわれていたなか、市民から取りあげられることのなかった「銃」に焦点をあてた一冊です。

火縄銃が渡来して以来、銃も農民の生活になくてはならないものとなっていきました。
 

刀狩りの歴史の側面にあった百姓の生活、そして銃を死守するための攻防を、実例をもとに解説しています。

 

著者
武井 弘一
出版日
2010-06-10

幕府による細やかな施策や管理、実際の農民の生活、幕府との攻防が史料をもとに詳しく解説されています。

刀狩りの影響がこんな側面にも表れていたのかと、驚かされるでしょう。

石ノ森章太郎が豊臣秀吉を描く!

信長の死後、羽柴秀吉が天下統一を果たし、関白「豊臣秀吉」となるまで、そして彼が行った政治について、「仮面ライダー」シリーズや『サイボーグ009』で有名な漫画家の石ノ森章太郎が、詳しい解説とともに描いていきます。

著者
石ノ森 章太郎
出版日

漫画という形でありながら、しっかりとした解説とリズミカルなテンポで、豊臣秀吉が天下統一を果たすまでから、関白となったあとの政治が描かれています。

有名な太閤検地や、今回のテーマとなっている刀狩令についても触れられており、一連の流れを分かりやすく読み取ることができます。

いかがでしたか?意外と奥深く、現代の我々の生活や考え方にも多大な影響を与えた刀狩り。調べていくごとに新たな発見が見つかることでしょう。

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