文芸

池井戸潤のおすすめ文庫作品ランキングベスト14!経済×エンタメが面白い!

更新:2020.11.30 作成:2016.12.4

難しそうな経済についてのテーマを小説としておもしろく魅せてくれる池井戸潤。ドラマで話題になった半沢直樹以外にも楽しめる作品がたくさんあります。そんな池井戸潤の特徴が詰まったおすすめ作品をご紹介します。

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銀行員からエンターテインメント小説家になった池井戸潤

池井戸潤は1963年、岐阜県で生まれた日本の小説家です。岐阜県立加茂高等学校を経て慶應義塾大学文学部および法学部を卒業。

そして1988年三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行しました。1995年退職後はコンサルタント業と並行してビジネス書の執筆、税理士会計士向けソフトの監修をして働いていました。小説家としては1度落選したのち、1998年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞して作家デビュー。その後数々の話題作品を生み出してきました。

池井戸潤が影響を受けた作品として、挙げている本がいくつかあります。エンターテイメントの要素に驚かされたというのがジェフリー・ディーヴァーの『エンプティ・チェアー』。そして彼が「足で書く小説」として挙げているのがフレデリック・フォーサイスの『ジャッカルの日』。単に取材をして得たものではなく、圧倒的な知識と事実を積み重ねた厚みのある作品として心に残っているそうです。真っ先にあげた影響を受けた作品がこの2冊であるというのも彼の特徴を物語っています。

14位:金融不祥事を描く池井戸潤のデビュー作

「これは貸しだからな」という謎の言葉を残して死んだ坂本 健司の死因はアシナガバチによるアナフィラキシーショックでした。

翌日、坂本が顧客の金を勝手に口座から引き出して自分の口座に送金していたことが発覚しますが、伊木は坂本の無実を信じて、彼が生前なに何をしようとしていたのか調べはじめるのでした……。

主人公の銀行員が、同僚の突然の死から絡まりあった事件の謎を解き明かしていく金融ミステリーです。銀行勤めを経験しているだけに業界の描写が的確で巧みです。文章も読みやすく、ストーリー展開もスピーディで目が離せない良作です。
著者
池井戸 潤
出版日
2001-06-15
同時に、亡き友への友情や真実を追い求める過程、元恋人との再会、組織対個人、主人公の再生なども描かれ、ハードボイルド的要素も入っています。

現在のエンターテイメント要素が強い作品とは一風異なり、殺人が関わっているというのもあり、サスペンスのような作風になっています。その重さはサスペンス要素のあるストーリー展開もそうですが、人間の心理描写が光ったもの。彼の銀行員時代の経験からか、嫌味な人物のリアルさ、派閥争いやパワハラなどのシーンはとてもリアルです。

デビュー作はこのような重めのものを書いていましたが、池井戸潤の特徴である勧善懲悪的なストーリーは健在。重めの内容でも安心して入り込んで読むことのできる良作です。
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13位:人生、愛憎、葛藤を描く短編集

『かばん屋の相続』は銀行員を主人公に人々の生き方や愛憎、葛藤を描く6編が収められた短編集です。どの話も銀行員を主人公にした話ですが、予想を超えたラストを迎え、それぞれ面白く引きこまれます。その中でも特に印象に残る3編をご紹介したいと思います。

「手形の行方」では関東第一銀行、久が原支店の融資課で課長を務める伊丹が主人公。ある日、クセ者の部下、堀田が1000万円の手形を紛失する事件が発生し、堀田を監督する立場の伊丹は手形の発見に尽力する一方、関係企業の調整にも奮闘し、次第に事件の真相を探り出していきます。

日常的に企業で起こるようなミスが、伏線の散りばめられたミステリーに仕上げられていて面白いです。またこの事件の真相が、事件に関与した人々の人間模様や心情に迫るものになっていて、短編ながら深みがあります。池井戸潤の巧さを感じる作品です。

著者
池井戸 潤
出版日
2011-04-10

「芥のごとく」は銀行員2年目で融資課に初めて配属された山田が、豪傑女社長の土屋が20年近く営み続け、平成になり業績が苦しくなってきた鉄鋼商社を立ち直らせるために奮闘する話です。資金繰りの厳しい中小企業の大変さや必死さが生々しく描かれていて衝撃的。そんな土屋の企業を新人銀行員ながら一生懸命サポートしようとする山田の姿に胸に響きます。彼らの奮闘と結末がとても印象深くて、心に残る作品です。

