『サチのお寺ごはん』が面白い!優しい魅力を4巻までネタバレ紹介

更新:2021.11.11

グルメ漫画『サチのお寺ごはん』は、「料理僧」として有名な青江覚峰のレシピ本『お寺ごはん』がもとになっています。レシピ紹介だけでなく、幸の薄い主人公が料理上手な僧と出会い、少しずつ成長していく人間ドラマも描かれた魅力的な作品です。

ブックカルテ リンク

『サチのお寺ごはん』が面白い!丁寧なレシピと優しさに癒されるおすすめ料理漫画を4巻までネタバレ紹介!

主人公の臼井幸(うすいさち)はその名の通り、幸の薄い人生をおくる27歳のOL。仕事に追われ、まともに自炊もできず、コンビニで買った食品でご飯を済ませる毎日を過ごしています。

あるとき、彼女は料理上手な僧・源導(げんどう)に出会います。それをきっかけに、源導の料理と言葉に励まされながら、少しずつ幸せな生活を模索していくのです。

 

 

作中で紹介されるのは、いわゆる精進料理がメイン。しかし、予想に反して豪華でおしゃれなものや、日々の食事やお弁当のおかずにピッタリなものまで登場します。

丁寧にレシピが書かれているので、参考にしながら作ってみることもできます。源導のアドバイスは、サチだけでなく読者にとっても励ましとなるでしょう。

『サチのお寺ごはん』は、まさに心と体を優しく満たしてくれる作品です。

 

 

著者
["かねもりあやみ", "久住昌之(原案協力)", "青江覚峰(監修)"]
出版日
2015-11-16

『サチのお寺ごはん』のもとになったのは、青江覚峰(あおえかくほう)のレシピ本『お寺ごはん』です。彼は、浄土真宗東本願寺派の僧で、料理や食育に取り組む「料理僧」として知られています。各地を回って「料理を通じて仏教を説く」という企画をおこない、『サチのお寺ごはん』の監修にも携わっています。

同作は、2017年7月に連続テレビドラマ化。原作のモデルとなった東京都品川区にある正徳寺で撮影されています。青江覚峰はドラマでも監修として参加し、坊主の所作の指導や料理の考案に携わりました。

無宗教の方が多い現代の日本に、「料理」という入りやすいテーマで仏教の教えを伝えようとする熱意が伝わってきます。

漫画『サチのお寺ごはん』で心も体も満たされる【あらすじ】

漫画『サチのお寺ごはん』で心も体も満たされる【あらすじ】
出典:『サチのお寺ごはん』1巻

臼井幸(以降サチ)幼い頃から幸の薄い人生を送っていました。大人になっても現状は変わらず、仕事に追われる毎日。座右の銘も「人生期待したら負け」という、何とも悲しいものでした。

そんなある日、コンビニで出会った唐丸篤(からまるあつし)に、花見をしようと突然誘われます。

連れられるがままにたどり着いたのは、なんとお寺。そこでサチは住職の源導から料理を振舞われます。さらに、ふと話した悩みに対する助言をもらうと心が少し軽くなりました。

こうして彼女はお寺での思わぬ出会いをきっかけに、何事にも諦めてばかりだった自分を変えるべく、幸せへの道を目指していきます。

少しずつ成長していくサチを応援したくなる!【1巻ネタバレ注意】

 

幸の薄い自分が何かを期待してもいいことなんてない、何をしても上手くいかない、とどこか諦めていたサチ。しかし、源導の料理と励ましの言葉を受け、前向きに生きようと努力をしていきます。

源導に出会う前は、いつもコンビニ飯ばかり食べていました。レシピを教えてもらってからは、自炊に挑戦します。

最初のうちは、「こだわりを捨てろ」という教えを都合よく受け取って、材料や調理法も少々手を抜いていました。しかし、それでは満足な結果が得られないことに気づきます。不慣れながらも妥協せず、料理するようになっていくのです。

 

