漫画『キングダム』の魅力を全巻ネタバレ紹介!実写映画化!!【最新53巻】

更新:2021.1.14 作成:2017.10.15

「週刊ヤングジャンプ」にて連載されている大人気漫画。春秋戦国時代の中国を舞台に、大将軍になることを目指す主人公の少年を中心に、壮絶な戦いがくり広げられます。 テレビアニメ化に続き、実写映画化もして絶大な人気を集めている本作の見所を、全巻分ご紹介していきましょう!

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漫画『キングダム』の魅力とは?

約紀元前250年ごろの春秋戦国時代の中国を舞台に、秦の始皇帝が武力をもって中華を統一していく様子が描かれています。

古い歴史であるがゆえ正確ではありませんが、大まかな流れや登場人物などは史実に基づいていて、そこから自由に物語を広げて読者を惹きつけていく名作です。

著者
原 泰久
出版日
2006-05-19

本作の魅力は、まずはなんといっても戦闘シーン。数多の力ある武将のぶつかり合いは、まさに手に汗握る展開です。また、その戦闘シーンが、多少の誇張はありますが、現実離れしていないところがよりいっそう読者を物語の世界へと引き込みます。

知略と知略のぶつかり合いが描かれているという点も、大きな魅力のひとつ。窮地を救う策やどんでん返しは、読者にあっと驚きを与えます。読者をも騙す策略は、まさに見ものです。

そして最大の魅力が、読者を惹きつける登場人物たちでしょう。強さや頭脳で魅せる者もいれば、壮大な思想で読者を引き込む者もいます。信念と信念のぶつかり合いは読者に涙を誘うこともあるのです。

この記事ではさらに詳しく本作の魅力を解説し、ストーリーの見所も全巻分ご紹介。これを見終わったら、きっと作品の世界に入り込みたくなるはずです!

漫画『キングダム』あらすじ

 

500年もの間戦乱が続く春秋戦国時代、中国の西方にある「秦」の田舎に「信(しん)」と「漂(ひょう)」という2人の孤児がいました。

2人は「天下の大将軍」になるという夢を掲げて、剣の修行に明け暮れていたのです。

著者
原 泰久
出版日
2006-08-18

やがて、漂は秦の大臣である昌文君に連れられて仕官したのですが、ほどなくして重傷の容態で信のもとへと帰ってきました。そして、息絶えながら信に、ある場所への地図を託します。彼の死を受け入れられないまま、信は託された地図の場所に赴くと、そこには、なんと漂そっくりの少年がいたのです。
 

その少年の正体は、秦国の第31代目の王「政(せい)」。この彼の身代わりとして漂が死んだことを知り怒りを露わにする信でしたが、漂との夢を叶えるために、その怒りと悲しみを力に変えて、やがて戦乱の世に身を投じることとなるのです。

『キングダム』の魅力1:最強の武将たちに見惚れる!それぞれの背景に引き込まれる

本作のなかで魅力のあるキャラクターや目立つキャラクターは、総じて力を持っています。それは武力であったり力であったりとさまざまですが、「強い」人物には読者も憧れを抱くはず。

さて、ここでは、そんな本作の最強武将トップ3を発表していきます。個人的な独断と偏見を含みますので、ご了承ください。

まず3位は、趙三大天の李牧(りぼく)です。幾度となく秦の前に立ちはだかり、何人もの名だたる武将をその「策」によって倒してきました。

今でこそ軍師として活躍していますが、かつては自身も過酷な戦場を経験しており、その腕前は成長した信を易々と吹き飛ばすほど。作中屈指の知力に加え武力も兼ね備えていることから、3位にランクインです。

2位は、李牧と同じく趙三大天の龐煖(ほうけん)。武を極めた人間で、純粋に武力だけで考えれば彼に並ぶ者はいません。最強と名高い王騎すらも討ち取りました。

ただ武を求めすぎて知が他者と比べて少し足りないため、1位ではなく2位という結果になりました。

著者
原 泰久
出版日
2006-11-17

そして栄えある1位は、六大将軍の王騎です。

龐煖に負けたのに……と思う方もいるかと思いますが、作中でおこなわれた一騎打ちでは、真の決着はついていないのです。というのも、趙軍の兵が一騎打ちをしていた王騎へ矢を放ち、その矢が勝敗を分けてしまったから。

実際に最後まで戦いが続いていれば、どのような結末になったかはわかりませんが、少なくとも武力においてほぼ龐煖と同等の実力を持っていたといえます。

また王騎は、龐煖に足りていない知力を兼ね備えているので、総合的にみれば彼に軍配があがるでしょう。

本作には数多くの武将たちが登場するので、皆さんもご自分のランキングを作ってみるとおもしろいかもしれません。

『キングダム』の魅力2:歴史を想像する力がすごい!

本作の魅力のひとつとして挙げられるのが、作者である原泰久の歴史を想像する力です。

秦は、歴史上で実際に中華統一を果たします。本作はそこまでの史実をもとに、原が想像を付け加えて戦いを描いているのです。

著者
原 泰久
出版日
2007-02-19

「蕞(さい)防衛戦」は実際にあった戦ですし、主人公の信も実在した人物。しかし、いくら歴史上の出来事だとしても当時の詳しい記録は残っていません。つまり、作者によってここまで興味深いストーリーに仕上げられているのです。

史実を先に知っておくと各国の関係や事件への理解が深まり、作者が創作した部分もわかって、より本作を楽しめるようになるかもしれませんね。

『キングダム』の魅力3:ずっと中だるみしない展開!

 

もうひとつ本作の魅力としてげられるのが、中だるみのない展開でしょう。

どの戦いでも、毎回読者を盛りあげてくれるのです。それは、敵も味方も魅力のあるキャラクターであふれているから。

誰と誰がぶつかり合っても見ごたえのあるものとなるのです。

著者
原 泰久
出版日
2007-05-18

信はもちろんのこと、彼の相棒の羌瘣(きょうかい)や、大将軍・王騎、強大な敵・李牧など、挙げればキリがありません。また、ときには秦国内の政や羌瘣など、さまざまな視点から物語が描かれるのもポイント。

どこを見ても楽しめる作品なのです。

秦王との邂逅・王弟反乱【1巻~5巻】

秦の片田舎にて、「信」と「漂」という2人の少年が「天下の大将軍」になる夢を抱いて、日々剣の修行に明け暮れていました。そんなある日、秦の大臣である「昌文君(しょうぶんくん)」に見初められた漂は信をおいて王宮へと仕官します。

夢への第1歩を歩みだした親友を信は快く送り出しましたが、漂はすぐに帰ってきました。しかし、彼は深手を負っていて、信にある場所への地図を託して息絶えてしまったのです。漂の死を悲しみながらも、信は託された地図の場所へと赴きます。

目的の場所に着くと、そこには漂にそっくりな少年がいました。なんとその少年は秦王「嬴政(えいせい)」だったのです。現在秦では政の実弟「成蟜(せいきょう)」によるクーデターが起きているため、政はここまで逃げてきていました。

