池井戸潤のドラマ化された作品おすすめランキングベスト6!

更新:2021.11.9

いわゆる「サラリーマンもの」が得意な池井戸潤。企業で働く人たちの想いや状況を、実に繊細な描写でありありと表現する文章、お話が魅力的です。ドラマ化も多くされ、視聴率も高く、中には流行語を生み出すものもありました。 そんな時代の立役者、池井戸潤の作品からドラマ化された小説のおすすめを6点ご紹介いたします。

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1位:池井戸潤が描く、仕事へのプライド『下町ロケット』

夜空を見上げると、そこには満点の星空が広がっていますね。誰しもがその彼方へ思いを馳せ、宇宙に夢を見たことがあるのではないでしょうか。池井戸文学のおすすめ第1位は、町工場で宇宙への夢を追いかけ続ける男たちの物語です。

とある商談の帰り道、佃製作所の経理を務める殿村は肩を落として言います。「社長、夢を追いかけるのは、しばらく休んだらどうですか・・・」。会社の経営が苦しいのは、社長・佃航平にも分かっているのです。しかし、佃には宇宙開発という夢がありました。

佃は過去、宇宙開発機構でのロケット打ち上げに失敗したことがあり、なんとしても成功させたいとの想いを持ち続けていました。そして、実質的には利益の見込めない水素エンジンの開発に、心もとない会社の資金を多く充てているのでした。

ある日、ますます経営の悪化する佃製作所にある話が持ちかけられます。やっとの思いで開発に成功した技術の特許を譲ってほしいという話が、大企業・帝国重工の宇宙航空部門から舞い込んできたのです。取引額は20億円。会社の状況を考えると、垂涎を隠し切れない佃製作所ですが、ここで佃は大きく勝負に出ることを考えます。20億の特許契約ではなく、自社で帝国重工の宇宙開発に関わる部品を作らせてほしい―。大企業の宇宙開発に関わる事ができれば、会社の経営も、自分の宇宙への夢も実現に近づきます。

はたして佃の夢は叶うのでしょうか。

著者
池井戸 潤
出版日
2013-12-21

幼い頃に描いた夢は、世の中の色々な現実を知ることで、次第に「夢物語」となってしまうことが少なくありません。そんな中で、石にかじりついてでも実現させようと奮闘する佃の姿に胸を打たれる方が多いようです。また、宇宙というのは人類共通の未知の世界であり、その追及はまさに私たちの夢ですね。

また、小さな中小企業が宇宙開発をするという、アメリカンドリームのようなお話は多くの人々に勇気を与える物語です。

2位:財閥率いる大企業VSちっぽけな中小企業!『空飛ぶタイヤ』

ある日、とある主婦が交通事故で亡くなりました。といっても、車にぶつかるような普通の交通事故ではありません。走行中のトラックのタイヤが外れ、そのタイヤが直撃して亡くなったのでした。警察の調査によると、トラックの整備不良が原因とのことでした。

トラックの持ち主であった赤松運送の社長・赤松徳郎はその警察の発表に納得がいきません。自社の整備記録によれば、欠陥らしきものは見当たりません。父の跡を継いでからというもの、多くの苦労はありましたが無事故を第一に経営してきた自負があるのです。

ところが、世間の反応は冷たいものでした。警察が公式の発表をしているうえに、赤松運送のトラックは財閥系の大企業であるホープ自動車のものだったからです。このような状況の中で、ちっぽけな運送会社の主張を聞いてくれる可能性はあるでしょうか。

しかし、どんな状況でも奇特な人物はいるものです。ホープ自動車の社員であった沢田悠太は、一連の報道に違和感を抱き、内緒で真実を暴こうと動き始めます。

著者
池井戸 潤
出版日
2009-09-15

被害者の遺族からひどい扱いを受ける赤松の姿は痛々しいものですし、大企業の人間模様もどす黒いものを感じずにはいられません。ただ、その苦境を強いられる中でも奮闘する赤松の姿には心打たれます。

3位:池井戸潤が大ブレイクを果たしたシリーズ『オレたちバブル入行組』

2013年のテレビドラマ化で一躍有名になった半沢直樹が主人公のシリーズです。彼の名セリフ「やられたらやり返す。倍返しだ!」は流行語にもなりましたね。「半沢直樹」でおなじみですが、原作は「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」という作品です。
2013年のテレビドラマはこの2冊のお話をもとに作成されましたが、小説の方は「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」と続編が出ています。

