『キングダム』をご存じでしょうか? 紀元前の中国を舞台に、中華統一を目指す人々を描いた戦記漫画です。史実どおりにストーリーが進むことでも有名な作品で、歴史の勉強にもなる作品ですが、本作の魅力はそれだけではありません。 史実に沿った本筋の随所に織り交ぜられたフィクションが、物語をより一層面白くしているのです。また、戦いの中で葛藤を感じながらも強い意志で困難を乗り越えていくキャラクターの姿も魅力的です。 今回は、そんな漫画、『キングダム』が面白い理由を徹底解説!分析すると、本作の面白さは登場人物や2019年の映画化、そして結末にあるのではないかと分かってきました!この記事では最終回の考察もご紹介。少々長い記事ですので、目次からご自身の気になる内容をご覧くださいね。
『キングダム』は、紀元前の中国を舞台に、中華統一を目指す主人公達を描いた作品です。その流れは史実に基づいており、歴史漫画としても楽しめます。
一方で、史実にはない物語やキャラクターが織り交ぜられているのも特徴。
たとえば物語の始まりでキーパーソンとなる、主人公・信の親友、漂も漫画オリジナルキャラクターです。秦の皇帝・政と瓜二つで、そのために影武者として命を落とします。この事件が信と政を結び付け、信が戦乱の世を生き抜く覚悟を決めるきっかけともなっています。
このように、史実には描かれない部分をフィクションで補完するからこそ、本作は面白い作品になっているといえるでしょう。
これ以降は、本作の人気の理由を考察していきます!
『キングダム』の魅力を紹介した<漫画『キングダム』の魅力を全巻ネタバレ紹介!実写映画化!!【最新53巻】>もおすすめです。あわせてご覧ください。
まず『キングダム』の見所のひとつは、ほぼ史実に基づいているというところ。教科書や書籍で勉強するのが苦手な方には楽しんで知識を得ることのできる良書といえるでしょう。
主人公の信は、貧民ながら大将軍になることを夢見る少年。いつかそれを叶える日が来るのを思い描きながら、同じ夢を持った幼馴染の漂とともに過ごしていました。
しかしその漂が、後の秦の始皇帝・政の影武者となり、死んでしまったことから、物語は動き出します。
中華統一を目指す政と出会った信達が身を投じていくことになる数々の戦いは、歴史好きが読んでも満足できるほど忠実に描かれています。
また、実際にあったのかどうかわからない戦いなどを独自の解釈で伝えているのも見所。
たとえば、秦の将軍の王翦(おうせん)・桓騎(かんき)・楊端和(ようたんわ)が趙を攻撃するという戦いは、史実どおりの出来事です。
しかし、本作の中では、53巻の朱海平原の戦いや李牧が秦軍と戦ったという場面が描かれますが、これは史実では確認ができません。
また、キングダムには「趙三大天」という3人の大将軍が登場するのですが、彼らは「趙」に実在していましたが「三大天」という称号は『キングダム』ならではの設定です。
史実が本当にあったかどうかを確認することはできません。しかし、あったのかもしれないドラマを想像するというのも、また一興です。本作のフィクション部分も『キングダム』の大きな魅力といえるでしょう。
- 著者
- 原 泰久
- 出版日
- 2019-01-18
『キングダム』は50巻以上つづく、長期連載作品です。そのため、つい途中で読むのをやめてしまったり、ハードルが高いと感じたりする方がいらっしゃるかもしれません。また、そもそも興味がないという方も多数派でしょう。
そんな方々をも取り込んだのは、2019年に作成された実写映画。このヒットによって、本作はさらに人気が出たという側面もあるでしょう。
漫画からの実写化は賛否分かれるところではありますが、『キングダム』の映画版はキャスティングのハマり具合も、評価されました。ここではキャラクターと演じた俳優をご紹介しましょう。
本作の主人公で、貧民の出自ながら将軍を目指し上り詰めていく、少年漫画の王道のキャラクター。実在の人物です。強い意志と才能を秘めています。
映画では山崎賢人が演じています。下克上のために熱く泥臭く、時には無茶もする大胆なキャラクター性が感じられる演技でした。
後の秦の始皇帝となる政と、瓜二つで影武者を務め、それによって死んでしまった漂。それぞれ、政は実在する人物、漂は漫画オリジナルキャラクターです。映画では一人二役で、吉沢亮が演じています。
顔は似ていますが、漂は貧民、政は皇帝。雲泥の差がある身分です。吉沢亮が表情や雰囲気によって見事に演じ分けていると評判になりました。
原作では、政は、信とともに本作を支える重要なキャラクター。史実では暴君とされていますが、漫画では美しく強い皇帝です。