少年が秦王だと知った信は、漂が政の身代わりとして仕官させられたことを理解します。そのことに彼は怒りを露わにしますが、そこで政を狙う刺客が登場。その刺客に対し、信は漂が死んだ怒りをぶつけるがごとく戦い、激闘の果てに討ち倒したのです。

著者
原 泰久
出版日
2006-05-19

その怒りを次は政にぶつけようとしますが、敵に囲まれている現状を打破するために信は怒りを一時潜めます。一陣を突破するべく果敢に攻め込もうとする信と政の前に「河了貂(かりょうてん)」という人物が現れたのです。突破はやめ、抜け道を知っているという河了貂に2人はついていくことにしました。

抜け道を通っているさなか、信は政から漂の話を聞き、利用された漂の無念を思い、再び怒りを放出します。漂の仇だと政を滅多打ちにしようとしますが、政は漂の「天下の大将軍になる」という夢を認めていたのです。そのことを政から伝えられた信は、2人の夢を叶えるべく、今一時の感情に流されずに政を守ることを決意しました。

そして、信たちは政の配下の者たちと合流。しかし、王都はすでに成蟜の手に落ちており、このまま戻ったとしても返り討ちにあうことは目に見えています。そこで、政は「山の民」と呼ばれる民族に助けを乞うことに決めたのです。

山の民のもとへと向かった一行ですが、400年前に秦に裏切られたことが尾を引いており、助力を得るのは難しい状況でした。しかし、政はその過去の恨みをばっさりと切り捨て、復讐の前にやるべきことがあると主張します。そして、全国境を廃止して中国の統一をおこなうという野望を口にするのです。

無謀なことを真っすぐな目で語る政に、山の民の王である「楊端和(ようたんわ)」の心が動かされます。そして、山の民は政に力を貸すことを決めたのです。

政たちは山の民を率いてすぐに王都へと向かいます。王都で構えるのは8万の兵、対するこちらの兵は3千です。その差を埋めるため、政と昌文君は策を講じました。山の民とともに扮装し、和平の盟を契りにきたと騙し、王都へと入り込んだのです。

その様子を「王騎(おうき)」という武将が不気味に眺めていました。

彼らは苦もなく王宮の前まで進み、そこで合戦を開始。信は少数の精鋭を率いて王宮の中へと侵入します。政が大勢の兵に囲まれつつも耐えているなか、信は本殿へとたどり着きました。そして、ついに成蟜を見つけたのです。

成蟜を守る凶暴で巨漢の「ランカイ」を前に、信たちは苦戦を強いられます。しかし、この戦いを通じて剣の何たるかを知った信がランカイを貫き、政に勝利をもたらしたのでした……。

漂という自分の半身とも呼べる親友を失いながら、信は「天下の大将軍」になる夢へと進みます。怒りと悲しみは癒えることはないかもしれません。それでも、漂の分まで信は突き進まねばならないのです。

2人の夢を叶えるため、信は戦乱に身を投じる覚悟をしたのでした。ここから、信の大将軍への長い道のりと、政の天下統一の野望が始まります。

信の初陣【5巻~7巻】

反乱鎮圧の功績を買われた信は、平民の身分と小さな家を得ます。そこで河了貂と過ごしながら、秦と魏の国境に位置する滎陽(けいよう)をめぐる「対魏攻防戦」に歩兵として参戦することになります。

参戦するにあたって、5人1組の「伍」と呼ばれるチームを作らなければなりません。信はそこで「羌瘣(きょうかい)」という、自分より年下の無口で小さな子供と出会いました。伍のメンバーに不安を持ちながらも、信は滎陽へと向かいます。

そして信たちを率いる「千人将」が現れると、王弟反乱時に知り合った昌文君の副官である「壁(へき)」と再会したのです。信を含む伍のメンバーは壁の下につくことにはなりませんでしたが、ついに戦へと身を投じます。

著者
原 泰久
出版日
2007-05-18

信は圧倒的な力をみせながら魏の兵を討っていきますが、魏の操る「戦車隊」に苦戦。しかし、羌瘣が考案した「死体を積んで盾とする策」で、なんとか窮地を打開するのです。

信の活躍を目にした千人将は、彼を連れて山に陣取る魏の副官のもとへと向かいます。信の力を借りて、千人将は命と引き換えに副官を討ったのでした。

その感傷もつかの間、信は魏から奪った山から戦況を見下ろすと、今まさに秦軍総大将「麃公(ひょうこう)」と、魏軍総大将「呉慶(ごけい)」がぶつかろうというところでした。すると、戦いを見ている信の隣に、この戦に無関係なはずの王騎が現れるのです。

その存在感に圧倒されながらも、信は彼の話を聞きます。「本能」で戦をする麃公と「知略」で戦をする呉慶のどちらが勝つのか、という話を聞きながら、信は「戦とは何か、将軍とは何か」ということを少しだけ理解したのでした。

王騎と話すという貴重な時間でしたが、信は馬を借りて前線へとつこっみ、魏軍のなかへ入っていきました。そして、この戦は麃公と呉慶の一騎打ちのすえ、秦が勝利を収めることになります。

信はこの初陣で、この先の相棒ともいえる存在になる羌瘣と、自分が目標とすべき大将軍・王騎に出会います。羌瘣については、まだそこまで深い関わりはありませんが、今後深い間柄に発展するので、それまで気長に待ちましょう。

さて、今回の戦の見所は、なんといっても総大将の一騎打ち。戦のすべてが凝縮されているといっても過言ではないその戦いは、まさに迫力にあふれています。

暗殺者襲来・蚩尤の一族【8巻~10巻】

政の殺害を目論む暗殺者たちが、王宮へと放たれます。それを迎え撃つは「対魏攻防戦」の功績を認められ、「百人将」へと昇進した信です。しかし暗殺者のなかに、ともに伍の一員として戦ったはずの羌瘣がいました。彼女の正体は「蚩尤(しゆう)」と呼ばれる、伝説の一族の刺客だったのです。

政を狙う彼女と戦うことになった信は、まるで舞うようなその剣技に圧倒されます。しかし、そこに新たな暗殺者集団が現れ、はからずも信と羌瘣は共闘。互いに力を合わせて信はなんとか政を守り切り、暗殺者を退けたのでした。

そして、暗殺の首謀者を吐かせると秦の丞相「呂不韋(りょふい)」の名があがります。巨大な敵の影が秦国内にもあったのでした。

著者
原 泰久
出版日
2007-12-19

 

政に呼び出された呂不韋でしたが、目の前で堂々と暗殺の件をもみ消します。それは政の陣営と呂不韋の陣営に、大きな力の差があることを示しているのです。信はそれを目の当たりにし、歯を食いしばって耐え忍びます。

