あまりにもピュアな「SM」ラブコメ!? 誰もが認める高校のヒロイン・ナナ。一方、勉強も運動もダメなカオル。ふとしたきっかけで趣味を知られてしまった幼馴染ふたりが、「息抜き」という名の「SM」をはじめることに……!? 今記事では、誰にも言えない少しエッチでピュアな気持ちがぶつかり合う『ナナとカオル』をご紹介します。スマホのアプリで無料で読むこともできまので、ぜひチェックしてみてください!
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2008-11-28
「ステップアップSMラブコメディ」と銘打たれた『ナナとカオル』はSMを題材とした全18巻からなる漫画です。
ある日、ふとしたきっかけでカオルの趣味を知ってしまった優等生で美人な女子高生ナナと、趣味を知られてしまった幼なじみのカオル。2人は「息抜き」と称して、時には過激に、時には泣けるSMをおこなっていきます。
少しエッチでとてもピュアな2人と、SMを通して成長していく『ナナとカオル』を紹介します!
本作はスマホのアプリで無料配信中。続編「ブラックレーベル」も同じアプリでお得に読むことができますので、未読の方はぜひチェックしてみてくださいね。
2人の秘密のはじまりは、カオルの母が袋に入ったSMグッズをナナに預けたことがきっかけです。
ナナはその頃成績が伸び悩み、うまく息抜きが出来ずに1人悩んでいるところでした。そんな時、カオルの母から預かった袋を見てしまい、中に入ってるSMグッズに驚きます。趣味もなく、息抜きの方法を探していたナナは、興味本位でボンテージ衣装を着けてみました。
すると、これまでに感じたことがないドキドキがナナの心を満たします。ナナは鏡の前で自分の姿を確認していましたが、間違えてボンテージ衣装の鍵をかけてしまいます。鍵はとても頑丈で1人ではどうすることもできず、この衣装を脱ぐために隣に住んでいるカオルのところへ向かいました。
夢にまで見たボンテージ衣装を着けたナナが突然目の前に現れ、カオルは驚きます。結局鍵を外すために、ナナはカオルへとボンテージ姿を披露することになるのですが、初めて感じる熱い視線にドキドキが止まりません。無事に脱げ自分の部屋に戻った後、頭が真っ白で何も考えることが出来ず、疲れからそのまま寝てしまいます。
後日、あの事があった次の日に受けたテストで、ナナの伸び悩んでいた成績が上がります。前の日に復習すら出来なかったあのテストでどうして……と、悩んだナナの脳裏に思い浮かぶのは、カオルの部屋で感じたあの視線、あのドキドキとした胸の高なりでした。
息抜きを見つけたと気づいたナナは、今度はどんな息抜きをしてもらおうかと考えながら、ペロリと唇を舌で舐めます。こうしてナナは、カオルに「息抜き」を頼むようになり、2人だけの秘密が始まるのです。
息抜き、というわりには過激なSMをおこなう時もありますが、ナナとカオルはいつだって息抜きに対して真剣に取り組みます。そしていつしか、言葉を発さずとも息抜きを通して、互いのことが分かっていくようになるのも、読みどころのひとつとなっております。
冴えない男子高校生のカオル、そしてヒロインのナナがSMプレイで絆を深めていく本作。この2人がとってもピュアだからこそ、安心して読めるお色気シーンが魅力です。
SMが趣味といっても、カオルは高校生らしい恥じらいとむっつりスケベ感が微笑ましい男子。念願かなってナナのボンデージ姿を見ることができても、暴走することはありません。ナナのきれいなお尻をちょん、とつつくだけ。とことんピュアすぎるのです。
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2009-05-29
一方のナナは、優等生で真面目なタイプ。SMとはかけ離れた存在であるように見えますが、カオルの手ほどきを受けて少しずつSMの世界にのめり込んでいきます。息抜き(SMごっこ)が待ちきれずに、カオルの部屋がある方の壁を恥じらいながらノックして合図をしてしまうほど。
こんなピュアな2人ですが、カオルが独学で鍛えている成果もあり、SMプレイはかなり本格的。美乳美尻のナナが縛られ、涙腺をゆるませながらカオルに弄ばれる様子はたまらなく色っぽいのです。
特に彼女が息抜きをしたい気持ちになってきたときに、舌なめずりをするシーンの色気といったらもう。ナナさん…。真面目からのこの表情。ギャップが可愛すぎます。
ピュアなのに、お色気要素もたっぷり。それが『ナナとカオル』の魅力のひとつでしょう。
