「傀」と呼ばれる1人の男。別名「むこうぶち」。それは、真のギャンブラーを意味しました。高レートのギャンブルで次々に勝ちを得ていく彼によって、多くの者が敗れ去っていく様子から、男はそう呼ばれるようになりました……。 そんな男の生きざまを描いたのが『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』。バブル絶頂期にあらゆる場所でおこなわれた高レート麻雀で、主人公が勝ち続けるさまを描きます。波乱万丈な展開と勝利の爽快感が癖になる本作の魅力を50巻までご紹介。 スマホアプリから無料で読むこともできるので、麻雀に詳しくない方も気になったらぜひお試しください。
本作で描かれるのはタイトルどおり、主に高レート麻雀での勝負。1回に数十万を賭けるのはあたりまえ。時には、まともな神経では挑めない額を争っての勝負がくり広げられるのです。
しかし、舞台はバブル絶頂期の日本。作中では多くの人がそれに身を投じます。それは会社員、麻雀プロ、裏の世界の人物とさまざまです。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
そんなさまざまな種類の人間が交わる本作の魅力は、なんといってもインパクトの強い登場人物でしょう。
なかでも、もっとも出番の多い傀(カイ)と呼ばれる人物のカリスマ性は、半端ではありません。圧倒的な存在感と、人を魅了する何かをあわせ持っているのです。
今回はそんな彼を含めて、特に出番の多い9人を、名言とともに紹介していきましょう。
競技麻雀である「牌王位決定戦」の決勝戦へと進んだ水原祐太は、まだ入会して1年にも満たない研修生ですが、優勝してしまいます。しかし、ラッキーが重なっただけの彼の優勝は周りから認められておらず、彼自身も認めていません。
落ち込んでいたその晩、彼はプロ雀士・安永萬に連れられて、「東空紅」という雀荘を訪れました。そこには圧倒的な強さを誇る「傀」と呼ばれる人物がいたのです。
彼の圧倒的な強さに憧れた祐太は、表のプロではなく、裏のプロを目指すようになるのでした。
人智を超えた強さを持つ傀と、祐太を含め高レート麻雀に身を捧げる雀士たちの物語が始まります。
立ち位置的には本作の主人公と呼べる人物ですが、年齢や住所など一切不明の男性。巻が進むごとにその謎が解き明かされるわけでもありません。
「傀」という名もそのように呼ばれているだけで、本名ではない様子。ただ1つわかっていることは、神のごとき麻雀の腕をもっているということだけです。
常に冷静で、相手に何をされようとも怒りを見せることはありません。しかし獰猛な笑みを見せたり、相手を嘲笑うような態度をとったりはするので、感情の起伏は意外とあるのかもしれません。
御無礼
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』1巻より引用)
本作において、このセリフが載っていない巻はありません。というのも、彼がこれを口にした瞬間に勝負が決まるからです。決定的なあがりをした時に彼が発する言葉で、この先には一方的な蹂躙が待っています。
魑魅魍魎の類ともいわれており、もはや人間ではないのかもしれませんが、人を惹きつける何かを宿しているキャラクター。その闇のカリスマ性は、我々読者を「むこうぶち」の世界へといざないます。
牌王位決定戦で偶然にも優勝した後、傀の麻雀を目の当たりにした水原祐太。その圧倒的な強さに憧れを抱きます。そして表舞台から姿を消し、全国をまわって麻雀を打つ「旅打ち」をするようになるのです。
本作では準主人公のような立ち位置で、対局の後に傀から名前を尋ねられた唯一の人物でもあります。
彼は旅打ちを続けることでさまざまな人物と対局し、あらゆる人物の打ち方を自分のものとして吸収していきました。それは傀の打ち方も同様で、集中力が極限状態に入ると、傀の幻を見ては彼を彷彿とさせる打ち方をみせるのです。傀の背中にもっとも近い人物だといえるでしょう。
自分のやり方で傀さんの喉元まで迫ったハズだ!