また、この会合で秦の将軍「蒙武(もうぶ)」が、かつて戦争の自由を与えられその名を中華全土に轟かせた「六大将軍」の制度の復活を求めます。今やその生き残りは「王騎」のみ。

六大将軍の復活については後に議論するということで、呂不韋は王宮から去るのでした。そして信は修行を積むために、王騎のもとへ向かいます。

8~10巻は政の暗殺が中心ではなく、現秦のパワーバランス、そして羌瘣の秘密が軸として描かれます。羌瘣は凄まじい剣技の持ち主ですが、実は「羌族」と呼ばれる一族の少女でした。

羌族には一族でただひとりの蚩尤を決めるために、蚩尤候補の少女が最後のひとりになるまで殺し合いをするという恐ろしい祭があったのです。本来、羌瘣もその祭に参加するはずだったのですが、姉のように慕っていた「羌象(きょうしょう)」によって不参加にさせられていたのです。

羌瘣が気づいたときには祭はすでに終わっており、羌象は還らぬ人となっていたのでした。しかし、候補者のなかで羌瘣と羌象の実力に勝る者はいません。なぜ羌象が死んでいるのかを、羌瘣は理解します。禁止されているはずの他の候補者同士の共闘で、彼女は殺されたのです。

羌瘣はこの出来事から羌族に激しい憎悪を向けるようになり、その場にいた者たちを皆殺しにします。そして、現蚩尤に復讐するために旅を始めたのでした。

羌瘣の圧倒的な剣技は、まさに目を見張るものがあります。しかも荒々しい強さではなく、美しく洗練された剣技です。流れるような動きは、読者に舞を想起させるほど。

しかし信と出会ったことで、彼女は復讐以外に自分の生きる道があることを知ります。そして、2人は今後ともに切磋琢磨しながら、互いに相棒と呼べる存在となっていくのです。

秦趙攻防戦【11巻~16巻】

 

秦の次なる相手は、秦に対して強い恨みを抱えている趙(ちょう)。秦の総大将には表舞台から退いていた「王騎」が選ばれます。なぜか王騎は、今まであげることのなかった腰を、今回の戦であげたのです。

彼から百人将としてのあり方を学んだ信は、「飛信隊」という隊の名前と、独自に動いて敵の有能な武将の首を獲る任務を授かりました。そして王騎の期待に応えるように、見事に敵将「馮忌(ふうき)」を討ち取ったのです。

信や蒙武の活躍により順調に戦を進める秦軍でしたが、王騎は違和感を覚えていました。しかし、具体的にそれが何かはわからず、気にしながらも進軍します。

著者
原 泰久
出版日
2008-09-19

戦が続いた飛信隊の野営地で、ある衝撃的な出来事が起こりました。敵の総大将にして趙三大天のひとり「龐煖(ほうけん)」が、突如現れて襲いかかってきたのです。迎え撃つ信ですが、まったく歯が立たずにあしらわれてしまいます。そんな彼と龐煖の間に割って入ったのは、羌瘣でした。

龐煖は問答無用で彼女に襲いかかります。持てるすべてを龐煖にぶつける羌瘣ですが、その刃は彼に届きません。

絶体絶命の窮地に、ようやく援軍が到着。援軍と飛信隊の力を借りて、なんとか龐煖に一太刀浴びせた信でしたが壊滅的なダメージを負ってしまい、退却せざるを得ません。龐煖との激闘で気を失った彼は、飛信隊に抱えられてなんとかこの場を脱したのでした。

そして明朝、ついに戦は王騎と龐煖が激突する佳境に突入します。しかし、その裏で趙三大天のひとり「李牧(りぼく)」が策を巡らせていたのです。

王騎はその策に気づいたうえで、龐煖との一騎打ちに臨みます。この2人はかつて戦で交わったことがあり、王騎にとっては自身の愛した六大将軍の一角「摎(きょう)」の仇でした。この仇を討つべく、王騎はこの戦の総大将を引き受けたのです。

熾烈を極めた両者の一騎打ちには、思わぬ形で横やりが入ります。李牧の手によって趙に4万もの援軍が現れたのです。王騎は援軍が来ることは予想していましたが、騎馬の素質を読み違えて、彼の予想より半日も早く援軍が到着してしまいました。

もはや秦軍の負けは確定的なこの状況で、王騎は笑います。そしてこの状況を打破すべく、彼は力ずくで活路を見出そうとしました。そのために、まずは目の前にいる龐煖を討たねばなりません。再び熾烈な一騎打ちが始まり、王騎の刃が龐煖を捕らえるというところで、王騎の胸に矢が刺さったのです。

この一騎打ちに水をさす矢によって、王騎の腹は龐煖に貫かれます。ここに、秦と趙の勝敗は決したのでした。

しかし、この時、僅かながらに王騎はまだ生きており、信とともに愛馬に乗り、何とか撤退への活路をこじ開けます。

撤退時に、王騎は信へ自分から見える景色を見せました。その景色こそが、信の目指す大将軍の景色。そして、王騎は部下に言葉を遺し、信に自身の矛を託して、息を引き取ったのでした。

この「秦趙攻防戦」では、驚く展開が多くあります。まずは王騎の死。秦軍のみならず、読者にも大きな衝撃を与えたことでしょう。それほどまでに彼の存在感は大きく、彼さえいればどうにかなると思わせる力があったのです。

そして趙三大天の登場も、大きな衝撃を与えたことでしょう。圧倒的な武力を持つ龐煖に、王騎を超える知略を持つ李牧。この2人は今後秦の前にはもちろん、信の前にも大きな壁として立ちはだかります。

このような強敵の登場は、読者に次の展開をより期待させます。次の戦はどうなるのでしょうか。
 

秦趙同盟・山陽攻略戦【17巻~23巻】

王騎が戦死してから1年、「秦趙攻防戦」での功績が認められた信は「三百人将」となり、飛信隊の勢力を拡大していました。さまざまな戦に援軍として顔を出し、彼はその名を確実に響かせていくのです。

そんな時、秦に怨敵・李牧が訪れます。彼が訪ねてきた理由は、秦と同盟を結ぶためでした。この同盟は現状の秦にとってはありがたい話でしたが、呂不韋は同盟だけでは李牧の首には足りない、と言います。

さらに、趙の主要な城の一角「韓コウ」の譲渡を引きずり出したのです。こうして秦趙同盟は成立しました。

著者
原 泰久
出版日
2010-03-19

秦趙同盟の効果は早くも表れ、秦はさっそく魏に位置する「山陽(さんよう)」の攻略に取りかかります。

歴戦の将「蒙驁(もうごう)」を総大将に置いた山陽攻略には、信の他にも玉鳳隊隊長・三百人将「王賁(おうほん)」や楽華隊隊長・三百人将「蒙恬(もうてん)」といった、信の同年代の若者が参戦し、互いに競いながら功績をあげていくのでした。