表題作「かばん屋の相続」の主人公は池上信用金庫本門寺支店の取引先課に務める小倉太郎です。取引先の松田かばんの社長が急逝し、兄弟2人が残されます。長男はかばん屋を継ぐのを嫌がり大手銀行に就職。次男は兄が不在の中でかばん屋をずっと支えてきました。しかし、父からの遺言状には会社の株全てを長男に譲ると書かれていて、次男には生前「相続を放棄しろ」と語ります。父の意図が見えないまま、会社を継いだ長男が池上信用金庫に乗り込んできて小倉太郎と対峙するという展開です。

最後ははっと驚く結末で、仕事上や人生を生きる上で必要な心がけが、登場人物の生き様を通して伝わってきます。

本全体を通して人生にはいろいろなことがあり、ときに困難にも見舞われるが、前向きに生きようというメッセージを感じます。また、全ての短編で銀行員が主人公ですが、どの短編も違った切り口で1つ1つ面白く飽きません。短編集としても質が高く、気軽に楽しめる作品になっています。

12位:総理と息子のドタバタ奮闘劇

内閣総理大臣に就任した武藤泰山は、ある日大学生の息子・翔と中身が入れ替わってしまいます。大学生でありながらフラフラと遊び歩いている息子と総理大臣の父。相容れない二人が入れ替わり、相手に成り代わりながら様々な事件に遭遇するコメディタッチの作品です。

総理大臣の答弁では、漢字もろくに読めない翔は「未曾有」を「みぞうゆう」と読んでしまったり、父の武藤は翔の代わりに就職活動をする際に面接官を論破してしまったりするなど、入れ替わりの生活は難航。

しかし翔が中身となって総理大臣として語る発言はストレートで、こんな発言を総理がしたら、胸にぐっとくるし、スカッとするなぁと思わせます。

著者
池井戸 潤
出版日
2013-06-10

入れ替わりが起こった真相がのちに明らかになり、その真相が実に根深く、きちんとした科学的根拠も示されているので、ファンタジー感もなく、モヤモヤも残りません。作品を通して、国家の抱える問題の数々を訴えているようで、コメディタッチでありながらも深く考えされられます。

相容れなかった父と息子が、入れ替わりを通してお互いのことを知り、少し歩み寄り、互いを認められるようになる、そんな親子の物語でもあり、政治や経済に親近感を持つこともできる、楽しく読める社会派コメディ作品です。

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11位:父の生きざまと息子の道

テーマは池井戸潤お得意の父と子。仕事を失い、精神的にも病んでしまった主人公・大間木琢磨は、父・史郎の残した謎の鍵を手にします。

鍵を手にした琢磨の目前には、40年前の風景が広がり、40年前に史郎が体験した出来事や恋を目撃することに。史郎の過去は琢磨の想像を超える、壮絶なものでした。

著者
池井戸 潤
出版日
2006-06-15

過去と現在が交互に書かれ、物語が進むにつれ現在が少しずつ変化していきます。父の生きざまを知り、自分自身に向かい合うようになる琢磨。父と子の物語を書かせたら、池井戸潤は抜群だなあと思わざるを得ません。

他の池井戸作品のようなスカッと感はなく、全体的に暗い印象で物語は進みます。昭和30年代に生きた人々の悲哀がダークに胸に響き、サスペンス色もあり、時代背景からどことなく松本清張作品を思い浮かべてしまうかもしれません。

530ページにも及ぶ長編で読み応えがあり、この後どうなるのだろうとどんどん読み進めてしまうので、長さを感じさせません。悲哀に満ちた父の姿を見た息子は、どのような道を歩むのか、ぜひ見届けてください。

10位:銀行支店サスペンス小説!