女の身ながら圧倒的な武力を持ち、山の民を率いて政と同盟を結んだ山民族兼秦国の大将軍。暴力的とも表せるほどの美しさと色気があり、山奥に住んでいる、という設定がその魅力をさらに強めています。
映画で彼女を演じたのは、長澤まさみ。実は本作が初めての本格アクションだったそう。武闘派の女性をどう演じるのか、話題になりましたが、二刀使いを堂々とこなし、凛々しくも美しい女戦士を見せてくれました。
史実では男性ですが、女性にしたことで、ストーリーに花が添えられました。作者の演出の妙が感じられるキャラクターでもあります。
戦いの戦略を考えるブレーンとして重要な存在となる少女。漫画オリジナルキャラクターです。
映画で演じる橋本環奈は美少女として名高いので、少年にしては可憐さが目立ちます。原作でもマスコット的存在としても描かれる河了貂の愛らしさを、うまく表現していました。
政の弟でありながら最大の政敵で、実在の人物です。弟とはいえ腹違いであり、平民出身の母を持つ政に皇帝の座を奪われ、深く憎んでいます。
演じるのは、陰のある役が多い本郷奏多。漫画での成蟜はどこか小物感、子供っぽさを感じさせるキャラでしたが、映画では、どこかヒヤリとさせるような狡猾さのある人物としてアレンジされていた印象です。
秦国の六大将軍の1人で、その圧倒的な武力から「秦の怪鳥」と呼ばれています。実在の人物です。政が皇帝になると、第一線から退きますが、その存在感は濃く残っています。
映画では大沢たかおが好演しています。原作に合わせ体格も鍛え、貫禄のある王騎を演じる姿は、主人公クラスが若い世代だからこそ、かなりの存在感となっています。
また、特徴的な「ンフゥ」「ンフフフフ」というような息遣い、笑い方も再現しています。このヤバい個性をここまで自然に演じられるのか、と驚かされるでしょう。
王騎の副官で、実在の人物。漫画では優秀な副官として王騎を支え、王騎の影、縁の下の力持ち的キャラクターです。
映画では要潤が演じました。登場する場面は多くありませんが、飄々とした雰囲気と要潤の雰囲気がよく合っています。
政の筆頭家臣で、かなり情報は少ないですが、実在の人物です。優しく面倒見のよいタイプで、信のことを何かと気にかけ、信もまた信頼を寄せています。
映画で演じるのは満島真之介。他のキャラクターと比べて派手さはありませんが、そのぶん人情味のある優しい雰囲気が出ていて、外見も原作に近いと評判でした。
壁と同じく政の筆頭家臣である昌文君。実在の人物です。文官でありながら武闘派で、まさに文武両道の優秀なキャラクターです。
そんな昌文君を演じるのは、高嶋政宏。彼の変幻自在な演技力は誰もが知るところではないでしょうか。眼光鋭く戦況を見極める昌文君を、強い目力と独特の存在感で演じています。
山の民の1人で、オリジナルキャラクターです。楊端和に次ぐナンバー2の実力者ですが、もとは彼女に負けた一族の生き残り。常にお面をつけ、野性味溢れる謎の多い男です。
そんなバジオウを映画で演じるのは阿部進之介。お面でほぼ顔は見えませんが、特撮出身の鍛えられたアクションで、野生的な存在を表現しています。
いかがでしたか?主人公の山崎賢人を始め、長澤まさみ、橋本環奈、要潤など、幅広い世代から人気を集める俳優達が勢ぞろいしたことで、映画を知るきっかけになった人は多いはず。
興味はあるけれど、50巻越えの漫画を一から読むより、面白いかどうかは映画で判断してみようかな……そんな風に漫画の間口を広げたのが、映画なのかもしれません。
山崎賢人が出演した作品を見たい方は、こちらの記事もおすすめです。
興行収入は50億円を突破し、実写の邦画としては2019年で1位を記録した『キングダム』。2020年5月の地上波での放送と同時に、続編の製作が発表されました。
山崎賢人と吉沢亮の熱演が特に話題となり、原作ファンからも評判が高かった本作。
前作と同じ佐藤信介が監督を務め、キャストも再集結します。また今回も原作者の原泰久が脚本に携わっており、前作と同様に完成度の高い作品を期待できるでしょう。
主人公・信を演じる山崎賢人は、「本作では、いよいよ“信”が戦場に出ていくストーリーが展開されます。前作よりも成長した姿を皆さんにみていただけるように、そして、前作を超える面白い作品にできるように、キャスト・スタッフ一同頑張りますので、完成を楽しみにしていてください!!」とコメントしています。
公開はまだまだ先になりますが、今から続編が楽しみですね。
詳細なコメントや、今後発表される新たな情報は映画「キングダム」公式サイトをぜひご覧ください!
