ハイテンションなスプラッターバトルがこれでもかとくり広げられ、いい意味で「ひどい」と話題の漫画『サタニスター』。衝撃の最終回に至るまでの見どころと、魅力あるキャラクターたちを紹介していきます。
『サタニスター』は2005年から2008年にかけて、ホラー漫画雑誌「ホラーM」で連載された漫画です。
作者は『ゾンビ屋れい子』『血まみれスケバン・チェーンソー』でカルト的な人気を誇る三家本礼。それらの作品に続く『サタニスター』は、バイオレンス、ヘビメタ、スプラッターなどの要素をこれでもかと詰め込んだ内容でファンを虜にしています。
本編の連載開始に先がけて、悪役のバルキリーを主人公にした短編「バルキリー」が掲載され、そのショッキングかつシュールな内容が話題を呼びました。
「サタニスター」とは、サタン+シスターという意味で、「悪魔寄りのシスター」であることを意味します。神に仕えるはずのシスターでありながら、葉巻を吸う、酒を飲む、とかなりやりたい放題なのです。
本作では、そんな「サタニスター」が両腕にはめたナックル型の武器を使って、殺人鬼たちを拳で退治しまくるハイテンション・アクションが描かれています。
登場キャラは敵も味方もとにかくイカレています。突然料理対決が始まったり、これでもかとスプラッターシーンが出現したり、とても整合性が取れているとは思えないハチャメチャな展開が続きます。
このように、とにかくいい意味で「ひどい」漫画なのです。読後はまるで嵐が通りすぎたような気分を味わえるでしょう。スプラッターシーンといっても嫌悪感の少ないものが多いので、頭を空っぽにして読める作品です。
- 著者
- 三家本 礼
- 出版日
- 2006-09-19
西東京区のひばり学園町にある小さな古い教会。そこにひとりのシスターがいました。彼女の名は「サタニスター」。悪魔寄りのシスターです。彼女は、教会にいじめの悩みを打ち明けに来た少女に「くそくらえ」と言い放ち、これを使うようにとメリケンサックを渡すのでした。
その頃、街では男がミミズを人に寄生させて操るという事件が発生していました。雷崎という刑事から情報を得たシスターは、犯人の蟲飼(むしかい)という男に襲撃をかけます。サタニスターとは、「特殊殺人鬼」を狩るため、悪魔に魂を売ったシスターなのです。
主人公はサタニスターと呼ばれていますが、彼女の本来のコードネームは「ナックルスター」。両手にはめた、まがまがしい棘のあるナックルを使い、敵となる特殊殺人鬼たちを主に肉弾戦で倒していくバイオレンスなシスターです。
シスターらしく修道服に身を包んではいるものの、酒や葉巻も平気で嗜み、言動は粗暴でハチャメチャ。そんな彼女は巨乳で美人の武闘派で、腕の筋肉も格闘家並みです。
ある時、殺人鬼のホールガールから「世界殺人鬼決定戦」への招待状を受け取り、やがて彼女は熾烈な戦いに身を投じていくことになります。
殺人鬼の居場所にバイクで突っ込んだり、昼間から酒を飲んでだらけたりしていますが、敵である特殊殺人鬼たちを目の前にすると彼らを裁く正義感が露わになり、頼れる姉御肌の女性へと変貌します。また、身勝手な理由で殺人をおこなう人間が嫌いという熱い一面もあるのです。
とにかく強くてカッコいい、魅力ある主人公です。
沢本いづみは、15歳の中学生でかなりのいじめられっ子。サタニスターのいる教会にいじめの悩みを相談しに行ったことで彼女と知り合い、そこから特殊殺人鬼たちとの戦いに巻き込まれていくことになります。
後々に世界最強殺人鬼決定戦にまで同行することになるのですが、彼女自身は格闘技の経験はまったくなし。しかし、その戦いのなかで彼女は、作中キャラ随一といってもいいほどの大きな成長をとげることになるのです。
いづみは、サタニスターからナックルを削って作ったダブルヘッドクロスを授けられ、いつしか特殊殺人鬼たちとも渡り合う存在になっていきます。そして大会のなかで、今までトラウマとなるほど苦しめられてきた存在を倒し、過去の自分を乗り越えます。その活躍ぶりは、もはやサタニスターの右腕ともいえるでしょう。
また終盤では髪をロングヘアーにし、服やメイクも堂々としたものに変化していきます。過去の弱い自分と決別するいづみの活躍は、本作のなかでもかなり熱い要素のひとつです。
サタニスターの因縁のライバルであるバルキリーは、この作品のもうひとりの主役ともいえる存在です。
性格は残虐非道、過激なボンテージファッションに身を包み、両手首に装着した刃物を武器とします。こちらもサタニスターに負けず劣らずの巨乳で、殺人をすることを何より好む最強の殺人鬼です。
1巻の冒頭には、バルキリーが一般人を相手にひたすらゲームのごとく殺人劇をくり広げる短編が収録されています。彼女は自殺志願者たちの集まりに潜りこんで参加者たちにウサギの着ぐるみを着せ、「ウサギ狩り」と称して殺人をおこなうのが趣味というとんでもないキャラクターなのです。
他の殺人鬼たちのように特殊能力こそ持っていませんが、その戦闘能力と圧倒的な暴力性で次々と屍の山を築いていきます。
しかし、実は彼女には、殺人鬼と化してしまうきっかけとなった幼少時代のとある出来事がありました。自分のことを「バルキリー」と名乗るようになったのも、その頃からです。そしてそのでき事から、彼女の体内で脳内麻薬が大量に分泌され、ストレスを受けることによって肉体が爆発的に強化されるという特異体質になってしまったのです。
時には、前もってトイレ掃除をするなどしてわざとストレスを溜めてから戦闘に臨むという行動を見せ、その殺人に対する無邪気なまでの真っ直ぐな姿勢が逆にカッコいいとさえ思えてしまいます。
- 著者
- 三家本 礼
- 出版日
- 2008-08-18
第1巻から最終巻まで、ジェットコースターのようなハチャメチャなストーリーが続く『サタニスター』ですが、終盤は特にカオスな展開を迎えます。「どうしてそうなる?」という、いい意味で強引なストーリーも、謎のパワーでなぜか納得させられてしまいます。
魅力溢れるキャラクター、物語の凄まじいまでの疾走感、それなのにどこかB級感があって引き込まれてしまう本作ですが、ラストには少し涙を誘う展開も。サタニスターとバルキリーの対決の行方や、いじめられっ子だったいづみの覚醒など、思わず熱くなってしまうシーンもさることながら、ノンストップでくり広げられる殺人鬼バトルは、ほかの漫画にはなかなかないマニアックさを秘めています。
このクレイジーな世界観は、1度味わったら抜け出せません。結末に向けてにはサタニスターの頑張る姿、幽骸が持つ怪物銃の威力、バルキリーの見せ場など、これでもかというほどのスピード感あふれる展開となります。
そしてやはりそこは三家本作品。思いもよらぬ衝撃の展開に驚きながらも心を打たれることでしょう。妙な魅力のある『サタニスター』をぜひ結末までご自身で読んでみてください。
カオスな展開が売りの『サタニスター』は、読むと不思議と元気になってしまう異色のスプラッター漫画です。ぜひそのマニアックな世界観に足を踏み入れてみてください。