著者
["かねもりあやみ", "久住昌之(原案協力)", "青江覚峰(監修)"]
出版日
2015-11-16

とはいえ、すぐに状況が変わるわけではありません。仕事がうまくいかずに凹んでしまい、さらに友人に恋人ができたと知って、置いていかれたと焦ることもありました。

落ち込むサチですが、源導のいる縁泉寺へ行くと、慰めを得ることができました。また頑張ろうと立ち直り、彼女は一歩ずつ前進していきます。

努力が評価されず、会社で自分のことを見ている人なんていない、とずっと思っていたサチ。しかし、自分が気づいていないだけで、案外気にしてくれている人はいるものです。実際に、サチの憧れの同僚・前澤笑子が、少しずつ成長していく様子に気づいていました。

サチ自身は、そこまで自分が変化しているとは思っていなかったよう。ですが、彼女が奮闘する姿は、仕事ができて人気者である前澤にとっても、刺激になっていたのでしょう。

住職の源導だって同じ人間。誰でも悩みはつきもの【2巻ネタバレ注意】

 

住職である源導は、サチの悩みを聞いてくれて、料理を通して励ましの言葉をくれる優しい人です。彼の優しさにいつも感謝していたサチですが、源導自身のことはまだあまり知りませんでした。

『サチのお寺ごはん』の2巻では、源導の秘密にも少しスポットが当てられます。

 

著者
かねもりあやみ 久住昌之 青江覚峰
出版日
2016-05-06

 

ある日サチは、2人の同僚からそれぞれの愚痴を聞かされます。それに対して曖昧な返事をしてしまい、自己嫌悪に陥ってしまいました。

そんな時、縁泉寺でご飯を食べる仲の大学生・唐丸篤と、料理学校に通う小木武徳から、源導考案のちらし寿司パーティーをしようと誘われます。

源導が考案したのは「彼岸寿司」。精進具材と普通の具材を混ざらないように分けて盛りつけたちらし寿司です。一同は具材が混ざらないように取り分けて食べますが、しだいに具材が混ざってしまいます。 

しかし源導は、それでいいのだと言いました。彼岸寿司は精進具材を彼岸に、普通の具材を此岸(現世)にたとえて分けていますが、どうしてもすぐに具材が混ざり合って区別がつかなくなってしまうものだからです。同じように、人も自分の感情を善か悪かではっきり分けようとしても、曖昧になってしまうことがあるでしょう。
 

人間のありさまを表しているような彼岸寿司から、サチは「善か悪かはっきりさせることが、常に正しいとは限らない」、「曖昧な態度を取ってしまう自分が、何かを解決しようと思うこと自体おこがましいかもしれない」と学ぶのです。

ふと彼女は、善悪の区別があいまいになってしまいがちなことに関して、源導はどう考えているのかと気になり、尋ねます。

すると、彼は物憂げな表情を浮かべながら「私だって人間ですから」と答えました。

住職は職業柄、完璧な人だと思われてしまいがち。しかし、彼も人間だから、迷ったり間違いを犯したりするのだ、と諭されるのです。

彼の言葉にハッとさせられると同時に、物憂げな源導に心がざわつきます。サチをはじめとした悩める人々を励ます源導にも、人知れず抱えているものがあるようです。

どんなに完璧に見える人でも、悩むのは当たり前。ですから、自分はダメだと後ろ向きになって落ち込む必要はありません。

たくさん悩んで、時には誰かに打ち明けて、励ましてもらって……。互いに思いやり、助け合うことが幸せへの近道かもしれません。そんなことが感じられる、少し肩の荷が下りるエピソードでした。

 

サチに共感できるからこそ、自分の人生を大切にしようと思える【3巻ネタバレ注意】

少しずつ前向きに生きられるようになったサチですが、やっぱりそう簡単に人生は好転せず……。職場でもやもやしたり、友達が結婚すると聞いて、寂しい思いになったりすることがありました。

『サチのお寺ごはん』の3巻では、サチの会社での出来事や、友人関係、合コンで知りあった有村とのエピソードが中心に描かれています。

著者
かねもりあやみ 久住昌之 青江覚峰
出版日
2016-11-16

転職ムードの同僚に影響され、やりたい仕事があるわけでもないけれど、自分も転職した方がよいのではと心が揺れてしまいます。また、別の部署から異動してきた上司とうまくいかず、イライラすることもありました。

