山に迷い込んだ人間を巨大な猿が襲っていくホラーサスペンス作品『モンキーピーク』。次々と人々が殺されていきますが、これは本当に猿の仕業なのでしょうか?ぜひとも謎を解きながら読み進めてみてください。スマホアプリで無料で読むことができますよ。
鬼の猿が住むと噂される山「鬼猿岳」を舞台にして、疑心暗鬼にまみれたサスペンスがくり広げられる『モンキーピーク』。
「藤谷製薬」の社員が登山レクリエーションで訪れると、噂どおりに凶暴な猿が現れ、次々と社員を殺していきます。
しかしあまりにも知能の高い犯行に、ある疑問が浮かびます。
「これは本当に猿の仕業なのか?」
社員の中に犯人、もしくは共犯者がいるのではないかと、誰もが信用できない状況に陥ってしまうのです。しかしそれでも助け合い、団結しなければ猿の魔の手から逃れることはできません。
猿の真相に迫りつつ、極限状態で表れる人間の本性が描かれていくところが本作の最大の魅力でしょう。
さてこの記事では、各巻のあらすじと見どころの紹介、さらに伏線と犯人の正体の考察をしていきます。恐怖と緊迫感を一緒に味わいましょう。
- 著者
- 粂田晃宏
- 出版日
- 2017-02-09
薬害疑惑が生じている「藤谷製薬」は、社内の結束を強めるため、社員40人で登山レクリエーションをおこないました。山に慣れない者も多くいましたが、やっとの思いで全員が山頂へ辿りつきます。
テントを張り、夜を過ごしていると、突如誰かの悲鳴が聞こえました。主人公の早乙女が慌ててテントから飛び出すと、目の前にいたのはナタを持った奇妙な「猿」。そして、社員数人の無残な死体が見つかりました。
この山の名は谷川岳。しかし「鬼猿岳」という異名がついていて、世界で2番目に死者数が多い山でもあり、鬼の猿が住むといわれる魔の山だったのです。
結束を強めるために登山レクリエーションをおこなった藤谷製薬の一行。谷川岳は、別名「鬼猿岳」と呼ばれ、魔猿が住んでいるという噂がありましたが、全員無事に山頂へ辿り着きました。
テントを張り、寝袋に入って皆が眠りについたころ、突然悲鳴が響きわたります。驚いてテントから飛び出した早乙女が見たのは、自分よりも大きな体をし、手にナタを持っている猿。
そして、無残な姿で殺されている4人の社員の死体でした。
これが悲劇の1日目、集めていた携帯電話もすべて奪われており、残った36人の社員は皆で固まって夜が明けるのを待ちました。
そして迎えた2日目、おのおの班に分かれて下山していきますが、何者かによって標識をすり替えるという罠が仕掛けられており、目的地とは違う場所におびき出されてしまいます。
そこには急すぎる階段が設置されていました。降りるのに戸惑う社員たち。その背後に猿が迫ります。焦った者が足を滑らせ、他の社員も巻き込みながら落下していきました。
残ったのは負傷者を含む26人。動ける者たちは山小屋へと向かい、電話で助けを求めることにします。小屋へ向かって山道を歩く一行。ふと後ろを振り返ると、また社員が猿に襲われています。
早乙女と、正義感の強い法務部の安斎は急いで引き返し、猿と対峙するのでした。
- 著者
- 粂田晃宏
- 出版日
- 2017-02-09
1巻にして、23人の死亡者と1人の行方不明者、そして多数の負傷者が出るという壮絶な結果となりました。極限状態ゆえに心身ともに苛まれ、思考能力も低下していきます。
本巻の最後の1ページ、早乙女と、彼の中学からの同級生である宮田が、やっとあることに気づきました。
「本当に猿がやったのかな……」(『モンキーピーク』1巻より引用)
初日の夜以降、猿に殺された者たちのほとんどはナタで切り付けられていましたが、辻という人物だけは撲殺されていました。しかも彼を殺した後、猿は1度身を隠して隙を見て襲撃してきたのです。
この不自然な行動に、辻殺しの犯行は本物の猿によるものではないのではないかという疑惑が浮かびます。
猿か、人間か。
さらに、早乙女が過去に2人の人間を殺したことがあるという事実が発覚。これは今後の展開にどのような意味を持つのでしょうか。
また、行方不明になっている1人の存在も気になるところで、注目点が多々あります。残っているのは16人です。
早乙女と宮田は、社長の富久と安斎、そして辻の死体の第一発見者である林に、辻殺しの犯行が人によるものではないかという推理を相談します。