SMと聞くと、ムチで打ったり相手を痛めつけたりする過激なイメージで少し抵抗がある……という読者もいらっしゃるでしょう。
しかし、本作のSMはそのイメージとは別もの。ナナに思いを寄せるカオルだからこそできる、愛のあるプレイが存分に描かれています。
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2010-01-29
いじめたい、相手を痛めつけて喜びたいというのがSなのではなく、あくまで彼が抱えているのは好きだから縛りたい、という気持ち。ナナの体に傷がつかないように道具を入念に手入れしたり、プレイのときには表情を見ながら力加減を調節したり、抜かりがないのです。
一方のナナも、ひそかに彼に思いを寄せていました。同級生はカオルのことを「キモムラ」といってからかうけれど、本当は彼がとても優しくて素敵な男の子だと知っているからです。
2人に信頼関係が築かれているからこそ成立する、愛のあるSMプレイ。これが、SMには興味がなかった読者にも、受け入れられる理由でしょう。
心の交歓も見所の2人のSMについて、次の項目でもう少し紹介していきます。
息抜きが始まる前の2人の距離感は遠いのですが、いざ息抜きが始まると途端に空気が変わっていきます。ナナは優等生のナナではなくなり、カオルは威厳のあるS役として接するのです。ナナがお願いをするたびに、首輪をつけて夜の公園を散歩したり、野外でのトイレに挑戦したり、緊縛したまま外出したり……と息抜きを続けていきます。ここだけ見ると、一見ただの成人向け漫画のようですが、『ナナとカオル』は違います。
カオルは自分の気持ちがナナにばれないように、徹底的に自分の気持ちを隠してS役になりきります。ただ攻めるだけではなく、ナナが本当にいやがることはせず、ナナのことだけを考えて丁寧にいじめていくのです。
たとえば緊縛をする場合、ナナの肌に痕をつけないよう力加減や結ぶ姿勢にこだわり、息抜きが終わった後はお風呂を完備し、マッサージなどを行ってナナの身体を大切に扱います。また、首輪はナナの首が傷つかないように内側にフェルトを巻き付けたり、ナナの痛みを自分も感じられるように、通常は道具を使うスパンキング(叩く行為)を自分の手で行います。
ナナが気持ちよく息抜きが出来るように、徹底してS役を演じていくのです。
一方ナナは、カオルに自ら息抜きをお願いしますが、その息抜きの中で何度も自分自身を見つめるタイミングが現れます。いい子として育ってきた人生の中で、息抜きの最中に行われる行為はいい子の世界ではありえない行為ばかりです。周りが期待する、いつもの自分とは違う秘密の自分……。自分では気づかなかったもう1人の自分を受け入れ、息抜きの後には必ず褒めてくれるカオルに徐々に依存しはじめます。
次に、登場人物をもう少し詳しく紹介していきます。
杉村薫(すぎむらかおる)こと「カオル」は、桜溝高校の2年生です。勉強はダメ、運動も苦手なカオルですが、趣味のSMに対してとても熱い情熱を持っています。使う相手もいないSMグッズの収集もしており、グッズを見ながら幼なじみの「ナナ」とのSMプレイを夢に見ているのです。
ですが、ナナと俺では釣り合わないと考え、とても卑屈な思いを抱いています。いつかどうせ俺を置いて離れていくという考えです。ひょんなことから始まった秘密の息抜き、ナナとおこなうSMプレイの時だけはS役になりきろうと頑張りますが、その思いはカオルを縛ることになります。
何事に対してもダメだったカオルが自分のダメな部分を認め、自分の出来ることから少しずつ努力し成長していく過程も、本作品の魅力の1つです。
次にとてもかわいくナイスボディなヒロイン、千草奈々(ちぐさなな)こと「ナナ」の紹介をいたします。
カオルと同じく桜溝高校の2年生で、生徒会の副会長を務めるナナ。勉強ももちろん、所属している陸上部でもエースを務め、先生を含めて学校中の皆から頼りにされる存在です。
ですが、いい子すぎて頼まれたことを断り切れず、知らず知らずにストレスを貯めてしまいがちです。成績が伸び悩んでいることに頭を抱え、いい息抜きを探しているなか、カオルの趣味を知ってしまいます。自分の知らない自分を引き出してくれるカオルに対し、いつの間にか幼なじみ以上の感情を抱いていきます。
『ナナとカオル』は基本的に2人の思いを軸に進んでいきますが、他にも個性豊かな登場人物がたくさんいます。ぜひどのような関わりで2人と仲良くなっていくのか、楽しんでくださいね!