さらに、親友の松本(通称まっちゃん)の結婚で寂しい思いをして、少々妬んでしまうことも。 

追い討ちをかけるように、有村とのデートでも、楽しかったのにハプニングに見舞われてしまい……。もうデートできないのではないか、と落ち込んでしまいました。

いずれも読者にも起こりうるエピソードで、サチに共感するとともに、少し胸が痛くなります。 

しかし、このような悩みは、源導の料理と助言によって解決されていくのです。日々を大切に過ごすことや、勇気を出して相手に思い伝えること、上司にイライラしている自分は、よいところに目を向けようとしていなかったと教えられます。

また、友達の結婚に寂しいと感じていたけれど、彼女の幸せは自分の幸せにも繋がっているものだと気づかされました。 
 

状況は変わらないとしても、自分の考え方ひとつで行動は変えられるのです。その努力の結果、物事は少しずつよい方向へと進んでいくでしょう。そんなことが学べるエピソードでした。

 

つまづきながらも、次の段階へ進むキャラたちに勇気づけられる【4巻ネタバレ注意】

サチはもちろん、唐丸や源導の変化も感じられるエピソードが収録されています。

唐丸篤は、仏教系の大学に通う学生で、みんなの人気者タイプです。しかし、少々相手の都合を推し量ることが苦手な節があります。

彼は毎年家族に誕生日を祝ってもらっていたためか、自分の誕生日は必ず祝ってもらえるものだと思っていました。そのため、大学の友人がレポートに追われて唐丸の誕生日を忘れていたことや、サチが誕生日のことを知らず、祝ってもらえなかったことに拗ねてしまいました。

しかし、彼はいずれ実家の寺を継ぐ身であるため、源導は「自分の思い通りにならないことにも向き合っていかなければならない」と諭します。この助言は、彼が成長していくきっかけとなるでしょう。

自分の思い通りにいかないことに不機嫌になり、誰かに八つ当たりしてしまうのではなく、相手のことを考えるなら、許すことができるでしょう。身につまされる思いにさせられる言葉です。

著者
かねもりあやみ 久住昌之 青江覚峰
出版日
2017-06-16

源導自身も変化していきます。彼は独身で、見合いを勧められても乗り気ではありません。しかし、サチと関わることで少しずつ家族というものに意識が向いていき、いつも断っていた見合いの話を受けることにしたのです。

以前は祖父や父親から、サチが彼女なのではないかと疑われます。サチが別に気にしていないと言うと、自分は意識されていないのかと少し落ち込む場面もありました。

その様子から、サチが少し気になっているようですが、はたして今後2人の関係はどうなっていくのでしょうか……。 

 

一方、サチは有村とのデートを重ね、自分たちの関係に変化が訪れることを期待しています。しかし、傷つくことを恐れ、自分から告白するという意識はありません。相手が何かアクションを起こしてくれることを待っているだけでした。

ですが、それではいけないと源導にアドバイスされます。さらに、小木や唐丸に背中を押され、とうとう告白する展開に……。

自分からアクションを起こすことが苦手な彼女が、勇気を振り絞って告白に向かう姿に、受け身の姿勢ではなく、自分から行動する勇気を持つことが大切だと教えられます。

彼女の成長は、読者にとっても刺激になるのではないでしょうか。

 

 

漫画『サチのお寺ごはん』の魅力、詳しいレシピは漫画作品で!

著者
["かねもりあやみ", "久住昌之(原案協力)", "青江覚峰(監修)"]
出版日
2015-11-16

日々を丁寧に生きるということを食事から見つめ直す本作。確かに体に優しい料理の数々は、手間をかけた分だけ心にも優しく感じられます。

漫画の中ではあるものの、素朴な美味しさ、安心するような味付けが想像でき、愛情がかけられたごはんを食べたくなってしまうという飯テロ力があります。

また、そのメニューたちに彩られるストーリーも魅力的。料理から生活を見直し、人を見直し、ひいては生き方を正していくサチの日々は、じんわりと癒される雰囲気がありながらも、背筋が正される芯の強さがある内容となっています。

寒い日につかるお風呂のような温かさ、癒し、元気をもらえる本作。実際に作ってみたくなる料理のレシピと一緒に、漫画原作でその魅力を目と舌で味わってみてはいかがでしょうか?

思い通りにいかない人生でも、一生懸命生きているサチとともに、自分ももっと頑張ろうという気持ちになれる作品です。興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る