戦が進んでいくさなか、秦内部で怪しげな動きが見られます。政、呂不韋に続く第3勢力である後宮の太后が、呂不韋と密通していたのです。

政は秦国内の勢力争いで戦っている一方で、秦軍はいよいよ山陽を目の前にし、攻略の大詰めを迎えます。秦軍を迎え撃つは元趙三大天であり、魏へと亡命した「廉頗(れんぱ)」。しかし、廉頗は魏に亡命してから1度も戦に出たことはありませんでした。

そんな彼がなぜ今回の戦に出てきたのかというと、「退屈したら蒙驁と戦え」と王騎に言われていたからだったのです。

蒙驁は将軍ではあるものの、そこまで華々しい戦果をあげているわけではありません。しかし、彼の下にはかつての六大将軍にも劣らない実力を持った2人の副将がいました。その名も「桓騎(かんき)」と「王翦(おうせん)」。この2人を中心に、山陽攻略戦は回ります。

戦いが白熱するなか、信は敵将のひとり「輪虎(りんこ)」と何度も対峙します。輪虎はかつて王騎に一太刀を浴びせた逸話を持つほどの実力者で、信のみならず王賁や蒙恬と力を合わせても大苦戦です。

信たちが輪虎と激戦をくり広げるなか、ついに桓騎と王翦が動き出します。桓騎は魏兵に扮する奇策で敵将「玄峰(げんぽう)」をあっさりと討伐。王翦も敵将「姜燕(きょうえん)」を簡単に倒したかに思われましたが、そこに廉頗が現れました。

王翦は廉頗を前に、すぐさま撤退。勝てる戦以外はしないという王翦にあっさりとフラれた廉頗は、王翦を見極めるのを諦め、直接蒙驁のもとへと向かいました。そして、いよいよ山陽攻略戦は最終局面を迎えます。

秦軍本陣の後ろに現れた廉頗は蒙驁が、そして本陣前を貫こうとする輪虎は信が迎え撃ちます。何度も負けかけた信でしたが、漂や仲間の思いを背負った力がわずかに輪虎を勝り、なんとか討伐したのです。

一方、蒙驁は廉頗に追い詰められていました。これまで何度も廉頗と対峙してきた彼は秘策を用意していたのですが、廉頗を討つには至らず、本陣へと入り込まれてしまいます。すでに腹をくくっていた蒙驁は、廉頗との一騎打ちをおこなうのです。

六大将軍と肩を並べていた廉頗に敵うはずもなく、蒙驁の片腕が切り落とされてしまいました。さらに、敵将も現れ絶体絶命というところ、魏の本陣が落とされた狼煙が上がったのです。

魏の本陣を落とし、総大将を打ち滅ぼしたのは桓騎でした。本陣にいる魏兵は戦況を五分にもっていくため蒙驁へと襲いかかりましたが、廉頗は負けを認めます。これは戦況を読んだうえで、魏軍が詰んでいると判断したのです。

というのも、この最後の局面で、王翦の軍はほぼ無傷で出撃の機会をうかがっており、それを迎え撃つ戦力が魏にはすでにありませんでした。

廉頗は強引に蒙驁へ和睦をとりつけて、矛を納めます。こうして、秦は山陽を手にしたのでした。

「山陽攻略戦」では廉頗といった王騎に匹敵する将軍や、桓騎、王翦といった底知れぬ実力を持つ者が登場。特に桓騎はまったく苦戦するような描写がなく、六大将軍の再来を予感させます。そして、王翦もまだまだ力を隠しているようで、これからの秦の躍進を期待できるでしょう。

さらに、信や王賁や蒙恬などの若者たちには、まだまだ成長の余地があります。さまざまなキャラが登場して、これからの展開がよりいっそう楽しみになることでしょう。

合従軍侵攻・函谷関攻防戦【24巻~30巻】

秦の山陽攻略の後、李牧がまたもや暗躍していました。楚(そ)と同盟を結び、淡々とある計画を進めていたのです。この計画がすぐに中華全土を巻き込むこととなります。

そんな裏の動きを知ることもない信は、先の戦の功績で「千人将」の位を得ました。しかし、今までの破竹の勢いはぱたりと止まり、連戦連敗。その理由は、羌瘣という頭脳を失ったことにありました。

羌瘣は山陽攻略戦で区切りをつけ、本来の目的であった蚩尤への復讐を果たすために飛信隊から離脱。そのため、作戦を練れる者が飛信隊からいなくなり、飛信隊は本来の実力を発揮できずにいました。

その彼女の穴を埋めるため、秦から軍師が派遣されます。その軍師は「昌平君(しょうへいくん)」という秦随一の軍師のもとで修業を積んだ河了貂だったのです。飛信隊は彼女の力を借りて、本来の実力を取り戻し、再び功績をあげていきます。

著者
原 泰久
出版日
2011-11-18

一方、秦内部ではまだ勢力争いが続いています。呂不韋は相国の最高位につき、大王の1歩手前に座しました。この暴挙を政は止めることができなかったのです。この勢力差を打開するため、政はある人物の力を借ります。それは、かつて謀反を働いた成蟜でした。

そんな悪意渦巻く勢力争いのさなか、明るいニュースが舞い込みます。宮女の「向(こう)」が政の子を身籠ったのです。そのニュースは信のもとまで伝わり、彼はよりいっそう戦へ精を出します。

しかし、その明るいニュースもつかの間、「楚」「魏」「趙」「燕」「韓」「斉」の6ヶ国が「合従軍」となり秦へと一斉に攻め入ったという絶望の一報が届きました。この合従軍は、李牧が手引きしたものでした。

李牧いわく、先の山陽攻略は後に重い意味を持つもので、この一手で中華が詰みかけたというのです。それを阻止するために、李牧は合従軍をもって秦の滅亡を目論みます。

合従軍の一報を受けた昌平君は、すぐさま斉へと使いを送ります。斉を買収し、合従軍から離反させたのです。しかし斉の離反だけでどうにかなることではなく、軍師たちは寝る間も惜しんで戦略を練りました。

昌平君を中心に練られた戦略は、この絶望的な状況でも2割ほどの勝ちの目があるというもの。賭けとしてはギリギリ成立するこの戦略で、秦は合従軍を迎え撃ちます。

その戦略の内容は、国都「咸陽(かんよう)」までの防衛戦をすべて捨て、国門「函谷関(かんこくかん)」での集中防衛をおこなうというもの。秦は国内の名だたる将軍と兵力をすべて函谷関に集中させます。

函谷関にて対峙する秦軍と合従軍。その口火を切ったのは麃公将軍でした。これを皮切りに、各所で熾烈な戦いがおこなわれます。そして、初日早々に大番狂わせが起こりました。王騎の副官であった将軍「騰(とう)」が楚軍第一将軍「臨武君(りんぶくん)」を討ち取ったのです。これは合従軍に衝撃をもたらします。