主人公である半沢直樹は東京中央銀行のデキる銀行マン。ゆくゆくは頭取となりバンカーとしての頂点に立つと宣言し、着々とキャリアを積み上げていきます。

しかし、大きな野望を持つ半沢の前に多くの障害が立ちはだかります。はたして半沢は銀行を変えることができるのか-。

著者
池井戸 潤
出版日
2007-12-06

池井戸潤の作品全体の共通点のひとつに、弱い立場の者があくどい権力者に立ち向かっていくという点があります。この半沢直樹シリーズもそうしたもののひとつですが、この作品の面白さは、大手銀行に勤めていた池井戸潤の細部の描写に支えられているでしょう。

ドキドキの展開にページをめくる手は止まりません。経験に裏打ちされた半沢の行動には気迫と信念があり、難敵を打ち破っていくシーンは痛快です!

個人的には第三作の「ロスジェネの逆襲」が一番面白いと思いますので、未読の方は是非。

4位:オトナの事情に正義はあるか『鉄の骨』

巨額のお金が動く建設業界。この本はそんな建設業界を牽引する、とあるゼネコンで働く男の物語です。

大手ゼネコン・一松組の3年目社員、富島平太は正義感に燃えていました。少々抜けているところもありますが、彼の熱血ぶりはホンモノ。時には現場で不真面目に作業をする作業員とケンカをしてしまうこともあるほどです。

そんな富島に異動の辞令が下ります。次の所属は「談合課」。取引先と前もって話し合いを行う部署であり、激務であることから「華の談合課」と社内では呼ばれているところでした。

夢と希望をもって建設業界に携わってきた富島ですが、理想と現実のギャップに頭を抱える日々が始まります。慣れない状況に戸惑いながらも富島の考え方も変わっていきます。

「世の中きれいごとばかりではない。談合も必要なのではないか・・・」富島はこのまま談合の世界に染まっていくのでしょうか-。 

著者
池井戸 潤
出版日
2011-11-15

本作は他の作品と違って、はっきりとしたハッピーエンドで終わらないところがミソです。キレイ事ばかりではない世の中をリアルに描き出しているのでしょうが、そこがなんともリアリティがあって魅力のひとつとなっています。

何はともあれ主人公の奮闘ぶりには共感させられるところが多く、スラスラと読み進めていけます。「本音と建て前」が縦横無尽に行きかう世界に一石を投じる一冊です。

5位:ふたりの「アキラ」をめぐる青春群像劇『アキラとあきら』

物語の舞台は、バブルが崩壊したあとの日本です。

零細工場の家に生まれた「山崎瑛(やまざきあきら)」と大手開運会社の御曹司として生まれた「階堂彬(かいどうあきら)」。

ふたりのアキラはそれぞれ生まれも育ちも違いながらも、企業のトップの後継者として決まった運命を義務付けられており、しかしそれに抗いながら生きてきました。本作はそんな似たような境遇のふたりが出会い、さまざまな試練を乗り越えていくという作品です。

青春群像劇でありながら、バブルが崩壊したあとの日本経済のリアルな現場も捉えており、とても読み応えのある作品といえるでしょう。

著者
池井戸潤
出版日
2017-05-17

池井戸潤の作品では比較的めずらしい「若者」が中心に活躍する『アキラとあきら』ですが、めずらしいのはそれだけではなく、作風が回想録のような追体験になっていたり、ハードカバーではなく文庫本としていきなり発売されたりするなど、作者の挑戦とも思える姿勢が伺いしれます。

池井戸潤の作品は毎回そうなのですが、やはりキャラクターに非常に魅力があります。

零細企業、いわゆる末端の存在である「瑛」と、御曹司の「彬」との対比がとても上手に描写されており、読む人の目を離してくれません。現実の世界でも思わず言ってみたくなるようなセリフがたくさんあり、遠まわしな皮肉から、これ以上ないほどの完璧な罵倒までさまざま言い回しがシビレますね。