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』13巻より引用)
1巻での登場以降その所在が不明だった彼でしたが、ある雀荘で安永と再会します。そして安永に連れられ、傀との対戦を果たすのです。
ここでは傀に敗れてしまったものの、ラッキーではなく自身の力で傀の喉元まで肉薄する勝負をくり広げます。
ちゃらんぽらんな見た目に反し、麻雀に対する姿勢は本気そのもの。いつかは傀と同じ域に達するのでは、と期待させる実力を内に秘めているのです。
安永萬は、表と裏のどちらにも属しているプロ。本作では傀の次に登場回数が多い人物です。当初は自分が1番強いと自信にあふれていましたが傀と初対局の際に戦術や腕をすべて見切られ、圧倒的な力量の差を見せつけられて敗北。
それ以降、表のタイトルをあと1歩で逃がしたり、裏では2着に徹したりと、肝心なところで勝ちきれないようになりました。
傀に対するメッセンジャー的な役割を果たしていますが、もちろん連絡先などは知らず、彼が現れそうな雀荘を訪れては現れるのを待っています。
麻雀をバカにしたやつはいつかツケを払わなくちゃよ
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』3巻より引用)
八百長でタイトルを獲った若手を、安永は傀のいる高レートへと連れていきます。そして自身の腕前がどれほどのものなのかを、思い知らせました。
本作の狂言回し的な立ち位置である安永ですが、彼も傀の強さに憧れる者の1人。傀の強さを独自に研究しており、作中では傀にもっとも詳しい人物です。安永自身に焦点を当てた物語も多く、本作の準主人公ともいえるでしょう。
彼は人畜無害を装っては人を陥れていた、悪徳不動産屋です。傀に敗れて多額の借金を負いますが、3年間密入国船で働いて借金を返済しました。そして再び傀に挑みます。
密入国船という過酷な環境下で過ごしたために培われた、異常に冴えた読みが武器。その実力は傀に迫るほどです。しかし本人も自覚していますが、運がないという弱点がありました。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
- 2004-04-27
簡単に刺されてはくれませんね
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』11巻より引用)
江崎は傀へリベンジすることだけを気持ちの支えにして、密入国船での過酷な仕事に耐えました。ついに再戦の願いが叶いますが、傀はなかなか相手にしてくれません。それでも彼は、3年間で得た忍耐力でその状況を耐えるのです。
作中でも屈指の実力を持つ人物で、密入国船を降りてからは凄味が増すのです。もしかして傀に勝てるのでは……と思わせる描写がしばしばあるので、今後の活躍に期待できるでしょう。
後堂は、倉庫会社社長の秘書。卓の傍に立って社長をサポートしていましたが、途中から参戦するようになりました。巧みに傀の勢いを落とし、初対局でも好勝負をくり広げた人物です。
その実力を江崎に買われて、江崎・傀・劉と呼ばれる老人が囲む卓へと誘われます。上級者のみで囲んだ卓で、後堂の実力は1歩およばずに敗北。しかし、引き際を誤らなかったことを江崎と劉から高く評価されました。
そして、この日以降、彼は江崎とともに劉のもとで働くようになるのです。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
- 2010-09-27
こんな卓で打ってみたかった!
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』28巻より引用)
いつもは傍観者に徹していた後堂でしたが、江崎に誘われてレベルの高い卓へとつきます。そこに漂う独特の空気を感じ、彼は歓喜の顔をみせるのでした。
高い実力を秘めていますが、傀や江崎にはやや遅れをとっている印象。しかし江崎とは相性がよく、2人が力を合わせれば傀に勝つことができるかもしれません。
石川は町工場に勤める中年男性で、常にボーっとした顔と態度をしています。外見どおり物覚えは悪いものの、1度覚えたことは決して忘れないうえに製品の細かな誤差を持っただけでわかるといった、超人的な感性を持っているのです。
その感性は麻雀にも生かされており、作中でも数少ない傀を瞠目させた人物。しかし戦略的には弱く、その弱点を突かれるともろく崩れ去ってしまいます。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
- 2014-08-18
勝でねえ!けど勝づ!
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』39巻より引用)
傀を前に勝機を見いだせない石川でしたが、男らしく勝つことを宣言。そして自身の言葉どおり、傀に迫る打ち筋を見せたのです。
まったくオーラのない彼ですがそのポテンシャルは高く、驚くべき強さを発揮することがあります。このギャップこそが彼の魅力でしょう。
三橋秀俊は、「上野(のがみ)の秀」と呼ばれる裏プロ。赤アリ麻雀を得意としており、作中でも屈指の腕前を持ちます。さらに味方へのアシストもうまく、それゆえに雇われて打つことも。
傀とは数度対戦していて、その都度敗北を味わっていますが、彼なりに傀の強さを認め尊敬している様子です。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
- 2003-02-27
やっぱり本物の牌はたまらんな
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』8巻より引用)
傀と対戦した夜に窃盗で逮捕された三橋ですが、素直に罪を認めたため執行猶予の判決を与えられました。そして久しぶりに雀荘に寄り、生の牌の感触を確かめるように打つのです。
このセリフからは、金を稼ぐための道具として麻雀を打っている一方で、麻雀自体を愛していることがうかがえます。
いつかは傀に勝つために、安永と同様に彼の研究を独自にしています。
日蔭は「氷の男」と呼ばれている裏プロ。冷静で効率を重視する打ち方をし、作中でもっとも精密な麻雀を打ちます。その反面で内心では勝負を楽しんだり、思いどおりに事が進まないと苛立ちを顔に出したりと、人間らしさも垣間見せる人物です。
傀とは数度戦い、序盤は効率重視の打法で圧倒するものの毎回どこかでそのスタイルを崩され、最後には逆転負けというパターンに陥っていました。
日蔭の心には傀との対局がトラウマのように根付いていますが、いつかはリベンジすることを誓っている強い気持ちを持った男です。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
- 2000-11-01
捨牌から手の内も山の残り牌まで読んでみせよう
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』2巻より引用)
すべての確率を計算し、傀に対してもその才能をいかんなく発揮する日陰。しかし傀はというと、彼を見下したような顔で笑っており、オーラスへと移行するのでした。
「氷の男」と呼ばれる日陰ですが、内には意外と熱いものを秘めています。その熱さと冷静さのバランスさえ保てれば、傀ともいい勝負ができるかもしれません。
茨城なまりの高レート雀荘を荒らしまわる「水戸グループ」の頭が勝田教導です。
一見男らしく、まっすぐで強気な性格に見えますが、それは弱い自分を隠すための虚栄心の現れ。剛腕で高めツモや一発ツモなどが多い打ち手です。
作中で何度か登場しますが、そのたびに小物になっている印象があります。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
- 2016-11-15
男の勝負はこうだっぺ!