そして、それに続くように、信も趙国将軍「万極(まんごく)」を討ち取りました。こうして初日は秦軍の優勢で日が沈みます。

しかし、以降は初日と違い、派手な戦いは起こらずに凡戦をくり返していました。それは李牧の策略で、さまざまなリスクや思惑を秤にかけ、いつ決戦に踏み切るかを見極めていたのです。

そして、函谷関攻防戦は運命の15日目を迎えます。秦軍と合従軍、総力のぶつかり合いです。もっとも過激にぶつかり合うのは楚軍と蒙武軍。昌平君と李牧はここの戦いが、今回の戦における重要な局面だと考えていました。

そして、激闘のすえに蒙武が楚総大将「汗明(かんめい)」を討伐したのです。これは戦場に大きな打撃と衝撃を与えました。

しかし同刻、その裏で楚将軍「媧燐(かりん)」が、函谷関を守る秦軍の背後をとっていました。楚軍5千の兵が函谷関入口の門へと襲撃し、絶体絶命の状況に陥ります。その窮地に、今まで身を潜めていた王翦軍がさらに楚軍の背後から登場。王翦軍の出現によって、函谷関は守られたのでした。

媧燐の策略の失敗によって、戦の流れが大きく秦へと傾きます。それは同時に函谷関の突破が困難になったことを意味します。合従軍は戦況不利とみて、開戦前の位置へと退却したのです。その退却と同時に李牧は函谷関から姿を消しました。

しかし実はこの退却、当初から練っていた函谷関を突破できなかった時の策略であり、各軍から精鋭1千人を率いて、函谷関を通る北道ではなく、山の中を進んで南道から咸陽へと向かっていたのです。李牧はその策略を合従軍にすらも気づかれぬままおこなったのでした。

この李牧の策略で、秦は再び窮地を迎えます。しかし、たったひとりだけ、李牧の策略に気づいていた者がいました。それは麃公です。李牧へと派遣される1千人の部隊がわずかに砂煙を上げながら南道に向かうのを見ていたのです。麃公は兵と飛信隊を連れて南道へと向かい、李牧の背後をとりました。

李牧は、麃公の出現に冷静に対処します。「流動」という複雑な布陣を敷き、麃公を追い詰めたかに見えましたが、麃公は本能のみで流動を見破り、李牧の前へと現れました。しかし流動を突破してもなお、李牧にはまだ策がありました。その策のひとつ、龐煖がこの場に現れます。

彼の出現は、信もすぐに感じとりました。麃公を助けるべく、必死に麃公のもとへ向かおうとする信でしたが、麃公は前進を指示。盾を信に託して咸陽へと向かえと告げます。その支持を最後に、麃公は龐煖の刃で討たれたのでした。

麃公の死は、すぐに咸陽へと伝えられます。昌平君にはもう打つ手がありませんでした。しかし、政はまだ希望の光を失っておらず、最後のたったひとつの手を昌平君に打ち明けます。南道の最後に位置する「蕞(さい)」で一般人とともに戦うという手です。

昌平君もそのことは考えていましたが、麃公を失った今、一般人の心に火を灯せる存在はいない政にと告げます。

しかし、政にはその役割を担える者がまだひとりいることを知っていました。それは、政本人です。こうして彼は、再び信とともに戦うこととなったのでした。

函谷関攻防戦は随所に見所があり、ここではそのすべてを伝えきれません。蒙武の武勇はもちろん、媧燐や王翦、李牧の策、さらに絶望的に叩き込まれる龐煖の登場など思わず鳥肌がたつシーンが多いのです。

そんななかで1番注目すべきは、麃公ではないでしょうか。王騎同様、名だたる人物が死ぬ瞬間というのはまばゆい光を放ちます。その光を目にした信は何を思うのでしょうか。

合従軍侵攻・蕞防衛戦【31巻~33巻】

 

ボロボロの状態で飛信隊と残った麃公兵たちは、蕞(さい)へと到着。すでに諦めかけていた彼らを迎えたのは、蕞の住民ではなく政でした。政の顔を見た信の目には、再び希望の光が灯ります。

信と少しばかり話をした政は、さっそく蕞へと来た目的を果たそうとしていました。蕞の住民を全員集めて、自ら語りかけます。そして彼の檄によって心を打たれた蕞の住民たちは、ここに向かう趙軍を迎え撃つ覚悟を決めました。

さらには昌平君の部下も機密に送られてきて、「蕞防衛戦」にわずかな光明が差し込みます。そして、いよいよ李牧率いる趙軍が到着。蕞防衛戦が幕を開けます。

著者
原 泰久
出版日
2013-07-19

 

異様なまでの蕞の住民の士気に李牧は戸惑いながらも、初日は冷静に戦況を分析します。後に控える咸陽攻略を視野にいれ、なるべく兵力を温存して、蕞の攻略に取り組みました。しかし、予想に反して苦戦するこの戦いに、李牧は住民の士気を保つ存在を思考します。

そして迎えた5日目、蕞に大打撃が起こります。各所を回っていた政が重傷を負ってしまったのです。秦王が蕞にいるという報がすぐに李牧のもとに舞い込みます。李牧は大王ならば民の士気を保つのが可能だと納得しますが、これほど民の心を動かし、絶望的な蕞の防衛という事柄をやってのける政に戦慄するのです。

兵士たちはもちろん、政や民の奮闘もあり、蕞防衛戦は7日目を迎えました。そして、この日が蕞防衛戦の最終日となるのです。悲しくも、蕞の門は趙軍に突破されてしまいました。蕞は落ちたかに思われましたが、政と信の目には西の山に見えるある集団が映っていたのです。

その集団は、山の民の兵士たち。政によって応援を受けた彼らはギリギリのところで、この戦いに到着しました。そこからは一方的な展開となり、山の民によって趙軍は壊滅的なダメージを受けたのです。

そんな趙軍のなかで、異常な雰囲気を発している場所がありました。満身創痍でありながら、信は迷わずその場所に飛び込みます。その場にいたのは龐煖。こいつと戦わなければならないのは俺だ、と信は楊端和(ようたんわ)に告げて、龐煖と一騎打ちをおこないます。

王騎や麃公の思いを背負った信の刃は、3度目の敵対にしてようやく届きました。そして龐煖を退け、秦は蕞防衛戦にて勝利をつかんだのでした。

蕞防衛戦にて、信が天下の大将軍への夢に着々と近づいていることがわかります。さまざまな者の思いを背負い、信は確実に成長しているのです。

そして、政も大王として立派に成長しています。政の投げる檄は確実に人々の心を掴むのです。それは読者の心にまでおよび、政の語る中華統一が夢物語ではないことを教えてくれます。

羌瘣復讐・王弟謀反再び【34巻~35巻】

 

羌瘣はさまざまな地を回り、蚩尤である「幽連(ゆうれん)」の情報を集めていました。羌族から脱走した者に接触し、ついに幽連の居場所を突き止めます。羌瘣はすぐにそこへ向かい、長年の恨みを抱いていた幽連と対峙しました。

