ギャグあり、ラブコメ展開ありの王道ファンタジー漫画。今回は、今作の魅力を、キャラクターごとにフォーカスしてご紹介していきます。
- 著者
- 高田 慎一郎
- 出版日
少年と少女が出会うボーイミーツガールから、神々と人類の壮大な戦いへと発展する和風ファンタジー漫画『神さまのつくりかた。』。
作者である高田慎一郎の初連載作品である今作は、王道のバトル描写満載のファンタジー作品でありながら、ギャグあり、恋愛要素ありと、実に見どころ満載なストーリーとなっています。
今回は、そんな本作の最終巻までの見どころをキャラクターにフォーカスしてご紹介していきます。
荒ぶる神である遊風稜(ゆせみ)を倒すため、戦神子として育てられてきた小春(こはる)は、ある日「男」が見たいがために、女しか住んでいない一神殿という社から脱走を図ります。
幼少期から小春の教育係をしていた八歳(やつとせ)とともに降り立った外界で、都家弥十郎(つげ やじゅうろう)という少年と出会った小春でしたが、そこに遊風稜を利用して一族の復興を目論む阿曇一族(あずみいちぞく)が現れ、小春は戦神子としての戦いに身を投じていくこととなるのです。
本作の主人公であり、神々と人類の戦いにおけるキーパーソンです。
空間を統べる神としての力を持っており、あらぶる神を倒すための力を持ち、そのための教育を受けてきたはずの彼女ですが、物語の冒頭ではちょっとおバカで調子にのりやすい普通の女の子として描かれています。実際、外界に降り立った理由も戦うためではなく、これまで見たことのなかった「男」を見てみたいという、なんとも不純きわまるものでした。
そんな彼女ですが、バトルシーンになると実に活き活きと動きまわり、物語上では戦場の第一線で戦神子の名に恥じない活躍を見せます。
作中屈指のポテンシャルを秘める彼女ですが、そんな彼女が向き合うことになる障害の数は決して少なくありません。
まず、神の力を持っているとはいえ、冒頭時点の彼女の力は非常に微々たるもので、とてもではありませんが、敵である遊風稜にかなうほどの力は持ち合わせていません。そのため、遊風稜との初戦闘ではまるで歯が立たず、敗北を喫することになってしまいます。しかも、物語が進むにつれて、遊風稜との戦いは序章にすぎず、さらに強大な敵と戦うことになっていきます。
そういったことから彼女の戦いは常に苦戦を強いられることが多く、そのたびに神としての力を引き出すための試練を乗り越えなくてはならないのです。
女の子ではありますが、由緒正しくバトル漫画の主人公を務めていると感じさせられるようなキャラクターで、読者としては安心して彼女の成長を見ていられることでしょう。
また、彼女については戦闘面だけではなく、むしろ精神面の成長が物語において重要といえるでしょう。そもそも、彼女を取り巻くキャラクターには、彼女にとって思いも寄らない秘密が隠されており、それはいずれも彼女にとって衝撃的な事実となっています。
各キャラクターの秘密については後述しますが、そうした事実を知るたびに、彼女は時に傷つき、思い悩むことになります。戦神子として驚異的な力を持った彼女も、結局はひとりの女の子なのだということを感じさせられ、そうした出来事を乗り越えて精神的に成長していく彼女を見守るうちに、読者にとっても感情移入しやすいキャラクターになっていることでしょう。
彼女が他の人物たちとのかかわり合いを通じて、どのように成長していくのか、ぜひご自身の目で確認してみてください。
弥十郎(やじゅうろう)は、小春と八歳が外界で初めて出会うことになる人物です。
彼は初登場時、剣道を学んでいるとはいえ、特別な能力を持っているわけではない普通の人間として現れます。そのため、初戦闘時からあまり活躍はできず、それからしばらくの間は足手まとい気味というのが正直なところです。
そんな彼は、小春とのファーストコンタクトの印象も悪く、しばらくの間はお互いにいがみ合う関係が続くほどでした。しかし、彼は実は小春の力になりたいと陰ながら考えており、密かに努力をし続けていくのです。
