わずか4歳にして幼稚園児らしからぬ大人っぽさをもった宇宙(コスモ)くんを描いた、『ハードボイルド園児宇宙くん』。彼の家庭や幼稚園での日常が、コミカルに描かれている作品です。
『ハードボイルド園児宇宙くん』は、幼稚園児の宇宙くんと、ゆとり世代のゆるい親、そして幼稚園のお友達がおりなすコミカルな日常が描かれています。
幼稚園児らしからぬ妙な大人っぽさと子供の可愛らしい一面が絶妙なバランスで描かれていて、じわじわと笑いが込み上げてくる作品です。
今回はそんな本作の登場人物や魅力をご紹介していきます。
- 著者
- 福星英春
- 出版日
- 2016-01-15
幼稚園児にして、すでに世の中を斜めから見ている宇宙くん。家や幼稚園での生活を、独特な視点でひとり語りしています。
彼の周りには、どこか天然なゆとり世代の両親、幼稚園のお友達でいじめっ子の亮くん、その亮くんによくいじめられているリオちゃん、宇宙くんがライバル視している天才子役の流星くんなどこれまた個性的なキャラクターたちがいるのです。
1話完結のお話で、彼らがくり広げる日常生活に毎回くすっと笑える作品になっています。
- 著者
- 福星英春
- 出版日
- 2016-04-15
クールなひとり語りで、自分の両親にもハードボイルドな分析をする宇宙くん。嫁が選んだネクタイを話題に出勤前からいちゃいちゃしている彼らを、どこか冷めた目で見ています。
4歳にしてゆとり世代という言葉を知っているし、ポケットに手を入れてクールに決めている姿が大人だなと思わせるでしょう。
しかしその近くにはおもちゃの車が置いてあり、ついさっきまではそれで遊んでいた宇宙くん。大人な口調とのギャップにじわじわきます。
極めつけは、
「ったく、勘弁してほしいぜ
……まぁ、たかいたかいは嫌いじゃないがな」(『ハードボイルド園児宇宙くん』1巻より引用)
「勘弁してほしいぜ」というセリフが入ったので、ここでもハードボイルドを発揮すると思いきや、たかいたかいをされてほっぺを少し赤く染めるのです。クールでハードボイルドにキメているからこそ、子供らしい一面がより可愛く見える宇宙くんです。
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- 著者
- 福星英春
- 出版日
- 2017-01-16
宇宙くんほど達観している幼稚園児はなかなかいませんが、彼の周りの登場人物はやけにリアル。少し紹介していきましょう。
まず、少し天然な宇宙くんの両親。彼らは子供の前でも平気でいちゃいちゃします。ゆとり世代なので、おそらく20代で宇宙くんを産んだのではないでしょうか。まだまだ新婚気分も抜けていない様子です。
お母さんは専業主婦で、スーパーの半額シールが貼られるまで従業員の後ろで待機したり、セール品に一目散に飛び込んでいったりする主婦らしい姿を見せつつも、SNSの「いいね!」をもらおうと必死になるなど、社会現象に翻弄されている一面があります。
いじめっ子の亮くんは、クラスのガキ大将で問題児。人のおもちゃやクレヨンを取ったり、ゲームでずるをしたり、友達をからかったりします。宇宙くんとはそりが合わずケンカばかりですが、ゲームで正解できずにお菓子をもらえなかった宇宙くんにお菓子をあげるなど、優しさが見えるシーンもありました。
リオちゃんは、亮くんにおもちゃを取られたり、からかわれたり、いつもいじめられてしまいます。それはおそらく、彼女がかわいくてクラスのアイドル的存在だからでしょう。
リオちゃんはいじめられるといつも宇宙くんに助けを求めます。宇宙くんは「やれやれ」と言いながらも、正義の味方の気分になってリオちゃんを助けているのです。
幼稚園で先生がみんなを集めた時は、「行こうコスモくん」と言って手をつないでくれます。
流星くんは、お父さんの仕事の都合で引っ越してきて、宇宙くんと同じ幼稚園に通うことになった男の子。天才子役で、さまざまな芸能人とお友達です。
お父さんは医者ということで、家族で一流の流星くん。専属の執事までいて、幼稚園でも教室の中で待機しています。性格も大人で、いじめっ子の亮くんを懐柔させてしまうシーンもありました。
そんな流星くんのことを、宇宙くんはライバル視している模様です。
宇宙くんがハードボイルドなため、もはや彼が発するすべての言葉が名言に聞こえてしまう本作ですが、なかでも印象的なものをご紹介します。
幼稚園で、先生がなぞなぞを出し、わかった人から順番に答えていくシーン。宇宙くんは、「おれにバカどもに混じって知恵くらべをさせるとは」と強気な様子です。
出題されたなぞなぞは、「上は洪水、下は大火事、これな~んだ?」というオーソドックス中のオーソドックスなもの。園児たちもみな一斉に手をあげ、「わかったー!」と言っています。
しかし宇宙くんは「そんな相反する2つの現象が混在するものなどあるはずがない、矛盾している」と困惑している様子。
その間にも、周りの子は次々と答えを先生に伝えています。
所詮はなぞなぞなので、答えは単純なたとえ話なはず……と宇宙くんが絞り出した答えはなんと
「にっぽん」(『ハードボイルド園児宇宙くん』1巻より引用)
上は洪水のように金があふれる富裕層、下は家計が火の車の貧乏人の格差社会と曲解し、このように答えたのでした。
まさか彼の頭のなかでそんな思考が巡っているとは知らない先生は、「ざんねーん」と笑顔で言います。
宇宙くんは顔を真っ赤にして、フルフル震えてしまうのでした。
もはやハードボイルドなのかはわかりませんが、とめどない大人すぎる思考のすえ、結局表に出ている行動は子どもらしい宇宙くんがよく表れている名言です。
- 著者
- 福星英春
- 出版日
- 2017-06-15
ハードボイルドな部分と子供らしい部分とを絶妙に使い分けている『ハードボイルド園児 宇宙くん』。作者福星英春の腕が光る、読むとくすっと笑えるコミカルな漫画です。ぜひ実際に本編を読んで楽しんでください。