しかし、羌瘣は見通しが甘かったことに気づかされます。全力で挑んでも幽連には敵いません。祭を経験した幽連は圧倒的な力をつけていたのです。この力を前に、羌瘣の心は折れかけますが、信たち飛信隊の仲間の姿が脳裏に映ります。

復讐を果たしてもまだ帰れる場所がある、と羌瘣は持てるすべての力を使い、幽連の心臓を貫いたのでした。そして、自分を待つ場所へと帰ったのです。

著者
原 泰久
出版日
2014-04-18

 

3千人将となった信を頭に、さらに羌瘣を加えた飛信隊は躍進を果たし、さまざまな戦で武功をあげていきます。そんな飛信隊のもとに蒙驁危篤の悲しい知らせと、政の子が産まれたという喜ばしい知らせが届きました。

それらの報が秦に出回るなか、合従国以来久しく動かなかった趙が「屯留(とんりゅう)」へと襲撃します。屯留へは成蟜が自ら志願して指揮をとりにいきました。そして、ここを境に政と呂不韋の勢力争いが加速するのです。

成蟜が屯留に赴いた翌年、政のもとに信じられない知らせが届きます。その知らせは「屯留にて成蟜の謀反」。しかし、それは呂不韋に仕組まれたもので、成蟜ははめられてしまったのです。これには政の陣営の弱体化と、蕞防衛戦の偉業をかすませる目的がありました。

政はそのことを見抜いており、成蟜を救うため、壁を総大将においた討伐軍を結成。そこに飛信隊を送り込みます。討伐軍は速やかに屯留に入り込みますが、1歩およばず成蟜は殺されてしまいました。

成蟜は謀反の汚名をすべて被らされ、屯留は制圧されます。

さて、今回は激しい戦はありませんでしたが、羌瘣の復帰という嬉しい展開がありました。やはり信と彼女のタッグが、1番しっくりきます。

そして成蟜の死は、少なからず政に衝撃を与えたことでしょう。最初の謀反以来、成蟜は正しい道を進んでいました。そのことは政も認めており、まだ語らいたいことがあったと口にしています。この成蟜は秦内部の勢力争いに、大きな影響を与えたはずです。

著雍攻略戦・秦国勢力抗争終結【36巻~40巻】

 

秦は中華への進出のため、山陽の先に位置する「著雍(ちょよう)」に狙いを定めます。その攻略の任は騰へと授けられました。そして、そこに飛信隊と玉鳳隊も増援として参戦するのです。

著雍を守る「呉鳳明(ごほうめい)」率いる魏軍の堅い守備に手を焼く秦軍ですが、王賁の提案する敵の弱所を同日同刻に3ヶ所討ち、魏軍本陣に突入するという策を決行します。その役目を飛信隊、玉鳳隊、騰の部下である「録嗚未(ろくおみ)隊」が担いました。

しかし、その策は「魏火龍七師」と呼ばれる六大将軍や、三大天に並ぶ実力を持つ者らの登場でさらなる苦戦を強いられるのです。ただ、騰は静かに戦局を見守っていました。

この戦は「騰」対「呉鳳明」として注目されている戦ですが、騰はそのように捉えていません。時代を担う若者が力を示す戦だと捉えているのです。

騰の期待に応えるように、信と王賁は魏火龍七師をひとりずつ討伐。魏軍はこれを受けて撤退を余儀なくされ、秦は著雍攻略戦の勝利を収めます。

著者
原 泰久
出版日
2014-10-17

著雍攻略戦から2ヶ月、秦国内では新たな動きがありました。隠棲していたはずの太后が政の前に現れたのです。そして、資金面での問題を抱えている現状を後宮が負担すると提案してきました。

ただし、その見返りとして北の辺地「太原」での暮らしと、その地方長官として有能な宦官の「嫪毐(ろうあい)」を据えろと要求してきます。政はその要求をのむこととしました。

しかし太后は、太原にて各所から人材を引き抜き、「毐国(あいこく)」を建国。着々と勢力を強め、新たな独立国家となろうとしていました。毐国の行動を抑えられぬまま、政は成人を迎えます。そして、内外に対して正式な王となることを宣言する「加冠の儀」が「雍(よう)」にて執りおこなわれるのです。

この加冠の儀は、政と呂不韋の長きに渡る争いの終結を意味します。

毐国は加冠の儀がおこなわれている間に、主要者の欠けている咸陽を攻め落とそうと画策していました。そして、呂不韋は漁夫の利で咸陽を最終的に落とし、王族の血を根絶やしにしようと目論んでいたのです。

加冠の儀のさなか、毐国が咸陽に攻め入ったと報告が入り、呂不韋は加冠の儀の中止を申し出ます。しかし、政はこのまま続行を言いわたしました。政も、呂不韋のその後の狙いを知っていたのです。

政は飛信隊と蕞に隠していた兵力、さらには呂不韋を裏切った昌平君の力を借りて反乱軍を制圧します。こうして長きにわたった勢力争いは、政の勝利に終わったのでした。

合間合間に描かれていた政と呂不韋の戦いが、ようやく終結。人の本質を、欲求だと主張していた呂不韋に対し、光が本質だと主張する政。両者の言い分はもっともですが、読者の多くが自分を託したくなるのは政のほうでしょう。

ここにきて、彼の語る中華統一が夢物語ではなく、現実味を帯びてきたことがうかがえます。

黒羊攻防戦【41巻~45巻】

長きに渡る国内での勢力争いに終止符を打った政は、秦国一丸となって中華統一を本格的に目指します。昌平君はその手始めとして、魏国にある「衍氏(えんし)城」を山の民という切り札を使って早々に落としたのです。

そして、飛信隊は桓騎の指揮下に入り、趙国に広がる大森林「黒羊丘」の戦いに参戦します。秦軍を迎え撃つはもっとも三大天に近い男と称される「慶舎(けいしゃ)」です。この黒羊丘には落とすべき目標となるような城はなく、代わりに5つの丘がありました。

そこをすべて落とすことが今回の戦の目標となります。

勢いこむ飛信隊でしたが、今までとは毛色の違う桓騎の指揮と不慣れな森林での戦いに苦戦を強いられます。しかし、河了貂の策や飛信隊の面々の地道な努力により、なんとか趙軍とわたり合うに至ったのです。

著者
原 泰久
出版日
2016-01-19

そして、この戦の勝敗に直結する中央に位置した丘の攻略に、桓騎軍副官「黒桜(こくおう)」が着手。しかし「紀彗(きすい)」という男の出現によって風向きががらりと変わり、撤退を余儀なくされました。一方、飛信隊は中央丘の右側を陣取り、いつでも中央丘の攻略に踏み出せる位置につけていました。

こうして両軍互角の様相で進んだ3日目、各軍が中央丘に終結した今、各軍師はいよいよ黒羊攻防戦の大一番を迎えたと考えます。この状況で桓騎の動きをくまなく観察しようとしていた慶舎でしたが、全員の期待を裏切るように、桓騎は3日目を何もすることなく終えたのでした。

