シビアな見解、ド直球に届くメッセージ。時に辛口、時に痛烈。けれども味わい深く、愛情に満ちた生きた話。それこそが、香月日輪の魅力です。日常とファンタジーが当たり前に入り混じる、個性豊かなキャラクター達が織り成す香月ワールドをご紹介致します。
香月日輪(こうづき ひのわ)は1963年生まれの女性小説家です。けれどもこの方、小説は読みません(漫画が大好き!)。本人曰く「私が言いたいことを書いているに過ぎない」とのこと。
少女漫画の同人誌で創作活動をしていましたが、『ワルガキ、幽霊にびびる!』で作家デビューが決まり、同作品で1995年、第27回日本児童文学者協会新人賞を受賞します。
2004年には『妖怪アパートの幽雅な日常(1)』(講談社)で産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞しました。
2014年12月19日午前5時26分、大阪市内の病院で亡くなりましたが、その後も新刊が刊行され、今も尚、ファンに愛されています。
小学5年生にして上院小の番長を務めるてつし、右腕のリョーチン、軍師の椎名は「町内イタズラ大王三人悪」!
香月日輪自身がイタズラっ子を観察して書いた、とのことですが、作中のイタズラのえげつないこと!しかし、心の中にちゃんと正義がある、イタズラっ子でも道理は通す、随分男気のある小学生です。てつし、カッコイイぞ!
- 著者
- 香月 日輪
- 出版日
- 2015-09-15
彼らは「地獄堂」の“おやじ”との縁により、術師となって霊や妖怪達と対峙していくわけですが、人間の汚さや狡さ、そうした“闇”を通してどうしようもない現実を目の当たりにすることもあります。
私が衝撃を受けたのは椎名のこの一言。
「当人の苦しみに、とことん付き合う覚悟もない奴が『死んでも何にもならないよ』なんて、さももっともらしく言うもんじゃない」
なんてシビアで、厳しい言葉なのでしょうか。いわゆる「キレイごと」をばっさり切り捨てて、現実を見ている言葉です。この作品、ただの児童向けファンタジー小説とあなどって油断することなかれ。刺さる言葉が自分の在り方を問うてきます。
そりゃあ怖いし、痛々しい表現もあるけれど、三人の子供らしい無邪気さと爽やかさに引っ張られてワクワクしながら読み進められます。その人気は過去にOVA化、映画化、ドラマCD化するなどの広がりを見せるほど!
ちょっと覗いてみてください。ハマりますから。
小説を手に取り、後ろのあらすじを読んだ時に、一文目に書いてあった「人にはそれぞれの自分の物語があるんだよ」というフレーズに惹かれました。
いや、そりゃそうなんです。でもね、よく言われる言葉だけど、それに納得って出来ていますか?
- 著者
- 香月 日輪
- 出版日
- 2014-12-25
自分が大切で、人が許せない。自分の世界を守りたいのは、当然のことです。
主人公の舞子は、継母に子供が出来て家族とうまくいかなくなり、学校では虐められる毎日を送ってきました。
ひとりで抱え込んで、思考は暗くなって、自信も失っていく、そんな経験、誰しもあると思います。
けれど、舞子はねこまたのおばばと出会い、受け止めてもらいながら教わりました。
「みんな、それぞれの物語が大事ら。自分の物語が大事なのは、みんないっしょなんよ・・・」
これが分かれば、人間関係もうまくいくし、自分も楽になるもの。
人は人、自分は自分。気持ちの折り合いをつけて、尊重しあって生きていくことの大切さを教えてくれる作品です。
異世界「大江戸」に落ちてきた少年、雀の日常とその成長を描くシリーズ小説です。
雀はこの世界でたったひとりの人間です。いわゆる非行少年だった雀はこの世界で生きることを決め、今では「大首のかわら版屋」で記者を勤めます。愛されず、人間でいられなかった雀の過去は、何回読んでも涙無くしては読めません。
- 著者
- 香月 日輪
- 出版日
- 2011-11-15
さて、義理人情の大江戸の世界はとにかく賑やかで、明るくさっぱりで気持ちがいい!一気にその世界観に引き込まれていつの間にか小説が読み終わるほどなんです。愛すべき個性的なキャラクター達と一緒に笑って泣いて、そんな体感を得られること間違いなし!
これは雀が生き直す「再生」のお話。そんな雀に追体験をしながら、一緒に大江戸の生活、満喫してみませんか。
人それぞれの普通があって当然なのに、人と違うことが不安で焦るのって、どうしてだろう?
その答えを、私は師匠に教えてもらいました。
- 著者
- 香月 日輪
- 出版日
- 2012-01-28
小学6年生の直之は両親の離婚をキッカケに、父親と東京の実家へ帰ってきます。そこで待っていたのは厳しいおばあちゃんと、西の方言をからかわれる日々でした。
それでも直之は元気で挫けません!その理由は、路地の向こうの不思議な町で師匠と出会えたから。
人と違うことは、悪いことではありません。それが自分の自然な姿です。
師匠曰く「事情を察するのは相手の仕事」なんですって。
正に目から鱗。なんだか気持ちがすっと楽になりませんか?
『下町不思議町物語』は家族の絆を取り戻すお話であり、自分を受け入れる為の大切な一冊です。
主人公の夕士は天涯孤独の身。親戚の家とうまく行かず、高校進学を機に寮へと移り住むはずが、なんと寮が全焼!途方に暮れた夕士は、紆余曲折を経て、妖怪と個性的過ぎる人間達が住むアパートで暮らし始めます。
夕士はこのアパートで起こる不思議な出来事や、学校やバイトという日常の中で、大いに悩み、もがきながら自分とその世界を作っていきます。
「迷わない分だけ世界は狭くなるし、もっとしんどいヨ?!」
住人の一人・詩人の言葉が胸に沁みます。
- 著者
- 香月 日輪
- 出版日
- 2008-10-15
問題に直面するたびに、人生の大先輩である住人たちと討論したり、親友の長谷と語り合ったり、縁の深いカリスマ教師の千晶先生と話したり(世話を焼いたり)、そうした生のコミュニケーションを取ることが大事に描かれています。とにかく皆、言葉に重みがあって、深い!自分もこんな大人になりたいと憧れます。
そして疲れた心と体を回復する、温泉とるり子さんの絶品料理!香月日輪は料理をしないそうですが、食事のシーンは胃袋を刺激するほど鮮やかな描写で、読んでいてお腹が空いてしまいます。
夕士を通して自分に問う時、自分自身もまた夕士と一緒に成長している、そして読むたび違う発見があり、また学びがあります。
2011年には『月刊少年シリウス』にて漫画化され、(作画・深山和香)ドラマCD化や、小説では番外編も刊行される人気ぶりです。
まずは夕士と一緒に前田不動産でアパートの鍵を借りに行きませんか?
『妖怪アパートの幽雅な日常』について気になる方は<『妖怪アパートの幽雅な日常』の魅力を全巻ネタバレ紹介!【アニメ化】>の記事をぜひご覧ください。