クジラがなぜあんなにも大きいのかその理由について考えたことはありますか?言わずと知れた有名な生き物ですが、実はその詳細はあまり多くの人に知られていません。今回はクジラについてご紹介していきます。
クジラは世界最大の哺乳類。魚の胸ビレのような形の前肢を持ち、犬や猫と同じようにヒゲに似た毛が口の周りに生えています。餌を食べる時も出産育児も全て水の中で行う完全な水生動物で睡眠も水中で取っています。
クジラがなぜ眠っている時に溺れないのか気になったことはありませんか?実はクジラは睡眠中、右脳と左脳を交互に休ませているのです。右脳と左脳を交互に睡眠状態にすることで、溺れることなく脳を休ませているんですね。
〈食べ物〉
クジラの餌は魚やイカなどの海の生物。オキアミなどの甲殻類を食べることもあります。また、クジラは水中で生活していますが水もきちんと飲んでいます。クジラは腎臓が発達しているので余分な水分を効率よく排出できるのです。これにより体内の塩分量をバランスよく保っています。
〈生息地〉
クジラは元々は世界中の暖かい海全域に生息していました。その後海水温度の変化や餌が生息する食物の関係でクジラの適応範囲が広がり、寒冷な極海でも生息できるようになりました。シロナガスクジラやイワシクジラなどは普段は世界中の海洋に生息していますが、捕食と繁殖の時期になると食物を求めて南北両半球に集まります。
〈クジラはどれくらい生きる?〉
クジラの平均的な寿命は60年〜70年。種類別に見るとシャチは平均29年、ザトウクジラは平均45年〜50年、マッコウクジラは70年と一般的に体長が大きくなればなるほど長生きであることがわかります。一方クジラの中でも長生きなのはホッキョククジラ。なんとホッキョククジラの寿命は150年〜200年なのです。あまりに寿命が長いのでホッキョククジラの雌には更年期障害があるのだとか。
さて続いてはなぜクジラの体は大きいのかその謎に迫っていきたいと思います。
クジラの祖先は新生代の始新世初期に生息していたパキケトゥスという動物です。この動物は陸上で生活していた肉食性哺乳類で主に南アジアに生息していました。このパキケトゥスの大きさはまだ5メートルほど。くじらもまだこの時は小型だったのです。
〈外敵から守るため、という説〉
そんなクジラの体が大きくなったのは450万年以内と長いクジラの歴史から見たら比較的最近のこと。体が大きくなったのは外敵から狙われないため、という説があります。それと同時にこのクジラの大きさに変化が起こった時期には北半球で氷床が増え鉄などの栄養分が沿岸に流出、という生態系的変化が起こりました。そのため大量の栄養分が海の中へ。これが海洋の食物系にも変化をもたらし、クジラが大量の餌を捕食することを可能にしたのです。大量の餌を捕食したクジラの体はどんどん巨大化していきました。
〈回遊のため、という説〉
もう1つの説はクジラの回遊のために体が大きくなった、という説。回遊とは普段住んでいる海から離れ、餌を求めて何千キロも海を旅するクジラの行動のこと。この何千キロもの旅には大きな体に備わる大きな燃料タンクが必要です。この長い距離の旅に耐えられる体にするために体のサイズが巨大化していった、という説もあります。
〈シロナガスクジラ〉
体長25メートルほど。最大のものでは34メートルのシロナガスクジラも発見されています。この大きさはあらゆる生物の中で最大。大きな体なのに年間に体重の4分の1程度の量しか食事をしないことでも知られています。世界中の全海域に生息し、餌を求めて回遊します。繁殖期と子育ての時だけ団体行動。そのほかの期間は単独行動をしています。
〈マッコウクジラ〉
体長12〜18メートル。体重25〜50トン。主に深海に暮らすクジラです。千島列島や知床半島などの深海2000メートルのあたりに住んでいて、生涯の3分の2の時間を深海で過ごします。餌は深海に住む軟体動物。狩りは集団でします。
〈ナガスクジラ〉