そして迎えた4日目、桓騎の「待ち」に痺れを切らした慶舎は、中央丘での戦いの要である飛信隊に自ら攻勢をしかけます。実は桓騎は、慶舎が自分が張り巡らせた糸の外に出てくるのをずっと待っていたのです。慶舎が動いたタイミングで桓騎の配下も動き出し、中央丘は乱戦となりました。

その乱戦に乗じて、信は慶舎へと向かいます。飛信隊の面々に大将軍となりうる背中を見せつけ、信は慶舎のもとにたどり着いたのです。そして、信の矛が慶舎を切り裂いたのでした。

しかし、黒羊攻防戦はこれでは決着がつかず、残された趙軍は紀彗の指揮のもと、慶舎の死亡を隠して戦を続行します。桓騎は急に趙軍の戦い方が変わったことに気づきました。そして趙兵を拷問して情報を得て新たな策を練るのです。

その策はまさかの中央丘からの撤退。中央丘を趙軍に明け渡します。そして、黒羊で生活している住民を皆殺しにし、紀彗に送り付けたのです。同時に、拷問によって聞き出した紀彗と「離眼城」が強い繋がりがあることを利用して脅します。

紀彗はこの脅しを受けて、黒羊丘からの撤退を苦渋のすえに決断。桓騎は見事に死者を最小に留めて黒羊攻防戦を制したのでした。

総大将の慶舎を討った信の活躍がかすむほど、桓騎の策はえげつないものでした。本当にひとり残らず黒羊の住民を殺します。しかし、このような残虐なおこないができる者にも、強さがあるのは事実です。今後の桓騎の動きにも注目が集まります。

そして、この戦でさらに絆を強くした飛信隊の今後の活躍にも期待していきましょう。

斉王対談・鄴攻略戦【45巻~】

黒羊攻防戦から数日後、斉王と李牧が咸陽に招かれます。斉王は各国を滅ぼして中華統一を謳う秦王と、対談しにきたのです。斉王中華統一後の展望を問われた政は、中華を「法治国家」に作りかえると明確な答えを示します。政の答えに斉王は満足したのでした。

続いて、政は李牧とも対談をおこないます。中華統一の代わりに中華にある全国で同盟を結ぶことを提案する李牧でしたが、何百年も先を見据えている政はその提案をバッサリと切り捨てました。そして、高らかに武力をもって中華統一の覇道を歩むと宣言したのです。趙への宣戦布告ともいえる政の言葉を受けて、李牧は趙へと帰ります。

著者
原 泰久
出版日
2017-01-19

黒羊攻防戦の後に休暇をもらっていた飛信隊は、戦力増強のために募兵をしていました。そして、過酷な入隊試験を乗り越えた選りすぐりの1千人が、新たに加入されます。そのなかに、類稀なる弓の腕を持つ兄弟がおり、飛信隊はさらに力を増したのです。

その間、現状のままでは中華統一が15年という期日では困難であると考えていた昌平君は、李牧の裏をかき趙国王都「邯鄲(かんたん)」の背後に位置する「鄴(ぎょう)」を狙うという大胆な作戦に出ます。

そして、王翦を総大将に据え、そこに桓騎軍と山の民を加えた三軍連合軍で鄴攻略戦に取りかかるのです。飛信隊、玉鳳隊、楽華隊も友軍として三軍連合軍の下に入ります。

ついにこれまで大きな動きを見せなかった王翦が動きます。いったいどのような戦をみせるのでしょうか?

さらに、今回は初めて李牧の焦る様子が描かれます。秦と趙の熾烈な戦いはどのように進んでいくのでしょうか。
 

続・鄴攻略戦【47巻ネタバレ注意】

鄴へ向かう三軍連合軍は趙の国門「列尾(れつび)」にたどり着きます。王翦は山の民と飛信隊に列尾を落とす指示を出します。山の民の力によって、列尾はわずか1日で落とされました。

しかし、列尾には李牧の秘策がすでに施されていました。この列尾は意図的に弱く作られていたのです。列尾を抜いた場合、隣の太行山脈に伏せてある兵を南下させられ、再び列尾を奪い返されたあげく、鄴を前に趙軍に包囲されてしまうのです。

著者
原 泰久
出版日

そのことを王翦はすぐに見破りますが、鄴攻略のために立てた戦略が崩れたことを悟ります。そして、新たな戦略を立てるため、自ら鄴へと向かいました。

王翦は戦略を新たに組み直し、鄴と無関係の「吾多(ごた)」を襲撃。李牧も見方も王翦の真の狙いが読めずにいたのでした。

さて、47巻にて王翦の才覚の一端が垣間見えます。勝てる戦しかしないという王翦が進軍したのであれば、まちがいなく完全なる勝機をつかんだといえるでしょう。その勝機は李牧にも見いだせないはずのもの。ことごとく秦を苦しめてきた李牧の悔やむ顔が見たくなります。

王翦の狙いとは!?【48巻ネタバレ注意】

 

王翦は、周辺の城を吾多と同様に落とし続け、住民を次々に東へと追いやっていきます。彼の意図がわからない秦軍の面々でしたが、全部で9の城を落としたところで、羌瘣が策に気付きました。

さらに、秦軍の行動を耳にした李牧も、ようやくその狙いに気付いたのです。

李牧は鄴へと秦軍を誘い込み、兵糧攻めを狙っていましたが、鄴が周りの城の住民を受け入れたことで破綻。そして、王翦の狙いも李牧と同じく兵糧攻めだったのです。

鄴の兵糧が尽きるか、秦軍の兵糧が尽きるか……前代未聞の「兵糧合戦」が幕を開けたのでした。

 

著者
原 泰久
出版日

 

47巻から隠されていた王翦の策略が明らかになりました。なんと、兵糧攻めを兵糧攻めで返すという荒業をやってのけます。

これにはさすがの李牧も戸惑いを隠せない様子です。

しかし、兵糧攻めだけで今回の戦の決着をつけることはできません。

鄴を囲む秦軍の包囲を解放できる兵力を持つ「閼与(あつよ)」と「憭陽(りょうよう)」を迎撃しなければならないのです。

王翦は閼与が本命。きっと李牧が閼与の指揮をとりに現れると確信していました。一方の李牧も、王翦の動き予測して閼与の布陣を厚いものとします。

信、王賁、蒙恬もそれぞれの隊を率いて王翦の指示のもと閼与へと向かいます。

いよいよ始まった王翦対李牧の戦。どちらに軍配があがるのでしょうか。

 

李牧、自ら動く【49巻ネタバレ注意】

 

ライバルである王賁、蒙恬が存在感を示すなか、ようやく信にも王翦から指令が入ります。それはなんと、蒙恬のいる左翼へと赴き、紀彗の首を獲ってこいというもの……。重大な内容に驚きはしたものの、ようやく活躍の場を与えられた信は、左翼へと向かいました。