元銀行員である小説家、池井戸潤の本領がいかんなく発揮された銀行支店小説+本格サスペンス小説です。

東京第一銀行長原支店は東京都大田区にあります。中小企業と個人顧客を対象にした中規模店で、支店成績は可もなく、不可もないといった程度です。つまりそこに属している行員達の将来を好転させるには弱いのですね。支店長をはじめとして、高卒採用の副支店長、ここで再起を図ろうとしている各課員達はそれぞれ出世の思惑をもって支店業績をあげるのに必死になります。

そんななか、100万円の現金紛失事件が発生します。銀行内の現金紛失は重大事案であり、徹底的な調査がなされるなか、女性行員のロッカーの鞄の中から札束の帯封が発見されるのです。本人のあずかり知らぬところで差し込まれた帯封の件は内部調査で犯人が判明します。しかし、現金そのものは、支店長席を中心とした持ち込みで闇に放り込まれてしまうのです。

著者
池井戸 潤
出版日
2008-11-10

池井戸潤はさすが元銀行員だけあって、銀行員の出世と配属店、配属課の関係は細かく描写しています。そこにまつわる上司-部下あるいは銀行員-顧客の人間関係の描写が、ドラマをみているかのようにイメージしやすい描写に仕上げられているのです。

銀行がもつ一般的なイメージを検査部や人事部の話題を混ぜ込みながら描写したところから、物語はだんだんとサスペンスへ展開していきます。

章ごとに語る人物を変え、登場人物達がそれぞれ主人公のように語っていきます。語る本人や相手を特定させずに表現することで、物語に謎めいたエッセンスが加わるのです。読み進めていくとこいつが犯人かもしれないと読者は思いますが、なんども裏切られることになり、物語は予想もしない展開をみせます。

さわやかな窓口のイメージから想像する銀行というものを、検査や融資実績の世界から描写することで、もう一つの銀行のイメージを創り出しています。そして、そこにもう一つの物語を創り上げ、読者を新たな世界にいざなってくれる池井戸潤ワールドをお楽しみください。


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9位:痛快に悪を成敗!

『花咲舞が黙ってない』というタイトルでテレビドラマ化も果たした本作は、他にも漫画化されるなど、各メディアで注目された作品です。

舞台となるのは東京第一銀行。主人公の花咲舞が上司の相馬を巻き込んで、悪事を成敗していくという軽快で痛快な物語です。

花咲舞はどんな相手であろうとはっきりと物を言い、物怖じしない女性銀行員。上司の相馬がつけたあだ名は「狂咲」というから、その暴走ぶりは想像に難くありません。しかし花咲舞はただ口先だけの女性ではなく、窓口業務時代に培った事務と人間観察力のスペシャリスト。そんな彼女に振り回され、時にオロオロしながらもフォローし、理解する上司の相馬もいい味を出しています。

著者
池井戸 潤
出版日
2011-11-15

東京第一銀行の支店がかかえるトラブルを、ばったばったと切り倒すストーリーはスカッとしますし、ライトに読めます。ライトだけれども、そこは池井戸潤、銀行の内部事情はしっかり書かれていて、銀行の裏側を垣間見ることができます。気軽にテンポよく読めるので、重厚な池井戸作品が好きな人には若干物足りないかもしれませんが、決して薄いわけではなく、ちょっとした息抜きにぴったりの作品です。

池井戸作品には珍しく女性が主人公の作品ですが、花咲舞はどちらかというと「オッサン」に近いと池井戸潤自身が述べています。そんな花咲舞の「狂い咲き」をぜひご堪能あれ。

8位:日本の「今」がここにある

2012年刊行、テレビドラマ化も果たした本作は、中堅電機メーカーが舞台の池井戸潤ならではのクライム・ノベルです。

中堅電機メーカー・東京建電のエリート課長である坂戸が、部下でいつも居眠りばかりしている係長の八角から、パワハラで訴えられます。そして社内委員会にかけられ……。

著者
池井戸 潤
出版日
2016-02-19

常に二番手に甘んじてきた男・原島が、事態収拾をするべく新たに課長に抜擢されます。社内委員会が出した不可解な結論。原島は親会社である大手電機メーカー・ソニックや取引先を巻き込みながら、自らの会社に潜む秘密に迫ります。

