1996年に「月刊少年ガンガン」で連載を開始し、TVアニメ化もされた『まもって守護月天!』が、2015年から再び連載を始めました。時が経っても褪せない人気を誇る本作の魅力に迫ります。
一人暮らしをしている中学2年生の七梨太助のもとに、中国を旅している父親から「支天輪」という八角の輪が送られてきます。太助がその輪を覗いていると、「守護月天シャオリン」と名乗る精霊の少女が現れました。
彼女には主人を不幸から守る使命があり、太助を守るためそばにいることになります。主人と彼に仕える精霊という関係の2人ですが、一緒に過ごしているうちに惹かれあっていくのです。
しかし太助とシャオリンの恋の行方は、現実世界に起きた「エニックスお家騒動」と呼ばれるエニックスの編集者の対立や独立によって作品自体が打ち切りに追い込まれたため、1度うやむやになってしまいました。
そして2015年、『まもって守護月天!解封の章』が連載を開始し、物語が再び動き出したのです。この記事では本作の魅力を、「解封の章」2巻までの内容を交えてご紹介していきます。
- 著者
- 桜野 みねね
- 出版日
- 著者
- 桜野みねね
- 出版日
- 2016-10-08
『まもって守護月天!』は1996年から2000年まで「月刊少年ガンガン」で連載されました。物語は1度終わりを迎え、2002年から2005年には、続編となる『まもって守護月天! 再逢』が「月刊コミックブレイド」で連載されます。
その後10年の時を経て、2015年に『まもって守護月天! 解封の章 』の連載が「月刊コミックガーデン」でスタートしました。
ところが太助とシャオリンの関係は、いまだ大きくは変わっていません。『まもって守護月天!』連載開始から20年ほどが経過しているにもかかわらず、物語が完結していない状態なのです。なぜここまでの長期連載になったのか、それには、先ほど触れた「エニックスお家騒動」が大きく関わっています。
「エニックスお家騒動」とは、1990年代後半から2000年代に起こった、編集者の独立や対立騒動のこと。当時、株式会社エニックス出版の「月刊少年ガンガン」や「月刊Gファンタジー」などの雑誌で連載されていた、いわゆる「エニックス系」の作品が人気を博していました。『まもって守護月天!』もそのひとつです。
しかしその状況に待ったをかけた一部の編集者たちは、王道少年漫画雑誌への原点回帰を図ったのです。ただ読者からの支持を得ることができませんでした。改革虚しく、編集者同士の対立を生み出してしまいます。
騒動は大きくなり、エニックスを退社した編集者たちはそれぞれ独立して新たな出版社を設立。それに加えて、人気作家を引き抜いてしまいます。これに伴い、多くの連載作品が打ち切りを余儀なくされました。『まもって守護月天!』も例に漏れず、物語が完結しないまま、連載が終わってしまったのです。
本作の作者・桜野みねねは、2001年に設立されたマッグガーデンに移籍し、同社が2002年に創刊した「月刊コミックブレイド」にて『まもって守護月天! 再逢』とタイトルを改めおよそ3年間連載を続けました。
その後もマッグガーデンに在籍し、2015年からウェブコミックサイト「MAGCOMI」で『まもって守護月天! 解封の章 』を連載しています。
ちなみに、「解封の章」は『まもって守護月天!』の3年後のお話。「再逢」と「解封の章」にエピソードとしての繋がりは無いとされています。
『まもって守護月天!』はアニメ化も果たした名作漫画です。中学生の太助(たすけ)と、可愛いけどちょっと天然な精霊・シャオリンの恋の行方が見どころです。
しかしその道のりは前途多難で、2人の間に割って入る人が次々と現れます。登場人物はみな個性的で、彼らとともにドタバタラブコメディをくり広げていくのです。
そのうちのひとり宮内出雲は、女性にモテモテのイケメン。シャオリンに一目惚れをし、猛アタックを仕掛けてきます。なんとか近づこうとお祭りデートをしたり、太助の学校の購買部でアルバイトを始めたりしますが、鈍感なシャオリンにはその気持ちがなかなか伝わりません。
同じくシャオリンに想いを寄せる太助を敵対視しており、会うたび火花を散らしています。