一方の楊端和軍は犬戒(けんじゅう)と呼ばれる民族と対峙します。

各所で目が離せぬ戦いがくり広げられるなか、ついに李牧が動き出しました。自ら左翼へと紛れ込み、左翼の指揮をしていた麻鉱(まこう)将軍を一突き。あまりにも静かな奇襲に、麻鉱は成す術もなく敗れてしまったのです。

麻鉱が討たれという衝撃的な出来事は、信を含め左翼に動揺をもたらしました。

そんななか唯一冷静な男がひとり。蒙恬は「麻鉱を復活させる」と言い、兵たちに檄を飛ばして……。

 

著者
原 泰久
出版日

王翦ばかりに目を向けていた鄴(ぎょう)攻略戦ですが、ここにきて李牧が智略を発揮。秦軍が押していたかに見えた戦も、麻鉱を討ったことで流れは趙軍に傾くこと必至です。

しかしこれは、王翦と李牧2人だけの戦ではありません。天才ともいうべき彼らに、蒙恬の力が牙をむきます。

初登場から時間は経っているものの、蒙恬の本当の実力が描かれたのは本巻が初めてではないでしょうか。彼の覚悟が見られる一冊は必見です。

「悪童」亜花錦の登場【50巻ネタバレ注意】

王翦率いる秦軍と、李牧率いる趙軍の戦いが本格的に描かれていく本巻。初日から、秦軍の左翼は窮地に陥ります。しかし、蒙恬の力もあり、この危機をなんとか脱出。

緊迫したまま、戦は2日目に突入するのです。

著者
原 泰久
出版日

趙の李牧傘下将軍「岳嬰(がくえい)」率いる軍と、藺家十傑のひとり「趙峩龍(ちょうがりゅう)」率いる軍に攻められ、王賁の玉鳳隊が窮地に陥ります。武将2人から同時に攻め入られる事態に、実力者と言えども苦戦を強いられるのです。

そんな状況にも関わらず、彼は趙軍の弱点を見つけます。そして、そこに正確に攻め入ろうとするのです。それに気づき、戦法を変更する王翦傘下筆頭将軍の「亜光(あこう)」。2人のタッグが光ります。

そんな本巻で注目したいのは、王翦軍千人将「亜花錦(あかきん)」です。彼は亜光軍の所属で「天才」と称される人物ですが、一方で「悪童」とも呼ばれるなど正確に難があるとされている人物。

そんな彼が王賁の窮地に寄越した援軍は、わずか200騎でした。果たして、彼の考えとは……?

羌瘣無双を見よ!【51巻ネタバレ注意】

趙軍左翼の援軍として登場した藺家十傑筆頭の「尭雲(ぎょううん)」。そんな彼と信の一騎打ちから、本巻は始まります。六将たちと渡り合ってきた尭雲の実力は凄まじく、信は苦戦を強いられます。

そんななか尭雲は信に、王騎将軍から受け継いだ矛について「ただもらっただけ」だと言い放ちます。それに対し怒りをあらわにした信は、彼に一撃を与えます。そのことによって、尭雲は自身の発言について考えを巡らすのでした。

著者
原 泰久
出版日

そんななか、信が離れた飛信隊の方は、戻ってきた羌瘣が牽引します。圧倒的に劣勢のなか、自らの方へ敵を集中して呼び込み、やってきた敵をひとりで切りまくる羌瘣。その凄まじい戦いぶりに、周りからは「人じゃない」という言葉が飛ぶのでした。

信、羌瘣の想定外の強さによって窮地に陥った尭雲。一面死体が広がるなかでひとり佇む羌瘣の姿は、まさに圧巻です。やはり、この2人が揃っての活躍は、読者としては見たかったところでしょう。

そんななか、各軍は残りの食料の量を考え、これからの戦いについて考えを巡らすことに。いよいよ戦いも佳境です。

秦趙大戦、佳境【52巻ネタバレ注意】

亜光が、尭雲と李牧傘下の将軍「馬南慈(ばなんじ)」に追い詰められる展開から始まる本巻。2対1の状況にも好戦していた亜光でしたが、しだいに苦しい状況になっていきます。いよいよダメだと思われたその時、彼を助けにやってきたのは亜花錦でした。

秦趙大戦は9日目に突入。ついに、将と将のぶつかり合いがくり広げられるのです。

著者
原 泰久
出版日

亜光の死亡は、王翦軍の右翼の敗北を意味します。そのことに気づいていた王賁も駆けつけて、なんとかこの場を乗り切るのです。

一方、信は岳嬰を討ち取る事を任されていました。岳嬰は自らの主であった慶舎の仇をして、信を倒すことに燃えています。その鬼気迫る様子は、息を飲むほど。彼は、その気迫のまま信のところへ突っ込んできました。

しかし、これに対して微動打にしない信。そして落ち着いた様子で、たった一刀を振り下ろします。その一撃で、彼は岳嬰を真っ二つにしたのです。

信の恐ろしいほどの強さが見られる本巻。一歩ずつ大将軍に近づいていく様子が感じられるでしょう。

【最新53巻ネタバレ注意】

引き続き、秦趙大戦9日目。李牧傘下の将軍「舜水樹(しゅんすいじゅ)」率いる軍隊、犬戎族の族王である「ロゾ」率いる軍隊に追い込まれ、窮地に陥ってしまった楊端和。そんな彼女を守るため、楊端和傘下の筆頭将軍であるバジオウが奮闘を続けます。

そんななか2人の粘りが功を成し、山の民軍の援助が到着するのです。楊端和は保護され、「フィゴ王」ことフィゴ族族長であるダントは、敵の首を討ち取るのでした。

キングダム 53 (ヤングジャンプコミックス)

2019年01月18日
原 泰久
集英社

フィゴ王は楊端和を自分のものにするため、ロゾを討ち取ろうと動き出します。そんななか、楊端和を狙う犬戒族「ブネン」の存在がちらつくのです。さらに、ここにメラ族のキタリも加わってきます。仇討ちも絡み、さまざまな思惑が交差する戦いは、複雑化していくのです。

本巻の見所は、フィゴ王・壁とロゾの戦いでしょう。圧倒的に体格差のあるロゾを相手に、2対1で挑みます。ここでは壁の活躍に、ぜひ注目してほしいところです。

それぞれの戦いが続くなか、右翼の戦いは次巻へ持ち越し。王賁の関するある衝撃的な事が囁かれるなか、果たして戦いの行方はどのようになっていくのでしょうか。54巻の発売が待ちきれません。

ここまでの話の魅力をネタバレ紹介しました。しかし、本作の魅力はここだけでは伝えきれません。残りは、ぜひご自身で確かめてみてください。

『キングダム』の結末を考察した<漫画『キングダム』の結末を考察!面白い理由は登場人物や、終わり方にある?>もぜひご覧ください。