『キングダム』は、主人公の信の人間性も魅力の1つ。
貧民の出ながら大きな志を持ち、亡くなった親友との約束を胸の内に秘め、中華統一を成し遂げるというストーリーは、王道ながら多くの人を熱くさせるでしょう。
しかし信の魅力は、周囲と関わることで最も感じられます。
たとえば、政と信の友情。政は秦の皇帝で、信は下僕。変えようのない身分差がありながらも、嘘のない言動と強い気持ちで信が政と信頼を育んでいく様子は、本当に大切なものについて考えさせられます。
また、そもそもの物語の始まりとして外せないのが、漂。彼がいなければ信が志を強くすることはなかったかもしれないし、政と信の間にこれほどの絆も生まれなかったでしょう。1巻で亡くなってしまいますが、その存在感の大きさは物語が続く限り残るものです。
他にも信を取り巻くキャラクターとの関係が、信の魅力をより際立たせていることは間違いありません。
- 著者
- 原 泰久
- 出版日
- 2006-05-19
『キングダム』の魅力は、登場人物たちが残す名言にもあります。どれもシンプルながらも力強いもの。歴史的背景と合わさって圧倒的なパワーで読者の心に迫ってきます。ここではその一部をご紹介しましょう。
3位:
「境があるから内と外ができ敵ができる。
国境があるから国々ができ戦いつづける。
だからあいつは、国を一つにまとめるんだ。
そして俺は、その金剛の剣だ。 」
(『キングダム』27巻より引用)
信の台詞です。「あいつ」とは政のこと。「平和を願い、中華統一を目指す」という彼の志に共感したからこそ、ともに戦うという、覚悟の台詞です。
政のリーダーシップと信の意志の強さを感じられます。現実の社会でも、チームの理想の関係といえるでしょう。
2位:
「『弱さ』があるから、本当の『強さ』を知れるんだ」
(『キングダム』47巻より引用)
物語が進み、信が率いる飛信隊の初陣で恐怖に体がすくんでしまった部下に、河了貂がかけた言葉です。
私たちも戦争ではないにしろ、初めての戦いで恐怖を感じ、逃げたり動けなかったりするような経験がある方も多いでしょう。しかし弱さを克服して得た強さは、しぶとく、折れにくいものなのではないでしょうか。弱い人ほどそれを乗り越えた時、本当に強くなれる、という学びのある言葉です。
1位:
「人の持つ本質は光だ」
(『キングダム』39巻より引用)
政が、秦国の家臣、呂不韋(りょ・ふい)と「天下」について語った一説です。天下を取るとは、すなわち人を治めるということです。人を治めるためには、人の本質を知らなければなりません。
政の言葉は、性善説ともいえます。もちろん世の中にはひどい悪人もいるでしょう。ですが、生きる上で周りの人を悪と疑う人物と、善と信じられる人物、どちらについていきたいかと問われると、答えは明確ではないでしょうか。
人を信じる難しさを感じるものの、その難しさをのみ込んで人々をまとめようとする姿に、政のリーダーとしての器の大きさを感じられます。
- 著者
- 原 泰久
- 出版日
- 2015-07-17
ここで3つの言葉をご紹介しましたが、名言といっても、いうなれば、ただの台詞です。誰がいつ言うか、発するキャラクターの背景がどんなものか、によって印象が違ってくるでしょう。この場面でこの人が話すから光る、という台詞が名言となるのです。
実際に読んでこの言葉を目の前にした時には、また違う感慨があるので、ぜひご自身でご覧になってみてください。本作の魅力が言葉にあることをさらに感じられるでしょう。
今は多くの人に愛されている『キングダム』ですが、連載が始まったばかりの頃は人気が上がらず、打ち切り寸前にまで追い込まれていました。
そんな時、作者は「目を大きく描け」とアドバイスを受けたそう。そしてさっそく実践したところ、なんと本当に作品の人気がぐんぐん上がっていったのだそうです。
どうしてそんなことが起こったのでしょうか? もちろん目を大きくしたからということだけが人気の理由ではないでしょうが、実はそこには心理学にも通じる「目」の秘密がありました。
心理学的に、大きな黒目というのは人の好意を惹くものだそうです。たとえば、多くの方が魅力を感じる赤ちゃんやアイドルは、黒目が大きいという特徴があります。
また、黒目の大きさだけではなく、目の形がよりくっきりとなったり動きがはっきりしたりすることで、その人物の印象が伝わりやすくなるそうです。
目は口ほどにものをいうという言葉もあるように、目でキャラクター性を読者に伝えようとした工夫が、本作の人気の秘密のひとつなのではないでしょうか。実際のアドバイスの時期と同じかは分かりませんが、4巻あたりから徐々に変化し、6巻ではかなり顕著に変化してくるので、1巻と見比べてみるのも面白いかもしれません。
- 著者
- 原 泰久
- 出版日
- 2007-07-19
史実どおりに進んできた『キングダム』。では、最終回も史実どおりの出来事が起こるのでしょうか?この疑問こそ、本作を最後まで読んでみたいと思わせる秘訣なのではないでしょうか。
気になる最終回のパターンをいくつか考察してみましょう。まずは史実に基づいて終わった場合の予想から。
予想①:中華統一を果たした政と信。しかし、武力によって統一したことに政と信は葛藤する?
