『ホルスの手』が面白い!3巻までの見所を全巻ネタバレ紹介!

更新:2021.11.25

再生の申し子見参!エジプト神「ホルス」の名を戴く凄腕外科医の活躍を描いた、医療系漫画『ホルスの手』をネタバレ紹介していきます!エロいけど、患者もしっかり救う天才医師の手が、今日も命をつなぐのです。クオリティの高い絵柄も必見!

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『ホルスの手』が面白い!天才医師の神の手のオペを全巻ネタバレ紹介!

本作で描かれているのは、「命をつなぐドラマ」です。生と死の境目に正面から立ち向かう医師たちの心情や、ミスひとつ許されない手術室でのリアリティ溢れる描写に胸が熱くなること必至!
 

全編をとおして善悪や命の価値について考えさせられるシーンが多く存在し、単純な医療現場を描いただけではない、深みのある作品であるといえるでしょう。

この記事ではそんなハートフルな『ホルスの手』の見どころを、各巻からエピソードをピックアップして紹介していきます。

著者
関 達也
出版日
2012-12-20

『ホルスの手』は普段はエロスな手だけど超かっこいい!【あらすじ】

『ホルスの手』は普段はエロスな手だけど超かっこいい!【あらすじ】
出典:『ホルスの手』1巻

主人公は、外国帰りの外科医・九条十三郎。再生を司るエジプト神になぞらえて「ホルスの手」と称されるほどの、凄腕の持ち主です。

しかし彼は、天才と称される一方で、メスでエロ本の袋とじを鮮やかに切り開いたり、偶然のパイタッチで研修医からビンタを食らったりするユーモア(?)を持ち合わせたオヤジでもあります。

舞台となるのは、都内でもトップクラスの医療施設を持つ大江戸総合病院。この緊急救命室で、今日も九条は奇跡を起こします!

放っておけない命がある。破天荒な天才医師【1巻】

放っておけない命がある。破天荒な天才医師【1巻】
出典:『ホルスの手』1巻

外国の病院で数多の命を救ってきた外科医・九条十三郎(くじょうじゅうざぶろう)は、「ホルスの手」という異名をもつ天才です。「ホルス」というのはエジプト神話における、空と太陽を守護する神様のこと。日はまた昇る、ということから、再生のシンボルとして崇拝されていたそうです。

さて、この九条ですが、主人公でありながら傍若無人をそのまま体現したような人間。世間体や組織のルールなどが通用せず、言い換えれば鋼のメンタルを宿しています。

そんな彼の人間性は、物語の初っ端から披露されます。

第1話で九条は、銀行の強盗事件に巻き込まれました。警察が包囲し現場が膠着状態に陥るなか、要求が通らないことに苛立った強盗のリーダーが、交渉の材料にしようと幼い子供に銃を向けます。

この時、勢い余ったリーダーの放った弾丸が、強盗の仲間の腹に命中してしまうのです。

銃声と悲鳴が響きわたり、誰もが死の予感に怯えるなか、九条だけが撃たれた強盗に寄り添います。

勝手に動くなという脅しに屈することもなく、彼は医師らしく淡々と所見を述べました。このままでは5分以内に出血多量で死んでしまう状態。撃たれた男から血液型を聞いた九条は、AB型かO型の人がいないか呼びかけました。

しかし案の定名乗り出る者はおらず、重苦しい沈黙があたりを包みます。男が自身の最期を覚悟したそのとき、先ほど銃を向けられた子供の母親が、自分の血液型を九条に告げました。犯人の目にこみ上げる涙、そして心の底からでた「ありがとう」の言葉……。

九条は、彼女からの輸血をおこないつつその場で迅速な手術を開始しました。しかし処置が大詰めを迎えたとき、機動隊による制圧作戦が開始され、催涙ガスが投げ込まれてしまうのです。

霧のような煙が立ち込めるなか、果たして九条は男の手術を続けることができるのでしょうか。その人間離れした神業に、衝撃を受けること間違いなしです!

「てめぇの人生の『再生』はてめぇの“手”でなんとかするんだぜ!」(『ホルスの手』1巻より引用)

このとき九条が犯人に投げかけた この言葉は、周囲から敬遠されている九条の一匹狼な性分が現れています。天才と言われながらも孤独を抱えている彼に、読者もつい感情移入してしまうのです。

1巻ではこの他にも、九条が病院の規則や意向を無視して患者の命を救おうとする様子が描かれます。

重病を患った政治家と身元不明の男性が同時に運ばれた時、オペが可能な執刀医は九条のみでした。

普通であればどちらの患者に先にメスを入れるか考える場面ですが、天才に迷いはありません。2人の手術を同時に敢行することを宣言します。病院の上層部は政治家を優先させようとするのですが、その命令を一蹴してしまうあたりに、彼の医師としてのプライドが感じられるのです。

とにかく九条のハチャメチャっぷりがたまらなくカッコイイ!1巻はまだ波乱の幕開け、医師たちは束の間の休息を経て、オペ室という名の戦場に再び向かいます。

失いたくない人がいる。声なき声が生死を分ける【2巻】

著者
関達也
出版日
2013-02-27

 

2巻の冒頭では、緊急救命室(通称:ER)のセンター長、桐生真冬が登場します。実は彼、帰国した九条の噂を聞きつけて大江戸総合病院にスカウトした張本人。鋭い目つきと尖った眼鏡が特徴で、見た目に違わず頭のキレる人物です。

