『兎が二匹』の魅力をネタバレ考察!死にたいのに死ねない辛さ【無料】

更新:2017.11.22

主人公のすずは死にたいのに死ねない、自殺をしても生き返ってしまう謎めいた体質。見た目は少女ですが、死にぞこなって398歳になっていました。そんな彼女は、ある青年との出会いを通して、どう変化するのでしょうか。スマホアプリで無料で読むことができます!

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『兎が二匹』が無料で読める!魅力をネタバレ考察!不死は本当に人類の夢なのか?

「死にたいのに、死ねないの」

これだけ聞くと、メンヘラ系?と思われるかもしれませんが、本作の主人公が痛切に願うのは「死ぬこと」のみ。なぜここまで「死」にこだわるかというと、実は彼女はすでに398歳、途方もない年月を生きてしまっているからでした。なぜ彼女は「死ねない女」になってしまったのでしょうか。

著者
山うた
出版日
2016-02-09

出だしから主人公が青年に殺されかける衝撃のシーンが描かれます。読み進めると、死にたい願望のある彼女に手を貸していることが判明。物語全体を通して「不老不死」がテーマになっていて、読後は「人の生死」について深く考えさせられるでしょう。

『兎が二匹』は2巻で完結しています。全9話で完結するため、サクッと読み進めることができますが、内容はかなりヘビー。油断していると、物語の悲しい空気に飲み込まれてしまいそうになります。しかし、『兎が二匹』で描かれているのは純愛ストーリーです。これを機に、世界観にどっぷり浸かり込んでみてください。

ちなみにスマホアプリで無料で読むこともできます!

本作は全2巻という短さなので、こちらをスマホアプリで読み終わった方は、同じアプリで無料で読める『スズキさんはただ静かに暮らしたい』という作品もおすすめ。どんな作品かまずはちょっと知りたいという方は、以下の記事をどうぞ。
 

『スズキさんはただ静かに暮らしたい』が無料!全3巻の見所をネタバレ紹介!

 

『兎が二匹』は衝撃のシーンから始まる!【あらすじ】

『兎が二匹』は衝撃のシーンから始まる!【あらすじ】
出典:『兎が二匹』1巻

青年が少女の首に手をかけ、涙を流しながらも殺そうとしている衝撃シーンから物語が始まります。

主人公は稲葉すず、398歳。なぜか死んでも死にきれず、生き返ってしまう体質を持っています。どうにか死にたいという思いから、自殺が日課となっていました。歳だけ見ると相当な高齢者を想像しますが、なぜか彼女の姿は少女のまま成長が止まっています。

そんな彼女と一緒に暮らしているのが、19歳の宇佐見咲朗(通称サク)。彼はすずを心底愛していましたが、愛する彼女が死ぬことを切望しているため、泣く泣く自殺幇助をするのです。

いびつな関係の2人が描かれる物語に、はたして救いはあるのでしょうか。

魅力をネタバレ考察:次々と予想のできない展開が続く!

魅力をネタバレ考察:次々と予想のできない展開が続く!
出典:『兎が二匹』1巻

400年近く生きているにもかかわらず死ねず、自殺をくり返しても生き返ってしまうすず。1話の初っ端からサクがすずの自殺幇助をしているシーンが描かれ、衝撃を受けるでしょう。

どうやら主人公の体は本人の意に反して修復されるよう。絵柄が可愛い分、おどろおどろしさがやや抑えられ、すずの自殺シーンはグロ描写が苦手な方も抵抗なく読み進めることができます。

とにかく自殺をくり返す女(398歳)と子犬みたく人懐っこい青年サクのほのぼのストーリーと思いきや、事態は急変。すずは、テレビで死刑のニュースを見たときに、「これだ!」とひらめいてしまうのです。

サクのことはあまり考えず、自らが完全に死ねる方法を猪突猛進に追い求めるすず。死刑になるよう画策し、それでも死ねないことを考えて遺骨はコンクリートで固めて海に投げてもらい……とどこまでも「死」にこだわります。

このシーン、たったの数コマ。まるで3分クッキングのように「死の計画」がざっくりと説明され、彼女は本当に実行してしまうのです。

さらに、すずを愛するサクは、喪失感に打ちひしがれ、海に身投げしてしまうのです。1話目から救いようのない絶望感が漂い、胸が痛くなります。

結局すずは、このような綿密な計画を立てたにもかかわらず、やっぱり死ねません。なぜ彼女はいつまでたっても、どんな方法をとっても死ねないのか……。この問いは物語のキーとなり、さまざまなかたちで描かれていきます。

魅力をネタバレ考察:すずの歩んだ人生が生々しく、痛い

魅力をネタバレ考察:すずの歩んだ人生が生々しく、痛い
出典:『兎が二匹』1巻

作中では、サクとの日常が描かれたシーンとすずの謎を解く手がかりとなる過去の記憶が織り交ぜられています。

「夏は思い出す
うちを埋める父親の
後ろに見えた入道雲」(『兎が二匹』1巻より引用)

ところどころ、切り込まれるような痛々しいセリフが胸に突き刺さります。セリフだけなく、シーンの描写も秀逸。この場面では、呪いともとれる不穏な黒い手がすずの影に近寄ります。この描写だけでも、彼女の背後に抱えているおぞましい空気が感じられるでしょう。