ふたりのアキラは、最初は天と地のほどの差があり例えるならウサギとカメといったところでしょうか。

出会った当初はもちろんお互いにあまりいい印象ではなく対立することもあるのですが、次第にそれが協力関係になっていき、長所と短所をうまく補いあって状況を打破する姿は本当に痛快の一言です。そのうち、御曹司の彬が会社の経営難に差し掛かるのですが、それをバンカーである瑛が支える形になっていきます。

「バンカーは金に金を貸すのではなく、人に金を貸すのだ」

その言葉はとても重みがあり、本当に池井戸潤は名台詞を作らせたら右に出るものがいないなと思わせてくれますね。

ふたりのアキラの幼少期が前半で交互に語られるのですが、ふたりとも子供ながらに経営者としてのポテンシャルを感じさせる発言が多く見受けられ、青年期になったときの成長ぶりが見ていてこれだけでもひとつの物語になるんじゃないかと思ってしまいます。そのくらいおどろくほどの成長を遂げるところが前半の見所といえるでしょう。

ふたりは何度かすれ違うくらいの場面はあるのですが、決定的な出会いは青年になってからです。生まれも育ちも違うふたりなのですが、はじめて二人が相対する場面は「待ってました」と思わずニヤリしてしまうくらい、まさに運命というのはこういうものかと感じさせてくれる決定的なフックがあります。

ふたりは敵対する方向でストーリーは進んでいくのかと思いきや、意外や意外。憎み合っていた二人が協力して、ある「バブル期に暗躍していた人物」に立ち向かって出し抜いていくのです。この辺の過程で、人間がつまらないプライドや情によって落ちていく様を非常にリアルに書いており、これは自分の身にも起きることなんじゃないかと思わず怖くなってしまうほどです。

涙と痛快の、読み物としては最高のエンターテインメント作品といえるでしょう。こういった経済が絡んだ作品を普段読まない人にもぜひおすすめしたいですね。

銀行モノですがそこまで難しい単語も出てきませんし、解説もわかりやすくて、物語に関連したものなので非常に覚えやすいです。もちろん、池井戸潤の作品が好きで未読の人はぜったいに読むべきですし、期待はぜったい裏切らないと思います。

大いに期待して読んでみてください。その期待を軽く超えてきますよ。

6位:池井戸潤式野球小説『ルーズヴェルト・ゲーム』

日本の産業界を支える、とある中小企業・青島製作所は苦境に立たされていました。業界では中堅どころとして頑張ってきましたが、このところライバル会社との戦いで不利な状況が続き、業績が芳しくありません。状況は好転せず、ついにリストラも視野に入れなくてはならなくなりました。

リストラの対象は会社の不良債権、それは野球部です。年間3億の維持費がかかる割には、連戦連敗と会社の広告塔にもなりません。さらに、そんな野球部を疎んじる社員や役員も多くいるのでした。まさに四面楚歌、野球部員としてはたまったものではありません。このままでは「強制退社」が待っている……。

しかし、そんな野球部にも味方がいました。創業者である、会長の青島毅(たけし)です。青島にとって、この野球部は思い入れのあるものだったのです。

小さな工場から、一代で売上500億の企業へと成長させた青島でしたが、その陰には会社のために昼夜を問わずに働いてくれた社員の貢献が大きかったのでした。そんな社員の楽しみとして、青島は野球部を発足させたのです。時代は高度経済成長のさなかで、会社の業績は大いに伸びてゆき、野球部も連戦連勝で大活躍していたのでした。

野球部員である社員たちは思い立ちます。会社を立て直すには仕事で、そして野球でもライバル会社に勝たねばなりません。さて、青島製作所とその野球部の運命やいかに……。

著者
池井戸 潤
出版日
2012-02-22

社会人スポーツというのは学校の部活動ほどメジャーではないと思いますが、それだけにその世界は新鮮です。

また、次々と降りかかる困難にめげることなく、生きるか死ぬか(クビか)の勝負に立ち向かっていく男たちの姿には心打たれます。登場人物ひとりひとりの描写や台詞が非常に練り込まれていて、特に運命を決する試合の様子は一緒にグランドに立っているかのような臨場感がありますよ。

とにかく読了後が爽快な一冊です。


以上、池井戸潤のドラマ化された作品をランキングで6作ご紹介しました。企業世界を描いた作品が多いですが、もともと作者自身が銀行で働いていたこともあって、その描写が実にリアルなんですね。働くすべての人に勇気を与えてくれる作品たちです。

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