九条率いるERのチームは、交通事故を起こし心停止の重体で運ばれてきた男性患者の治療にあたります。

桐生はオペの様子を、他の病院の救急センター室長も招いてモニタールームで観察し、九条の実力を再確認するかのように、手術の成り行きを冷静に見守っていました。

手術の途中、ふさいだはずの傷口から再び出血するというアクシンデントに見舞われたものの、九条の機転で緊急事態を打破、オペは無事に成功しました。

その圧倒的な業を目の当たりにした桐生は、満足気な笑みを浮かべ、モニタールームを去ります。彼には、日本の緊急医療が抱えるさまざまな問題(救急車のタライ回しや地域の医師不足、ドクターヘリの導入など)を解消し、日本の救急医療を根本から改革するという野望がありました。

そのために、大江戸総合病院の救命率を可能な限り高め、九条を病院の看板医師にし、知名度をあげようとしていたのです。

しかし本巻で、その理想がまだ全然達成されていないという現実を思い知ることになります。

高速道路の炎上事故が起き、次々と運ばれてくる患者に医師が対応しきれず、病院同士の連携も最悪で物資が不足する事態になってしまったのです。

桐生はやむを得ず、「トリアージ」を実行するように九条に指示を出しました。「トリアージ」とは、医師が患者の症状や状態を見極めて、色付きのタグで治療の優先順位をつけることです。

生きている人に次々とタグがつけられていく描写は緊迫感に満ちており、非常に見ごたえのあるシーンだといえるでしょう。九条が「黒(助かる見込みがない)」と判断した患者に、研修医の橘が「まだ息があります!」と訴える場面には、心揺さぶられるはずです。

また桐生は、病院だけではなく自身の医師としての未熟さも痛感することになります。実は彼の母親も事故に巻き込まれて病院に運ばれてくるのですが、この時、すでに彼女は脳に深刻なダメージを抱えていました。そして桐生が別の患者の対応をしている間に、倒れてしまうのです。

野望と病院のことで頭がいっぱいだった桐生は、母の兆候を見抜くことができなかった己の至らなさを悔やみました。

「オレが見ていたのは患者じゃない......」(『ホルスの手』2巻より引用)

自分自身に幻滅した桐生は、よろよろとし足取りでオペ室に入り、治療中の母親のそばに座ります。もはや彼にできるのは、息子として話しかけることだけでした。九条が迅速な治療を試みますが、呼吸は弱まり、血圧低下を知らせるアラーム音がオペ室に響きわたります。

「逝ぐなっ 母ちゃん!!」(『ホルスの手』2巻より引用)

母と子の絆が描かれた本作屈指の名シーンです。はたして彼の魂の叫びは届くのでしょうか?緊迫の手術の行方は、ご自身の目で確かめてみてください。

 

わずかな可能性がある。メスに賭ける者たち【3巻】

著者
関 達也
出版日
2013-06-29

 

最終巻となる3巻は、大統領のオペにまつわるエピソードが中心。外交上の理由から、アフリカマソリア国・ゴウ大統領の食道がん摘出手術が、急遽日本でおこなわれることになりました。

大統領は祖国の独裁政治を終焉に導き、民主化の道を拓いたヒーロー的存在。しかし78歳という高齢で、まさに一国の命を預かるといっても過言ではない大手術です。

執刀を担当するのは、日本医療界の双璧とも呼ばれている大東大と應慶大の医師。九条は助手として加わります。

しかし事前に予想されていたとおり、オペは難航。大東大の外科医、越前士郎は、脳血管の異常と大統領の体力を考慮したうえでオペの中断を決定します。そこにいる誰もが妥当な判断だと納得したその時、待ったをかけたのはホルスの手、九条でした。

彼は別室で様子を見守っていた大江戸総合病院の医師も参加させ、手術を強行します。周囲の反対を押し切ってまで自分の信念を貫こうするさまは、人の命がかかっている場面で不謹慎とは理解しているものの、ある種の爽快感を覚えるでしょう。

執刀を担当していた越前も、不本意ながら九条の提案に乗ります。反発しあっていた2人が最終的には共闘するまでの流れがスムーズで、違和感のないテンポの良さも本作の魅力のひとつといえるでしょう。

とにかく九条は最後まで男くさく、作者のリアル志向な絵柄もそのダンディズムに拍車をかけています。命と直に向き合う医師たちの生きざまを描いた本作を、ぜひ読んでみてください。

 

『ホルスの手』で、男が惚れる男の姿を目撃せよ!

著者
関 達也
出版日
2012-12-20

普段はエロくて頼りなさそうに見えるのに、いざという時には他には真似できない技で人命を救うというヒーローのような九条。男が惚れる男ともいえるかっこよさがあり、普段は無軌道に生きている様子も憧れを感じさせます。

そんな本作は彼の人柄ももちろん魅力ですが、テンポの速い展開がおすすめできる要因。全3巻ながら見応えがあり、それでいて最後までサクサクと読み進められる展開のうまさがあります。

それは勧善懲悪的な展開のポイントを抑えており、王道に面白い流れとなっているから。医術の巧みさとそれが人の言動に影響する様子は、見ていて胸が熱くなるものがあります。

そんな本作の魅力をぜひご自身で体感してみてください。サクサク読めるのでちょっとその様子を覗いてみるだけでハマること間違いなしです!

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