数々の恐竜のなかでも人気を誇るティラノサウルス。詳しく知ってみたい!と思ったことはありませんか?今回は、ティラノサウルスの生態を徹底的に解説し、その魅力に迫っていきます。
ティラノサウルスは約6850万年前から約6550万年前に北アメリカ大陸に生息していたとされる肉食恐竜です。名前は古代ギリシア語の「暴君」と「とかげ」を組み合わせてできたといわれています。現在でも映画のモチーフとして選ばれるなど、高い人気を誇っています。
どんな生物だったの?
体長はおよそ11mから13m。体重は5tほどあり、史上最大級の肉食獣といわれています。1m以上ある大きな顎と20cmほどの長さの歯、それに指が2本しかない小さな足が特徴です。足が小さい代わりに大きな頭を器用に動かし、餌を食べていたと考えられています。
また三半規管が発達していたことでも知られていて、大きな頭でもバランスをうまくとることができました。視覚も発達していたので、獲物との距離感などをつかむことも得意だったことが分かっています。
走るのが苦手だった?
彼らの走行については学者によって諸説ありますが、あまり走ることができなかったという説が有力視されています。
カナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館で恐竜研究をおこなうドナルド・ヘンダーソンがティラノサウルスの3D骨格モデルを作成してコンピューターでシュミレーションを行ったところ、彼らの歩幅では最速でも1時間に18km走るのが限界だという結果が得られたそうです。
またロンドン王立獣医カレッジの進化バイオメカニクス専門家のジョン・ハッチンソンがティラノサウルスの筋肉量を計算した結果からも、同じように時速18km以上の速さで走ることは困難だという結果が導き出されています。人間が全速力で走る速さに追いつけないくらい、彼らは走ることが苦手だったのかもしれません。
ティラノサウルスには長年の研究から導き出されたいくつかのエピソードがあります。ここでは彼らにまつわる意外な秘密をご紹介しましょう。
唇があった
彼らの噛む力はとても強いものでした。およそ20cmの歯は鋭く分厚いもので、その噛む力はナイルワニ2000kgに対してティラノサウルスは6t以上。その大きな力で自分たちと同じくらいのエドモントサウルスやトリケラトプスの骨までかみ砕いて食べていたのです。
そんな大事な歯を湿気から守るために必要不可欠だったもの、それが唇です。ティラノサウルスの歯は唇に覆われていたと考えられています。その唇は薄い唇でうろこに覆われていたそうです。
共食いをしていた?
主にエドモントサウルスやトリケラトプスを食べていましたが、それと同時にティラノサウルス同士で共食いをしていたことを示す化石も発見されています。彼らは一口で230kgの肉を食べることができたので、大きな体をした仲間も食べることができたのかもしれません。
羽毛があった?
長い間体がうろこに覆われていると考えられていましたが、2004年に「白亜紀前期に中国にいたティラノサウルスの祖先にあたるディロングは羽毛があった」という研究結果が発表されました。
この問題に関しては1990年代から学者たちの間でも議論が重ねられていますが、近年では少なくとも幼体には羽毛があったとされています。
彼らの化石が初めて発見されたのは1892年。アメリカの古生物学者であるエドワード・ドリンカー・コープが脊椎の一部の化石を発見しました。当時は「マノスポンディルス・ギガス」と名付けられ、その後「ディナモサウルス」や「ティラノサウルス・レックス」などと呼ばれるようになり、たまたま論文で発表された名前が「ティラノサウルス・レックス」だったため、この名前が定着するようになりました。
さらに1990年にはアメリカのサウスダコタ州でティラノサウルスの全身骨格化石が発見されます。発見者の名前にちなんで「スー」と名付けられたこの化石は、現在フィールド自然史博物館に展示されています。
また2007年には、ノースカロライナ州立大学研究チームがティラノサウルスの骨のたんぱく質を分析。彼らは遺伝子的にニワトリに近いという研究結果を発表しています。2009年には顎の化石に空いた穴を調査したところ、鳥に寄生するトリコモナス古代菌種が命を奪っていた可能性が分かりました。
最新データに基づいて彼らの生態を解説した一冊です。復元アーティストである小田隆が正確な知識と理解で描いたティラノサウルスも必見です。50ページほどですが、充実の内容が詰め込まれています。
- 著者
- 小田 隆
- 出版日
- 2005-03-01
本書はとにかく絵が秀逸です。今にも迫りくるティラノサウルスだけでなく、卵を産む姿や子どもと戯れる様子など、まるでタイムマシンで彼らに会いに行ったかのようなリアルな世界を楽しむことができます。絵が実に緻密に描かれていて、細部までしっかり観察することができるでしょう。
絵だけでなく解説も充実しています。40億年の生命の歴史をまとめた「生命の歴史」や、恐竜の繁栄と絶滅を描いた「恐竜の系統樹」など、包括的に恐竜について知ることのできる資料も読者には嬉しい内容です。
大きな謎に包まれたティラノサウルスの生態や様子が壮大なスケールで描かれています。
カメ専門の古生物学者である作者が、恐竜の絶滅の原因や生態などの謎に新しい視点で切り込んだ一冊です。恐竜の専門家でない古生物学者による恐竜学の本という斬新な内容になっています。
- 著者
- ["平山 廉", "小田 隆"]
- 出版日
- 1999-07-01
中生代を約2億年にもわたって支配していた巨大なティラノサウルス。その巨大な体の謎や、奇妙な生態はいまだに多くの謎に包まれています。そんな多くの謎を大胆な推理で楽しませてくれるのが本書です。
たとえば、恐竜の脳は非常に小さく、彼らは賢くなかったという定説がありますが、本書ではそんなことはなく爬虫類と同じくらいの知能があったのではないかと予測されています。恐竜の専門家が信じて疑わない定説を、よい意味で超えていく、そんな楽しさが詰まっているのです。
コンパクトなのに中身は充実しています。あなたの恐竜の見方をがらりと変えてくれるかもしれません。恐竜に対する新しい視点を与えてくれる一冊です。
本書はティラノサウルスに特化したポップアップ図鑑です。本をめくるたびに現れる恐竜の姿に子どもはもちろんのこと大人も大興奮できるでしょう。
- 著者
- ジョン シビック
- 出版日
読者にとって嬉しいのが、ティラノサウルスの内臓や、子育てや狩りの様子まで立体的に見られる点です。絵の質も非常に高く、触ってみたら冷たくざらざらとした皮膚を感じることができそうなくらい精巧な出来栄えです。
また、本を開いて飛び出てくるティラノサウルスは、およそ50cmで予想以上の大きさ。どうやって本の中に収まっているのかと確かめたくなることでしょう。
開いて楽しめるポップアップ図鑑ですが、添えられている解説も読み応えバッチリ。ティラノサウルスに興味を持つすべての人の好奇心にしっかりと応えてくれる素晴らしい一冊です。
お子様と一緒に楽しんでもよし、大人の趣味としてじっくり眺めてみるのもよし。かなりの出来栄えなのに値段はお手頃で、コストパフォーマンスも抜群の恐竜図鑑です。ぜひ手に取ってみてください。
いかがでしたでしょうか?今回はティラノサウルスの生態と、彼らについてもっと知るための3冊の本をご紹介しました。最後までお読みいただきありがとうございます。