こんにちは。藍坊主のvo.hozzyです。今回紹介させていただくテーマは『一周してちょっとコミカル、だけどやっぱり鳥肌シリアルキラー小説三選』です。 小説の醍醐味の一つと言えば、推理ものにも必ず登場してくる犯人、特にそれが異常であればあるほど読者はワクワクしながら話にのめり込んでいけると思うのですが、その中でも今まで自分が読んだ中で面白かったものを紹介させていただきます。
残忍な殺人の容疑をかけられた人物を、司法の基準に乗っ取り冷静な判断で無罪にした裁判官。世論や検察の圧力にも負けずに自分の意志を貫いたこの男は自分の決断を誇りに思いながら退官。その後悠々自適な暮らしをしていました。隣の家に無罪になった人物が越してくるまでは。という話です。実際こんな状態になったらどうでしょう。自分で無罪の判決を下した人物なので邪険にもできないでしょうし、むしろ相手は自分に感謝さえしています。実際、とても友好的で紳士然としたその男は、自分の家族にも親切に接して、どんどん信頼を得ていきます。なのに、ちょっとずつ何かが変な方向へ向かう。
- 著者
- 雫井 脩介
- 出版日
ハサミ男と聞くと、自分はゲームのクロックタワーが真っ先に頭に浮かんでくるんですが、この小説はホラーだけじゃなくて凄くトリッキーです。タイトルからしてやられました。ここからもう作者の術中にはまっていた。ぜひ最後まで読んでその意味を確認していただきたいのですが、タイトルにもまして面白いのが、なんと殺人鬼がこの小説では主人公になっています。ハサミ男。
- 著者
- 殊能 将之
- 出版日
- 2002-08-09
今回紹介の本の中で一番獣みたいにヤバい女が主人公の本です。本能的で野卑。読んでて「このヤロウ!」ってなるタイプの人物。桐野夏生さん節が味わえる一冊です。ちょっとした文章の表現で、粘り気を出していたり、悪臭を放ってきたり、胸焼けしそうな甘さを醸し出してきたり、当然“ちょっとして”ではないんでしょうけど(笑)、さりげない単語で、これだけぬめぬめさせることができる小説家さんもあまりいないんじゃないかと。普通にファンなのですが、主人公にはすっげー苛つきます。なのに、この本を嫌いにはなれません。お見事です。この話には救いはあるのか?と聞かれたら、「ない」と答えます。ひたすら黒くて、ぐにぐにしてる。そこがとてもいいですね。すごくいいです。最後の最後で、主人公に天誅が下るのかって所で、仮に彼女がもし死んでも、誰も得しないし、悲しみもしないし、喜ぶ人間もいないんじゃないかって気分になって、実に絶妙に話が終わっていくタイミングもやっぱり素晴らしいなって改めて読んで思いました。黒いの好きな方にはおすすめです。
- 著者
- 桐野 夏生
- 出版日
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。