人気グルメ漫画家・寺沢大介が描く本作。大食いの名探偵が食べ物をヒントに難事件を次々に解決する、グルメと推理を組み合わせたイイトコ取りの、新感覚グルメミステリー漫画です!
『喰いタン』は2002年~2009年の7年間、雑誌「イブニング」で連載されており、その人気は国内に留まらず韓国や台湾でも単行本が販売されました。
作者の寺沢大介は、『ミスター味っ子』『将太の寿司』などの人気グルメ漫画を執筆しており、作中に登場する食べ物をとても美味しそうに描くことに定評があります。
本作の魅力のひとつである主人公、高野聖也は、食べ物を見ると周囲の視線も気にせずどんなものまで食べあさるほどの度を超した大食いですが、謎や事件に直面した時の彼の推理力は圧巻のひと言です。
またすべての事件の糸口が食べ物に隠されています。食べ物から事件を解決に導く説得力抜群な彼の語り口は、読む人の目を釘づけにするでしょう。
読んでいると料理や食べ物に関する知識が増え、不思議とお腹まで減ってくる本作の魅力を紹介していきます。
- 著者
- 寺沢 大介
- 出版日
- 2002-11-20
高野聖也は、警察でさえも頭を抱える難事件を解決する探偵です。学生時代の後輩で、警視庁若手随一と呼び声の高い緒方警部に頼まれて、一般人でありながらも特例として事件現場への立ち入りが許可されています。
鋭い洞察力と高い推理力を持つ彼の、警察関係者からの呼び名は、食いしん坊探偵「喰いタン」。食べて推理し、また食べる!型にハマらない名探偵の前では、事件に隠された真実や、小さなお菓子の食べ残しですら隠しとおせません。
漫画や小説問わず、事件や事故を解決するミステリーものは数多くあれど、グルメとミステリーの組み合わせは非常に斬新な設定。日ごろ推理物や謎解き物を読まない人でも、反対にコアなミステリーファンでも、新鮮な気持ちで読むことができます。
探偵ものやミステリーものの醍醐味は、一見完璧に思える犯罪のアリバイとトリックを、主人公がいかにして崩していくかというプロセスが挙げられますが、『喰いタン』の高野聖也は、犯行現場に残されていた料理を食べることによって、犯人と犯行方法を暴くのです。
ミステリーを数多く読んでいる方は、物語の途中で犯人やトリックに気がつく人もいるかと思いますが、本作では食べ物が、犯人やアリバイ、トリックなどすべてを解き明かすカギになっているので、高野以外の人はなかなか推理することができません。
周囲の人たちが啞然とするなかでも、高野は食に対する極限の知識と、五感のすべてを研ぎ澄まして、事件の謎をひとつひとつ解明していきます。一見なんの変哲も無い食べ物によって、迷宮入り寸前の事件を解決に導く様子には、誰しもが納得さられるでしょう。
ミステリーの醍醐味の謎解きにグルメを加えることで面白さは何倍にも跳ねあがり、また過度な残虐描写や吐き気がするほどの邪悪な犯人も存在せず、明るい雰囲気をもっているので最後まで楽しみなら読み進めることができます。
- 著者
- 寺沢 大介
- 出版日
- 2009-02-23
- 著者
- 寺沢 大介
- 出版日
- 2009-06-23
従来のミステリー作品は、殺人事件のグロテスクな描写などがある性質上、食事をしながら読むには適していませんが、『喰いタン』は違います。
作中に多数の料理が登場し、犯人を突き止めるためとはいえそれぞれの料理を細かく解説してくれるので、本当に美味しそうに見えるのです。殺人事件を目の当たりしながらお腹が空くという、不思議なミステリー作品になっています。
そして料理に関するウンチクを高野が語る時には、ボリュームたっぷりな文字数で説明します。コマを埋め尽くすほどの吹き出しは、時に登場人物たちのスペースを削り取るほどの量で、読み応えも十分です。
普段なかなか知る機会がない知識が多く、感心して時間を忘れて読んでしまう魅力があります。
- 著者
- 寺沢 大介
- 出版日
- 2009-09-23
通常の探偵物の主人公は、渋いハードボイルド系、ドジだけど推理に関しては天才系、極端に論理的な思考で低い性格に難あり系などがいますが、高野はこれらの主人公とは一線を画します。
とにかく食べて食べて食べまくる高野は、殺人現場に残されている毒物が混入されているかもしれないものや、凶器に使われた可能性があるものでも、平然と口にしてしまうのです。彼の行動は無茶苦茶で、ルール無用にも見えますが、その膨大な知識と経験からもたらされる天才的な推理力は見る者を圧倒します。
また、どのような事情があっても悪は許さず、冷静に犯人と手口を明らかにしていくのです。普段はおちゃらけでゆるい表情と、驚くほどの食い意地の悪さで周囲を呆れさせていますが、一流の料理シェフ、料理研究家ですら敵わないレベルの食に関する知識と経験をもとに、数々の難しい事件を解決する名探偵ぶりを見ると、おもわず惹かれてしまいます。
通常、漫画作品の最終回は物語全体をとおしてのテーマや、謎を解決する最大のクライマックスとして用意されています。
たとえば黒幕の正体が明かされる、主人公を巡る過去の因縁に終止符を打つ、かつてない史上最大のピンチを危機一髪で乗り越える……というようなことが最終回より5~10話以上前から盛りあがる展開として始まるのですが、『喰いタン』はここでもひと味違います。
なんと、主人公である高野ですら突然の最終回に驚き、憤慨しているのです。人気漫画なのに、大人の事情により突然の打ち切りを悲しむ彼は、緒方を誘って残念会を開くことを提案しますが、緒方はヤクザの事務所に一斉捜査をおこなうことを告げるのです。
強面ぞろいで緊張感漂う事務所に到着すると、すでにヤクザたちが証拠隠滅を図った後でした。
警察の面子が丸つぶれになり途方に暮れる緒方ですが、高野は持ち前の度胸で、事務所内でもいつもどおりの食い意地の悪さを発揮し、事件解決のために驚くべき行動に出るのです……。最後の事件でも、高野の食に関する膨大な知識と勇気と正義感には唸らされます。
そして物語は新たな新展開を迎えます。高野の日々に大きな変化が訪れました。強い決意を秘める彼に対して、彼の秘書である出水京子はどう対応するのでしょうか?
緊迫した展開と、ためになるウンチク、そして料理で事件を解決する痛快感をもたらしてくれた本作。新たな展開の幕開けと、高野と京子の2人の関係性にも変化が起こる最終回は、その目で確認しましょう!
- 著者
- 寺沢 大介
- 出版日
- 2009-10-23
異色のグルメ×ミステリー漫画の『喰いタン』。気になった方はぜひ読んでみてください!