その努力の過程は本当に長く、作中は最終決戦前まで、ずっと鍛錬の日々です。結果として鍛錬の甲斐はあり、最初は足手まといでしかなかった彼は、最終決戦時にはとても頼りになる剣士として成長することとなり、小春や仲間たちの手助けに奮闘する姿を見ることができます。
その力は、圧倒的に不利だった戦局を彼ひとりの力でひっくり返すことが可能になるほど。普通の少年でしかなかった彼が、神々を相手に対等にわたり合うことができるようになった姿は、感慨深いものがあります。
また、彼の物語におけるもっとも重要な役割は、主人公の小春の精神的な支えとなっていくことでしょう。最初は会えば口喧嘩をする2人ですが、小春を助けようと努力を続ける弥十郎の姿を見て、小春もいつからか、彼を頼りがいのある男性として意識するようになります。
そしていつしか2人は異性として両想いの関係となり、かつ相棒として背中を預けられる関係にまで発展します。そんな2人が物語の結末ではどうなるのか、神々との戦いの結末と同じくらい気になるところです。
八歳(やつとせ)は小春と同じく、一神殿から降り立った小春の教育係です。
小春とは実の姉妹のように育ってきたためか、やたら過保護に接してしまう面があります。重度の男性恐怖症のため、初登場時は男性からメートル単位で距離を置くほどです。
彼女は年齢が8歳以前の記憶がない状態で一神殿に拾われたため、その由来から命名されました。彼女自身には戦う力がないため、基本的には後方支援と指揮系統を担当することが多く、前線で無茶をする小春をハラハラしながら見守る、といったシーンが多く見受けられます。
八歳は何より小春を優先した行動に出ることが多く、小春を守るためであれば親しい人間を利用するよう働きかけ、時には直接手にかけようとすることもあります。しかし、元来が優しい女性であるため非情に徹しきれず、情に負けて涙するなど、人間味のある魅力的なキャラクターでもあります。
そんな彼女ですが、実は今作における非常に重要な秘密を抱えた人物なのです。先述した通り、彼女は齢8歳になる以前の記憶がありませんので、一神殿に拾われる前の出生が謎に包まれています。
彼女はどこから来た誰なのか、小春と出会う前は何をしていたのかなど、八歳に関する情報は物語を読み進めていくとしだいに明らかになっていきます。そして、物語の終盤で明らかになる彼女の正体は、小春にとって、そして読者にとっても思いも寄らないものであることでしょう。
彼女の出生の秘密にまつわるエピソードについては、そのどれもが感動的な内容となっているため、ぜひ本作を読んで確認してみてください。
遊風稜(ゆせみ)は、初登場時点から圧倒的な力を持った神として登場し、小春たちにとっては倒すべき敵として描かれています。
しかし、実際に小春たちが対峙した遊風稜は、驚異的な重力を統べる神としての力をもつものの、あまりにも無垢で幼い子供のような存在でした。それもそのはず、なんと彼女は小春が幼い頃に生き別れた妹であり、幼少期にかけられた呪いによって自分を見失っているだけだったのです。
呪いによって、身体的には神として十分に成長させられましたが、精神的には未成熟なままとなっているため、表面化している彼女の人格は幼い少女のままとなっているのです。その呪いをかけた当事者が、工神栄(にわさか)という女性であり、姉妹を含む登場人物たちの運命を弄んだ黒幕だったのでした。
物語が進むと、工神栄を撃退することに成功するのですが、そこからどんどん遊風稜自身の素の性格が表に出るようになり、より人間らしくなっていきます。本来の彼女はとても明るく闊達で、姉である小春にやや意地悪な女の子です。そんな彼女が姉の小春とおこなうかけ合いは微笑ましく、仲睦まじい姉妹の様子に口元が綻びそうになるでしょう。
そんな遊風稜と小春の姉妹が、物語の終盤ではついに両親を救うために手を取り合うことになります。姉妹が引き裂かれることになった経緯と、物語の果てにたどり着いた運命とは……実際にお読み頂き、その目でご確認ください。
魅力的なキャラクターたちが織り成す怒涛の波乱万丈の展開でありながら、ギャグとラブコメ要素でテンポよく読み進められる『神さまのつくりかた。』。この機会に、ぜひご自身の目で、物語の結末をご確認くださいね。