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2010-05-28
館涼子(たちりょうこ)
体力をつけるために始めたランニングでカオルが出会ったのは、白鳥女子学院高等部2年生の舘亮子です。元気いっぱいの彼女は陸上部に所属し、陸上の大会ではナナのライバルでもあります。
ふとしたことでナナとカオルの「息抜き」を知ってしまい、当初は否定していましたが、一度息抜きを体験することによって、2人の良き理解者へと変わっていきます。
睦月ユカリ(むつきゆかり)
生徒会の会計であり、ナナのとても親しい友達。生徒会長の浩史のことが好きで、ナナによく相談をしたり、頼ったりすることが多いです。当初はカオルのことを避け「キモムラ」と呼んでいましたが、カオルにナナに甘えすぎだと説教をされて以来、ナナに頼りすぎないよう気をつけている友達思いの女の子です。
矢神浩史(やがみひろし)
生徒会の会長で、密かにナナへ好意を抱いています。当初はカオルのことを何も出来ない人間だとバカにし、敵対視していましたが、ある事件をきっかけにカオルへの認識を改め一目置くようになり、最終的にカオルはナナにふさわしいと認めていくようになります。
その他にも、カオルが通うSM店の店長さんや、陸上部の先輩など多くのキャラクターが登場しますよ!
そんな2人は息抜きを通じて、時に激しくぶつかり合う時もあります。
カオルは自分の「好きだ」と気持ちをナナに気づかれないように隠していますが、息抜きを続けていく中で、ナナとどのように接したらいいかが分からなくなっていくのです。
自身にも隠していた気持ちを、息抜きを通して客観的に見つめていきます。「俺を置いてけぼりにし、優等生になったナナをめちゃくちゃにしたい」そんな自分でも認めたくない思いとぶつかっていくのです。
いつもより激しい拘束具で聴覚も視覚も触覚も奪われたナナを前に、カオルは自問自答します。自分の自由にできる自分だけのナナを目の前にし、ついに念願叶ってナナを支配することが出来ました。しかし、カオルが好きなのは自由を奪われ、2人だけの世界でSMをしている時のナナだけではなく、生徒会で頑張ったり、自分の努力で前に進んだりする、全てのナナが好きだと自覚し、あらためてナナのそばにいたいと願うのです。
そこからカオルは自分を変えるために、避けてきた勉強に向き合い、体力をつけるためランニングを欠かさずおこなうようになります。遠い位置にいるナナに少しでも近づくため、見えないところで少しずつ努力をしていくのです。
- 著者
- 甘詰留太
- 出版日
- 2011-10-28
カオルは今まで、勉強も運動もダメだと自覚しながらも、ただ過ぎていく日々を過ごしているだけでした。ナナに関しても、自分とは違う世界だと線を引き、近づく努力をせず諦めてばかりいたのです。
ですが、ナナとの息抜きをはじめることによって、自分のダメさを痛感し、少しでも近づくために出来ることを探しはじめます。S役として体力をつけるためにランニングを始めたり、ナナとの差を埋めるために勉強を始めたりするのです。
それはダメな自分を見つめ、ダメだからこそ変わらなければという強い気持ちの表れです。
頑張ることは疲れます。ですが、カオルはナナの唯一のS役であろうと必死で努力していきます。ナナのためなら何でも出来るように、カオルはただひたすら、1人で努力を重ねていくのです。
学校でのナナは完璧で、非の打ち所がない優等生ですが、家庭内は少し変わっています。
両親はナナが幼い頃に離婚し、今は母と2人で住んでいますが、仕事でほとんど家にいない状況です。母は生活費とは別に、なにかあったときのためのお金を棚に置いています。それは、1年に1回家を訪れる、離婚した父に渡すためのお金でした。
ナナは、自身を通して繋がっている両親に対し、心の中でずっと不満を覚えています。どうして別れたのにまだ関わりがあるのか、好きだったなら別れなければいいのにとずっと考えてしまいます。ですが、いい子のナナはその不満を外に吐き出す方法が分からず、いつだって笑顔で接するしかありません。突然現れお金を受け取って帰っていく父にも、お金を娘に預けていく母にも、笑顔以外の表情を向けることが出来ないのです。
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2013-04-26
カオルはそんなナナのSOSに気づき、息抜きを通してナナの心を外に吐き出させようとします。不満や悲鳴を叫ぶために、ナナはいい子の顔を外さないといけません。それは、今までいい子で生きてきたナナにとって、自分の目標や努力が全てなくなってしまうことのように思えました。