長編作品かと思いきや、いくつかのエピソードで構成されたオムニバス形式の作品で、それぞれの物語が微妙に絡み合い、独立した物語としても面白いため、どんどん読み進めることができます。

池井戸作品ならではの、業務内容や現場のリアルさはさすがの一言。下請け業者の苦労や葛藤、組織の一員として働くサラリーマンの実態が詳細に書かれています。しかし決して専門的すぎず、登場人物の背景もしっかりと描かれているため、人間ドラマとしても秀逸。読み進めるにつれて、東京建電の隠された秘密が徐々に明らかになり、黒幕を暴くといったミステリー要素も加わり、読み応えのある作品になっています。

タイトルにもあるように、物語の中で重要な役割を果たしているのが「会議」。大きい会議もあれば小さい会議もあり、会議とは名ばかりの無意味な集まりもあり。組織の中で働くというのはこういうことなのか、この作品の登場人物のように現実でも会社の秘密に立ち向かおうとする社員が存在するのかと、日本の経済の在り方について考えてしまう作品です。

7位:野球と経営を繋げる池井戸潤流の切り口が面白い傑作!

世界的な不況とライバル企業・ミツワ電器の攻勢で経営は青息吐息の状態の中堅電子部品メーカー・青島製作所。

その苦境の象徴が、かつては社会人強豪チームとして名をはせたものの、その栄光も失われ、こちらでもライバルのミツワ電器の後塵を拝し、対外試合ではほとんど勝ちをおさめられない野球部の存在でした。

さらに、野球部監督の村野三郎が主力2選手ともどもミツワ電器野球部に寝返るという騒動まで起こり、役員会では野球部廃止の声まであがりはじめて……。
著者
池井戸 潤
出版日
2014-03-14
野球でも経営でも生き残りをかけた企業同士の白熱するゲームを描いています。タイトルの『ルーズヴェルト・ゲーム』とは、野球好きのルーズヴェルト大統領が「8対7の試合が最もおもしろい」と言った故事からきているのだそうです。

確かに1点差で点の取り合いをする試合はおもしろいものです。自分だけが加点できるわけでなく、失点も受け入れねばならないところは、人生にとてもよく似ているかもしれません。野球と企業経営を通じて描かれる味わい深い登場人物の描写に感情移入できる作品です。

決勝戦の最終章は、きっと読みながら拳を握り締めてしまうことでしょう。野球がまったくわからなくても楽しめる、人生を描いたような傑作です。
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6位:建設業界を立体的に描いた池井戸潤の作品

中堅ゼネコン・一松組に入社して4年。大学の建築学科を卒業して、ずっと現場を担当してきた富島平太は、ある日業務課への異動を命じられました。

畑違いの営業に戸惑いつつ、上司とともに区役所へ挨拶に向かった平太は、上司と役人のやり取りから、業務課が通称「談合課」と呼ばれる部署であることを知り……。
著者
池井戸 潤
出版日
2011-11-15
まったくの門外漢でも業界自体や談合など、建設業の課題をよく理解できるように描かれています。異なる立ち位置のひとたちが、それぞれの立場の視点で物事をとらえ、物語を構築していく多角的なアプローチがなされています。

さらにこの物語に厚みを持たせているのが業界に関わる人々の恋愛や家族事情まで細かに描写されていること。特に平太の彼女が、平太と先輩のエリート銀行員との間で悩む気持ちがリアル。女心まですくい取る池井戸潤の力に改めて舌を巻きます。

ビジネスだけでなく、人々の悩みも入ってくるのが新鮮に作品を彩っています。談合だなんて文字を見ると怯んでしまうかもしれませんが、難しい展開ではなく、人間ドラマとしても読んで楽しめる作品です。

5位:経済×エンタメ!池井戸潤の真骨頂!

