壬生浪士組のお世話をしている15歳の絵真。彼女は秘かに「浪士組の頭脳」と呼ばれる土方歳三に想いを寄せています。しかしそばにいることで、彼が嘘ばかりついていることが発覚しました。一体なぜなのでしょうか。幕末の恋を描いた本作の見どころを、全2巻からご紹介します。
主人公の絵真にとって、「壬生浪士組の鬼」と恐れられ、仲間からも一目置かれている土方歳三は憧れの存在です。しかし土方が嘘をばかりついていることに気付いてからは、疑いの目で見るようになってしまいました。
一体彼はどうして嘘をついているのでしょうか。
土方の謎と、絵真の恋の行方を描いた『土方さんは嘘だらけ』の魅力に迫ります。
- 著者
- きこのみ
- 出版日
- 2016-03-11
あるきっかけから壬生浪士組と同居し、彼らのお世話をすることになった絵真。想いを寄せている土方歳三のそばにいられることに幸せを感じていました。
しかしある時、彼の言動や身の回りで起こる出来事に何かおかしいと引っかかることが多いことに気づきます。
この違和感の正体は何なのでしょうか。土方は何か隠しているのでしょうか。
幕末の世で、謎を解き明かそうと15歳の絵真が奮闘する恋物語がはじまります。
主人公の絵真は天真爛漫な女の子。壬生浪士組が下宿している八木邸の娘で、浪士組の身の回りの世話を手伝っています。
彼女は浪士組の頭脳で剣の腕もたつ土方歳三に、秘かに想いを寄せていました。彼と付き合うことなんてできない、見ているだけで十分なのだと関係を変えようとは思っていません。土方がそばにいてくれて、たまに家事を手伝ってくれるだけでも幸せなのです。
しかしある時彼が嘘をついていることに気付き、その理由を突き止めることに。何度もごまかされてしまいますが、絵真はあきらめません。真実を明らかにしようという強い思いを持っているのです。
好きな人が嘘ばかりついていたら、普通ショックを受けますし、想いも薄れてしまうものです。しかし絵真はへこたれず、真実を知りたいと行動を起こしていきます。この芯の強さが彼女の何よりの魅力でしょう。
土方歳三は壬生浪士組の鬼と恐れられる男。浪士組の頭脳とも呼べる存在で、仲間たちから信頼されています。強いだけでなく容姿端麗で、女性からも男性からもある人気者です。
しかし彼には、どうやら隠しごとがあるようです。
普段は浪士組の仲間たちと市中の見回りや稽古に一生懸命取り組んでいるのですが、最近はさぼり気味。いつもと違う様子に絵真や仲間たちは不審に思いますが、うまくかわしてしまいます。
彼は、みんなの知っている土方歳三ではないのでしょうか。そうなのだとしたら、一体何者なのでしょう。
絵真の家事を手伝ってあげたり、部下から慕われていたりする様子を見る限り、悪い人ではなさそうですが、行動の真意が読めません。
主人公の絵真は、憧れの土方歳三のそばにいられることに幸せを感じていました。しかしある時から自分の身の回りに異変を感じるようになり、土方の言動にも違和感を覚えるようになったことで、事態は一変します。
不思議なことが起こりはじめたのは、絵真がある夜綺麗な石を拾った時から。なんだか寝不足の時のようにフラフラすることが増えたのです。それだけでなく、自分が記憶していることや経験したことと、現実で起こっていることにズレが生じることも増えていきます。
たとえば土方は長い髪が特徴だったはずなのにいつの間にか短くなっていて、そのことを彼に問うと「昨日の夜切ったのだ」と言われますが、返事をするまでに妙な間があるのです。
さらに絵真の部屋では物が倒れるほどの地震を感じたのに、同じ家に住む浪士組や父親に聞いても誰も揺れに気づいていません。
土方が最近市中見回りや稽古をおろそかにしていることに関しては、浪士組の面々も少なからず気にしているようですが、何か聞こうとしてもうまいこと言いくるめられてしまいます。絵真が、土方が何か嘘をついているのではないかと指摘しても信じてくれません。
絵真はなんとか土方の隠しごとを突き止めようと奮闘しますが、それを本人に気づかれてしまいました。