すずは冒頭、398歳と説明されています。昭和13年の頃に322歳だったことを踏まえ、ざっと計算すると1616年ごろに生まれたことになります。

1616年といえば、徳川家康が没した時期の江戸時代。この頃に生まれた彼女の身に、一体何が起こり、今世まで生き延びることになってしまったのでしょうか。

魅力をネタバレ考察:儚すぎる希望に孤独が際立つラスト

魅力をネタバレ考察:儚すぎる希望に孤独が際立つラスト
出典:『兎が二匹』2巻

1話目からサクが死んでしまう事実が描かれ、いくら読み進んでも、もう結末が見えているようなもの。しかし、なぜか物語に引き込まれ、続きが読みたくなってしまうのです。

ラストでは、サクの死をどう受け止めるのか、また死んでもまた生き返る体質と向き合い、「生きる希望」を見いだせるのか、といった点に注目が集まります。

「…稲葉さんは 何を失くしたの…?」(『兎が二匹』2巻より引用)

このシーンのすずの顔、もう見ていられないほど胸に突き刺さります。胸が痛いを通り越して、もはや苦しい。読者に救いを……と思わずあてもなく求めてしまうほどです。

こういった心理描写がとにかく秀逸で、どの場面を切り取っても悲しみが襲ってきます。

「人は必ず死ぬ」という概念がすずに限っては覆される本作。「生きる」とは?「死ぬ」とは一体?と深く考えさせられます。

『兎が二匹』1巻:死なないでと言いながら殺す男

死んでも死に切れない女、稲葉すずはすでに398歳になっていました。見た目は少女のまま変わっていないため、彼女の異変に気づく人はあまりいません。

そんな彼女と一緒に生活しているのが宇佐見咲朗。みんなからはサクと呼ばれている19歳の青年です。2人が同居するようになったきっかけは、サクがまだ幼いころ、すずの家の前にお腹を空かせて倒れていたからでした。すずはお腹がいっぱいになるまで食べさせます。彼女の優しさに安心感を覚えたサクは暴力的な家庭には帰らず、すずの家に頻繁に出入りするようになるのです。

著者
山うた
出版日
2016-02-09

上述したように、1話目からサクが死んでしまいます。その事実を知ってしまった以上、この物語にはたして幸福な結末は待っているのだろうか……と読者は不安に思うかもしれません。

2話目からは、サクとすずの出会いや日常のシーンが描かれ、ほのぼのとした気持ちにさせられます。しかし、ふと我に返ると「サクはもう死んでいるのに」という切なさが込み上げ、幸せな場面であればあるほど苦しくなるのです。

先を読んでも苦しいだけ、と思いながらも、読む手が止まらない切ない純愛物語。『兎が二匹』は1話からグッと引き込まれる作品です。ぜひ手にとってみてください。

『兎が二匹』2巻:終わりの無い道を夢見て歩む女

著者
山うた
出版日
2016-05-09

2巻の前半では、すずが過ごした廣島(ひろしま)での暮らしが描かれています。時代は昭和。江戸時代から生き延びているすずは、悲惨な戦争を経験することになるのです。

人生80年とよく言われていますが、誰しも限られた時間のなかで、幸福と悲しみのどちらも味わいながら生きていることでしょう。本作のすずの場合、その時間がすでに400年近くたっています。彼女が経験した人生の辛さは、普通の人からすれば想像を絶するもの。彼女の胸の内に、どれだけの苦しみが積み重なっているのかは、計り知ることができません。

ラストでは、彼女がサクの死をどのように受け止め、生きていくのかが注目となっています。

『兎が二匹』がすごい!永遠に続く恋物語の切なさを無料で読んでみよう!

著者
山うた
出版日
2016-02-09

死ぬことができないというのはよくあるテーマで、それに苦しむという描写もどこかで聞いたことのあるものかもしれません。しかし本作が他と一線を画すところは、圧倒的な日常感にあります。

何度も自分の手で、サクの手で死のうとするすずの方法は生々しいもの。効率的でもなく、自分の死について考え尽くした後だからか自分のこの体質を解明しようという様子もなく、ただただ衝動的に自殺し続けます。

その退廃的な様子が作品の世界観を支配しており、その薄暗さと夏の明るさがうまく対比されて、より現実を感じさせる今ここにある風景が美しく見えます。

さらに本作の特徴としてあげられるのが、最終回の特異さ。幸とも不幸ともつかなく、ただただ永遠に彼女の人生が続いていくことが淡々と描かれます。しかしぼんやりとさせた「逃げ」の物語の終わりではなく、納得いく結末となってるのです。

読み終わった後の余韻まで楽しんでほしい本作。その独特な雰囲気、結末はぜひ作品でご覧ください。

また、冒頭でもお伝えしましたが、本作の世界観が気に入った方は『スズキさんはただ静かに暮らしたい』という作品もおすすめ。同じく全3巻という短さながら、良質なヒューマンドラマを見せてくれます。どんな作品かと知りたい方は、以下の記事をどうぞ。

『スズキさんはただ静かに暮らしたい』が無料!全3巻の見所をネタバレ紹介!
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/5384

『兎が二匹』は短い作品ではありますが、最後の1ページまで目が離せない展開が続きます。読後、人間の生死について、深く考えさせられるような濃い物語。ぜひ読んでみてください。

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