豊臣秀吉の強気な対外政策として有名な「朝鮮出兵」。後世に禍根を残しつつも、いまだ謎が多いこの戦争はなぜおこなわれたのでしょうか?その謎に迫っていきます。
朝鮮出兵とは、1592年の「文禄の役」、1597年の「慶長の役」の2つの戦いの総称です。
織田信長亡き後、天下統一を果たして関白の位を得た豊臣秀吉でしたが、刀狩りや太閤検地など、後世にも影響を与える政策をおこなっていました。なかでも強気な対外政策が、「明を手中に収めるために」計画された朝鮮出兵です。
1592年、日本は明の支配下にあった朝鮮に対し、服属と、明までの道の貸し出しを要求します。しかし朝鮮が反発したため、肥前(現在の佐賀県、長崎県)を本拠地として名護屋城を構え、およそ15万人もの軍勢を率いて朝鮮に侵攻していきました。これを「文禄の役」といいます。
日本軍はわずか1ヶ月で、首都、漢城を落とすなど快進撃をくり広げていきます。
しかし朝鮮側に明の援軍が現れ、戦況は一変、膠着状態となりました。
その後、明と日本との間で和議を結ぶはこびとなりましたが、双方の使者の手違いにより、和議は決裂。秀吉は憤慨し、再び遠征を執りおこなうことになります。
1597年、あらためて遠征の準備を整えた秀吉は、今度は14万人もの兵を率いて朝鮮へ侵攻をはじめました。しかし今度は序盤から苦戦を強いられます。1598年、志半ばにして豊臣が亡くなると同時に日本軍は撤退しました。これが「慶長の役」です。
これらの2つの戦いは16世紀における、世界最大の戦争と言われています。
豊臣秀吉はなぜこのような強気の対外政策を推し進め、周囲の大名たちもそれに賛同したのでしょうか?これらを究明する史料は見つかっておらず、現在でも諸説研究が続けられています。
織田信長の構想を受け継いだ
秀吉の海外侵攻計画は彼が太閤関白となる前から構想が練られていたと考えられており、根拠となる史料には乏しいものの、彼が仕えた織田信長の支那征服構想を継いだものとも言われています。
スペインへの対策だった
またこの時代、国際的にもっとも力を付けていたのはスペインで、彼らは明や日本を植民地化しようと目論んでいました。
明がスペインの属国となれば事態は一変し、スペインからの脅威が目前に迫ることになります。明ももともと大国なため、それがさらに強大な力をもつスペインの属領となれば間違いなく日本は狙われ、その侵略を阻止する手だてが立たないからです。
このことを危惧した国内の諸大名が秀吉の対外政策に賛同し、朝鮮出兵が敢行されたとも言われています。
この他にも出兵への動機に関してさまざまな検証がされていますが、秀吉の明確な動機はいまだ解明されいません。しかし複雑に絡み合った国際情勢や国内の思惑が、原因の一端を担っているのではのではないかと考えられます。
2度に渡った朝鮮出兵は、秀吉が死去することによって幕を閉じます。
遠征に出ていた日本軍は撤退。当時の五大老と五奉行らによって戦争の後処理がなされました。しかしこの後、豊臣政権に異を唱える武士が増えていきます。
めぼしい結果や報奨がないうえに、一部の大名は尻拭いのために改易までされたこともあり、朝鮮出兵は戦力と財産の浪費だったと考えた武士が少なからず存在したのです。
内政においても独裁的な政治をおこなってきた豊臣政権には、綻びが生じてしまいました。
その結果、加藤清正を筆頭とした武断派と、石田三成を筆頭とした文治派に分裂し、この軋轢は埋められることなく「関ヶ原の戦い」にまで波及します。
朝鮮出兵によって、豊臣政権の崩壊のスピードが加速したとも捉えられるでしょう。
日朝の戦争の記録のみならず、当時の民衆たちのリアルな内情にもふれています。
- 著者
- 北島 万次
- 出版日
- 2012-10-20
なかには、現代社会の大きな問題となっているブラック企業めいた側面もあった秀吉の独裁体制など、目から鱗の事実が分かりやすく記載されている一冊です。
この巻では秀吉の人物像から豊臣政権滅亡に至るまでを独自の視点で解説していきます。朝鮮出兵の禍根もあってか、極悪人と思われることも多い秀吉の素顔に迫ります。
これまで一般的に知られていた秀吉像を大きく覆す解説が多く見受けられますが、独自の視点とはいえ分かりやすく解説がなされており、その悪どさはもちろん、カリスマ性についても触れられています。
- 著者
- 井沢 元彦
- 出版日
- 2007-06-06
戦争に関しても当時の時代背景から考察し、「絶対悪」とは判断しないなど、新しい考え方に触れることもができるでしょう。
朝鮮への侵攻の理由は当時弱体化していた明の獲得だと一般的には考えられていますが、その実、インドやフィリピンなども視野に入れた壮大な構想だったのではとも言われています。
その計画はもちろん、戦争中のリアルな兵士や民衆らの姿を解説した一冊です。
後世に禍根をのこした朝鮮出兵。豊臣秀吉のその壮大な野望と、戦争中の朝鮮側の人民の様子、戦後の明の国内情勢の経過などもしっかりと描かれています。
- 著者
- 中野 等
- 出版日
- 2008-01-16
現代にも続いている、日朝関係にまつわる問題のルーツに近づける一冊です。
いかがでしたでしょうか?日本国内だけでなく、世界各国の影響を受け、後世にも多大な影響を与えた朝鮮出兵。まだまだ未解明な事実が多くありますが、これらの本を読んでその謎に1歩近づいてみるのも面白いのではないのでしょうか?