また、シャオリンにもライバルが登場します。太助の父親が送ってきた黒天筒から現れた、「慶幸日天(けいこうにってん)ルーアン」という精霊です。
主人を不幸から守る使命を持ったシャオリンの一方、ルーアンは主人を幸福にする使命を持っています。太助に好意を抱いており、自分と太助の2人で幸せになりたいと願っているようです。シャオリンをライバル視しており、いつも太助のそばにいる彼女に負けじと、教師として太助の学校に乗り込んできました。
太助とシャオリンの2人は、ライバルたちの登場によってドタバタに巻き込まれながらも徐々に距離を近づけていくのですが、そこにはある問題がありました。
精霊であるシャオリンは、人間と違い、年老いて死ぬことはありません。そのため、これまでに主人との死別を何度も経験してきました。この辛い別れを乗り越えるのは容易ではありません。主人に恋心を抱いてしまえばなおさらでしょう。そのため彼女には、恋愛感情を抱かないようにする封印が施されていたのです。
封印のため恋を知らないシャオリンと太助が結ばれるのは、非常に困難なこと。いくら太助が想いを告げても、シャオリンには恋がわからないのです。
しかし彼はあきらめず、なんとかシャオリンの封印を解こうとデートに行きます。シャオリンに封印をした南極寿星(なんきょくじゅせい)が邪魔をしてきますが、太助と一緒にいることでシャオリンの心に変化が訪れ、徐々に封印が解かれはじめていくのです。
と、『まもって守護月天!』はこの後2人の関係がどうなるのか、気になるところで終わります。やむを得ず打ち切りになってしまったとはいえ、2人の淡い恋とドタバタコメディに多くのファンを獲得した本作は、まさに名作だといえるでしょう。
- 著者
- 桜野 みねね
- 出版日
- 2002-12-10
2002年に「月刊コミックブレイド」で『まもって守護月天! 再逢』として復活したこの物語は、2人のその後が描かれています。
デートを楽しんだ2人の前に、空から女の子が降ってきました。シャオリンはその子をフェイと名付け、一緒に太助の家で暮らすことになります。
しかし平穏な日常は束の間、シャオリンを狙うレイとランという謎の子どもが現れたり、シャオリンが精霊界に連れ戻されそうになったりと、困難が訪れるのです。
基本的に『まもって守護月天! 再逢』では、太助とシャオリン以外のキャラクターはあまり目立ちません。太助と、徐々に封印が解かれていくシャオリンの恋の行方が描かれています。
最終回では、フェイがシャオリンたち精霊の生みの親であることが明らかになりますが、このシリーズでも物語が綺麗に完結することはありませんでした。
というのも、作者の桜野みねねが体調不良のため連載を続けることが困難になり、彼女はシナリオだけを担当して作画を他の人に任せたため、物語がうまく着地することができなかったようです。
しかし、これで終わりではありませんでした。
- 著者
- 桜野 みねね
- 出版日
- 2017-07-10
『まもって守護月天! 再逢』から10年の時を経て、2015年に『まもって守護月天! 解封の章』がスタートしました。この物語は、『まもって守護月天!』の続編であり、「再逢」とは繋がりがありません。
このことについて桜野みねねは、自身のブログで、「再逢」は自分以外の人の力をたくさん借りた作品であるためだと説明しています。
「解封の章」は、『まもって守護月天!』から3年後を描いた物語。太助は高校生になりましたが、どうやらシャオリンとの関係にはまだ進展がないようです。何とか恋人同士になれるよう奮闘していますがなかなか報われません。
しかし、シャオリンも太助のことを意識している様子が見受けられます。10年越しの読者の思いも相まって、2人が結ばれる日が本当に待ち遠しいですね。
単行本の3巻では、小さくなったシャオが太助と離れ離れになってしまいます。まだまだ目が話せない展開です。2人以外のキャラクターたちにも踏み込んだ内容となっています。
なんだか懐かしい『守護月天!』の世界観に引き込まれること間違いなしです。
さまざまな事情があっても愛され続けている『守護月天!』は、まさに名作です。太助とシャオリンの恋の行方が気になる方は、ぜひ読んでみてください。