史実どおりだとすると、最終回は、秦が中華統一したところで終わる、というのが、最も納得感があるでしょう。作者もあるインタビューで「武力統一してしまった信と政がどういう顔をするのか……が最終回かもしれないです」と発言しています。
しかし、気になるのは「武力統一してしまった」という点です。政や秦は、中華統一をを目指してはいるものの、それは世界の安泰を願ってのこと。武力とは正反対の世界です。
そこに2人の葛藤があることも想像できます。理不尽を抱えながらも中華統一を果たす……そんな最終回もありえそうです。
予想②:最終回では信の子孫が登場する?
信には、実際に存在したモデルがおり、その人物には子孫がいることから、本作でも子供や孫が誕生してもおかしくありません。なので彼らのその後の姿が最終回となる、というのもありえるかもしれません。
そうなると、信の妻も必要です。作者自身が、信の恋愛は描くと名言しているので、そのうちお目にかかれるでしょう。
中華統一を果たした後、信が結婚し、家庭を築いていく姿や、その子孫の姿が見られるのは楽しいでしょう。そんな最終回だったら、温かで後味のよいものになりそうですね。
予想③:裏切り者が現れる? 楚との戦いで終わる
史実によると、秦は楚との戦いで、裏切り者が出たといわれています。結果として秦が勝利をおさめるのですが、この勝利が最終回になるというのも考えられるかもしれません。
裏切り者が出るほどの激しい戦いなので、キャラクター達の動きも激しくなるでしょう。その最高潮が最終回であれば、大いに盛り上がるラストになるのではないでしょうか。
つづいては、オリジナルの内容で最終回を迎えた場合を考察してみましょう。
オリジナルの展開で進んだ場合は、どんな最終回になるのでしょうか。 こちらもいくつか考察してみましょう。
予想①:政は、実は漂だった!?
オリジナル展開での最終回予想で、一番根強く人気の高い予想がこれになります。漂は、すでにご紹介したとおり、序盤で政の影武者として命を落としたキャラクター。
その漂が実は生きていて、政に成り代わっていたのでは……? という予想です。つまり、信と一緒にずっと戦ってきたのは漂だったというのです。すると、信は漂とともに志を叶え、確かにハッピーエンドともいえるでしょう。
ただし、その場合、ずっと一緒にいたのに、漂だと気付かないのはおかしくはないか? という声もあります。確かに一理あるので、この可能性はやや低いかもしれません。
予想②:政の目的は秦が栄えることではなく、さらにその先にあった?
史実によると、秦は中華統一の後、15年ほどで滅んでしまっています。あれほどの戦いを乗り越えた秦の中華統一だったのに、僅か15年で滅んでしまうとは切ない話です。
しかも、秦が滅びた後の漢の時代は400年以上も続いたといわれています。ですが、そこに政の本当の目的があったのではないか、というのがこの考察です。
つまり、政は、自身の代で平和な時代を築こうとしたのではなく、自分達の子孫が代々平和な時代を築くことを願っていたのではないか、という説です。
もちろん史実にそういう記録はありません。もしかしたら政がそう考えたのではないか、という想像の話になります。そんな政の考えが明かされる最終回も、アリといえないでしょうか。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。結末を考察すると、物語の始まりからまた読んで、何かヒントがないか探したくなるものですね!ぜひあなたも『キングダム』の奥深い魅力をご自身で考察してみてくださいね。
- 著者
- 原 泰久
- 出版日
- 2006-05-19
いかがでしたか? 『キングダム』はロングセラーの人気作です。しかし、ロングセラーだからこそ読み始めるきっかけがないということもあるでしょう。
また、史実どおりなので、歴史が苦手な方は、ハードルが高く思えるかもしれません。そんな時はぜひ、映画を最初に見てください。そして面白かったら、原作も手に取ってみてはいかがでしょうか? きっとハマってしまいますよ。