普段とは違う様子の彼を見て、絵真は綺麗な石を拾った日のことを思い出します。そして、その石の持ち主が目の前にいる男性だということ、その男性は自分が想いを寄せていた土方ではないことに気づいたのです。
土方の名を騙る男は、自分は3015年の未来から来た学生だと正体を明かしました。
- 著者
- きこのみ
- 出版日
- 2016-03-11
彼は幕末に少し用事があって、1日だけ過ごすつもりでタイムスリップしてきたそうですが、タイムマシンが壊れて帰れなくなってしまったのだと言いました。この時代にいるために土方になりすましていたのです。
自分が土方だと周りに信じさせるために、「シャッター」というアイテムを使ってみんなの記憶を書き換えていたのですが、どうやら絵真にはそれが効かない様子。そのため、彼女だけ強い違和感を覚えていました。
本物の土方は行方知れずです。絵真は土方を見つけるため、偽物の土方が未来へ帰れるよう協力することに決めました。
未来から来た男が土方になりすましていたという衝撃の事実。本物の土方はどうなってしまったのか。本物の土方に恋をしていた絵真の気持ちは?予想外の展開に目が離せません。
絵真と偽物の土方は、壊れたタイムマシンを直すために必要な部品を集め、修理を進めていました。その最中、絵真が浪士に襲われ危険な目に遭ってしまいます。そのとき刀も使えないのに自分を守ろうとする彼を見て、絵真はだんだんと心惹かれていくのです。
しかし2人の行動を不審に思いはじめた絵真の幼馴染・小吉の介入や、「シャッター」による記憶の書き換えがされていない浪士組・芹沢と山南の登場で、ピンチが訪れます。彼らは土方が以前と様子が違うことに感づいているようでした。
追いつめられた土方は、なんと芹沢に切りつけられてしまいます……。この展開は幕末ならでは。どこに敵方のスパイが潜んでいるかわからない状況なので、疑わしい人には刀を向けてしまうのです。
しかし絵真は、もし彼が死んでしまったらと居ても立ってもいられません。いつのまにか、まだ一緒にいたいという気持ちが強くなっていたのです。
その後なんとか助かった彼と、小吉も協力者となって、3人でタイムマシンの修理を進めます。彼の本当の名前は時多遥人だと告げられました。
一緒の時間を過ごすうちに、遥人と絵真はお互いを意識するようになっていました。しかし遥人は未来で暮らす人間。結ばれることはできません。絵真は気持ちを伝えようとするのですが、遥人はそんな彼女を振り切ってしまいました。
素直に気持ちを伝えたらかえって辛くなってしまうという2人の切ない状況に、胸が締め付けられてしまいます。タイムマシンが直ったら、彼らはこのまま離れ離れになってしまうのでしょうか。
そんな時、遥人に冷たくされて悲しむ絵真の前に、本物の土方歳三が現れたのです。
土方さんは嘘だらけ (2)
2016年10月25日
土方は、遥人が土方になりすましていることも、未来から来たこともを知っているようでした。しかも彼にはタイムマシンを使って成し遂げたいことがあるようで、その願望を叶えるためになんと絵真を人質にとってタイムマシンをわたすよう遥人に迫ります。
タイムマシンが無ければ遥人は未来に帰れませんが、彼女を見捨てることもできません。遥人は一体どのような決断をするのでしょうか。
未来から来た遥人と、幕末を生きる絵真の報われるはずのない恋に切なくなりますが、悲しいまま物語は終わりません。最終話は、時を越えた2人の恋に期待を抱くことができる内容になっています。
作品は完結しましたが、これからも続いていくであろう2人の物語を思うと、幸せを願わずにはいられませんね。
未来から来た遥人と、幕末に生きる絵真という時代を越えたラブストーリーは、甘く切なく胸を締め付けます。2人がどんな結末を迎えるのか気になった方はぜひ読んでみてください。
きこのみの作品が気になる方は『人間でした』を紹介した<漫画『人間でした』が面白い!2ndシーズンまで各巻の魅力をネタバレ紹介!>もおすすめです。