この話を聞いた3人も、犯行は人間によるもので、しかも生き残っている社内の人物ではないかという結論を導きだしました。
しかしこの状況は、周りの誰のことも信じることができないことを意味します。それは、いま話をしている5人も同じこと。
お互いがお互いを監視しあう状態になり、社員の精神が蝕まれていきます。さらに、水や食料の分配で内輪もめが生じ、一行の不和を深めていきました。
そんな状況下で、一行はようやく山小屋を視界にとらえます。しかしそこに猿が待ち伏せをしていて、社長が弓矢で腹を貫かれてしまいました。そのうえ目の前で水がぶちまけられる事態に。すると思考能力が低下していた社員たちは、猿へと襲い掛かっていくのです。
返り討ちにあい、ここでは2人の死者が出てしまいました。
どうにか生き残った14人は、山小屋の中へ。そして缶詰を見つけました。しかしこれも罠で、毒味を買って出た社長は、もともと重傷を負っていたこともあり、亡くなってしまうのです。
意気消沈する一行ですが、早乙女、宮田、安斎の3人は、ある罠を仕掛けます。
- 著者
- 志名坂 高次
- 出版日
- 2017-05-10
結託した3人は、もともとの登山スケジュールから、明日には救助が来るはずだと強調します。そうすることによって、犯人は今晩のうちに次の行動を起こすのではないかと考えたのです。
しかしこれが、残った社員たちに決定的な亀裂を生み出すきっかけとなってしまいました。
氷室という社員が、見事に罠にかかって捕まったのです。彼は猿の仲間だと疑われ、安斎が自白をさせるために、あまりに惨たらしい拷問をはじめました。
さらに、氷室から濡れ衣を着せられ、早乙女までもが安斎の拷問を受けることになります。ここから彼の暴力による支配がはじまりました。豹変したその様子に、他の社員たちは怯えるのです。
あらゆることが疑わしいのに、結託しないと生き残れない山岳サバイバル。残っているのは13人です。
安斎によって拷問を受けていた早乙女は、宮田の計らいによってなんとか小屋から逃げ出しました。しかしこれは、今後残りの社員たちと行動をともにできないことを意味します。
どうしようか思案した早乙女は、死体に紛れ、小屋の近くで猿を待ち伏せすることにしました。
彼の狙いどおりに猿が現われ、小屋の中の者を弓矢で狙います。早乙女はそこに襲い掛かるのですが、猿が持つ圧倒的な力に押され、猿もろとも崖から転落してしまったのです。
しかし奇跡的に生きていた早乙女。そこに声をかけてきたのは、行方不明になっていた田中でした。田中も以前猿に襲われた際に崖から転落し、今日まで何とか生き残っていたと言うのです。
一方、救助が来ることを待ち望んでいた小屋に残っている面々。朝を迎えた彼らの前に現れたのは、2人の登山者でした。八木満と薫と名乗る兄弟で、偶然この山に登っていたそうです。
この兄弟によって、40人もの遭難者が出ているはずのこの事件が、世間ではニュースになっていないことがわかります。社内にいるであろう猿の協力者によって、登山のスケジュールは改ざんされていることが推測され、待っていても救助が来ないであろうということに、一行はただただ絶望するのです。
- 著者
- 志名坂 高次
- 出版日
- 2017-08-09
早乙女がついに猿に一矢報いて、小屋に残った者は猿も死んだと思っていますが、早乙女が気が付いた時に近くに猿の死体はありませんでした。また彼は、猿に抱き着く形で落下した際、あることに気づいたようなのです。
さらにここにきて、行方不明になっていた人物が登場。これだけ広い山で早乙女と遭遇したのは、偶然なのでしょうか。
また、八木兄妹という新キャラクターも出てきました。兄弟というにはあまりにもその距離感が近い2人。本当にただの登山者なのでしょうか。
一方小屋に残っていた者たちは、猿が早乙女とともに崖から落ちたところを見て、2つのグループに決裂します。
安斎を筆頭にしたグループと、宮田を筆頭にして安斎と一緒にはいられないとするグループです。宮田たちは、別の小屋へと向かうことになりました。
別の小屋へと向かう宮田グループの前に、猿が現れます。断崖絶壁で逃げ場が無く、絶対絶命でしたが、間一髪のところで早乙女が助けに表れました。
しかし人事部長の長谷川が消え、運動神経の悪さゆえに1巻から周りの足を引っ張っていた岡島が猿と一緒に崖から落ちてしまいます。
