新日本プロレスは年間約150試合。プラス海外の団体への参戦で月の半分以上は、ホテルのベッドで寝ている計算になります。翌日も朝から移動。夜は試合。毎日変わる寝床、これが結構キツイんです。試合に勝つための最大の武器はなんと言ってもコンディション。そこで、睡眠に対する意識を高めよう、と手に取った話題の本をご紹介します。
- 著者
- 西野精治
- 出版日
- 2017-02-28
試合前の緊張の度合いが高ければ高いほど、試合前日と試合後の睡眠は浅く短い傾向があります。最近で言えば10.9両国国技館でのIWGP Jr.ヘビー級選手権。特に、両国という会場の形状は正方形で中央に歓声が集まります。1万人の集中力がリング一点に密集した機密感とでもいうのでしょうか。しかも、プロレスという舞台が特殊なのが、リング上が四方に囲まれているというシチュエーション。四方向から見られている快感とプレッシャーたるや、他のスポーツではあまり考えられないと思います。
睡眠に対する向き合い方を真剣に見つめ直す機会をもらったと思い、この本にボクはとても感謝しています。意識することによって確実に睡眠の質が高まりました。睡眠の質が高まると動きが良くなるのは当然で、技や試合のアイデアが浮かんでくる、前日の負けを忘れられる等々……精神的によき作用があることも実感できます。寝具、気温や湿度、部屋の環境、周囲の音…気になり出したらキリがないし、完璧を追求しすぎると逆に眠れなくなるので要注意ですが(笑)眠る、というのは奇跡体験。これを自覚してから、身体の調子がすこぶる良くて、毎晩、目を瞑る瞬間、意識が落ちる瞬間を意識するのは、なんだかちょっとおもしろいんです。
日本でも、アメリカでも、イギリスでも、寝て起きて食べて試合をする。このリズムのなかでこの本と出会えた事はラッキーでした。
- 著者
- 菅原洋平
- 出版日
- 2012-09-21
プロレスラーという職業には、物忘れが激しい人が多いです。「受け身の取り過ぎで脳細胞が壊れてるから覚えられないんだよ」というのはプロレスラー定石の言い訳なのですが、本書にはそれに対しての答えが出ていました。【ながら活動をしていると脳は必要以上に興奮し続け、物忘れのような警告サインが出る】というのです。
ながら活動……確かに思い当たる節が。プロレスラーというその生態は一概には言えませんが、闘争本能を全開にして勝利だけを一身に追求すればするほど、勝利から遠のいていく……そんな側面があるのがプロレスという特殊な職業なのです。深部体温というワードが語られているのですが、ここもやはりプロレスラーとしては到底、簡単に読み流すことはできません。プロレス興行は休日・祝日はだいたい、15時か17時試合開始。平日は18時半スタートが多いです。普通に考えると、就寝する数時間前までリング上で喜怒哀楽を全開にして戦っているわけですから、そりゃ体温も上がっているし、脳も覚醒しています。
体温と睡眠と覚醒のリズムなんて守れやしない!が、プロレスラー生活ですが【朝、日光に浴びることの重要性】これだけは実践できると思いました。
眠気とは、覚醒し続けて疲弊した神経を修復し、さらに高いパフォーマンスを発揮するための、脳による脳のための戦略的システム
だということを本書で自覚して、ボクは密かに試合前の眠気に逆らわらない!という対処法を生み出しました。これはたとえば自分の試合の出番がメインイベントだとすると、会場入りして練習して、その後逆算して3~4試合前まで活動のスイッチを一度完全にオフにしておくのです。リングのパフォーマンスも、勝率も、この本を手にして確実に上がっている……そんな実感があります。