二人のあきらの関係を中心に、企業経営やそこに関わる人々のドラマを池井戸潤がドラスティックに描いた物語です。

物語は二人のそれぞれの成長過程と、就職後の二人の交流や活躍を中心に描かれています。社長の息子としての立場は二人とも同じですが、その出自は決定的に異なるのです。彬(あきら)は海運業の、瑛(あきら)は田舎のプレス工場の息子。

二人はそれぞれの父である社長の生き様や会社経営の苦悩を見て育ち、同じ銀行に入行します。彬は就職活動中に、父に銀行の営業マンが新たな提案をする場面に立ち会います。単に融資するだけではなく、銀行が持つ情報を活用しながら一緒に企業活動を推進していくことに彬は大きな魅力を感じたのです。

瑛は高校時代に父が再就職した企業において、取引銀行の営業マンが連日自宅に押しかけるところを垣間見ます。銀行マンが、一緒に徹夜しながら企業の立て直しを考えていくことに瑛は感銘を受け、改めて自分の進路を考え直すのです。

このような「取引企業とともにある銀行」というそれぞれの体験が、バンカーとしても「取引企業」の側にたった活動に繋がっていきます。
著者
池井戸潤
出版日
2017-05-17
物語の後半は、融資する側と融資される側に分かれた二人の宿命への挑戦です。父の会社を引き継いだ彬は、難題の多い企業経営に社長として取り組みます。瑛は彬の会社の担当銀行マンとして、一緒に難局に立ち向かうことになるのです。複雑な宿命の構図が最高のハラハラドキドキ感を創り上げ、読み手はその展開に引き込まれてしまいます。合理的ではなくとも、関わっている人々への思いやりに満ちた展開は二人の子供時代の経験からくるものでしょうか。

「カネは、人のために貸せ」(『アキラとあきら』より引用)

人のために金を貸すバンカーと、カネのために金を貸す金貸しを区別するこのセリフが本書のキーファクターです。物語の根底には、社会や社員やその家族を含めた会社を支えていく「バンカー」へのリスペクトが込められています。

企業経営にまつわる人々の苦悩や喜びを、銀行融資と組み合わせて、緻密(ちみつ)に描いていく経済小説でもあり、一方で、父と子、兄弟や親友といった人間関係や 二人の主人公の暖かな気持ち を丁寧に描いたエンタメ小説でもあります。この二つの要素をうまく取り入れているところが本作品の大きな魅力です。ぜひ読んでみてください。

4位:足袋作り100年の地方零細企業がランニングシューズ作りに挑む!

主人公は埼玉県で足袋業者「こはぜ屋」を営む四代目社長の宮沢紘一です。これまで100年続いている「こはぜ屋」ですが、時代の変遷や服飾の変化に伴い、足袋の需要は年々減少し、業界は衰退しています。そんな中、日々資金繰りに頭を抱える宮沢は会社存続のため、足袋製造の技術を活かしたランニングシューズの開発を思い立ち、新事業に挑戦するのです。

一方、ダイワ食品に所属する茂木裕人は大学時代には箱根駅伝を走った若きエースランナーですが、膝を故障し怪我に苦しんでいます。走法で悩みながらも、リハビリに励み怪我からの復帰を目指していました。

物語は、足袋零細企業のスポーツシューズへの挑戦と、エースランナーの怪我からの復活への挑戦が同時並行で進み、途中で両者が繋がりながら、感動的で熱い展開を繰り広げます。

著者
池井戸 潤
出版日
2016-07-08

「こはぜ屋」はランニングシューズ作りへの挑戦の中で、次から次に難題にぶち当たるのですが、そのたびに知恵を絞り、仲間にも支えられて切り抜けていくのです。ときに、この状況はもう無理だろうと思うような厳しい状態に陥るのですが、それでも主人公宮沢たちが志をもって地道にひたむきに前へ進んでいく姿に胸が熱くなります。とても爽快で面白く、続きが気になって次から次にページをめくってしまいます。

また、登場人物一人一人も魅力的です。出てくる人物それぞれが自分の人生に懸命に向き合っていて、そんな登場人物たちがぶつかり合い、助け合い、葛藤しながら話が進んでいくのでストーリーが奥深くなっています。読み終わったあとに自分を奮い立たせてもらえる、元気が出る1冊です。

3位:池井戸潤が大ブレイクした人気シリーズ!