さらに、安斎たちが残っていた山小屋にも猿が表れました。しかも2匹同時に出現し、社員1人と八木妹の命を奪っていったのです。
この時、自分以外誰も猿に立ち向かおうとしなかったことに激昂した安斎は、生き残った全員の頬を叩いていきました。そして氷室を脅し、辻殺しの動機を白状させるのです。
氷室は、会社の金を横領しているのがバレて辻から脅されていたらしく、同じく経理の佐藤を殺すことも計画していたと言いました。辻褄のあう内容に一同は納得しましたが、結局誰が猿の協力者なのかはわからないままでした。
その後安斎は、ここにいる皆で下山することを決意。その提案に八木兄も賛成しますが、彼の眼には怪しげな光が灯っていました……。
- 著者
- 粂田晃宏 志名坂高次
- 出版日
- 2017-11-09
4巻で、猿が1匹ではなく複数だったという絶望的な事実が明らかになります。3巻で早乙女が感じていた違和感は、猿の体格が違ったことだったこともわかりました。
しかも本巻の最後のページでは、3匹の猿の姿が描かれているのです。
また怪しげだった八木兄弟の妹が、すぐに退場。この2人は猿を前にして大興奮し、「猿神」とまで呼んでいました。彼らは何を目的にこの山を訪れていたのでしょうか。
真相はまだまだわかりません。
ひとり山小屋から先行していた八木兄は、早乙女と林に合流します。八木兄は道中で宮田も見つけていて、彼もなんとか一命を取りとめました。さらに水と食料も分けてもらい、早乙女らは八木兄を信頼するようになります。
彼に先導してもらいながら、「仁衛門岩」と呼ばれる見晴らしのいい場所に到着。猿も距離をとりながらついてきています。
八木兄は、後にやってくる安斎たちのために猿をひきつけながら反撃。石を投げつけ、猛攻を仕掛けますが……。
- 著者
- 志名坂 高次
- 出版日
- 2018-02-09
一方の安斎グループでは、生き残ったメンバーの不和が目に見えるまでに広がっていました。そしてついに、故意ではないものの、佐藤が蹴り飛ばしたことで南が滑落。死んでしまうのです……。
その一部始終を見ていた飯塚はチャンスと捉え、佐藤を脅して同盟に加えました。
八木兄とともに一丸となって猿に立ち向かう早乙女グループと、亀裂の張った安斎グループ。彼らが合流した時には何が起こるのでしょうか。
さらに、猿の仲間として日本刀を抱えた人間も登場し……。果たしてその正体は誰なのでしょうか。
では、5巻までで生き残っている人物を整理していきましょう。
主人公であり営業の早乙女、早乙女の同級生の宮田、最年少で庶務の女の子の林。
この3人が、4巻で安斎から分裂した宮田グループで、ここに八木兄が合流しています。
一方の安斎グループは、辻を殺した氷室、開発室A所属の飯塚・田中・遠野、庶務の藤柴、経理の佐藤です。
そして生死不明の人事部長の長谷川。
5巻が終わった時点で、11人の生き残っている人物と、1人の行方不明者がいることになります。
- 著者
- 粂田晃宏
- 出版日
- 2017-02-09
ではこの12人のなかから、目立った行動をしている数名を紹介していきましょう。
・早乙女
まずは主人公の早乙女です。過去に人を2人殺した経験があると語られましたが、その真偽のほどはわかりません。強面で笑顔がぎこちないことから損をすることが多く、周囲に誤解をあたえてしまいがちな性格をしています。
猿と複数回対峙していて、奇跡的にすべて生き残っています。
・宮田
次は、早乙女と同期の宮田です。学生時代の2人は特に仲がよかったわけではありませんでしたが、早乙女の人柄を理解しており、彼が周囲から疑われる状況になってもかばっていました。
見た目は優しげですが行動力も持ち合わせていて、捕縛されていた早乙女を逃がしたり、安斎に真っ向から立ち向かったりと、やる時はやる男です。
・安斎
安斎は元アメフトの選手で、常人よりはるかに大きな体格とパワーを兼ね備えています。作中のあらゆる場所で指揮をとっていて、自身が絶対の正義と考えており、それゆえか過激なおこないをするシーンが多々見受けられます。
・八木兄
3巻から新しく登場した八木兄。彼だけ藤谷製薬の社員ではなく、登山客として鬼猿岳に訪れました。登山についての豊富な知識と高いテクニックを持ち合わせていて、猿の伝説にも通じている人物です。
・林