体長20メートル〜26メートル。体重は30トン〜38トン。スマートな細長い体を持つクジラです。熱帯海域を除く世界中の全海域に生息していて、シロナガスクジラと同様に捕食や繁殖のために回遊に出ます。回遊期間は1年の3分の1。長い旅に耐えられるように大きな燃料タンクを持っています。
〈イワシクジラ〉
体長17メートル、体重16〜18トン。メスの方がオスよりも大型であるのがイワシクジラの特徴。亜熱帯から亜寒帯の海洋に生息しています。全世界の生息数はおよそ54000頭。この数は以前の5分の1程度に減っており、保護の重要性が唱えられている種類です。
ここではクジラの謎に迫ることのできる3冊の本をご紹介します。
本書の作者は水口博也。クジラの写真家・研究家です。彼は1年の半分をかけて世界中のクジラの写真を撮って回っており、1年の半分をかけてそれらの写真の編集を行っている、まさにクジラのスペシャリスト。本書では写真を使ってクジラとイルカに関する99の質問に水口が答えています。
- 著者
- 水口 博也
- 出版日
- 2012-06-21
特筆すべきはその写真の美しさ。オールカラーの写真の鮮やかさが心を強烈に刺激します。クジラの泳ぐ静かな海の静寂や、荒々しい海の波の音までもが聞こえてきそうなくらいの臨場感。ほかの写真集では見られないような貴重な写真が満載ですので、写真を見ているだけでもこの本を手に取った価値を十分に感じられるでしょう。
質問と答えも一問一答でシンプルです。クジラに興味を持ったお子さんを持つ親御さんは、お子さんと一緒に読んでみたら面白いかもしれません。この1冊でクジラ博士になれること間違いなしですよ!
はじめて発見シリーズ全50巻のうちの1冊。クジラについてこれから知って見たいという子供に向けたクジラの基礎が学べるないようになっています。クジラだけでなくイルカやカイギュウなども取り扱っていますので、海の生き物についてクジラを中心にわかりやすく学べる本だと言えるでしょう。
- 著者
- ["クロード デラフォッス", "ラウル ソーテ", "ウテ フュール", "ガリマールジュネス社"]
- 出版日
本書を読めばクジラがどんな暮らしをしているのかシンプルに整理することができます。クジラと言っても1種類だけでなく、様々なクジラがおり、それぞれがどんな生き方をしているのか子供でも理解できるように書かれているのが特徴。絵も綺麗なので子供も飽きずに夢中になって読んでくれるでしょう。
また、本書には楽しい仕掛けもあります。読み進めていくうちに気づく楽しい仕掛けに子供がぐっと惹きつけられること間違いなしです。子供の想像力を掻き立てるような文章構成も嬉しいポイント。クジラ初心者の方にはもってこいの易しいクジラの解説書です。
本書の作者は1冊目で紹介した『クジラ・イルカのなぞ99』と同じ作者、水口博也です。本書は彼が莫大な時間をかけて撮影したクジラとイルカの写真を観察記録と一緒に図鑑形式で披露した一冊。自然の中で生きるリアルなクジラとイルカの姿がとても印象的です。
- 著者
- 水口 博也
- 出版日
- 2013-07-10
写真が撮られているのは、メキシコ、小笠原諸島、アルゼンチン、アラスカなど世界各国。本書では世界中ほとんどのクジラとイルカの写真を見ることができます。私たち人間にとっては国境という垣根がありますが、クジラにとっては海は垣根のない1つの海なのだと読者に気づかせてくれるような内容。眺めているだけで心がすっと洗われるようなそんな悠々としたクジラの姿が魅力的です。
世界中のクジラが見れる場所や、クジラの基本情報など、写真だけでなく内容も充実。写真集としての要素だけでなく、図鑑としての要素も持ち合わせていますので、クジラファンが手に取ればまず間違いなく満足できる1冊だと思います。ぜひおすすめしたい図鑑です。
いかがでしたでしょうか?今回はクジラの生態などについて解説し、謎に迫る3冊の本をご紹介しました。最後までお読み頂きありがとうございました。