東京中央銀行にバブル期に入行した半沢直樹は、現在は関西の中核店舗・大阪西支店で融資課長をしています。

浅野匡支店長が強引な融資を行った「西大阪スチール」が直後に倒産してしまい、半沢が同社の経理課長に問いただして調べたところ、粉飾決済のあとがありました。続けて社長の事情を聴くと、開き直った末に失踪。融資失敗に怒った浅尾は半沢にすべての責任を押し付けて……。
著者
池井戸 潤
出版日
2007-12-06
上司に媚を売らず、自らの信念は絶対に曲げない半沢の「やられたら、やり返す」という感情と行動力にすかっとします。ドラマとはまた違う魅力に溢れています。活字の迫力は素晴らしいです。特に池井戸潤は元銀行員ですから、描写もわかりやすいですし、人間の欲望や葛藤の表現が巧みです。最初はジリジリとゆっくり息苦しいような展開が続きますが、後半は逆転劇が畳み掛けるように一気に進められていて、どんどん読みすすめられてしまいます。

どんなに追い詰められてもしっかりと跳ね返す半沢の大どんでん返し。倍返しではすまない原作の半沢直樹、ぜひその違いもお楽しみください。

2位:大企業の隠蔽体質と戦う中小企業社長の姿が熱い!

走行中のトレーラーから外れたタイヤが通行人の母子を襲い、母親が亡くなってしまった事故。タイヤが外れてしまった原因は整備不良なのか、それともなにか別の理由があるのか……。2000年に発覚した三菱自動車工業の通常「リコール隠し事件」が題材となっています。

事故の容疑者とされた運送会社の社長・赤松は、被害者からは門前払いをくらい、警察からは追及され、大口の得意先から注文の取り消しが届き、資金繰り面で行き詰まってしまいます。
著者
池井戸 潤
出版日
2009-09-15
中小企業の経営の難しさがと、大企業である自動車会社の傲慢な態度が対照的に描かれていきます。果たして本当の責任の所在はどこにあるのか、赤松は真相究明に乗り出します。

ひとつの事件をめぐって人々が関わっていく群像劇です。下町の中小企業、財閥の大企業とそれに関係する各銀行、PTAの会長としての顔を持つ赤松を取り囲む人々……。ともすれば話が散らばってしまいそうな複数の登場人物たちを、作品の軸を通してしっかりとまとめています。

実際に起きた大企業の不祥事を題材にした物語らしく、人間模様がかなり丁寧に描かれています。筆力が素晴らしいです。読んでいくうちに実際の事件を彷彿とさせる部分が確かにあり、間違いなく最高のエンターテインメント作品です。

1位:池井戸潤の直木賞受賞作

『下町ロケット』は、とある小さな町工場が自社で開発したロケットエンジンの技術を巡って大企業との戦いを繰り広げていく逆転サクセスストーリーです。

佃製作所の社長の佃は取引先から来年から発注取引を終了することを宣告されて頭を悩ませていました。会社の役員共々その穴うめをどうするか明確な回答を得ないまま新たな問題が発生します。競争相手から自社で開発したロケットエンジン技術がまさかの特許侵害で訴えられ、それとほぼ同時にその特許を譲って欲しいという大企業が現れて……。

著者
池井戸 潤
出版日
2013-12-21

社長である佃は一つの問題を解決したと思ったらすぐに別件で頭を悩まさなければならなくなります。さらに家庭でも娘との関係がうまくいっていません。

何かと問題が山積みで、時にはプライドを捨ててでもそれが会社のためになるのであれば、大企業側が出してきた条件に従おうと気持ちが傾きかけますが、そんな時に経理担当の外村が言った言葉に気持ちを持ち直すのです。

「こんな評価しかできない相手に、我々の特許を使っていただくわけにはいきません。そんな契約などなくても、我々は一向に困ることはありません。どうぞ、お引きとりください」 (『下町ロケット』より引用)

この毅然とした態度に佃はもちろん社員も心を動かされます。この作品の魅力は、はたからみたら会社がどうなろうとどうでもいいと思っているような外村が、ことあるごとにこうして佃をはじめ周りが後ろ向きになろうとしている心を前へ前へと持って行くように動かしていくところにあります。本当は一番会社のことを考えていた一人で最後にはロケット発射が成功した時にも涙をみせるのです。

こうした人間性がよく出ている作品が『下町ロケット』なのです。ぜひ一度そういったものに興味がある方は手にとってみてはいかがでしょうか。