(『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』2巻より引用)
仲間内で通しをおこなっていた勝田でしたが、傀に見破られたうえに挑発を受けて真っ向勝負へとシフトします。彼は男と男の勝負を貫こうと、通しを無視するのでした。
作中でもなかなかの豪運の持ち主で、茨城ではその運のみで勝ちあがり敵がいないほど。しかし、傀は運だけで勝てるほど甘い相手ではなく、自身の麻雀の腕を思い知らされるのです。
どんな場所でも、どんな麻雀でも突然現れる傀。彼は今宵もとある雀荘を訪れていました。
そこでは教授と助教授2人に無関係な人物1人を加えて麻雀がおこなわれてり、引退間近の教授の後釜を決める戦いがくり広げられていたのです。傀は、その卓へ無関係な人物が抜けた代理として呼ばれました。
本来4人で戦うべき麻雀ですが、賭け内容だけに傀だけが部外者のような扱い。店員も蚊帳の外でのらりくらりと打つ傀に同情の視線を向けています。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
- 2018-02-15
実のところ教授の後釜はすでにほとんど決まっており、そのことをもう1人に悟らせないために、教授は麻雀で決めると言いだしたのです。したがって、教授は片方に肩入れをして麻雀を打っていました。
しかし、彼の目論みは無残にも崩れ去ります。傀の「御無礼」が炸裂してしまったのです。そうなれば、あとは傀の蹂躙が続くのみ。ここでも、彼によって人生を狂わされた者が現れたのでした……。
「強すぎて気味が悪い!」とは、傀をうまく表した言葉でしょう。顔が整っている彼は、女性の店員から男前だという印象を受けているのですが、その強さから、最終的には恐れを抱かれることになります。
今回も例に漏れず「イケメン→強い→強すぎて怖い」のコンボが炸裂。相変わらずのバケモノ染みた強さに、読者も憧れつつも畏怖の念を抱くことでしょう。
ビンタ麻雀大会が開催される本巻。その持ち金は、1人あたり100万円!今回も例に漏れず、高レートの勝負がくり広げられます。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
- 2018-07-14
ちなみに、麻雀における「ビンタ」とは、ある点数の基準を超えている者、そして、そうでない者の間で支払いが倍になること。基準より下なことを「クビが切れる」と表現します。本巻ではこの大会で、またしても熾烈なバトルがくり広げられるのです。
その他にも、江崎の代打で傀と勝負する羽目になった後堂の話も収録。彼は、別れた妻との間にもうけた一人娘と休日を過ごす予定だったのですが……。後堂の、父親としての一面が垣間見えるのも注目です。
前巻に引き続き、傀と勝負を続けている後堂。彼は無事に、娘との時間を確保できるのでしょうか。
その他にもヤクザや財界の人物の登場など、傀の周りが騒がしい様子が描かれます。
むこうぶち 50 (近代麻雀コミックス)
2018年12月15日
注目は、傀を倒すために独自のルールを設けた財界の人物たち。そのルールとは、ツモは半減で、出アガリは1ハン増しというもの。大物たちが仕掛けるこの事態に、果たして傀の運命は?
他にも、あるヤクザとのエピソードも掲載。どうやら勘違いから傀との接点と持つことになり……。
もはや無双状態の強さを誇る傀。本巻でも、その強さは健在です。その圧倒的な強さは、ぜひご自身の目でお確かめください。
1999年から連載されている長寿麻雀漫画。それだけ長く続いているのは、多くの人々に愛されている証拠。タイトル通り対決では高額のやりとりがおこなわれ、思わず展開に引き込まれてしまうでしょう。
なんといってもインパクトがあり、個性的なキャラクターが多数登場するのが本作の見所。魅力的なキャラクターが次々と現れ、彼らが緻密に描かれるため、物語から目を離せなくなってしまうのです。
- 著者
- 天獅子 悦也
- 出版日
本編のほか、主人公以外のキャラクターを中心にして描かれたスピンオフ作品『むこうぶち外伝 EZAKI』なども発表されています。また、映画やゲームなどメディアミックス化もされました。
無料のスマホアプリでは、そんな本作を試し読みすることができます。ぜひ無料で読めるこの機会に、試してみてはいかがでしょうか?
おすすめの麻雀漫画を紹介した<無料で読める麻雀漫画おすすめ5選!定番からギャグ要素の強い作品まで紹介>の記事もおすすめです。
『むこうぶち 高レート裏麻雀列伝』を登場人物とともにご紹介しました。興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。