早乙女・宮田とともに行動している女性社員の林は、早乙女のことを信頼しており、彼によく優しげな笑みを向けています。まだ取り立てて目立つ行動はしていませんが、猿に殺された者の死体を見た際に、「絶対に許さないという怒りを感じる」という意味深な発言をしていました。
・長谷川
最後は生死不明の長谷川です。宮田グループで行動していましたが、猿と対峙した際にいつの間にか消えており、作中では死んだと思われています。しかし明確に襲われたシーンや死体などの描写がないことから、まだ生きている可能性も大いにあるでしょう。
『モンキーピーク』では、メインストーリーの途中に、時折過去の描写が挿入されます。この一連の殺人事件になにかしらの関係があるはずです。
最大の話題は、藤谷製薬の不祥事。かつて薬の副作用が問題となり、会社は甚大な損害を受けていました。社内外の人物が絡む事件で、注目すべき事柄でしょう。
- 著者
- 志名坂 高次
- 出版日
- 2017-05-10
また、主人公である早乙女の過去も小出しにされています。彼は過去に2人を殺したと自ら発言していまいした。
そのうちのひとりは、高校の時の唯一の親友であった人物であることがわかっています。原付で2人乗りをしていた時に事故を起こしてしまい、その時ハンドルを握っていたのが早乙女だったのです。
そしてもうひとりは、父親であると予想されます。宮田が「親友を亡くして、さらには父も亡くなった」という発言をしていました。
誰かしらの男性が早乙女をかばって山で亡くなったシーンが描かれていて、自分を守って死んでしまったことから「自分が殺した」と責めているのではないでしょうか。
これらの過去が、一連の事件にどのように関係してくるのでしょうか。次巻以降に期待しましょう。
さて、この漫画の肝である犯人の正体が誰なのかを考察していきたいのですが、その前に、殺人を実行している「猿」とはいったい何なのでしょうか。
我々が一般的に想像する動物園にいるような猿ではないことは確かですが、「猿」と呼ばれる本物の動物で犯人が何かしらの方法で操って殺人をしている、もしくは、猿の仮装をした人間のどちらかであると推測されます。
猿の知能が明らかに高いことから、人間が仮装している可能性が高いようにも思えますが、一方で彼らは明らかに人の能力を超えた動きを見せています。また何度も猿に触れている早乙女は、変装などの違和感を覚えていません。
さらに、早乙女に付けられた傷があるはずの人物がいないことから、通常の猿とは違う「猿」が存在していて、彼らが殺人を実行していると予想できます。
- 著者
- 志名坂 高次
- 出版日
- 2017-08-09
そうなると本作における犯人は、「猿」を使役している人物。現状、もっとも疑うべきは生死不明の長谷川ではないでしょうか。
彼のみ不自然に姿を消しています。声も上げずにいつの間にか猿に殺されたことになっているのです。
また山小屋に猿が襲撃しに来た際、見張りをしていたのが長谷川でした。この時彼はしきりに時間を気にしている素振りを見せています。これは、猿が襲ってくる予定の時間を確認していたのではないでしょうか。
そして決定的なのが、5巻で登場した日本刀を持った人間。安斎は、過去に長谷川が飲み会の席で「父親が日本刀を持っている」と話していたことを思い出していました。
状況証拠はそろっています。しかしまだ猿自体の正体も不明ですし、謎なことも山積み。皆さんもぜひ考察しながら読んでみてください。
- 著者
- 粂田晃宏
- 出版日
- 2017-02-09
山という、逃げれば逃げるほどに追い詰められていく場所で、サスペンスホラーが繰り広げられる本作。いっときも油断できない緊張感に引き込まれていきます。
今回は簡単にそれぞれのキャラを紹介しましたが、まだまだお伝えしきれていない内容も盛りだくさん。読み込むほどに感情移入ができ、時にはすべてが怪しく思えて疑心暗鬼に陥るなど、より作品に没頭できること間違いなしです。
果たして猿たちを操る真の犯人は誰なのか、その目的は何なのか、真相を全員が殺される前に突き止めることができるのか?疑問のつきないストーリーをぜひ作品本編で読んでみてください。
またスマホアプリで無料で読むこともできるので、そちらから作品を覗いてみるのもいいかもしれません。
さて、山岳サスペンス作品の『モンキーピーク』に興味を持っていただけたでしょうか。ぜひ皆さんも真相を考えてみてくださいね。