いつだって勉強し努力していた自分、両親の前でいい子でいるよう頑張っていた自分、その全てが壊れてしまったら、自分の中に何が残るのでしょうか?ナナは怖くなり、息抜きの最中にも関わらず、不安で初めて逃げ出しそうになります。
ですが、カオルはそれを制止し、ナナの気持ちを受け止めるために今までより激しい息抜きをはじめます。ナナの心の中にある壁を壊し、外に吐き出させることが重要だと考えたカオルは、今まで以上にナナを追い詰めていきます。最初こそ心の壁を壊せませんでしたが、追い詰められていったナナはカオルの温かさで自分の中の思いに気づき、最後は無事心の叫びを吐き出すことに成功するのです。
カオルがいたからこそ、ナナは自分でも気づかなかったいい子の仮面を剥がし、自分の心の奥底にある感情を吐き出すことが出来ました。SMといえば性的なイメージがとても強いですが、精神的に繋がり、互いの信用があってこそ成り立つプレイの1つです。
自分の奥底を吐き出したナナの顔から張り付いた笑顔は消え、自然に笑えるようになりました。そしてまた、2人は息抜きを重ねていくのです。
ただひたすら2人きりで息抜きをするだけではなく、2人で初詣に行ったり、テスト勉強をしたり、専用の首輪を作りに行ったり、中には息抜きをする側とさせる側が逆転したりするなど、多種多様なエピソードが存在します。
ひょんなことから緊縛をし、上からコートだけをつけて外出するエピソードがあります。人混みの中自分の体を縛る縄を感じ、階段を上がるたびに締めつけられる身体に、ナナは息苦しく怖いという気持ちと、体験したことない身体の反応にドキドキする気持ちでいっぱいになります。
また、初詣に行くエピソードでは、着くずしてしまった振袖を緊縛用の紐で着直し、初詣へと向かいます。見た目は華やかな振袖なのに、中は真っ赤な紐で結ばれているというギャップが、2人ならではの関係性をよく表している素敵な話となっています。
はた目から見ると告白する前の両想いのような空気が流れていますが、「息抜き」を挟むことにより空気はガラッと変わり、背徳感のような感情を抱きながら、互いに互いを思いあい、だんだん依存していくようになります。
ナナもカオルも息抜きを重ねるうちに思いが少しずつ重なり、いつしか息抜き以上にお互いを求めていきます。息抜きだけの関係が、ナナだから、カオルだから、という特別な関係へと変わっていくのです。
自分の認めたくない自分をさらけ出し、弱さを見せることが出来る相手は限られてきます。
日常では踏み込めない、とてもナイーブで繊細なココロの奥底へ「息抜き」を通じて触れあう2人の関係性は、決してSMパートナーなどといった言葉では片づけられません。唯一無二の、特別な相手へ変わっていく2人の中で唯一変わらないのは、ただひたすらに相手を思う気持ちだけなのです。
首輪をつけた女の子の表紙が目を引く1巻ですが、中はお色気だけじゃない、よい意味で裏切られること間違いなしです。
2人が不器用ながらも少しずつ成長していく青春SM漫画を、ぜひ皆さんも読んでみませんか。
- 著者
- 甘詰 留太
- 出版日
- 2008-11-28
高校生の2人がSMの世界に没頭していく本作。
ピュアな彼らがくり広げるSMプレイは、成人向けな内容だけじゃなく、ちゃんと愛が感じられるから安心して読むことができます。
SMの世界を知らなかった方は、本作をきっかけに何かが芽生えてしまうかも。それほど、魅力的に描かれた作品なのです。
男性にも女性にもオススメしたい、青春SM漫画。2018年1月現在、スマホのアプリで無料配信されていますので、中身が気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。
SMというと、そういうシーンが多そうだから抵抗がある……という方も多いでしょうが、『ナナとカオル』はSMというプレイを超えて、2人の真っ直ぐでピュアな気持ちがぶつかっている作品となっています。時には笑い、時には泣いて、歪みない思いが詰まっているこの漫画を読む前と読んだ後では、SMへの考えが大きく変わると思います。とても素敵な作品ですので、ぜひ読んでみてくださいね!
『ナナとカオル』のスピンオフ作品『ナナとカオルBlackLabel』について紹介した<『ナナとカオルBlackLabel』が無料!2人のその後を全巻ネタバレ!>の記事もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。